きららファンタジア 断たれた絆と蘇る理想郷 作:伝説の超三毛猫
冒頭から、いきなりリコリスの過去を捏造します。リアリストの過去捏造キャンペーン第一弾です。
“彼女は、自分だけは理解してあげると言いながら、はなから理解も共感もする気がない。そのくせ、『理解できない』『気に食わない』…そんな感情だけで相手を排斥しようとする姿は……究極の排斥主義者。紛うことなき、狂人だ”
……木月桂一によるリコリスの人物評
リアリスト幹部・真実の手が一、『左手』のリコリスは、とある街の郊外に広大な私有地を持った、貴族の生まれである。芸術の都に住まう芸術家たちのパトロンをする、交易で財を築いた貴族………ヒガン家。その長女であった。
なに不自由ない恵まれた環境に加え、どんなこともそつなくこなす万能の才とでもいうべき知能。その人生は、一点の陰日もないかのように思われた。
リコリスの両親は、娘の教育に熱心であった。貴族の出であり、家業を継いでもらうためにも、どこに出しても恥ずかしくない女性に仕立て上げるためだ。よってヒガン家では徹底した―――それこそ虐待同然の―――英才教育が施され、小さな少女を叩きのめした。両親や周囲の大きな期待は、幼いリコリスの心を少しずつ押し潰していったのである。
彼女は表向きでは両親に従ってはいたものの……時折、自分でもよく分からないほどの巨大な怒りの感情に襲われた。だがこれを必死に堪えて、なんとかやり過ごした。
そして。その渦巻く怒りの衝動は、彼女が14歳の頃………芸術の都立の神殿直属学院において、
学院生だったリコリスには苦手科目―――といっても、95点は下らない他教科の中で唯一80点以上が取れなかった科目だが―――があった。
聖典学である。両親や周囲から親切以上に期待という名の重荷を押し付けられ、怒りの衝動を我慢する日々に襲われていたリコリスにとって、聖典に出てくるクリエメイトの、優しさ及びその行動の意図がまったく理解出来なかったのだ。そのせいで、学院内の順位は2位~5位に甘んじており、両親からもプレッシャーを押し付けられていた。
ある日、放課後の教室で聖典学の復習をしていた時のこと。
たまたまそこに、ひとりの同級生がやってきたのだ。
『あら、ヒガンさん。こんな時間まで勉強? 熱心ね』
『…別に。これくらい普通でしょ?』
その同級生は、その学院で成績トップを誇る優等生であった。明るくて態度も丁寧でおおよそ誰からも好かれる少女であったが、リコリスはその少女を内心目の敵にしていた。彼女のせいで1位になれなかったし、両親にうるさく言われる要因でもあったからだ。
『ん…これ、聖典学? なんでこんなものを…』
『っ!!』
『これ、簡単なものなのにねー。これ復習してたの?』
無遠慮にテキストを覗き込んでそう言う同級生に、これまで抑えていたものが溢れて暴れ出す。
『ヒガンさんは考えすぎるきらいがあるからなー。
あんまり考えなくっても、こういう問題は解けるよ』
『…は?』
『逆に私、引っかけ問題とか弱くて、たまにつっかかっちゃうからさー。』
『なにそれ。なにそれなにそれなにそれ………』
『そういう問題とかを聞きたいからさ、良ければ、今度から一緒に勉強しても―――』
『なんだそれはと言っているのよッ!!!』
ドグオオォッ!!
気が付けば、リコリスはその同級生の頭を、たまたま手元にあった辞書でブン殴っていた。
『あんたはいつも! いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもそうやってッ!!!
アタシを見下してるのか!? 自分が上だって言いたいのかッ!!? 舐め腐るんじゃあないわよこのビチクソがァァァァーーーーーーーーーーッ!!!!!』
当たり前だが、その同級生に執拗に辞書を振り下ろし、夕暮れの教室を返り血に染めた張本人たるリコリスは、あっという間に逮捕された。
両親はリコリスを金の力で無罪にした………が、その一方で娘を汚らわしいもののように扱い、家から勘当した。
天涯孤独となったリコリスは、万引きや恐喝で食いつなぐようになったのだが、皮肉なことに、その生き方こそ、リコリスの磨かれた知性や獰猛な怒りを最大限に発揮していったのであった。そして、この時点で、怒りの根源は―――聖典からのものだと、自覚するようになっていったのだ。……本当の怒りの出処は兎も角として。
『アタシがこんな目に遭ったのは……聖典があるからよッ!
