きららファンタジア 断たれた絆と蘇る理想郷 作:伝説の超三毛猫
サブタイトルは「GA芸術科アートデザインクラス」より「オニごっこコラージュ」を元ネタにお送りします。
“芸術とは華やかな色彩だけではない。時には負や陰を帯びた黒も必要というコトだ”
……大道雅
ミキさんとナミコさん、そしてトモカネさんを保護した私達は、残りのクリエメイトをパスを頼りに探し出す事にしました。
「キョージュ様はきららさんのパスを辿れば見つかります。問題はキサラギ様ですね……」
「そうだな……ナミコ達は忘れてしまっている上にきららがパスを辿る事も出来ない……」
そこなんですよね。
実際、いま私が感じることができるパスは一つだけ……パスを断ち切られたクリエメイトを探すことはできません。
仮にこのパスを辿った先にいらっしゃる人を見つけた後、キサラギさんをどうやって見つけ出せばいいのか……
「ねぇっ! あそこにいるの、キョージュじゃないの!?」
「ほんとだ…!
「!!!」
深く潜り込みそうだった思考が、ミキさんとナミコさんの声で元に戻る。
目の前をしっかり確認すれば、青や紺、黒を基調とした服と蝶のような髪飾りをした女性が、ウツカイの群れに追われているところだった。彼女は、私達を確認するやいなや、こっちに近づいてくる!
「キョージュ!」
「キョージュ様!」
「ノダ殿にナミコ殿にトモカネ殿……あと知らない顔が何人かいるが…
巻き込んでしまってすまないが……一緒にここを離れよう」
「いいえ、その必要はありません。
私達が、アレを全て倒します!」
私は、『コール』でせんしとまほうつかいのクラスのクリエメイト……夏帆さんと小梅さんが呼び出される。
魔法陣から現れたお二人の攻撃によって、ウツカイたちは瞬く間に薙ぎ払われて、消滅していった。
あっという間に敵を撃退したことで逃げる必要もなくなったことで、キョージュと呼ばれた方は私達に落ち着き払った様子で「助かった」と言いました。
「見知らぬ街に、複雑な混色をした生き物。
興味深かったが、流石に襲われながら観察は出来なかったものでな。
しかし…この状況はどういう事なのだろうか?」
「実はな、
ナミコさんが、ランプからされた説明を代わりにしていく。
ここがエトワリアという世界の、「芸術の都」という都市であること。
私やランプ、マッチ、うつつ、そしてタイキックさんのこと。
「聖典」という書物のこと。クリエメイトのこと。
そして……現在、リアリストという組織の攻撃を受けて、聖典が汚染されて、破壊される可能性があること。
キョージュさんはその説明に成程…と数回頷いた後、私達に頭を下げて、こう言った。
「
この度は、私達に力を貸してくれたこと、感謝する」
「は…はい! 皆さんをできるだけ早く、元の世界に帰せるように頑張ります!」
「あ、頭を上げてください、キョージュ様! 私はクリエメイトの皆様の為なら何でもするだけですので!!」
「うぅ……なんか、大所帯になったな…超居心地わるい………」
「大丈夫だ、うつつ。記憶喪失仲間の私がいる」
うつつの言う通り、結構な人数になりました。
でも、この中には……まだ、集まっていない人がいます。
私もうつつもタイキックさんも、ランプから聞かされていたからその人の名前は分かっている。
「あとは、キサラギ様だけ……」
「その、如月さん? はどこにいるの?」
「………正直、手詰まりなんですよね…」
「えぇぇーーーっ!! ここに来て!!?」
ミキさんが不満そうに大声を上げるのも無理はない。
でも、これまで探してきた方法が通用しないのは確かだ。
パスを切られている以上、私の力で辿ることも出来ないし、遺跡の街や写本の街で助けてくれたローリエさんもいない。
ここから先は、私達だけで探さないといけない。それも……聖典が、破壊される前に。
「ど、どうしましょう……手がかりなんて殆どないのに……!」
「都、というからにはそれなりに広いのだろう?
そこを闇雲に探し回るのは得策ではないだろうな」
「これまではローリエが手助けしてくれたけど、彼もいないしね」
「ローリエ? って誰?」
「八賢者……簡単に言ってしまえば僕達の協力者だ」
ランプ、キョージュさん、マッチが言葉をあげ、ローリエさんの事に反応したミキさんにマッチが説明をしている。
キサラギさんへの手がかりが無くなってしまったこの状況……ローリエさんを呼んだ方が良いのかな? 確か、渡してくれた通信機の中に、緊急招集用のコードがあったはず。それを使って……
「ねぇ、あっち騒がしいし行ってみようよ!」
「の、ノダ様?」
「うぇぇぇ……陽キャの場所に行くのぉ?
