きららファンタジア 断たれた絆と蘇る理想郷   作:伝説の超三毛猫

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2回目の幕間話です。
サブタイは『仮面ライダークウガ』より「変身」から。


幕間:変身

「ローリエ」

 

「なんだよ、木月」

 

「『レント』の事なのだが」

 

 

 夢の中。木月桂一が、ローリエに話しかけた。

 ローリエは、剣呑な気配を感じ取った。コイツ、また何かを企んでいるのかと。

 そう思って面と向かって、念じてみれば、木月からローリエに送られた思念に、『ローリエを利用する』的な作戦はなかった。むしろ、文字通り『レント』についてだったのだ。

 

 再現魔法・レント。

 ローリエがきららの『コール』を元に開発した魔法。

 その効果は『術者の記憶にある物語の登場人物の能力・スペックをそのまま再現する』というもの。

 ローリエは、この力をもって、これまでの戦いにおいて全く違うアプローチをかけられるようになった。遺跡の街の事件においては、夢魔の能力を用いてきらら達のサポートを果たしてきた。写本の街では、ローリエは『レント』を切り札に温存して、一切使わなかったので、これまでで『レント』の使用は1回だけという事になるのだが。

 

 しかし…ここで、エトワリア人の殆ど―――或いは、この物語を読んでいる現代人の多くも、かもしれないが―――見落としている重大な事実がある。

 

 確かにローリエは、『記憶にある物語の登場人物の力を再現できる』とランプやきららに説明した。

 ………だが。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「ちょっと見ててくれないか。私の―――『レント』」

 

「おい、お前勝手に―――」

Ku・Ku・Ku・Kuuga(ク・ク・ク・クウガ)!】

「!」

 

 

 勝手に俺の魔力を使うな、と言おうとした所で。

 電子音声と共に木月の腰に特徴的なベルトが現れた。

 確かに告げた「クウガ」という音声。

 中心に赤い石が埋め込まれた、銀色のベルト。

 そして、木月が右腕を左正面に伸ばし、右腰に左手を置くポーズ。そのまま、左手を左腰に送り、伸ばした右腕を右へと滑らせていく動き。

 

 ローリエは、これらに当てはまる力の根源を、1つしか知らなかった。

 何故ならそれは……遥か昔、“ローリエ・ベルベット”が“木月桂一”として生きていた世界で放送されたテレビ番組に登場した、伝説のヒーローの事だったからだ。

 

 

「変身ッ!!!」

 

 

 木月の身体が変わっていく。

 腰の霊石が、激しく唸り。手足は、真っ赤な装甲を纏い。胸には、甲虫のようなプレートメイルが出来上がり。顔は、クワガタムシのような仮面ができて。

 その姿は、前世の頃には、こう呼ばれていた。

 

 

「仮面ライダー、クウガ……うそだろ…」

 

「ウソだろも何も、()()()()()()()()()()()()()()? 再現魔法を」

 

「………」

 

 

 クウガに変身した木月に動揺するも、いきなりトンデモない核心を突く木月。

 彼の言う事が正しければ、ローリエは始めから()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ということになる。

 記憶さえしていれば、どんな戦士の力も“借りる”ことができるとは、なかなかにブッ飛んだ能力だ。まるでラスボスの力である。

 木月の確信めいたその質問に、ローリエは観念したようにため息をついた。

 

 

「…()()()()()()()()()()()()()が…だからっていきなりクウガからやるか、お前。

 もっとこう……近い世界観のやつからやろうぜ?きららっぽいファンタジアみたいな作品からよ…」

 

「何事もトライ&エラーだ。そうやって君は拳銃やら何やらを生み出したではないか」

 

「そうだけどもさ」

 

「この際だ。『レント』でどこまでできるか限界を試してみてはどうだろう?」

 

 

