きららファンタジア 断たれた絆と蘇る理想郷   作:伝説の超三毛猫

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ハイプリスとエニシダとサンストーンのプレイアブル化だって!?何が起こるんだ…? 改心シナリオとかだったらヤバいぞ(十中八九改心シナリオっぽいけどなぁ)…私、敵のやむを得ない事情とか知っちゃったらあっさり情に流されるタイプだから、この物語の展開的に同情心が湧いてしまって、あんな展開が作れなくなるかもしれない……!!
今回のサブタイの元ネタは「GA芸術科アートデザインクラス」のOP「お先にシルブプレ」からです。


“ロシン君の問いは…YESともNOとも言えなかった。だって私は、世界の為に女神様を封印した人も、自分の為だけに世界を焼き尽くそうとした人も知っているから。”
 ……きららの独白

2022/11/21:技名の表記を一部変更しました。


第31話:お先にシルブプレ

「……はっ!?」

 

 

 リコリスは、気が付けば辺境の大神殿にいることにまだ心の整理ができていなかった。さっきまで死闘を繰り広げていたのに帰還していたとか、控えめに言ってもポルナレフ状態になる事間違いない。

 そんなリコリスに、声をかけてくる存在がいた。

 

「大丈夫かい、リコリス」

 

「ハイプリス様!? 一体これは…」

 

「救難信号が出たからすぐにレスキューしたんだ。ヒナゲシの一件以降、真実の手全員に密かにつけておいた魔法ビーコンなんだけどね…」

 

「………」

 

「ヒナゲシ奪還の目処がまだ立ってない以上、また戦力を失うワケにはいかない。どういう状況か知らないけど、勝手ながら回収させてもらったよ」

 

「ありがとう、ございます…」

 

「さて、そこで大人しくしていてくれ。傷の治療を始めるよ」

 

 

 ハイプリスは、リコリスの姿からして、きらら達か神殿の勢力に手酷くやられた事をなんとなく察していたが、彼女の名誉のために気付かないフリをして回復魔法をかけ始める。

 だが、リコリスには気がかりがあった。芸術の都に置いてきた山口如月のことだ。

 

 

「ハイプリス様………アタシ、すぐに芸術の都に戻らねばなりません」

 

「………何故だい? 今の君はひどく消耗している。世辞にも万全とは言えないな」

 

「…まだ、戦いが終わっていないからです。このまま撤退して、何もせずに山口如月を取り戻されたら、アタシは貴方に顔向けできません」

 

「そうは言うがね……今、全力で回復魔法をかけても、決して全快にはならないよ?

 それに……他の真実の手は全員出払っていて君を手伝えそうにない。無論私も暇ではない。となれば…」

 

 ハイプリスの判断は間違いではない。

 不利を悟ったら即座に撤退することは何も恥ではないどころか、非常に合理的だ。リコリスが「自分が罠にかかった上に八賢者の一人&顔も知らない雑魚に良いように打ちのめされた」と知られる事を恥じて状況を詳しくハイプリスに言わなかったのもあり、ハイプリスは手を引く決断に傾いていた。

 しかし、このままでは終われない、とリコリスは言う。

 

「少し回復すれば、必ず召喚士と『GA』のクリエメイトを仕留められます。

 奴らは、芸術の都のアジトの存在に勘づいていません。基地は巧妙に隠してあるのはご存じの筈…!」

 

「…そうだね。確かに、自力であそこを探し出すのは至難か」

 

 リコリスの言い分には、証拠がない。

 基地の場所がバレない云々も、彼女らの主観でしかない。

 ヒナゲシが脱走した号外も、罠だと知った今となっては話せない。

 だがハイプリスは、そんなリコリスの主張を聞き、再出陣を許可した。ただし書きをつけて。

 

 

「そういう事なら、芸術の都へ戻る事を許可する。

 ただし、これ以上“真実の手”が失われるのは避けたい……だから、せめてあと15…いや、10分は待ってくれ。全力で回復する。

 それと―――」

 

「これは?」

 

「携帯用の緊急転移陣だ。ヒナゲシの件の反省も踏まえて、ロベリアと共同開発したものだよ。危なくなったら躊躇いなく使ってほしい。これが、今の君を送り出す条件だ。これ以上は一歩も譲れないよ」

 

「…わかりました」

 

 

