きららファンタジア 断たれた絆と蘇る理想郷 作:伝説の超三毛猫
黙祷するだけでいいだろという人もいるでしょう。
でも、表現者の端くれとしてそれじゃダメな気がしたから。
偉大なる漫画家、世界一のイラストレーターへ。
ドラゴンボールも、ドラゴンクエストも、大好きでした。
ご冥福を、お祈り申し上げます。今までありがとう。
それは、八賢者として仕事をし、機械を作って、セサミとカルダモンにデートに誘って(断られたケド)、普通に帰ろうとした、そんなある日のことだった。
神殿への帰り道は、言ノ葉の大樹…その麓に位置する言ノ葉の都市へ向かうことから始まる。
俺…ローリエ・ベルベットは、都市のはずれにあった村への出張からの帰り、実に不思議な光景を目の当たりにすることになる。
ブロロロロ……
「?」
その日、俺は実に懐かしい音を聞いた。
車がエンジンをふかす、機械的なあの音。
エトワリアに転生してからは久しく聞いていない音に、虚を突かれた。
まさかと思い、道をあける。
すると現れたのは、これまた久しぶりに見た機械だった。
丸みを帯びたボディに丸いライト、赤いボディカラー。どことなく、ドイツ製の車を想起させるようなデザインだった。
そう。俺の目の前に現れたのは。
………自動車だった。エトワリアにはまだ存在しないハズの。
「――――え」
どうして。
何故、自動車がエトワリアにある。
それは、地球にはあったけれど、このファンタジーな聖典世界にはまだなかったハズなのに。あってもせいぜいバイクだろ?
……そんな俺の中の疑問など知らん、と言わんばかりに、赤い車が、俺の横を通り過ぎていく。
たぶん、そんなにスピードは出していなかったと思う。
けれど、すれ違ったのは一瞬で。
あっという間に、車は俺の後ろを走っていき、距離を離していく。
それでも。
俺は見逃さなかった。
小さくて、丸みを帯びた赤い自動車の、運転席。
そこに乗っていた者が………ガスマスクを被ったロボットであったことを。
「………まさか」
俺は……ローリエ・ベルベットも、その前世である木月桂一も、きらら漫画は大好きだ。
しかし、それ以前に、漫画そのものが大好きで。世界に広まっている漫画も一通り読んでいて。その世界観も、大好きで。
ふと思い出していた。きらら漫画にハマる前、ハマっていた漫画を。その一つに、少年の夢を全て詰め込んだような世界観の漫画があったことを。
とある事情で学問にのめり込み、漫画から離れていても、その世界で生きていた人々が、俺の心の支えであって。
それは…死んでも、生まれ変わっても、一切変わらなかった。
たとえ離れていっても、きらら漫画にハマって、ジャンプから離れても。
その時ハマった事に、偽りはないから。
「………」
言葉にならなかった。
何を言っても、軽薄になる気がして。
お礼や、その他諸々の気持ちは、行動で示さなければならない。
そんな気がした。
振り返った道には、もう赤い自動車はどこにも見えなかった。
◇◇◇◇◇
「やぁ、アルシーヴちゃん。今空いてる? 祈らせて欲しいんだけど」
「………珍しいな。お前が何かを祈るとは。何があったんだ?」
「うーー……ん…」
神殿に帰った俺は、そのまま真っ直ぐ祈りの大広間に向かった。
たまたま会ったアルシーヴちゃんになんて言おうか考えていたけれど…やっぱり、よくわからなくって。
自動車に会ったなんて、信じられるワケがない。というより、それを言うより先に、やるべきことがあった。
「感謝を…伝えないといけない気がした。行動で」
「感謝…誰に?」
「俺が……この世界を愛せるようになったきっかけを、くれた人」
アルシーヴちゃんの質問に答えるが早いか、俺は椅子に座って手を組み、瞳を閉じた。
しばらくすると…誰かが隣に座ったような布ズレの音がした。アルシーヴちゃんだろう。
「私も祈っても、いいか?」
「アルシーヴちゃん…」
「お前が感謝したい相手が誰かは分からないし、訊いても良いかも知らないが……それでも、お前がそこまでする人間は、きっと大事な人なのだろうから」
「……うん。そうだね」
深呼吸をひとつ。それから、アルシーヴちゃんに答えた。
「大丈夫だと思う」
あそことこことの世界観は、まったく違うと思うけど……それでも、2人の祈りは届くと思うから。
なんせ、あの人の世界にはあの世があった。願いがあった。願いを叶えられるものもあった。勇気があった。人の絆があった。だから。
俺の内に湧いた心を信じて、瞼の裏で祈り続けていた。
ずっと。
キャラクター紹介&解説
ローリエ・ベルベット
不思議な邂逅をした人物。前世を思い出し、あそこで愛された文化と、それを生み出した人に想いを馳せていた。
木月桂一
きらら漫画が好きになり、それが「優しい世界」の方針になったのは親友の影響ではあったが、それ以前から知った漫画もいくつかあった。その中にはしっかり「ドラゴンボール」もある。
アルシーヴ
ローリエの祈りの意図を完全に汲み取れたわけではない。しかし、ローリエの必死さを前にして、自分も祈るべきだと思い行動に移した。
ガスマスクを被ったロボット
偉大なる漫画家。
訃報を聞いた時、言葉にならなかった。信じられなかったのだろう。仕事にも手が付けられなくなるくらいだった。
私は、ドラゴンボールZは再放送でブウ編を見ていた者だった。
難しい事が分からない子供だった当時、ミスター・サタンが嫌いだった。セルを倒した悟空の手柄を横取りし、人々に崇められていたから。
でも、ブウと仲良くなることを選んだ時に「どうしてそんなことをするんだろう?」と疑問がいっぱいで。でも犬が撃たれた時に快楽殺人者に怒ったサタンに共感した。
最後に悟空やベジータを信じなかった地球のみんなを説得した姿を見て、ホントにすごいと思った。
大人になった今では、悟空の次くらいに好きなキャラクターかもしれない。
あの漫画にはサタンに限らず、魅力的なキャラクターしかいないけど。
ドラゴンボールがあったから楽しかった。
ドラクエもそう。キャラクターデザインは鳥山さんしかいないというレベルで、馴染んでいた。お陰でドラクエ大好きになれたまである。
今までありがとうございました。