 木月からそんな提案が出た事に目を丸くするローリエ。

 ローリエとしても願ってもない事だ。ほぼぶっつけ本番で藤原夢路の力を『レント』で再現してからというもの、本格的な……それも、どの能力が再現できてどの能力が再現できないのか、という実験を、やってみたかった。不確定要素がどの能力の使用時に起こるのか、他に危険はないか………それが証明できなければ、実戦でこれ以上『レント』に頼るなんて、恐ろしくてとてもできない。そういう意味でも、ローリエは『レント』を切札(ジョーカー)としたのだ。

 早速、ローリエと木月桂一は『レント』の限界を探る緊急会議を開始した。

 

 

「で、だ。木月、『レント』で何の能力で実験すればいいと思ってるんだ?

 俺が思ってるのは……少なくとも、セフィロスや大魔王バーンみたいな、出力ミスったら即世界滅亡って力は避けるべきだろ、ってことだけだが」

 

「そうだね。私は、能力の発動が一目で分かるものが良いかな。例えば、仮面ライダーとか」

 

「ソレ、お前が変身したいだけだろ」

 

「そうだよ?

 前世ではあり得なかった存在の筆頭だ。男として、憧れない方がおかしいと思わないか?」

 

「開き直んな。…で、何が良いんだよ?」

 

「そうだね…私の場合だったら―――」

 

 

 

~木月桂一が考える、『レント』による変身~

 

「そんなにリアリストが恋しいかい。良いだろう」

 

OVER THE REVOLUTION(オーバー・ザ・レボリューション)!】

 

「今日が君達の命日だ」

 

LAUREL TREE(月桂樹)RENT SYSTEM(レントシステム)

 

EVOLUTION(エボリューション)!】

 

ARE YOU READY?(覚悟はいいか?)

 

「変身ッ!!」

 

【ブラックホール! ブラックホール!】

【ブラックホール! レボリューション! フッハッハッハッハッハ!】

 

「フェーズ4……完了! 参考までに言っておこう。俺のハザードレベルは8.0だ」

 

~完~

 

 

「―――ッイヤイヤいやいやいや!! ダメだろそれは!」

 

「ダメかい? リアリストなんて、一瞬で滅ぼせそうじゃあないか」

 

「地球ごと滅ぼす気か! ギャグだろ?絶対誰かを笑わせる為にボケたんだろ、今ァ!!?」

 

 

 ローリエが、木月の提案にテンション高めに反論する。悪ふざけとしか思えないチョイスに木月は微笑むだけであったが、もし本当にこの変身が出来たとしたなら、ローリエ(木月桂一)のポジションは頼もしい味方ではなく恐ろしい敵……というかラスボスだ。それも、ありとあらゆる物語に描かれた悪役たちの中でも、トップクラスに邪悪な部類の。

 

「そこまで言うなら、君が考えた『レント』変身も見せてくれたまえよ」

 

「しょーがねーな…」

 

 思いきり自分の変身を否定された木月は、やや不満げにローリエにも変身を促す。ローリエは渋々、自分の『レント』での変身をイメージしていく……

 

 

 

~ローリエが考える、『レント』による変身~

 

「勝負だハイプリス。天才魔法工学者ローリエの力を…見せてやる!」

 

ハイパァァァァァームゥテェキィィィィィーーーッ!

 

ドッキーーーーーーング!!

 

「ハイパー…大・変・身ッッッ!!!」

 

パッカァーーーン!! ムゥゥゥテェェェェキィィィ!!

 

輝けェー! 流星の如くゥー! 黄金の最強ゲェーマァーッ! ハイパァーッ! ムテキィーッ! エグゼーーーイドッ!!