 本当はいま直ぐ行きたいのだが、それではハイプリスの怒りに触れるかもしれない。

 その感情が、リコリスに条件を守らせた。暫くの間、リコリスはハイプリスの回復魔法を受けるだけの置物と化す。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 うつつの先導に従って街中を駆けた私達は、細々とした狭い建物がずらーって並ぶ、都の端っこの方の裏通りにいた。

 急にうつつが「声が聞こえた」って言って躊躇わずに走っていくから、私達はそれを追いかけていったけど、ここまで来るなんてね……

 

 

「ねぇ…ホントに、良かったの?」

 

「なにが?」

 

「わ…私なんかを、信じちゃって…」

 

 

 唐突に、うつつが口を開いた。

 さっきまでのとび出していった姿とは打って変わって、いつも通りの自信のない姿に戻ってしまっている。

 声を聞いたのは本当みたいだから、私達を疑わなくっても良いのに。

 

 

「うつつ」

 

「タイキック?」

 

「不安なのか?」

 

「……………………うん。」

 

「ならば私が不安を振り払う魔法の言葉を教えてやろう」

 

「…どうせ『そんな気がする』とかでしょ?」

 

「なにッ!!!? 何故分かった!!?」

 

「イヤあんたいつも言ってるじゃんソレ」

 

 

 あはは。タイキックさんがうつつを励まそうとしたけれど、うつつが『魔法の言葉』を先に言い当てちゃたことで、タイキックさんも面食らっている。

 確かに、タイキックさんってなんだか、『~な気がする』って良く言いますもんね。

 でも、さっきまでのうつつの不安そうな、怯えた様子がいつの間にかなくなっていたことについては、流石タイキックさんだなぁって思いますよ。

 私もうつつに元気を出してもらおうと、声をかけようとした―――その時。

 

 

「おい。あんたらがきららって召喚士で合っているか?」

 

「「「「「!!!!」」」」」

 

 

 知らない声。

 全員で振り返って……その正体に驚いた。

 何故なら声の主は…ランプと同じくらいの、男の子だったからだ。

 

 

「あなたは…?」

 

「ユミーネ教直属傭兵団の、ロシンだ。

 ローリエさんから聞いていないか? 助っ人を送るって話を」

 

「ってことは……えぇぇぇーー!

 こんな、ランプちゃんと変わらないくらいの子が、凄腕の傭兵…?」

 

 

 オレンジの光を反射する髪に、シュガーみたいな耳。緑色の目に、額に埋め込まれてる宝石。

 傭兵というより、本で見た国の軍人さんが着るような軍服を着ていて、背丈はランプやシュガーよりちょっと高いなってくらい。でも顔つきが幼くって、ミキさんの言う通り、ランプの同級生って言ってもおかしくないくらいの子だ。ローリエさんからは「凄腕」って聞いてたから、もっと年上の人が来るものだと思っていた。

 

 

「えぇぇ…大丈夫なんですか、こんなので?」

 

「こらっ、失礼だよ、ランプ!」

 

「…そういうお前は戦えんのか?」

 

「うっ……」

 

「はぁ…それで文句だけ言うのか? 随分偉そうなヤツなんだな」

 

「ぐ…」

 

「こればっかりはランプが悪いよ、謝りな。

 …ロシンだっけ。せっかく来て貰ったのに済まないね」

 

 

 マッチが取りなしてくれたからトラブルにはならなかったものの、ランプの不安も分かる気がする。

 まぁ…ランプの言い方が、良くなかっただけかもしれないけどね。

 

 

「ローリエさんからは凄腕って聞いてます。信頼しても良いんですよね?」

 

「仕事ですから。作戦の伝達と緊急時のフォローを頼まれてますので、そこんとこよろしく」

 

「はい。あの、作戦って?」

 

「アジトからリコリスをおびき出して、暫く留守にさせる事を目的にした作戦だ。

 順を追って話すから、ちょっと全員集まって聞いてくれ」

 

 

 ロシン君は、私がクリエメイトの皆さんやうつつやタイキックさんを集めて、それが大体終わったタイミングで話を始めた。

 ローリエさんの作戦。それは、リコリスのいる芸術の都一帯に“ある情報”をばらまくことで、リコリスを引きずり出し、そうすることで留守になった隙に私達がアジトに入り込み、キサラギさんを救出する手筈になってるんですって。

 

 

「それで、リコリスを釣る『情報』って何ですか?」

 

