きららファンタジア 断たれた絆と蘇る理想郷   作:伝説の超三毛猫

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 突然発表された、「きららファンタジア」サービス終了のお知らせ。
 仕事の休憩中にそれを見てしまった私は、それ以降の仕事に身が入りませんでした。
 それくらい大好きだったエトワリアの世界が、これ以上見続けられないのはすごく寂しいです。心に穴が開くとはこういう気分なのか、と思うくらいには。
 それくらいに人生の一部となったきららファンタジアに、心からの感謝を伝えたい。私はこれからも、きららファンタジアやきらら作品のファンでい続ける。
 ですので、拙作は絶対に完結させたいと思います。
 3部の更新がない分、「あの少女」のキャラ付けや思想は好き勝手捏造できそうですしね。
 とりあえず、まずは拙作2部4章だ。こっからの物語は波乱を呼ぶぞー。

 今回のサブタイは「HUNTER×HUNTER」風に決めました。


“年を取るということは、必ずしも衰えだけとは限らない。”
 ……木月桂一の独白

2022/12/11:あとがきにて、コッドの挿絵を追記しました。


第4章:うつつはひとりぼっち~戦場に咲き誇る、赤き華編~
第33話:オンシ×ノ×オンシ


 コッド先生は……俺やアルシーヴちゃん、ソラちゃんがまだ神殿に入ったばっかの神官だった頃に、担任を務めていた人だ。担当科目は……魔法工学。独学で拳銃を作った俺だが、魔法工学の理論や応用はこの人から教わったのだ。卒業までほぼ彼にお世話になったと言っても過言ではない。

 

 つまり―――この世界における、俺の大恩ある人なのだ。まぁ俺だけじゃなくてアルシーヴちゃんやソラちゃんにとっても大事な師なんだけどな。

 俺が神官としての教育を終えたと同時に年齢を理由に中央を離れ、水路の街の神殿に就いたって聞いていたけど………まさか、あっちからコンタクトを取ってくるとは思わなかった。

 

 その件をアルシーヴちゃんに伝えたところ、意外にも知っているといった風な様子でこう言ったのだ。

 

 

「実は…コッド先生からのヘルプは私の元にも届いていたのだ」

 

「アルシーヴちゃんのトコにも?」

 

「街の周辺で怪しい人物の目撃情報がある、とな。」

 

 

 怪しい人物の目撃情報、ねえ。

 今や八賢者となった俺や筆頭神官になったアルシーヴちゃんに伝えるくらいだ。おそらく、リアリスト関係だろうか?

 

 

「新聞のトップ記事の、芸術の都の件を見て、念の為だと仰っていたが…コッド先生のことだ、何か掴んでおられるのだろう」

 

「あの人だからありえそうなんだよな。それで、俺は先生直々の指名だから行くつもりなんだけど、神殿からは誰か送る予定なのか?」

 

「カルダモンが行く。傭兵団からは誰が行くのだ?」

 

「傭兵団はコッドさんから要請を受けて、ほぼ全メンバー行く予定だってよ。ほら、シュールさんとかシュナップさんとか」

 

「あぁ、お前が在学中に関わってた、あの傭兵夫妻か。成程、そういう事なら、戦力の不安はないか。カルダモン以外はまだ動けないからな………」

 

「なんかあったらまた連絡するよ」

 

 シュールさん達やカルダモンだけで対処できなかった場合はすぐに連絡することを約束し、俺は神殿を出た。

 

 

 

 

 水路の街への転送陣へ行くまでの途中。俺は、同行する予定のカルダモンと……なんとセサミ&ハッカちゃんとも合流した。セサミは兎も角、ハッカちゃんまで外に出るとは珍しい。

 ちょっと尋ねたところ、俺らとは別の任務で違う街に行くみたいだ。詳しくはハッカちゃんの件もあり、あまり言えないようだったけども。

 

「へぇー、ローリエも行くんだ。水路の街」

 

「珍しい組み合わせですね」

 

「そうか? 俺はコッド先生から連絡貰ったから行くようなもんだし、シュールさん達は既に現地入りしているから関係あるだけだぞ」

 

「…君、大神官コッドと傭兵シュール・ストレミングとどんな関係なんだい? 興味深いね」

 

「意外」

 

「んー、まぁ隠すことでもないし、話しても良いか」

 

 

 俺はカルダモンとセサミ、ハッカちゃんにコッド先生とシュールさん等の事をほぼ全て話した。

 