 

「ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!!」

 

~完~

 

 

「―――成る程。無制限のムテキ時間とは、考えたね」

 

「いや、なんにも考えてねぇよ? スーパー〇ター取ったマ〇オで突撃するくらいの脳筋戦法だよ?」

 

「そうだとしても、予算や大人の事情のある特撮とは違う。現実だから、無敵チートで垢BANされることもない。実現できれば1000%勝ちだろうね」

 

 

 木月は手放しにローリエのチョイスを褒めるが、ちょっと想像してみて欲しい。主人公が無敵で何の苦労もなくあっさりクリアできるゲームを。そして、そんなゲームを初見でプレイした自分自身を。

 楽しいのかもしれない。しかし…ほとんどの者にとっては、物足りない結果となるだろう。それは、ゲーム内の試練の壁が生み出す、感情の上下がないからだ。

 

 というかそもそも、ローリエが選んだ『エグゼイド ムテキゲーマー』は、時間停止というチート能力を持つ『クロノス』に対抗する為に生まれたのだ。テロリストが現れたからと言って、安易に持ち出して良い力では無い。

 リアリストが時間停止並のチート能力を持ち出していないのに、さっさとムテキゲーマーを爆誕させたらどうなるかなど…想像に難くない。………文字通り難易度が崩壊してノーコンテニューでクリアできてしまうに決まっている。そんな結末を招いても…勝った方が虚しいだけだ。

 

 しかし、木月桂一は、満足した辛勝よりも呆気ない程の楽勝を欲する人間であった。それは、人として楽をしたいから……ではない。辛勝するほど争いが(もつ)れれば(もつ)れるほど、失うものが多い事を知っているからだ。

 己より弱いものばかりと戦いたいからではなく、どんな強敵も知恵と工夫で封殺する事を第一にしているからだ。強敵に好き放題させたら、大多数の犠牲が出ることを知っているからだ。

 それだけに、ローリエは木月の意志を否定出来なかったし、否定する心意気も湧かなかった。誰だって、犠牲は少ない方が良いに決まっている。

 

 

「と…とりあえず、だ。起きたら何が出来るかを試してみれば良いじゃあないか。メディに訓練場借りてよ」

 

「そうだね…訓練場となると、使える力に制限ができるし、誰かに見られるかもしれないから、本当は森の中とかが良かったけど……またぶっつけ本番で使う羽目になるよりかはマシか」

 

 

 話をそらしてその提案をし、木月が困った様子で同意すると同時に、意識が浮上していくのがわかった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 翌朝。きららちゃんを見送り、協力者に電話で協力要請をした後。

 俺は、メディに許可を貰って、スクライブギルドの訓練場にいた。

 

 協力者が来るのは明日。

 幸いにも、今日は丸一日空いた。明日には協力者が来て、アルシーヴちゃん達に連絡をしなければならない以上、この日を逃したら暫く訓練の時間は取れない。

 …『レント』の実証実験をやるには今日しかない。どこまで再現できるか、何が再現できて何が再現できないのかを整理するべきだ。

 

 

「…リストには、思いつくだけの版権ネタを全部書いといた。今日は、それを全部やってやる」

 

 

 念のため、メディたちスクライブには、「あんまり見に来ないで欲しい」と言っておいた。

 息を整え、早速デバイスの操作を行った。

 

 

「まずは……サ○ヤ人からだ―――『レント』」

GOKU(ゴクウ)

 

「…体の内側から何かが満ちてくる……舞空術は……っと!?」

 

 

 体が宙に浮くような感覚を覚えた………が、すぐにバランスを崩して落ちそうになる。

 

 

「……マジで修行あるのみか…次!」

 

 

 そこからは、前世の記憶のバーゲンセールだった。リストにかいた版権ネタは全部やった。その過程で思いついたヤツも全部『レント』で再現してみた。

 悪○の実も、斬○刀も、スタ○ド能力も、念能○、ジャ○プ、サ○デー、etc…………勿論、規模がデカすぎたり能力自体がヤバすぎて家や人に危害を及ぼしかねないものは使っていないか、本格的にブッパしていない。

 