「これだよ」

 

「新聞の号外? えーと…えッ!!!!?」

 

「な、なんだ!? そこに何が書いてあるんだ、ランプ!」

 

 ロシン君からランプに手渡された新聞の号外とやらを私も脇から覗き込んでみる。

 すると…そこには、目を疑うレベルの、信じられない事が書かれていた。

 

リアリスト“真実の手”ヒナゲシ、脱走! 行き先は芸術の都か

 

「こ、これ……ロシン君、本当なんですか!!!」

 

「先生……まさか、リコリスをおびき出す為だけにヒナゲシを逃がしたんですか!!?」

 

「ヒナゲシ…って確か、私達を狙うテロリストだったよな」

 

「確かに、新たな犯罪者を捕まえるために犯罪者を囮にするとは…」

 

「我々の世界では考えられんな」

 

「落ち着け。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「「「「「「え?」」」」」」

 

 

 情報が…追加される?

 私達やクリエメイトの皆さんが各々信じられないとリアクションをした中で、ロシン君が気になる事を言ったのだ。

 今の言い方だと、まるで後から情報が入るのが分かっている、みたいな……

 

 

「皆がキサラギさんを救出した後で、都に最新情報が……『ヒナゲシは脱走した。()()()()1()()()()()()()()()()()()()。その間の怪我人はナシ』ってニュースが送られる手筈になってる」

 

「それは……良いの?」

 

「ナミコさん?」

 

「ニュースの偽造……とまではいかなくても、そんな後出しジャンケンみたいな真似……していいものなの? この世界って……」

 

「確かに………後が大変そう…」

 

 

 ナミコさんが懸念し、うつつがそれに賛成してまた顔が暗くなった。

 そう。私達の世界でも、新聞や雑誌のニュースがうそをついたり、間違った情報を流すのは良くないことだ。その認識は、ナミコさん達の世界でもおんなじみたいだ。

 そんなナミコさんとうつつの懸念に、ロシン君はメモを取り出しながらこう答えた。

 

 

「それについては、ローリエさんから答えを預かってる。えーと………

 『俺達がやっているのは、速報だ。誤報でもフェイクニュースでもない。心配することはない』………だってよ」

 

「でも!」

 

「ナミコさん、だったか。事は一刻を争うんじゃあないのか?

 アジトはもう見つけているんだろう? 早くしないと、リコリスと入れ違うタイミングを見失うぞ」

 

「っ…………」

 

 

 ロシン君の言う事にも一理ある。私達は急がないといけない立場だ。

 でも…そんな、予め入ってくるのが分かっているような情報を速報って言うのかな?

 

 

「ロシン君、これだけ答えて。

 今、ヒナゲシはどうなってるの? 捕まってるの? 逃げられてるの?」

 

「脱走したみたいだが、捕まったみたいだぜ。ローリエさんはそう言ってた」

 

「嘘はついてないってことか…」

 

 

 嘘じゃないけど、こう……何て言えば良いのかな。

 騙す? 勘違いさせる? うーん。難しいし、納得いかない。それは、浮かない顔をしているナミコさんや、ナミコさんの懸念で作戦の暗部に気付いたみんなも同じなのかな。

 

 

「…ねぇ。早く行こうよぉ…」

 

「うつつさん?」

 

「その…ロシン?の言う通りさぁ……早くしないと、ナミコ達が危ないんじゃないの?」

 

「でも、ローリエ先生は!」

 

「うつつの言う通りだ、ランプ。細かい事は、作戦が全部終わってから問い詰めればいい」

 

「………」

 

 

 でも、今はそれどころじゃあない。

 リアライフでナミコさん達が侵されている可能性が高い以上、早くリアライフの発動体とクリエタンクを破壊しなければ。その為には、うつつに従ってアジトに行かないといけない。

 タイキックさんの言う通り、ローリエさんに色々尋ねるのは後ででもできるんだ。だったら……今はクリエメイトを元の世界に戻すことに集中しないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 うつつさんが導いた先には、リアリストのアジトがやはりあった。

 というのも、ちょうど基地に辿り着いた時に、物陰から扉から出てくるリコリスを目撃したからだ。

 彼女がどこかへ走り去っていき、即座に突入しようとするランプとミキさんを、「今入ったら戻られる可能性がある」と押しとどめるロシン君を横目に、私は『コール』を使用。前回の『オーダー』で呼ばれた、桃さんとミカンさん、そしてシャミ子さんに来ていただいて、状況の確認を行った。

 

 そして、数分か時間が経った後、私達は基地への突入を強行。

 

「な!? 何だおまえら……ぐあっ!

