きららファンタジア 断たれた絆と蘇る理想郷 作:伝説の超三毛猫
このタイトル名、ASIAN KUNG-FU GENERATIONさんの曲名なんですってね。私、アジカンさんの曲ってあまり知らないどころか、知ったきっかけが大蛇丸の料理動画に出てきた「AJIHEN KUNG-FU GENERATION」なので、本家の方々にちょっと申し訳ないとは思っていますw
“将軍には五つの危険がつきまとう。蛮勇だけでは殺され、生き延びることだけを考えれば捕まり、短気であれば計に嵌められ、名誉に目が眩めば侮られ、情が深すぎれば精神を病む。”
…『孫子の兵法』より
水路の街・ゲリラ本拠地内のホテルにて。
住良木うつつは、廊下や部屋の窓から見えた緊急事態を前に、右往左往していた。
「せ、攻め込まれてるよぉ〜…!?
どどっどどどどどどどうしよう……!?」
朝が弱めのうつつは、目が覚めた頃には周囲に誰もおらず、何となく心細かったために知り合いの誰かを探そうとしていた。
そのタイミングでのこの襲撃騒ぎである。
(ほぼ巻き込まれたとはいえ)戦いの経験こそあれ、攻め込まれるという経験のないうつつは、この状況に対してどうにも出来ずに狼狽えている。
「うぅぅぅ……もうこの際変な生き物でもいいからぁ……誰か来てぇ…!」
溢れる弱音が、喧騒と騒音に紛れて消える。
その、誰に言ったでもない、藁にも縋るような願いは、どうやら叶えられるようだ。
「あらぁ…こんなところにいたのね……住良木うつつ」
「ひっ……誰…!?」
ただし、最悪の形で。
青い髪をツインシニヨンにした、露出度の高い中華ドレスの美女が、うつつを視界に捉えていたのだ。
まるで、獲物を前にした蛇のような瞳と表情で。
真実の手・“妙手”ロベリアが、うつつの前に姿を現したのだ。
ロベリアと面識のないうつつだったが、彼女を見て、すぐに距離を離して逃げようとした。それはまさしく、本能のままに逃げ惑う小動物のよう。
しかし―――
「「ウツゥ………」」
「ヒッ…!?」
うつつが逃げようとした先の、廊下の曲がり角から、猿のような姿とクワガタムシのような姿のウツカイが現れ、行く手を阻んでしまったのだ。
逃げ道が無くなり、身体が竦んで、腰を抜かすことしかできなくなったうつつ。
「逃げられないわよ住良木うつつ。あなたは私達のもとへ来て、“絆”を切る手伝いをしてもらうわぁ………!」
「い…嫌ぁ………!!」
座り込んでしまい、動けない。
そのうつつに対して、ゆっくりと、まるで花を摘むかのようにロベリアの手が伸びる。
そして―――
◇◇◇◇◇
ローリエが門前で暴徒を鎮圧した直後、ゲリラ本拠地となったホテルは、大規模なウツカイ&暴徒の敵襲に遭っていた。
敵の目的を知っていたローリエはすぐさまうつつがいるホテルの屋内に戻ろうとするも、ウツカイ達や暴徒達による妨害を受けていた。
「配置がイヤらしいな…」
曲がり角に待ち伏せるかのような敵。
見落としがちな場所からの挟み撃ち。
吹き飛ばされた瓦礫からの奇襲。
それぞれが、仕掛けられたらイヤだという配置に的確に用意されており。
更に、ウツカイは無力化させた暴徒も無秩序に襲う始末で、ローリエはホテルへなかなか戻れずにいた。
ローリエはそれらの攻撃を怪我無く乗り越えたものの、無計画の奇襲で出来るものではない。
ある程度は即席でも納得できる罠もあったが、どうしても作為を疑ってしまう。
「今の奇襲……即席にしては出来過ぎだ。
………俺らの中にスパイでもいたのか?」
可能性はゼロではない、とローリエは思った。
一番怪しいのはユミーネ教徒の傭兵団員の誰か。洗脳か入れ替わりか、あるいは最初から裏切り者が紛れ込んでいたか。いずれにせよ、この件が終わってからは徹底的に洗わなければならない。