「コッド先生とは入学時に会ってな。卒業するまで魔法工学を教わっていた。ハイレベルな理論に付き合ってもくれたしな」

「恩師だったんだね」

「セサミとハッカちゃんは会ったことくらいはあるだろ?」

「ええ、まぁ」

「肯定。されどローリエ程の親交は無し」

 

 コッド先生との出会いから、魔法工学の研究について、そして神官時代の思い出も少々(魔法工学と聖典学で常に100点以上取ってたと言った時は引かれていた。何故だ)。そんなことを話したり。

 

「シュールさんとその旦那のシュナップさんとは賢者になる前からの付き合いでな。一緒に宝石獣(カーバンクル)の保護もしたっけな」

「待ってください、今宝石獣(カーバンクル)って言いました?」

「言ったけどどうかした?」

「サラッととんでもないことしてたね、ローリエ…」

宝石獣(カーバンクル)は希少。狙って保護は困難」

「なんなら知り合いにいるけど? 宝石獣(カーバンクル)

「「「!!?」」」

 

 シュールさんやシュナップさん、ついでにロシンについての思い出や現状、そして傭兵団を挙げての新聞社を作った事を話したり。

 

「エトワリアン・ニュース……!?

 それって、まさか…!」

「知ってるの?」

「これを見てください!」

「『芸術の都で大虐殺』……新聞?」

「おー、ド派手に載ってるな」

「これ、ローリエが撮ったの?」

「違うよ。シュールさんトコの傭兵が撮った写真(ヤツ)だ」

 

 そのエトワリアン・ニュース最新刊に載っていた、トップニュースについて詳しい事を、話せる範囲の裏話も交えて話した。

 ニュースの取材には「ユミーネ教」が大きく関わっている事、取材中に偶然傭兵の一人が芸術の都の襲撃を目撃してしまった事、写真を使う事になった経緯…子供の供養とテロリストの所業を伝える為の報道であったことなど………が、主な内容だ。これ以上詳しい事は流石に八賢者(どうりょう)相手に話していいものか判断しかねるため、話していない。

 ちなみにだけど、子供のことを話したら、セサミが「あとで子供を含めた犠牲者の供養をしたい」と言ってくれた。カルダモンとハッカちゃんもそれに賛同した。みんなイイ女過ぎて泣けてくる。

 

 

「それじゃ、あたし達はこっちだから」

 

「ええ、二人ともお気をつけて」

 

「ご武運を」

 

「おう。二人こそ怪我のないようにな。愛してるぜ」

 

「はいはい」

「……」

「相変わらずローリエだねー」

 

 

 俺とシュールさん、コッド先生のことをおおかた話したところで、転送陣のもとへ辿り着いたので、セサミとハッカちゃんと別れる。

 俺の言葉がさらっとスルーされたのが地味に辛かったが、シュールさんやコッド先生の元に行かなくては。

 すぐに陣を起動させて……おや?

 

 

「…ん?」

 

「…どうしたの、ローリエ? 早く行こう?」

 

 

 おかしい……何度操作しても、転送陣が動かない。

 故障……じゃないな。なんか妨害を受けてる。

 

 

「ハッキングだ……水路の街に、転送できなくなっている!」

 

「なんだって!?」

 

 

 一気にきな臭くなってきやがった。

 こうなると、あそこの神殿長やってるコッド先生や先に水路の街行ったシュールさんらの安否が心配だ。シュールさんとシュナップさんがいる限り万が一は起こってないだろうが……それでも、転送陣に細工されてるとなると、まったくの平穏無事とはいかなそうだな。

 とりあえず、不調の特定だ。十中八九何かされたんだろうが……

 

 

「えーと……あ、分かった。水路の街一帯に外からの魔法干渉を遮る結界が張られてるのか」

 

「まずいね…イチバン近い街に目的地を変更して―――」

 

「そのやり方でも、ハッキングの回避はできる。だが……直接転送陣(この機械)にウイルスブチ込まれてなきゃ、他にやりようはある」

 

 

 相手――リアリストと仮定しよう――が仕掛けてきたのは、向こうの受け手…つまり、水路の街側の転送陣のハッキングだ。

 電車で例えるなら、目的地最寄り駅を封鎖して、電車が入ってこれないようにしたようなもの。

 カルダモンが提案したのは、目的の駅のひとつ前で降りて、目的地までは歩こう、というものだ。

 だが………電車と違う点は、この転送陣……目的地をこちら側で設定できるということだ。つまり―――

 

 

「目的地を―――()()()()()()()1()0()0()()()()()()()()()()()()()

 

「しょ、正気かい!? 暴走するんじゃ……」

 

「俺が神殿で何教えてるか忘れたか? 大丈夫、暴走しないようにカバーはしてやる!」

 

 

 こんな、ルールの穴を突いたようなズルが通用する、ということだ!