 

「敵襲!敵……ぎゃっ!

 

「ウツカイだ! ウツカイを呼べラミーッ!?!?!?

 

 流石に全く敵の見張りがいないわけではなかったけど、誰もかれもが、リコリスやウツカイ程じゃない。

 この人たちは、きっとリアリストに騙された人達なんだろう。立ちはだかる見張りを全員私や『コール』したクリエメイト、そしてタイキックさんの一撃で気絶させる。

 そして、勢い止まらずに走っていったその奥………寂れた地下アトリエみたいな部屋に、その人はいた。

 虚ろな目をして、一心不乱に絵を……都に置かれていた、真っ黒で寂しそうな絵を描き続けている、丸眼鏡の女の子。その人こそ…

 

 

「キサラギ様!」

 

「ごめんなさい……納期ですか? まだ、作品が終わってなくて…」

 

 

 納期が間に合わないと言って謝り続けているキサラギさんは、私達がまるで認識できないような、自罰的な態度になっている。

 早く何とかしなければと思ったその時に、うつつがすみっこに落ちてた紙片をかき集めて渡してくれた。

 それは、おそらくリコリスに破り捨てられたのだろう、素猫の絵。それを再生したことでパスが繋がったような、一瞬の感覚を覚えた私は、すぐさま「パスの再生能力」を使用。こうして、キサラギさんと他の皆さんとの絆は、記憶は、元に戻ったのだった。

 

 

「しっかし、許せねぇよな。如月相手にこんなことしやがって」

 

「あ、あの、えっと…確かに、あいつらのしたことって許せないけど………他人にここまでできるほど悲しい思い、してきたんじゃん?………あの絵だって、悲しい思いがいっぱい詰まってたんだし…」

 

「だからって、如月にここまでひどいことをしていいワケないだろ!」

 

「あう……それは、そうなんだけどぉ………」

 

「ストップ、トモカネ。落ち着いて。

 うつつ、知ること自体は悪い事じゃないと思うよ」

 

「そうだな。全ては『知る』ことから始まるのだからな」

 

「むぅ。確かに、奴らの『狙い』がちょっとでも分かれば、こちらから打って出れるんだが」

 

 

 トモカネさんの言う通り、リコリスのしてきたことは許せないけど……うつつさんの言う通り、理由があるのかもしれない。キョージュさんも「全ては知ることから始まる」って言ってますし。タイキックさんは……論点が、ズレてると思いますけど。

 現に、アルシーヴさんがソラ様を封印したのにも理由があった。それは、やむにやまれぬ事情だったし、それしか選択肢がなかったからだけど。

 でも私は知っている。

 

『そんな…ことで、ユニ様やソラ様や、ソウマさんを……? 全部…全部、自分の為じゃないですか!』

『当たり前だ!! 人は誰しも、自分のために生きる! 私の願いは自由に生きること!ゆえにあらゆる手を尽くして世界を滅ぼす!! 偽善を掲げる貴様ら異常者とは違うのだ!』

 

 ―――他人の思いなんか関係ない、自分さえ良ければそれでいい………そう言って悪い事を働く人もいることを。

 そう言う人は、私は許せないと思う。でも、叶うなら、理由があって、本当は戦わなくても良い……そうだと良いんだけどな。

 

 

「なぁ、召喚士」

 

「きららで良いよ、ロシン君」

 

「じゃあ、きららさん…なんで、相手の事を知る必要があるんだ?」

 

「え?」

 

「多かれ少なかれ、相手に事情があるのは当たり前だろ? なら知らない方が余計な事を考えずに済むじゃあないか」

 

「そんなこと……!」

 

 ない、って言えなかった。

 何故なら…ロシン君の言い分に、間違いがないと思ってしまったから。

 …あ、全部が全部間違いないって思ってる訳じゃないですよ!? ただ、相手の事情を知った時に起こった事を、ちょっと思い出しちゃっただけで。

 アルシーヴの行動が、実はソラ様の為だったと知った時は、ランプがショックのあまり、声を出せなくなった時があった。

 ビブリオやドリアーテの行動が、ネジ曲がった欲望の為だけのものだと知った時は、本当に怒りを覚えて…全身が沸騰するくらいに熱くなった。アレは…嫌な感覚だ。

 特にランプの声が出なくなった時は肝が冷えたな。もし、リアリストの行動の事情を知った時に、ランプやマッチや、うつつやタイキックさんが傷つくかもしれない。そうなった場合、今度は後悔してしまうかもしれない………

 

 そこまで考えて、首をぶんぶんと振った。

 ダメダメ! まだ、如月さん達を元の世界に帰せてない!