絶対イヤなんですけどぉぉ……」
…と思ったら、ミキさんが急に走りだしてしまいました!
ここではぐれるのもまずいですし、私達はミキさんを追いかけて都の街中を走っていきます。
やがて、辿り着いたのは一つの広場でした。都の人々でしょうか、何やら騒がしいなと思っていたら……そこで行われていた光景に、目を疑いました。私達全員が。
「あ、あれ……!」
「ウツカイが…」
「――聖典を燃やそうとしてる!!」
「うわぁぁぁっ! 絵や彫刻も燃やされそうになってんぞ!?」
聖典や、都に飾られていただろう絵や彫刻が一か所に集められ、ウツカイによって火をつけられそうになっている!
私やランプだけじゃなくて、トモカネさんをはじめとしたクリエメイトの皆さんも目の色を変えて水を探し始めているし、広場へ行くのに乗り気じゃなかったうつつさえもびっくりしていてどうすればいいか分からない感じだった。
―――止めなきゃ。こんなの、間違っているにきまってるから!
「そこまでです!」
「蹴り飛ばしてくれる!」
「「はぁぁぁぁっ!」」
「「「「「ウツーーーーーーーー!?!?」」」」」
「え、えぇぇと私は…」
「うつつさん、これを聖典にかけてください!」
「わ、わ、わ、分かった!」
私は、また『コール』で夏帆さんと小梅さん、更に櫟井唯さんも呼んで、3人と息を合わせながらウツカイを倒していく。
うつつやランプは、水をバケツに汲んできて、火を点けられた聖典や芸術品にかけようとする。他のクリエメイトのみなさんも同様だ。
……やがて、聖典を燃やそうとしていたウツカイを全員倒した後で、私達が芸術の都の人達の様子を見た。これでもう大丈夫、と言おうとしていたけど。
「お、お前達……なんてことをしてくれたんだ!」
「「「「「!!!?」」」」」
「あのまま聖典を燃やさせてくれれば良かったのに…!」
返ってきた反応は…非難。
ウツカイの暴挙を止めた筈の私達に対する、信じられない言葉に戸惑う事しかできない。どうして………私達は正しい事をしたはずなのに……
でも、よく見てみると、都の人々は、何かに怯えている様子だった。なんだろう、まるで聖典を差し出したことで「安心」を得ていたような…そうしなければ、もっとひどい目に遭うのを知っているかのような………
「何を言ってるんですか! 聖典は私達の希望になる大切なもので…」
「…ッ!! でも…でも、
「え……」
「おい、それはどういう意味だ?
その言い方だと、他に道はないと言っている気がするが」
「仕方ないじゃない!
だって―――
「あの、それってどういう――――」
「―――っ!!!」
キィン!!
一瞬だった。私達を責め立てる都の人の違和感を感じた直後。
背筋が凍るような感覚がした。そして、それに突き動かされるままに杖を振るった。
その先にいたのは……ナイフを私に突き刺そうとしてきていた、真っ赤な長髪をした、露出の多い恰好の女の人だった。
「きららさんっ!?」
「ヒィィッ!! 誰!?」
「コイツ、まさか…!」
その女の人は、奇襲が失敗したのを悟ったのか、舌打ちをしてから跳躍。広場の真ん中に降り立った。
私にはさっきの一撃と、あとパスで分かった。この人は、明らかに私達を害する気の存在。ヒナゲシやスイセン、スズランと対峙したような嫌な予感が、ビンビン感じる。
間違いない………この人は、私達の「敵」………リアリストの一員だ。
「で、出た…!」
「リアリストだ!」
「リコリスだ!」
「逃げろ! 殺されるぞォーーッ!!」
都の人々が赤い女の人―――リコリスを認識するなり、ばらばらに逃げていく。
悲鳴や逃げる様子から考えて……この人は、私達が来る前に、ここの人達に散々ひどいことをした、ということなんだろうけど。
「…うるっさいわね、クズどもが……あとでもっと減らしておくか…」
「…っ!!」
もっと減らす……つまり、この人は、もう既に何人も…
「まぁいいわ。今はクリエメイト最優先………みんな捕まえてバラバラにしてやるわ」
どこまでも冷たい視線が私達に向けられる。
まるで、前に戦ったドリアーテみたいな雰囲気で、ストレートに怒りがぶつかってくる。そんな風な態度を取られることの意味が全く分からなくて。
私は、目の前のこの人に問わずにはいられなかった。
「ねぇ、都の人たちになにをしたの?」
「聖典聖典って煩いから黙らせただけよ」
「キサラギさんに、何かしたの!?」
「真実を教えただけに過ぎない。今頃、素猫の『真実の姿』を描き続けてるでしょうね」
「っ…どうしてそんな、ひどいことするの!?」
「理解できないからよ! 聖典も!絆も!何もかもが!!!」
「「「!!?」」」
聖典が、理解できない…?