 俺がこの世界で得た魔法工学の知識……それと、前世で齧ったPCの知識をもってすれば、これくらいチョロい事。しかも、言っちゃ悪いがエトワリアの法や機械・ハイテク知識は地球と比べてだいぶ遅れている。規制だらけの世界を知っている身からすれば、心配になる程にガバガバだ。だから、本職のハッカーじゃあなくても、書き換えができるのだ!

 

 

「よし、これでOK。結界の範囲外だから、普通に転送できるはずだ」

 

「ありがとう、ローリエ。手間が省けたよ。

 ところで………その技量はどこで身につけたの? コッド先生の元?」

 

「! ………あー、まぁその応用、ってところだ」

 

 

 カルダモンの質問は、すぐに誤魔化した。

 嘘は一切ついていない。俺のエトワリアの学問の知識は、コッド先生に教わったようなもんだ。けど、知識の基盤に、地球の知識が確実に存在するのが確かなだけだ。

 だから答えの内容は問題ない。ないんだけど……誤魔化す内容を考えるために、ほんの1秒…いや、0.5秒か? 返事が遅れたのはマズった。

 カルダモンは鋭い。調停官として世界を回っているから、相手との会話のテクニックを色々知ってそうで怖い。何なら、ヒナゲシを使った策についてアルシーヴちゃんとソラちゃんに訊かれた時、言ってたもんな。『カルダモンが、ヒナゲシを必要以上に煽る話し方を指摘したから気付いた』って。それを踏まえると、もう万丈構文は見抜かれてるとみて間違いないだろう。

 

 ……バレたらどうしよう。素直に話すか?「実は俺には前世の記憶があるんだー」って?

 …ないな。ないない。証拠がないから、頭の病気を疑われて終わりだ。

 

 

「……急ごう。コッド先生が心配だ」

 

「恩師だもんねぇ」

 

「それもあるけど。あの人今年で88だぞ? 信じられるか?」

 

「嘘!? そんなに!!?」

 

 

 これ以上追及されるのも嫌だったから、先を急ぐことにしよう。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 水路の街前100mに転送してから直接、歩いて街の中に入る。

 街は既に物々しい雰囲気となっており、「水路を使った交易が栄えた街」の見る影もない。

 現に、街に入ってすぐに聞きつけた喧騒の元へ行ってみると……そこには、迫りくるウツカイを適当なもので組み立てたバリケードで防ぎ、攻撃を加える神官たちがいた。

 

 カルダモンと軽く視線を交わし、戦いに参加してウツカイ共を蹴散らせば、バリケード側の神官たちや街の人々から、歓声が上がった。

 

 

「おぉ!助っ人だ!」

 

「八賢者だ! なんと頼もしい!」

 

「ありがとうございます、ローリエ様!カルダモン様!」

 

「おう、この街の現状について知りたいことがある。

 コッド先生……神殿長のコッドさんか傭兵団団長のシュール・ストレミングはいないか?」

 

 

 神官たちにそう問うと、案内されるがままに向かったのは、神殿ではなく4、5階建てのビルだった。

 その一番上の部屋のひとつまで導かれ、ドアを開くと、懐かしい顔がいた。

 白地に金糸が縫われた、高貴ながらも華美でない神官服に身をつつんだ老人。口とアゴにドラクエのジジイ魔法使いみたいな真っ白なヒゲをたくわえ、皺だらけの顔に朗らかな笑みを浮かべるこの人。

 

 ……今もなお『大神官』と呼ばれて尊敬されている、元魔法工学教師。コッド先生だ。

 

 

「よく来たのぅ、ローリエ君、カルダモンちゃん」

 

「しばらくぶりだね、コッドさん。早速聞きたいんだけど、どうして神殿じゃなくてここにいるの?」

 

 

 単刀直入だな、カルダモン。

 だが、その姿にコッド先生は気分を害するわけでもなく、むしろ「その質問がくるのは分かっていた」という風に冷静に説明を始めたのだ。

 曰く―――

 

 

「「神殿が占領された!!?」」

 

「…といっても、神官の殆どは逃走に成功して、こっちにおる。消息が分からんのは、初期対応で時間稼ぎを買って出た神官と傭兵数人だけ。こんな事もあろうかと、緊急避難用の通路を作っておいたのが功を奏したのじゃよ。

 ……で、今は街の民と協力して、神殿を占拠しているリアリストなる輩にゲリラ戦を仕掛けているというワケじゃ」

 