 そういう考え事は、ローリエさんの件と同じように、ここの人々とキサラギさん達を救った後にしなくっちゃ……!

 

 

「? どうしたんだ?」

 

「何でもない。その辺の事は、後で話そう?

 今は、キサラギさん達を帰すことに専念しなくっちゃ」

 

「……それもそうだな」

 

 

 ロシン君は、私がまともな返事が出来ていないにも関わらず、本題への話題逸らしに乗ってくれた。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 ロシン君との会話の後。

 しらみつぶしにアジト内を探して、遂にクリエタンクを見つけた。

 すぐにそれを壊すと、ため込まれていた真っ黒なクリエが、元の色を取り戻しながらキサラギさん達に降りかかるのが分かる。

 

 

「あれ、すぐに帰れるんじゃないの?」

 

「クリエロックが壊れても、しばらくこっちに残るんだ。

 まぁ、じきに帰れるから心配しなくて良いよ」

 

 

 誰の邪魔もなく、クリエロックであるタンクを破壊出来て良かった。

 コレで後は、キサラギさん達が帰るのを見届けるだけだね。

 アジトの外に出れば、芸術の都から暗い雰囲気が取り除かれ―――

 

 

「―――ッ!!!」

 

「ぐっ!?」

 

 

 もう既に一度味わった感覚に身を任せ、背後に向かって魔力を込めた杖を振るう。

 振るった先には……やはりというか、どうして、というか。彼女がいた。「理解できないから」という理由だけで、聖典を……キサラギさん達を破壊しようとした、リアリスト。

 どうして、ここに。ローリエさんが足止めしているハズじゃあなかったの!?

 

 

「リコリス……!!」

 

「…クリエタンクまで破壊されたみたいね」

 

「今更なんの用なんですか!」

 

「もう間もなくキサラギ達は元の世界に帰る。無駄な抵抗はやめた方が賢明だ…!」

 

 

 どうして、この期に及んで襲い掛かってくるのか。

 リアライフの発動体と、クリエロックならもう壊した。クリエメイトの皆さんはもうすぐ元の世界に帰る。だから、これ以上戦う理由なんて―――

 

 

「えぇ、どうやら、もう時間がないみたいね。

 だから―――元の世界に帰る前に、そこのクリエメイトを皆殺しにしてやる!!」

 

「「「「「「「「!!!!?」」」」」」」」

 

 

 ゾッ、とした。

 どうしてここまで、と思っても声が出なかった。

 まさか……ここで皆さんの命を狙ってまで、聖典を破壊しようとするなんて!!

 

 

「ハァァァァァッ!!!」

 

「つっ……!!」

 

「落ち着け、ヤツをよく見ろ、きらら!」

 

「タイキックさん!?」

 

「確かにコイツ、ローリエの策を乗り越えてきたようだが………どうやら、ただでは済んでいないようだ! 現に―――最初より、動きが鈍いッ!」

 

「グゥゥゥゥッ!!!」

 

 

 ……そうだ。気圧されている場合じゃない!

 こういう時こそ、私がみんなを守らなきゃ!

 確かに、タイキックさんに言われて気付いたことだけど………今のリコリスはボロボロだし、息切れも激しい。身体もそこかしこがボロボロだ。まるで、何度も戦った直後みたいに。

 そのせいかリコリスは、タイキックさんの追撃をいなしきれずによろめいた。

 

「桃さん! ミカンさん! シャミ子さん!」

 

「フレッシュピーチ・ハートシャワー!」

 

「こおりの杖ー!」

 

 シャミ子さんの地を這うように迫った氷が、リコリスの足を拘束した。

 そこに、桃さんの必殺技・フレッシュピーチ・ハートシャワーが突き刺さった。

 リコリスが立っていた場所から、黒い土煙が上がる。

 

「『ラジアータ―――」

 

「!?」

 

「―――コマンド』ッ!!」

 

「うぅぅっ!!?」

 

「「きらら(さん)!!」」

 

 動けないハズのリコリスが、即座に私の目の前まで迫り、投げつけたナイフと両手のナイフで斬り裂こうとしてくる。

 この人……まさか、さっきの氷の束縛を、爆発するナイフで無理矢理突破したって言うの!?