そんなことで、都の人々を手にかけて、しかもキサラギさん達を聖典ごと破壊しようとしているの?
この人は「聖典が分からない」って言っているけど……そんな事で、周りの人へ暴力を振るおうなんて、それこそ理解ができない。
「何を言っているんですか! 聖典は、誰にでも分かりやすく書かれています!」
「うるさい、うるさい!
そういう、上から目線が……気に食わないのよぉぉぉっ!!!」
ランプの戸惑うような反論に、いきなり激高したリコリスが飛び掛かってきた。
そこに『コール』の唯さんがランプを庇うように前に出て、振るわれたナイフを盾と槍で受け止める。
金属同士が擦りあうような音が鳴り、リコリスが唯さんの盾を蹴って宙に舞う。その際に、リコリスは持っていたナイフを投げつけた。そして……それは、唯さんの盾に当たった瞬間、大爆発を起こした。
「うわぁっ!!」
「唯さんっ!?」
「そんな、今の唯様は『ナイト』のクラスの力を持っているのに…」
「きっと属性相性が悪いんだ。だから余計にダメージを受けてしまったのかもしれない…!」
マッチの言う通り、今の唯さんは風属性……たぶん確定だろうけど、もしこのリコリスって人が炎属性持ちだった場合、いくらナイトクラスの唯さんでも、ダメージは多いだろう。爆発の熱気から察するに属性相性が原因だとは、私も思う。
でも、リコリスから目を逸らさなかった私は気付いた。マントの内側から新しいナイフを取り出したリコリスが、ランプやマッチをしっかり見ていたことを。狙いを、唯さんからそっちに変えていたことを―――!
「ランプ!マッチ!」
リコリスが目にも止まらぬ動きで2人に襲い掛かるのを、すんでの所で私が止める。
唯さんに気を取られて目を離していたら、ランプとマッチを狙ってたのに気づかず、防御が間に合わなかった。
「あなたの思い通りになんて……させない!」
「黙れ!目障りなのよ……アタシの怒りを思い知りなさい!!」
戦えない人を狙うなんて、なんて卑怯な人なの。
かつて神殿までの旅路を歩んでいた頃に戦った、砂漠の盗賊(ソラ様を救った後で、サルモネラという悪名高い盗賊だと知りました)を思い出す。
あの時にも感じた事だけど……こんな人に好きにさせたくない。負けたくない。
そんな思いが自然と湧き出てきて……闘志に変わる。
「はあああぁぁぁぁぁっ!!!」
「っ!!」
「やあぁぁぁっ!」
「このっ………!」
ナイフを弾き返してからの、杖の一撃。手加減したそれで油断していたリコリスのお腹に、本命のフルスイング。それが命中して、リコリスは腹立たしげに私達から離れると、盛大に舌打ちをする。
「……どうやら、少しはやるみたいね。ここで殺るには骨が折れるか」
それだけ言うと、リコリスは両足をバネのように折り曲げ跳びあがり、いちばん低い家の屋根に着地した。
いけない! リコリスはこのまま、逃げる気だ! このままだと、キサラギさんへの手がかりが本当になくなっちゃう!
「待ちなさい! キサラギ様をどこに―――」
「敵にそれを言うバカがいる訳ないでしょ!!」
それだけ言うと、背を向けて逃げ出し始める。
逃がすまいと私達も追跡を始めた……けど、リコリスが都の、人通りの少ない裏路地に入ってから、距離がどんどん離されていった。こっちは入り組んだ建物の間を走っていかないといけないのに、あっちは屋根の上に上っているからそんなの関係なし。屋根のある建物を上って追いかけている暇はない。でも、このままだと引き離される………!