次点で住良木うつつだ。なにせ、素性が一切分からない。スパイではないにしても、何らかの形で、ハイプリスらに情報が洩れてしまっている可能性は否めない。疑う態度を示さないのは、決定的な証拠がないからだ。それが出るまでは、推定無罪の要警護対象者として扱わないといけない。
だが、今はそんなことを考えている場合ではない。リアリストの目的がうつつである以上、彼女の元へ急がなければならないだろう。
「ローリエ君!」
「!! シュールさん!?」
ローリエの元へ、シュール・ストレミングがやって来る。
剣を片手に、ウツカイ達襲撃者を相手に無双していたようで、目立った怪我はない。
「他の皆は!?」
「シュナップは、アンシーちゃんを避難させに行ったわ。マッチとランプも合流したって。
ロシンは、他の面子と一緒に、あっちの防衛に向かってる。
タイキックさんは、ホテルのロビーで敵を片っ端から蹴ってる。
コッドさんとうつつちゃんは、ホテルから出ていないと思うけど…」
「カルダモンときららちゃんは!?」
「カルダモンさんなら、私達の部隊を任せてあるわ」
「そうか」
とりあえず、カルダモンの無事は確認した。
シュールの部隊を任せてあるとのことで、どこかに行ってはいないらしい。
指揮官とは彼女らしくないが……前線の指揮官なら、なんとか務まるだろうか。
「保険のひとつでも持たせたかったから、まぁいい……
それで、きららちゃんの方は!?」
「ごめんなさい、彼女は見ていないわ。ホテルから出たのは見たんだけれど……」
シュールからの報告を受け、ローリエは状況を整理していく。
まず、警護対象のうつつはホテルの中。
シュナップはアンシー・ランプ・マッチを避難させるために動いている。
ロシンは他の傭兵団と交戦中。実力や数からしても、遅れは取らないとのこと。
カルダモンは、シュールの部隊を任されている。本拠地の敷地内からは出てってはいない。
と、なると。優先すべき人物……それは、きららとうつつだ。
ホテルの中におり、リアリストの狙いであるうつつと、ホテルの外で消息が分からなくなっているきららの安全を確保する。
この二つを最優先にするのは自明の理であった。
しかし、ローリエの身体は一つしかない。どちらかの安全を確保に行けば、もう片方が遅れてしまうだろう………普通ならば。
「シュールさん。これを持って、きららちゃんを探してください」
「これは……ゴキブリ? あなた何を…」
「俺の魔道具です。戦闘には使えませんが、人探しにはうってつけかと」
「良いわ。この際魔道具の見た目にケチはつけない。
じゃあ、貴方に中を任せて良いかしら?」
「わかりました。まっすぐ屋内へ向かう以上、傭兵たちの助っ人は……」
「大丈夫よ。カルダモンさんもいるし、こんな時に押し切られる程、ヤワな鍛え方はしてないわ」
「じゃあ、頼みます」
敵の狙いが、住良木うつつであることに間違いはない。それに、戦う術を持たないうつつに付いた方が、確実に守れる。
そう判断したローリエは、シュールにG型を任せると、再びホテル内へと走り出した。
それを見届けたシュールは、ローリエから貰った魔道具を起動。
きららを探すよう命令を受けた魔道具たちは、空中へ散開していく。その間に、シュールは自身の部下のうち、後方支援に回っている者たちにきららの所在を聞いてまわった。
「その子なら、武器を持った女に襲われて、街の外へ追いやられているのを見ました!」
「! それ、本当!!?」
「は、はい!」
「方向は!?」
「あっちです!」
「分かった……カルダモンさん!もう少し、私の部隊の指揮を任せてもいいかしら?」
「無茶言ってくれるよ……でもまぁ、やってみる!」
運良くきららを見ていた人物からその情報を聞き出す事に成功していたシュールは、己の部隊をカルダモンに任せると、魔道具と共にきららを探し出すことにした。
そうして暫く。
シュールは、目的のきららを見つける事に成功していた。
「ほらほらァ!