あんな
いつか復讐してやる……しょうもない紙クズのために、私をコケにした連中をッ!!!』
―――そうして、リコリスは我慢をやめた。
その頃であった。リコリスにとって、自分がテロリストに堕ちるきっかけとなった出会いがあったのは。
◆◇◆◇◆
やがて、妹分のヒナゲシや恐るべき野望を秘めた上司・ハイプリスと出会って、“真実の手”となったリコリスは現在、きらら達に秘匿したアジトの中にいた。きらら達と接触したものの、即座に排除は困難と考え、聖典の破壊を優先したのだ。きらら達を撒いた後で奇妙な猫のような追手もいたが、そんなものは自慢のスピードと爆弾の併用であっという間に振り切ってやった。
「ねぇ、キサラギ。あんたまだ描き終わってないの?」
「ご、ごめんなさい、すぐに描きますから…」
「フン。あんたみたいなカスが描く絵なんて、誰も求めてない。
アタシしか認めてやれないんだから、それに相応しい仕事の早さってモンを持ちなさいよ!!」
最終的には世界ごと殺すつもりのクリエメイト・
キサラギは、怒声に委縮しながらも、せっせと黒い素猫を描き続ける。その間にも、キサラギの首にかけられた、ひび割れたハート型のネックレス……リアライフの発動体は、彼女から絶望のクリエを搾り取って、クリエタンクに送っていく。
「(こんなヤツのために、アタシたちが不幸になるなんて、世の中間違ってるわ)」
特に関係のない憎悪のこもった冷たい視線でキサラギを一瞥してから、リコリスは次の手を考える。
「(既に山口如月には『リアライフ』をかけてある。コイツにこの絵を描かせ続ければ、クリエメイト達…残りの4人が疲弊してくるのは絶対。奴らが動けなくなればこっちのものだわ。それまでは、ウツカイ共に迂闊な行動はさせないようにしなくっちゃあね………)」
聖典『GA』の汚染・破壊が進めば、ノダミキ・ナミコ・トモカネ・キョージュが動けなくなる。そこを奇襲する作戦だ。
その状況になった場合、戦闘できるであろう召喚士とボクサー姿の女闘士は、のべ5人と1匹を庇いながらの戦いを強いられる。その状況に持ち込めば、二人とも本来の力を発揮できずに倒れるだろう。リコリスはそう考えたのだ。
この作戦を実行する上で重要なのは、敵にアジトの位置を知られない事。
―――だが、これらの策はすべて上手くいけば、の話である。
きららもクリエメイト達も…そして、住良木うつつも。タイキックも。そう簡単にやられるタマではないことを、彼女は知らない。
ましてや………彼女自身が既に、罠のド真ん中にかけられた後だという事実にも、まだ気づかない。
◇◆◇◆◇
……ウツカイ達を倒し回ることしばらく。
リコリスを追っていた機械のネコが、物陰からランプの元に戻ってきた。
「あ、戻ってきた!」
「どうでしたか、機械のネコちゃん!
リコリスの基地は見つかりましたか!?」
『ニャー…』
ネコから板状の通信機に戻ったそれをランプが拾って、中のデータを確認していく………
「………これは」
「なになに? どうだった?」
………けど、中身を確認したランプの顔色がなんだか良くない…
私も気になって覗いてみる。すると、端末にはしばらくリコリスの背が見えたものの、突然爆発したかと思えば煙で姿が見えなくなる様子………つまり、振り切られた様子が映っていた。
「そんな…」
「あ、あのネコに攻撃するなんて!」
「損傷こそないみたいだが……撒かれてしまったみたいだな…」
躊躇いなく機械のネコを攻撃するなんて、だいぶ凶暴な相手みたい。でも、ただ凶暴なだけじゃなくって、こちらに情報を与えないために攻撃したんじゃないかな。それにしたって、爆発するナイフを数本も投げてくるなんて、追手から逃げるための撹乱にしてはやりすぎな気もするけど…。
「ど、どうしましょう……唯一の頼みの綱だったのに…!」
「とうとう手がかりがなくなったな……」
「しかも。ウツカイの気配がほとんどしなくなってきたぞ……」
「? それは良い事なんじゃないの?」
「違うぞ、マッチ。
キョージュの言う事が正しいのならば…ウツカイを倒して情報を得ることができなくなる…!」
「それはマズいですよ! 手がかりがないと…キサラギ様を助けられないし、皆様が破壊されてしまいます!!」
冷静になればなるほど、まずい状況だと分かってしまう。
どうやら、相手は私達に追わせる気はないみたいだ。私達は急いでキサラギさんを見つけないといけない事に気がついて、籠城作戦に出たって事なのかな。