「は、早い…!」
「それに、アイツは私達と違って障害物がないから、回り道をしてないんだ! マズいな、撒かれる…!」
「はぁ……はぁ…! み、みんなぁ、まってぇ…!」
「な…なにか手が………先生の通信機に、何かあってもいいはず…!」
皆が息を切らす中、ランプが携帯通信機をいじりながら走っている。いくらリコリスを逃がしたくないからローリエさんに連絡を取ろうと思ったからって、前を見ないのはちょっと危ないけど、しばらくして「あったぁーーーー!」と言いながらなにか操作を始めた。
【Cat】
『ニャー』
「「「「「「「通信機がネコに変わったーーーーーーーーー!?!?!?」」」」」」」
「すっげーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
こ、このタイミングでネコ!? なんで!?
ランプのチョイスの謎さと、板のような通信機が機械で出来たネコに変形したさま、そしてそれに目を輝かせたトモカネさんに戸惑いつつ、タイキックさんと一緒に読んだ説明書の中に、こんなフォルムチェンジあったっけかって記憶を手繰り寄せる。
でも、ランプの次の言葉で、通信機をネコに変形させた理由が分かった。
「リコリスを追ってください!」
『ニャー』
「え、それスパイガジェットだったの!?」
トモカネさんの言う通り、どうも機械のネコは追跡用のロボットみたいで、ランプの命令を聞くなり機械とは思えないようなしなやかな動きでリコリスの逃げていった方を追いかけていってしまった。
「これで、手がかりを掴めると良いんですけど…」
「やったねランプちゃん!」
「いや、まだ喜ぶには早い。さっきの機械猫が何か持って帰ってくれれば良いのだが…」
「それにしてもランプ。ローリエを呼ぼうとは思わなかったのかい?」
「それでも良かったんだけど、先生が転移してくる間に逃げられちゃいそうだなぁって思ったから…」
「良い判断だったと思うぞ、ランプ殿。あの状況は助っ人を呼べる状況じゃあなかった」
ランプの機転を喜ぶミキさんですけど、タイキックさんの言う事も事実。あの機械のネコ、リコリスに追っかけていることに気付かれないといいんだけど。
私はそう思いながらも、うつつさんがさっきから黙っている事が気がかりだった。
◇◆◇◆◇
ランプが送った機械ネコが帰ってくるまで、リコリスとかいう怖い人を追いかけるのはやめて、都で手がかりを探すことにしたきらら達。
私は……何と言うか、リコリスを追いかけ始めた辺りから、居心地が悪かった………イヤ、もともといたたまれなさ過ぎて消えたいレベルで居心地良くなかった…のかな。最近はほんのちょっとだけマシになったのかなって思ったのに、また居心地が悪化してる。
だって……私だけ、何も出来ていないんだから。
みんながみんな、頑張っているのに、私はただついてきてるだけで……アレ、私いらなくない? ただのオプション以下なんじゃない?
きららは言うまでもなく戦力でしょ?
ランプは聖典の知識や通信機できららを助けたりしてるし。
タイキックはメッチャ強い上に行動力の化身だし。
変な生き物は……パス。
しかも今回会ったクリエメイトだって、みんなキャラの立ってる陽キャときた。ノダミキとかマジ無理。同じ空間にいるだけで目が眩み死ねるまである。せいぜい、ナミコがわずかにマシな程度かな………
つまり……私、ここにいる意味ないんじゃない?
機械ネコの偵察結果待ちにウツカイを倒して回って手がかりを掴むとか言ってたけど、それに効果があるとは思えない―――
「……………」
ふと、視界に真っ黒な素猫像が入ってきた。
今までしっかり見てこれなかったけど……これって………
「うつつさん! そんなの見ちゃダメです!」
「あっ………」
ちょっと見たかっただけなのに、ランプに連れ戻されてしまっていた。というか私、あの黒い素猫に向かって歩いてたんだ……
「で、でも、私……あぁいう暗い絵とかの方が………その……」
………うぅぅぅ。やっぱり言えない。
恥ずかしいのもあるけど、もし……もしだよ? もし、黒い素猫が好きなんて言ったら、みんなはどう思うのかな?