 それに、もう戦えない程傷を負っているように見えるのに……ここまで、凶暴な攻撃を連続で放ってくるなんて。

 

 

「そこだァッ!!」

 

「あっ―――」

 

 

 リコリスがナイフを放つ。その狙いを見て、私は思い出した。

 この人の戦い方。狙おうとする人。それは―――戦えない人(クリエメイト)!!

 

「危ない!」

 

「皆!」

 

「ウツカイ共!」

 

「なッ…こいつ、どこにいたんだ!?」

 

 助けに行こうとするも、目の前のリコリスに阻まれた。

 タイキックさんも、ナイフの意味を理解したけど、リコリスの合図で出てきたウツカイ達に行き先を邪魔される。

 危ない! このままじゃあ、キサラギさん達に直撃する!

 もうすぐ帰れるのに! リアライフを解いたのに!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ストレミング剣殺法―――水ノ雫剣(アクアビット)!!」

 

「「「「「「「!!!!?」」」」」」」

 

 

 しかし、ナイフは全て弾かれた。

 密度が高く、雨みたいに襲っていたナイフは、水の波紋が複数現れたような魔法の幻覚?…に阻まれて、あらぬ方向へ全てが突き刺さる。

 ナイフが全て弾かれた時、私達の視界に映ったのは………剣を抜いた、ロシン君だった。

 まさか―――さっきのナイフの束を、ぜんぶ叩き斬ったの!? あの一瞬で!?

 

 

「見下げはてた連中と聞いてたが…ここまでやるか? 普通」

 

「このガキ…」

 

「させません!」

 

「うっぐぅ!!?」

 

 リコリスはムキになって、二発目のナイフの束を投げようとしたけど…その隙に、がら空きの身体に攻撃!

 冷静さを失っていたのか、リコリスはロシン君の守るクリエメイトに夢中で、目の前の私から攻撃される可能性が頭から抜けてたみたいだ。

 でも、追撃はコレだけじゃない!

 

「サンライズアロー!!」

 

「がっ………」

 

「満身創痍で戦場に来るものじゃないわ。魔法少女の忠告よ!」

 

「でかした、陽夏木ミカン!!」

 

 光の矢が、リコリスの左肩を貫く。

 その痛みに顔を歪めたリコリスの動きが止まった。

 それを見逃さず、タイキックさんが空へ跳躍する。そして、右足を突き出す……飛び蹴りの体勢だ。

 

「リコリス! 貴様は多くの人々の命を奪った!

 あまつさえキサラギ達も危険に晒した!

 その大罪……タイキックを以って味わうがいい!」

 

デデーン

リコリス、タイキックー!

 

「黙れえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!!!!」

 

 

 そのまま突撃するタイキックさんと、最後のナイフを投げて迎撃するリコリス。

 このままじゃあぶつかる―――そう思った、刹那。

 タイキックさんが消えた。

 

「はっ…!?」

 

「でやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!!!」

 

「がぁっ……!」

 

 いや、違う。一瞬でリコリスの背後に回ったんだ。まるで瞬間移動でもしたかのように。そしてそのまま、リコリスのおしりに、キックが直撃した。

 飛び蹴りの勢いに、弾き飛ばされたかのように宙を舞いゴロゴロと遠くに転がっていくリコリス。

 それに見向きもしないで、タイキックさんは、全身を使って着地した。

 

 

「これぞ―――『ムエタイキック・トム・ヤム・クー』……!

 人に恐怖を与え続けた、貴様に相応しいタイキックだ―――!」

 

「ぐああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!!」

 

ドカァァアアアアン!!!

 

 

「「「「ば、爆発したーーーーー!!!?」」」」

 

 

 ちょ、だ、大丈夫なんですか!?