「……こうなっては仕方ありません。ローリエ先生に協力を仰ぐしかありませんね」
「そうだね。また、頼ってしまうけど…」
ランプがローリエさんに連絡を取り始め、マッチもそれに同意した。電話をかけた―――その時。
うつつの表情が、なんか変わった。
「い……今! 声が聞こえた!」
「「「「「「!!!?」」」」」」
私は、何も聞こえなかった。
ランプもマッチもタイキックさんも…他の全員が、驚いた様子だ。まるで、私と同じように、何も聞こえなかったかのように。
「…僕には聞こえなかったけど」
「私にも…」
「ッ…都合が良いのは分かってる! けどほんとに聞こえたの……ハイプリス様って言うさっきの女の声が! お願い……信じて!」
「うつつさん……」
「こんなどうしようもない陰キャの私の好みも、その、否定しなかった、もん。ナミコ達は………。
ち、力になりたいって、思っちゃうじゃん……ただの気の迷いでもさぁ…!」
うつつ……そういうふうに考えてくれていたんだね。
急にどうしたのかなって思ったけど、根は良い子みたいだ。
自分にものすごい自信がないみたいだけど、それでも、認めてくれる人を大事にしようとしているのが伝わるよ。
「そういうことなら、信じるよ」
「き、きらら!!!!?」
「なんでうつつがイチバン驚いてるのさ……」
「だ、だって信じてくれると思ってなかったから…」
大丈夫だよ、そこまで疑うわけないじゃん。だって、友達なんだよ?
こんなことを言ったら、また「ようきゃこわいー」とか言って照れるんだろうけど。
でも、今この場でうつつを本気で疑っている人はいないよ。
「どっちから聞こえたの!?」
「え、えっと………こっち!こっちから!」
ミキさんがうつつにどっちに行くべきかを尋ねる。
私達は、うつつが迷いなく向かった方向へ、ついていくように走っていくしかない。
それが今の、私達に残された手がかりなのだから。
「きらら。うつつの声が聞こえた勘だが……確実に何かあるな」
「そ、そうなんですか!?」
「あぁ。そんな気がする」
「………」
…あの、タイキックさん。
「確実に」と「そんな気がする」って矛盾すると思うんですけど、気のせいですか?
◇◆◇◆◇
きららちゃんからの
「おう、俺だ! どうした?」
『あ、ローリエさん。今、リアリストの基地が見つからなさそうで見つかりそうなんです!』
「…何言ってんの?」
通話を始めるなり、きららちゃんが変なコトを言い出したので詳しい状況の説明を求めた。
きららちゃん曰く。芸術の都で『オーダー』が行われ、『GA』の聖典の
「リコリス……もし、俺の予想通りなら、同一人物だな…」
『知ってるんですか?』
「部下?が持っている写真にあった。ちょっとショッキングだけど、データ送るぞ」
マランドが撮ったリコリスの写真の中で、最も血が映っていないもの――子供を殺ってる写真は流石に見せられない。それでもまぁ血塗れだが――の写真を、注意喚起してから転送する。通信機越しに、全員の息を飲む音と悲鳴が聞こえた。
『……ま、間違いありません。私達が会ったのは、この写真の人です…』
「ゴメンな、えぐい画像送っちゃって」
『い、いえ…』
「だとすると、今うつつが向かっている場所にあると思われる地点のアジトには、多分コイツがいるんだろう」
今のクリエメイトの様子は、ギリギリのサインは出てないが、それでもピンチに変わりはない。
うつつがハイプリスの声が聞こえたとか言って先導しているらしく、今移動しているようだ。
だが……きららちゃんがこの報告をしてくれたおかげで、思いついた。キサラギを間違いなく救う方法を。そして―――リアリストを更に追い詰める作戦を。
「きららちゃん。悪いが俺はそっちに行けない………が、代わりの人間を送り込む。遺跡の街の時みたいに、君達の目の前に送り込むからな。
凄腕の傭兵だから、まず戦えないなんてことはないはずだ」
『は、はい…』
「あと20分………イヤ、10分待ってくれ。助っ人は即座に送り込めるが、アジトからリコリスを引き離しておきたい。その仕込みの時間が欲しい」
『え! で、できるんですか? 相手はキサラギさんを奪い返されないようにしている筈………』
「大丈夫。こっちには極上の釣り餌がある。
きららちゃんとの通話を切った後、俺はシュールさんとロシンを呼び出した。