怒るのかな? 「こんなの好きなんておかしい」なんて言われちゃうのかな? それとも…捨てられちゃうのかな? や、やっぱりおかしいよね、こんなの―――
「あのさ、うつつ」
「ひうっ!!?」
「あぁいう暗い絵、好きなの?」
「っ!?…………やっぱり、おかしいよね…」
「なんで?」
「え?」
「あのさ、
そう言ったのは、陽キャの集まりのクリエメイトであるはずの、ナミコだった。
あまりに意外な発言に、目が丸くなるのを感じる。
「明るい絵が嫌いなわけじゃないけどさ。暗い絵に惹かれる気持ちも分かるよ」
「そだねー」
「ナミコ……ミキ……?」
「それに、人間いつだって明るく楽しくやってけるワケじゃあないからね」
「そうだな、怒りや悲しみもまた人の側面だ。ピカソの『ゲルニカ』しかり、ベクシンスキーしかり、負の面からしか生まれぬものもある。
芸術とは華やかな色彩だけではない。時には負や陰を帯びた黒も必要というコトだ」
「キョージュは年がら年中真っ黒なモノクロ一択だけどな」
「ま、とにかく。負の面があることを認める事。それもまた、芸術なんだよ」
ナミコだけでなく、ノダミキもキョージュもトモカネも、全員が私の好きを、認めてくれた。
そうなんだ。
そういう見方も、あっていいんだ。
私が、おかしいんじゃ………なかったんだ………。
「ナミコ、キョージュ。その…げるにか?とかベク何とかとか、少し気になるな。どんなものか、教えて貰っても良いか?」
「百聞は一見にしかず、だな。タイキック殿」
「確かにどんなものか、って言われたら見たほうが早いと思うんだけど…どうやって見てもらうのよ?」
てっきり否定されると思っていたものが肯定されて、認められて、なんだこれ……
なんだろう、この、ふわっとした、心がちょっとだけ軽くなったような感覚……
まるで今まで見ていた平面が、立体の一部でしかなかったことを知ったかのような。
今の今まで、嫌い……というか、苦手でしかなかったクリエメイトが、少しだけ苦手じゃなくなったような。
タイキックみたいに言うなら………「そんな気がした」。
キョージュが「黒い素猫に描かれた怒りや悲しみの理由が知りたい」みたいなことを言ってきらら達や他のクリエメイトを困らせているのを、距離を離して眺める。それは今までやってきた事だけれども、今までとは違って、特段イヤな気分にはならなかった。
そこに、私に向かって歩いてくるのが、ひとり。
「うつつ。隣、良いか?」
「…………うん」
タイキックだ。丁度いい噴水の端に腰かけていたところに、隣に座っていいか聞かれる。はっきり言うのがかなり恥ずかしいから、少しだけ頷くと、タイキックが私の隣に座った。
「そういえば、うつつ。メディアからペンを貰っていたな。使っているか?」
「うん……あと、ここでスケッチブックが買えればな………なんて」
「絵でも描くのか?」
「だめ…かな?」
「だめなものか。今からでも、うつつの絵が楽しみだ」
タイキックは、いつも通り行動力の化身の陽キャじみたことを言ってから、「ただ…」と言葉を漏らした。
「…タイキック?」
「私は……あの黒い素猫の絵はあまり好きではない」
「そう…なの…?」
「あぁ。ナミコとキョージュにはああ言ったが、恐らくげるにかもベク何とかも、私のお気に入りにはならないと思う。何事も、ハッピーエンドの方が良いに決まっているだろうから」
「………」
「だが…だ。もし、そんな絵がこれから先、私の目に留まったとしても。
『そういう絵もあっていい』とか、『これもまた芸術だ』って……考えることにするよ」
「そう…」
「それは、うつつの絵も同じだ」
「わ、わわっ私も!?」
突然話題がこっちに飛んできた!?
急なことに身体が強張る。また、ローリエばりのキラーパスをしてくるんじゃないでしょうね…?