「……よし、空気中の鉄を刃にできた…体内から刃は……イデッ!!? できたけど…ヤバい…これめっちゃイテェ…」

天叢雲(あまのむらくも)……できた。次は…八咫鏡!」

「卍・解ッ!!! 千本桜景厳(せんぼんざくらかげよし)!………よし、できt…わあああ待て、広がりすぎだァァ!!?」

「スペルカード―――霊符『夢想封印』ッ!」

「変身ッ!」

【HENSIN】【CAST OFF】

 

 その過程で、上手くいくものもあれば……

 

「ギア(セカンド)……これはヤバいな。全身がゴムじゃないと耐えられないから『レント』切れたら死ぬなコレ」

「変身ッ!」

ERROR

「なにッ? ぐおおおおッ!?」

「あれ? 全く反応がない………これは再現できないのか…便利なのに」

「あッ、効果が切れた!? 時間は……10秒!? これはキツ過ぎだな…」

 

 上手くいかなかったものもあった。「一時的に再現する魔法」と相性の悪いものや、強力すぎるもの、或いは特殊な条件でしか上手くいかないものなど…どうやら、再現魔法というものは、俺の前世のサブカルチャー知識をもってしても限度は存在するようである。

 例えば………様々な作品のキャラを『再現』したので1シリーズに絞って例を出すが……仮面ライダー系の場合、クウガ・カブト・W・オーズは再現もでき、変身も可能。その一方で、555(ファイズ)、ゴースト、エグゼイド、ビルドは変身が出来なかった。恐らくだが、『レント』で変身できるライダーは“改造されていない普通の人間が変身するもの”に限るのではないのだろうか。

 もう一つ例を出そう。ONE PIECEのモンキー・D・ルフィを『レント』した時の話だ。全身がゴム人間になって腕は伸びたが、見聞色の覇気*1と武装色の覇気*2は使えなかった。また、覇王色の覇気*3も自由自在に使えなかった。ギア(セカンド)はコツを掴めばなれたが、ルフィの使う『ギア』はアイツがゴム人間だから出来ること。『レント』が切れたら能力の効果が切れることを考えたら、『レント』の再現では使い勝手は良くないのである。

 強力すぎる能力は、大体『レント』で再現できないか、できても効果時間が非常に短い。1分持てばいい方で、最短だと技の発動から5秒で『レント』の効果切れなんてものもあった。コレだと、技一発放てるかどうかさえ怪しい。使っても本来とは全く違う使い方になりそうだ。

 

 

「よし、コレでラストだな」

 

 

 用意したリストが、マルとバツと三角でいっぱいになった。

 思っていたよりは自由に使える魔法じゃあない。だが、コイツは生まれたての魔法だからな………他の人に見せれば、なにか新しい事が分かるかもしれない。

 例えば、練習中に昼飯を差し入れに来てくれたメディとか、ソラちゃんあたりに。折を見て、幼馴染の2人にも『レント』について話しておくか。

 

 

「思ったより『再現』できたのは少ない……が。それでも十二分に『能力のストック』ができた。あとは使い方次第だな……アレとアレが暗殺用で、正面から戦うにはアレが使えるな……」

 

 

 『レント』で使用可能な能力の使い道を吟味しながら、この日は訓練場の使用を終えた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 師匠(せんせい)が、ギルドの訓練場を貸してくれと相談してから1時間。

 あの人は、貸し切りもかくやと言わんばかりに訓練場に引きこもっています。

 あまり見に来ないように、と言われましたが、流石にそこまで頑張ってらっしゃると、疲れると思いますので、少し差し入れをしたいと思って、おにぎりと飲み物を用意したのです。

 そうして、差し入れに向かった先の訓練場で、あの……あの信じられない光景はこの眼で見ました。

 

 

炎の呼吸…奥義! 玖の型・煉獄ッッ!!!