2人にきららちゃんからの連絡を伝えた後、やりたいことを伝える。
「…確かに、ローリエ君の情報の通りなら、作戦が上手くいく可能性はあるわ」
「でも、どうすんだよ。囮がお粗末だと、ヤツら、食いつかないと思うぞ?」
シュールさんは、成功の可能性はあると踏んでくれた。その上で、ロシンは
でも、心配はいらない。何故なら……俺には、そこら辺の
「頼んだぞ、ロシン……きららちゃん達の力になってやってくれ」
「作戦を伝えるだけって…良いのか? 戦いになったら…」
「きららちゃんもタイキックさんも強い。いざって時はフォローして欲しいが、それ以外だったら大丈夫だ」
「そっか……」
ロシンを含めた傭兵団の方々から了承を得たところで、俺は再び連絡を取った。
アリサも連れていきたいしその予定だが、他に協力者が必要だからな。
「あ、もしもしコリアンダー? 久しぶりに悪者とっ捕まえに行こうぜー」
『その急な上に意味不な誘いはなんなんだッ!!!?』
相手は、コリアンダー。
俺のかつての同級生にして、知る人ぞ知る俺の相棒。
ソイツは、久しぶりのツッコミをかましたと思えば、「ちょっと待ってろ」と通話を切り。数分後には、転移魔法で俺の前に現れた。
不機嫌そうな、ちょっと疲れたような顔で「今度は何を考えてるんだ」と言ってきたので、しっかり説明するとしよう。
「今から、“真実の手”リコリスを捕まえに行く。その為には、お前の力が必要だ」
「真実の……あぁ、ヒナゲシの仲間か。でも、どうやって? ヒナゲシを囮に使うとか?」
「そのまさかだ。本物の脱走の写真をバラ撒いて、リコリスを釣るんだよ」
「お前………ホントに飽きさせないというか、メチャクチャだなぁ!? なに企んでんだ!!」
失礼な。俺はしっかりテロリストの殲滅を大真面目に企んでるわ。
別に悪い事じゃあなし、良いだろう? そう言ったのだが、ブン殴られたし怒られた。何故だ。
◇◆◇◆◇
―――きらら達一行が芸術の都でリアリストのアジトに近づいている間。
都中には、次の速報が知れ渡る事になった。
『真実の手・“弓手”のヒナゲシ、脱走! 芸術の都付近に潜伏中の情報アリ』
ご丁寧に盗撮のような写真が撮られたそれは、芸術の都周辺で、激震を巻き起こすことになる。
キャラクター紹介&解説
きらら
ランプの機械ネコが空振りになったことから手詰まりになっていた捜査において、うつつの突然芽生えた力を信じたお人好し公式主人公。その後ローリエに繋げた電話でリコリスと接敵したことを話す。これが、ローリエの次の策のヒントとなった。
住良木うつつ
原作では2章に発芽した「ハイプリスと繋がる能力」が、ここで初めて発動。リコリスとハイプリスの会話をキャッチして、きらら達の道を切り拓くきっかけとなった。
リコリス・ヒガン
いまだ見つからないグズとクリエメイトに怒りを募らせる爆乳少女。彼女の過去については、「親の教育的虐待によって、巨大な怒りを覚えるようになった」という設定を採用。過去の捏造にあたって、『ジョジョの奇妙な冒険 5部』のパンナコッタ・フーゴの過去を参考にしている。フーゴとの違いは、「自分が不幸だと思っている」ことと、「怒りを一切我慢しなくなった」事である。
ローリエ
リコリスを、しいてはリアリストの信用を地に堕とすべく暗躍していた拙作主人公。きららからの報告を受け、仕上げである作戦が完成し、実行に移すことに決めた。その際に、相棒や助手を引っ張り出している。
コリアンダー
拙作では影の薄い空気になりつつあったが、策を思いついたローリエのよって表舞台に引っ張り出された男。眼鏡をかけた男で、ローリエとは違い生真面目で常識的、かつ女が苦手だという性格をしている。戦うことも一応は可能であるが、本領は力押しの戦闘ではなく、相手を惑わせる戦法の使い手。
△▼△▼△▼
ローリエ「すまんなコリアンダー。急に呼んじゃって」
コリアンダー「まったくだ。しかもなんだ、テロリストの幹部と戦うってのか? 俺になんとかできそうなヤツには思えないんだけど」
ローリエ「大丈夫。俺がいるし…何より、お前は自分で思ってるより弱かねーよ!」
次回『Lに気を付けろ/
コリアンダー「次回もお楽しみに。」
▲▽▲▽▲▽
今回みたいなリアリストの過去回欲しいですか?
-
欲しい。リコリスの過去すごすぎ。
-
欲しい。解釈違いではあるが。
-
欲しいけど、次からは手短にね
-
別にいらん