「同じ記憶喪失仲間のはずなのに……全然違うというではないか、うつつは」
「だ、だってぇ…ホントに全然違うんだもん……」
「そうか?」
「そうよぉ……少なくともあんた並みの行動力とか私には無理ぃ…」
「何故だろうな…同じ記憶喪失なら、私と同じような性格や行動になると思っていた」
悪いけど、それはない。
私が行動力の化身とか、化け物コミュニケーションとか、年がら年中ボクサーみたいな服装とか、絶対無理だから。色々違う意味で死んじゃいそう。
「うつつ。私は……たぶん絵を描くのが苦手だ」
「…なんでそんなこと分かるの?」
「決まってる。そんな気がするからだ」
出たな、お決まりの「そんな気がする」。
何度目かのその言葉だったけど、何と言うか、自信たっぷりに言っていた今までとはちょっと違う………目を伏せて、力ない笑みの「そんな気がする」だ。
「だから。―――いつかうつつが絵を描いたとしたら。
それがどんな出来だったにせよ……私はきっと、それに尊敬するだろう」
「―――え?」
「あと。もし、一人で描くのが心細いというならば………私も一緒に描くぞ」
「………」
苦手だと言ったはずの絵を一緒に描いてくれる、と聞いて、耳を疑った私はタイキックの方を見た。
ちょっと私から目を逸らし気味のタイキックの顔が、やや朱色に染まっていたのは、なんだか日差しのせいだけじゃないと思えた。
こんな私と一緒に描くの?物好きすぎない?それともヒマなの? ……いつもだったらそんな言葉が出てくるはずなのに、全然出てこなくって。何て言ったらいいか分からなくなった挙句。
「………ありがと。その時は…その。よろしく」
……ノドと唇のすきまから通って出てきたのは、そんなありきたりな言葉だけだった。
キャラクター紹介&解説
きらら
リコリスと戦った公式主人公。拙作では、サルモネラとな戦いの経験もあり、リコリスを比較的早く追い払う事が出来たようだ。
ランプ
機械ネコを作動させた張本人。ローリエの緊急招集も考えたが、呼んで来たローリエに事情を説明するヒマもなかったため、偵察ロボをチョイスした。
住良木うつつ
暗い絵に惹かれた2部キーキャラ。ナミコ達にその点を肯定されたことで、拙作では今の今まで成長しなかった自己肯定感が栄養を得ることになる。また、密かにタイキックの苦手なものをひとつ知る。
野崎奈三子&大道雅
芸術において、暗い絵もまた芸術と説いた若き芸術科学生。うつつのクリエメイトへの苦手意識がなくなる切っ掛けとなった。なお、片方は黒い素猫の黒にどっぷりハマっている。
友兼
兄の影響でロボットアニメや特撮が好きなことから、ランプが使った機械ネコに目を輝かせた芸術科学生。もしローリエがレーザービームとか巨大合体ロボとか発明したら、フランキーのロボに興奮するウソップやチョッパーの如く興奮するだろう。
ろーりえ「ベルベット・ラディカルビーーーム!!」
ともかね「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」
ねねっち「び…ビームーーーーーーーーッ!!?」
はじめ「すっげぇーーーーーーーーー!!!」
他女性陣「「「…………」」」
ゲルニカ
パブロ・(略)・ピカソが制作した作品。鮮やかなキュビズム絵を描いたピカソに珍しく、死にゆく兵士・馬や子を喪った母親、建物から落ちる女等がモノクロで描かれている。
1937年に、ピカソの出身国であるスペインのゲルニカ市がナチス・ドイツの空軍によって無差別攻撃を受けた事をうけて、それに対する抗議の意が込められている。
ベクシンスキー
ポーランドの画家。主に死・絶望・廃退・終焉などをモチーフとして扱い、不気味さと残酷さと同時に荘厳な美しさを感じされる画風が特徴。更に芸術家には珍しく、生涯で描いた作品のどれにも、『題名』をつけなかったと言われている。
原作との違い
①うつつの力の目覚めが、若干遅くなっています。
→1章でも2章でも、ローリエが魔道具や根回しで真っ先にアジトを見つけたため、うつつの力が目覚めるタイミングが失われました。そのため、一時期きらら達のクリエメイト捜索が手がかりナシの大ピンチに見舞われます。
②ヒナゲシ不在によって、リコリスが形振り構わなくなっています。
→ローリエに捕まっていてヒナゲシが動けないため、原作でヒナゲシがやっていた事までリコリスが行っています。その為、リコリスの暴力による恐怖政治が目立つようになりました。もしここで、ヒナゲシを餌にしたら、確実にリコリスは釣れるでしょう。まだ誰もその事実に気づいていませんが。
ローリエ謹製携帯通信機
910【Cat】:通信機が機械猫に変形し、自律行動をする。追跡・偵察向け。
△▼△▼△▼
ランプ「リコリスの居場所が分からずに、途方に暮れる私達。」
ナミコ「このままだと私達消えるのか!? 絶対に阻止しないと…!」
きらら「でもそこで、うつつの身になにやら変化が……ついて来てって何?まさか……感じ取れるの!? リアリスト達の居場所が!?」
うつつ「お願い、都合のいいことは分かってる!!けど……!!」
次回『Lに気をつけろ/シュルレアリスム』
ナミコ「じ、次回もお楽しみに!」
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今回みたいなリアリストの過去回欲しいですか?
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欲しい。リコリスの過去すごすぎ。
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欲しい。解釈違いではあるが。
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欲しいけど、次からは手短にね
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別にいらん