 

「え―――」

 

 

 師匠(せんせい)が木刀を握りしめながら放った一撃が、とても大きな炎を纏っていたところを。

 一見、訓練場が火事になっていないのが不思議なくらいの巨大な炎で、でも木刀を振り切った後には炎は嘘みたいに消えていました。ただ、肌を撫ぜた熱気だけは、どういう訳か本物のように感じました。

 師匠(せんせい)本人はこっちに気付いていない様子で、床に置いてあったメモに何かを書き込んでから、深呼吸して、こう言いました。

 

 

「…よし。呼吸法は使えるな。次」

 

「(次……?)」

 

「―――『レント』!」

DAI(ダイ)

 

 その……『レント』?とやらの魔法で、師匠(せんせい)は変幻自在…そうとでも言うしかないような技の数々を繰り出しました。

 時に、光を纏った木刀で素振りしたり……(その際、『だいちざん』とか『かいはざん』とか言っていましたが、どちらも聞いたことのない技名です)

 

「できた……伸縮自在の愛(バンジーガム)薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)……再現可能ッ!

 まぁ、ヒソカ(あいつ)ほど有効活用できるかは分からねぇけど……一応な…!」

 

 時に、紫色の半透明な魔力?を伸び縮みさせたり、薄くのばしたり……

 

「錬成は……オッケイ! 使えるな…」

 

 時に、両手を合わせてから、木刀の形をまるで粘土みたいに変えてみせたり……

 

「ぐううッッ!!? ま…『マイノリティワールド』が3秒も続かなかった……コレは流石に無理だな…」

 

 時に、苦しそうな顔で呻きながら、メモを書いていました。

 一体、なにが師匠(せんせい)をそうさせるんですか? さっきから私の良く知らない技をドンドン使うのもそうなんですけど、時々無茶をしているのかダメージを受けているにも関わらず…魔法の使用をやめようとしない……

 これ以上見ていられなかった私は、師匠(せんせい)の魔法?の効果が無くなったタイミングを見計らって、訓練場に足を踏み入れた。

 

師匠(せんせい)、今いいですか?」

 

「メディ……良いぞ。…それは、差し入れか?」

 

「はい。宜しかったら、どうぞ」

 

「ありがとな!」

 

 師匠(せんせい)は、さっきまで私が見ていた事には気づかなかったようで、座って休憩に入り始めました。

 そこで、師匠(せんせい)の隣に座って、私は尋ねてみます。

 

 

師匠(せんせい)、さっきまで、訓練場で何をなさっていたのですか?」

 

「え? あー……新しい魔法の起動実験?」

 

 …疑問形なのが怪しいですね。もうちょっとだけ、突っ込んでみましょう…

 

「そんなに時間のかかるほど、多くの魔法を?」

 

「イヤ、一つだけだ。ただ、その一つが汎用性が物凄く高くてね。どこまでできるのか試してみたかったんだよ。

 開発したての魔法だし……暴発の危険性もあるかもだからな。俺が編み出した以上、俺自身がやる責任がある」

 

師匠(せんせい)が開発したんですか?」

 

「おう。きららちゃんの『コール』をもとにしてな」

 

 

 きららさんの『コール』をもとに、ですか?

 確か『コール』は、クリエメイトの魂の写し身を呼び出して、クラスの力を与える魔法でした筈。

 師匠(せんせい)の練習中には誰かが呼び出される気配がなかったので、『コール』を元にしてるとは思いませんでした。

 

 

「一体、どのような魔法なんです?」

 

「えーと、物語の登場人物のスペック……人物の特徴とか、使ってた能力とかを、そのまま自身に再現する魔法。『レント』という」

 

「レント………」

 

 

 内心、信じられませんでした。

 師匠(せんせい)の言葉にウソがある、というワケではありませんし、そこは疑っていません。

 ただ……先程までにこっそり見た、師匠(せんせい)が使っていた技の数々が、どこの物語のものなのかがてんで見当がつかないんです。

 でも、それを言ってしまっていいんでしょうか? このことを言うってことは、私が師匠(せんせい)の訓練風景を見たって事を伝えるのと同じです。あんまり練習風景を見ないで欲しいって釘を刺されていた以上、ここでソレを言うのはいささか憚られました。