そんな粘んなよ、お宝ちゃんが待ってるんだ!」
「何を……! あなたは、そんな、お金なんかの為に戦っているんですか…!?」
「金なんかァ!? お前、世の中、舐めてんのぉ!?」
「きゃあっ!?」
丁度、華美な薄着を着た少女の持つ、斧のような鎌に弾き飛ばされていたところであった。
シュールは、その少女に見覚えがあった。確か、水路の街の神殿を襲った連中の中にいた顔だ。ローリエが持ってきた手配書の中にも、彼女の顔と名があった。そこにはスズランと書いてあったか。
衝撃で体勢を崩し、尻餅を打ったきららに、敵―――スズランが一歩一歩、迫っている。
「世の中、金なんだよ、金。
聖典なんかじゃあ腹は膨れねぇんだ」
聖典では腹は満たされない。
そう言うスズランは、きららには正気に見えた。
少なくともこの人は、本気でそう思っているんだ……!
だが、そう考えるきららに、スズランは容赦なく鎌を振り上げた。
「くだらねぇ世迷言を垂れてるくらいならよォ…
とっとと、オレの指輪ちゃんのために倒されてくれよなァァァァッ!!」
そう言って、振り下ろされた鎌は。
「なっ………!?」
「えっ……しゅ、シュールさん!?」
シュールの剣によって、振り下ろす半ばで食い止められた。
大柄な鎌で叩き折れそうな剣のハズなのに、スズランがいくら力を入れてもビクともしないその剣には、シュールの実力と覚悟が込められていた。
「お前、確かあの神殿にいた―――」
「ストレミング剣殺法・
「うおっとぉぉ!?」
シュールが、剣を持っている方とは逆の掌から、手裏剣のような魔力を放つ。
鍔迫り合いに入った時、至近距離から顔に向かって放つ、牽制用の技・
完璧なタイミングでスズランを襲ったほぼ不意打ちのようなそれだが、スズランが即座に跳躍したことで、かすり傷をほんの少し与えただけに終わった。
しかし、スズランが距離を取った事で、きららに体勢を立て直す時間が生まれる。
「随分血の気が多いじゃあねーかよぉ!
お前も同じ、金で動く傭兵のクセしてよぉぉ!!」
頬に出来た切り傷を拭うように回復魔法で癒しながら、挑発するスズラン。
きららだけに「戦えるかしら?」と尋ねたシュールは、きららが頷いたのを確認する。
再び小声で、「合図を出したら一緒に仕掛けるわよ」と伝えたのち、スズランの言葉に答えた。
「……えぇ、そうね。
お金で動くって言うのは事実だわ。傭兵ってそもそもそういう
「へッ。随分潔いじゃあねーか―――」
「でも、あなたの信条に言う事があるとするなら…そうね。こう言っておこうかしら。
―――『世の中お金』なんて、随分寂しい生き方してるのね。チンケな傭兵さん?」
「―――へぇ?」
「今ッ!」
「はい!」
合図を出したシュールが、自身の強化魔法をかけ終わったきららと共に、スズランへ突撃した。
スズランもまた、二人を迎撃するために、待ち構えるのであった。
◇◇◇◇◇
一方、シュールと別れ、ホテルのロビーへ辿り着いたローリエは、そこでウツカイと暴徒を蹴散らすタイキックと遭遇する。
ウツカイは蹴られた側から絶望のクリエと散っていき、暴徒達はひとり残らず尻を蹴られ、呻きながら床を転がっていたり、泡を吹きながら気絶している。
人間への(あらゆる意味で)惨状を目の当たりにしたローリエは、若干引きつつもタイキックに助太刀をした。
「大丈夫か、タイキックさん!」
「父上か! 私は問題ない!
ただ、私一人では押さえきれずに何人か取り逃した!