 いくらリコリスが許せない事をたくさんしたリアリストだからって、これは…

 

 

「あ、あのタイキックさん! リコリスは……」

 

「安心しろ。死んではいない。死ぬほど痛い目を見てはいるがな」

 

「イヤ死んだようにしか見えないんですけどぉ………」

 

「気の所為だ」

 

「気のせいには見えません……」

 

 

 うつつやランプの言う通り、見た目と言うか勢い的にというか、やりすぎな気がしてならないけど……あ、ほら!あっちでリコリスがピクリとも動かないし!

 ま、まぁでも、タイキックさんが言うなら、手加減はしてくれてたのかな……???

 …とにかく! キサラギさん達は守る事ができました! これもタイキックさんや桃さん達『コール』に答えてくれたクリエメイト……あと、ロシン君のお陰ですね!

 

 

「ありがとう、ロシン君! すごく強いんだね!」

 

「ま、まぁ……仕事だしな」

 

「安心して帰ってくれキサラギ! 悪者はこの私が…タイキックしてやったからな!!!」

 

「「「「「いや、あれは絶対タイキックじゃないだろ(でしょ)!」」」」」

 

 

 5人揃ってタイキックさんにツッコミを入れた皆さんは、そのまま光に包まれて元の世界に帰っていきました。

 だから、というか。勝った直後だから誰も気付かなくて当然だったというか。

 動けないハズのリコリスが、いつの間にか消えてしまったことに、誰も気付きはしなかった。

 




キャラクター紹介&解説

きらら&ランプ&マッチ&住良木うつつ&タイキック
 なんだかんだでキサラギ達を元の世界に帰すことに成功した主人公一行。リコリスの執念に面食らったが、タイキックさんを筆頭に冷静に対応して追い返した。そして、タイキックさんの必殺技『ムエタイキック・トム・ヤム・クー』で撃破する。

山口如月&友兼&野田ミキ&野崎奈三子&大道雅
 無事元の世界に帰還したGAの未来ある芸術家たち。ただ、タイキックさんがド派手にやりすぎたせい(というより最後の最後までリコリスが襲い掛かってきたせい)でまともなさよならも言えず、最後の言葉が全員の総ツッコミになってしまった。今度はきららの『コール』で役に立ってくれるだろう。なお、トモカネはタイキックさんの必殺技で興奮している。あとノダミキも精神年齢が幼いから興奮してそう。

ともかね「うおおおおおおっ!ライダーキックだーー!ライダーじゃないけど!」
のだみき「すげーーーーーーっ!」
きさらぎ「……」
きょーじゅ「……」
なみこ「……」

リコリス
 自分の失敗をひた隠しにし、お気持ちを優先した結果、タイキックさんのタイキック(????)を派手に食らって見事にボロ負けした真実の左手。敗北後は流石に意識を手放したが、ひと段落したきらら達にも見つからなかった。自力で逃げ出せなかった以上、考えられる可能性は……。



GA 芸術科アートデザインクラス
 きゆ○きさ○こ女史によって2005~2015年ほどまで連載されていた、4コマ漫画。とある美術専攻クラス「GA」に所属する山口如月(キサラギ)、野田ミキ、友兼(トモカネ)、野崎奈三子(ナミコ)、大道雅(キョージュ)の5人の女子を中心に繰り広げられるコメディー。美術のマニアックな雑学を交えて織りなす日常は、どこか当たり前だけど新鮮な気持ちになれるという。



△▼△▼△▼
きらら「リコリスをなんとか撃退した私達。リコリスの行方が分からないけど……とにかく、ローリエさんと話したくなりました!」
うつつ「なんか、色々気にしてたっぽいもんねぇ………はぁ…またあのよく分からない陽キャに近づかなきゃならないのね………」
マッチ「大丈夫だよ、今回は電話みたいだし」
ロシン「なぁ、コイツ、なんなんだ?」
ランプ「これがうつつさんです。あんまり、イジメないであげてくださいね?」
ロシン「お、おう……」

次回『正・邪・葛・藤』
ランプ「次回もお楽しみに!」
▲▽▲▽▲▽


あとがき
 外伝でリアリストについて触れそうだけど、拙作ではもう既にリコリスの過去を捏造しちゃってるんで、そっちはこのままいきたいと思います。アンケートは前々話「Lに気を付けろ/シュルレアリスム」を見てから答えてくださいね。

次のキャラクターのうち、最も好きなのは?

  • アリサ
  • コリアンダー
  • シュール・ストレミング
  • シュナップ・ストレミング
  • ロシン・カンテラス
  • タイキックさん
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