 

 

「……あんまり、無茶をなさらないでくださいね」

 

「メディ?」

 

「明日には、協力者様との打ち合わせがあるそうですし………何より、師匠(せんせい)を心配してくださる人はいっぱいいます」

 

 

 このままでは師匠(せんせい)がどこか遠い、私達では手の届かない場所へ行ってしまいそうな、そんな予感がしたから。

 私は、師匠(せんせい)を逃さないように、離さないように両手を繋ぎました。

 …でも、私は師匠(せんせい)の訓練風景を見たとは、ついぞ言えませんでした。もし言ってしまえば、師匠(せんせい)は困ったように笑うでしょうから。

 

「分かってる。アルシーヴちゃん達を泣かせるつもりはないよ。勿論…メディも。だから笑ってくれ。いつも通りに」

 

 師匠(せんせい)は、いつも通りの笑顔で、そう答えたのです。

 私は、師匠(せんせい)の手を、強く握りしめながら、同じ笑顔を向けたのでした。運命というものがあるのなら、これから先どうか師匠(せんせい)が一人になりませんようにと願いながら。

*1
ONE PIECEに登場する戦闘技術で、相手の感情・気配を察知する技術

*2
同じくONE PIECEに登場する戦闘技術で、見えない鎧を着るイメージで、実体を捉えられない敵に触れたり攻撃力を増強したりする技術

*3
同じくONE PIECEに登場する戦闘技術で、威圧感や殺気を放って自身より格下の意識を刈り取る技術。数百人に一人しかこの素質を持たず、モンキー・D・ルフィもその一人である。




キャラクター紹介&解説

ローリエ
 再現魔法『レント』で版権ネタのオンパレードをぶっこんだ拙作主人公。その過程で再現できるもの・再現出来ないもの・再現出来るけど使い勝手が悪いものに分けた。基本的に公式チートは再現出来ないか出来ても使用可能時間は遥かに短いと思ってくれればおk。

メディア
 ローリエの版権ネタのオンパレードを目撃した結果、『レント』の謎に一歩踏み入ったスクライブギルド長。身を削りながら魔法の実験をする恩師の身を心配するが、ぶっちゃけ深読みのし過ぎである。この後、彼女はローリエの再現した技の元を調べるが、最終的に見つかる事はなかった。エトワリアに「鬼滅の刃」も「ダイの大冒険」も「HUNTER×HUNTER」も「鋼の錬金術師」も「トリコ」もないので致し方なしといったところか。


『レント』した技の数々
 いちいち説明するのが面倒なほどに他社作品から引っ張ってきている。「クロスオーバー」タグを入れなければ確実に叱られる程の大暴走をしており、公式にこのコラボのバーゲンセールがバレれば、あらゆる意味で『レント』が禁忌級の扱いを受けるだろう。

仮面ライダーエボル・ブラックホール
 木月桂一がイメージした、理想の仮面ライダー。言わずと知れた『仮面ライダービルド』のラスボスである。ウルトラ強い。実験の結果、ローリエがビルド系になれないことが発覚したため木月は泣く泣く諦めた。

仮面ライダーエグゼイド・ムテキゲーマー
 ローリエがイメージした、理想の仮面ライダー。ネタに事欠かない『仮面ライダーエグゼイド』の主人公の最終フォームである。マリオのスターやカービィのキャンディーよろしく無敵になる。実験の結果、ローリエがエグゼイド系になれないことが発覚したため泣く泣く諦めた。

オリキャラを増やす事についてどう思う?

  • 私は一向にかまわんッッ
  • やっても良いけど、背景しっかり描写して♡
  • もうお腹いっぱいだわ!

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