「……そうだったのか。とりあえず、先生になんもなくて良かった」

 

「成程。つまり、コッドさん達がここにいるのは、ひとまず神殿を奪い返すため……ってことで良いんだね?」

 

「そうなるのぅ」

 

 

 飄々と言ってのけるコッド先生だが、リアリストの襲撃に即座に逃走してゲリラ戦の準備を整え終えている状況にまで持って行けているんだから、ただの90手前のおじいさんじゃあない。

 敵に対して即・逃走の手を打ったのは、一見情けない選択に見えるかもしれないが、逃げた後の事を考えて策を練っている。神殿を取り返す手立てはこれから考えるつもりなんだろうが、今回の逃走は「戦略的撤退」といっていいだろう。

 

 

「しっかし、よくリアリストの襲撃が分かりましたね」

 

「ローリエ君の作った指名手配書とおんなじ子がいたんじゃよ」

 

 そう言って、コッドさんは指名手配書の一枚を取り出した。その写真は……スズランのものか。

 

「そっか…ほかの襲撃者の数とか分かるか?」

 

「儂が見たのはこの子の他にもう一人……青髪の女の子じゃった。確か名前は……ロベリア、と呼ばれていたの」

 

「ロベリア……」

 

 また新たなリアリストが出てきたな。

 しかし、ヒナゲシにリコリス、スイセン、スズラン、そしてロベリアか……モデルは毒草か? 鈴蘭と水仙が確かそうだったし。

 いずれにせよ、俺はコッド先生から頼まれ事を受けてここに来たこと、カルダモンはアルシーヴちゃんの指示でここに来たことを告げ、頼み事とは何かを聞いた。

 ………まぁほぼ分かり切ってはいるけど、念の為の確認だ。

 

 

「本当は不審な人間の調査を頼みたかったんじゃが………事情は変わった。

 儂やシュール殿と一緒に、この街の神殿を取り返すのを手伝ってはくれぬか?」

 

「勿論です。コッド先生やシュールさんとの協力のためにここに来たんですからね、俺は」

 

「あたしも手を貸すよ。敵が目の前に陣取っている。ここまで来て退けないよね」

 

「ありがとうの、二人とも」

 

 

 コッド先生が皺だらけの頭を下げる。

 俺はそんな先生に笑いかけた後で、ビルの窓の景色を見渡す。

 ……そこから遠目に見える神殿をじっと観察しながら、衝突の時が近いのをなんとなく感じ取っていた。

 

 




キャラクター紹介&解説

ローリエ
 己の恩師の危機にかけつけた拙作主人公。カルダモンとともに水路の街へ。転送陣のトラブルに見舞われるも、聞きかじりの地球のPC知識を元にした魔法工学の腕前で事なきを得る。

アルシーヴ
 コッドの救援要請を受け、カルダモンの派遣を決めた筆頭神官。ローリエに撫でられた後なので、態度がやや軟化している。

カルダモン
 ローリエとともに水路の街へ向かった八賢者。原作では水路の街に直接行けなかったことを受け、最寄りの街に転移して走っていったが、拙作ではローリエの技術力で事なきを得たが、さりげなく彼に行った質問のリアクションがおかしい事になんとなく気付き…?

コッド
 ローリエやアルシーヴ、ソラがまだ学生だった頃、魔法工学の教鞭を振るっていた老神官。現在は水路の街の神官長を務めており、街の福祉と治安を守るために老いた身を粉にして働いている。エトワリアどころか現代日本でも長寿と言われる類の年を生きており(なんと御年88歳だそうだ)、かつ今もなお10年は生きそうな程に明朗・快活である。
 イメージCVは大○芳○さん。名前の由来は鱈の英名「cod」から取っている。

【挿絵表示】




△▼△▼△▼
きらら「水路の街で行われるという『住良木うつつ絶望計画』……絶対に止めないと!」

うつつ「ほんとは行きたくないけど……言ってても仕方ないのよねぇ…」

ランプ「そうして突入した水路の街……そこには美しい街なんてなく、あるのは襲い来るウツカイとそれから身を守ろうとする人々…」

タイキック「皆、自分の大事なモノを守ろうとしているのか……私達も、この戦いに飛び込む必要がありそうだ」

うつつ「いやだぁ…」

次回『邂逅Ⅰ・過去さがしと傭兵』
きらら「次回もお楽しみに!」
▲▽▲▽▲▽

次のキャラクターのうち、最も好きなのは?

  • アリサ
  • コリアンダー
  • シュール・ストレミング
  • シュナップ・ストレミング
  • ロシン・カンテラス
  • タイキックさん
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