しかも、その中に『リアリストの幹部』らしき人間がいた!」
「!!! どんなヤツだ!!?」
「確か、青い髪の女だ!
それ以外はよく見ていなかった! すまない!」
「いや、それだけ分かれば問題ない!!」
ローリエは、タイキックの情報だけで誰がホテル内に入ったのかを看破した。
予め、コッドとヒナゲシから聞いていた、リアリストの情報。その外見的特徴において、「青い髪」はひとりしかいない。
「本人が出張ってくる、か…!」
裏があるのか、少数精鋭なのか、はたまた別の思惑でもあるのか。
いずれにせよ、住良木うつつを1秒でも早く見つけ出さなければならない。
G型魔道具TYPE BLACK RXは、シュールに貸し出している以上使えない。その為、ルーンドローンを最大限起動して、ホテル内の大捜索を始めたローリエであった。
◇◆◇◆◇
「ぐッ!?」
私に向かって伸ばされた、“真実の手”らしき女の手は、触れられる直前で何かに弾かれた。
まるで、私の周りを覆っている、透明で電流の通った壁にぶつかったかのように。
その直後、後ろにいたウツカイと郵便ウツカイが何かに斬られたかのように霧散した。
「ほぉっほっほっほっほ……」
廊下に、しわがれた声が響いた。
その声を、私は勿論知っていた。私を攫おうとした女も、知っているみたいだった。
水路の街の神殿を任せられている、って言ってた人。
旅をして始めてみた、最年長の皺だらけの顔。
好々爺めいた笑い声をあげて、斬り捨てたウツカイのいた場所の後ろから悠々と歩いてきたその姿は。
「その手を引っ込めるのじゃ、テロリストよ。
うつつちゃんは、貴様らには絶対に渡さぬ」
「大神官コッド……!」
「おじいちゃん…!」
「言ったろう。君は儂らが守ると」
大神官、って言われるコッドのおじいちゃんだった。
まったく90歳間近の老人とは思えない、でも毅然とした言葉を女にぶつける。
その直後に私に振り返って、もう大丈夫と声をかけてくれる。
それは、なんか……まるで本当の孫に向けて言葉をかけてくれたみたいで。
私にもし、おじいちゃんがいたなら、こんな感じだったのかな、って思えてきて。
一人で、青い髪の女に攫われそうになった恐怖とか不安が、いつの間にか全部吹き飛んでいた。
「死にぞこないが…私達の邪魔をするんじゃあないわよ…!」
青い髪の女が、おじいちゃんを強く睨みつけると同時に、また怖いウツカイがいっぱい出てきた。
「あまり強い言葉を使うものではないぞい」
それに対して、おじいちゃんはそう言って片手を床につけただけ。
でも、そこで変化が起こった。
ピキ、ピキ、と何かが割れる音が聞こえ始めたかと思っていたら。
ゴゴゴゴゴ、と青白い氷が、地面を這いながらウツカイ達に襲い掛かり。
「な…ウツカイが……みんな、氷漬けに…!?」
「ひ、ひえぇぇぇぇ……!?」
「『ブリザード』………生半可な兵力は皆氷に閉じ込める魔法じゃよ。
……で、なんじゃったかな。あぁ、そうだ」
い、一瞬であの女が呼んだ増援の殆どが氷漬けになったんですけど!?
しかも、廊下の景色まで変わってしまっている。さっきは、廊下の窓から入ってきた日差しの熱気がこもる暑さが地味にあったのに、おじいちゃんが魔法を使ったあとは、いま見える範囲の廊下全部が、まるで豪雪地帯か南極の景色であるかのように、一面の銀世界になっている!!
やばすぎない?
これが、この世界のおじいちゃん?
これが、現役を終えて有終の美を飾るだけの人?
これが、水路の街の神殿長さん?
冗談でしょ。めちゃくちゃ強いじゃん。下手な若者(特に私)の何百倍も強いじゃん!?
生涯現役すぎるでしょ……!!?
「あまり調子に乗ると、後が恥ずかしいぞって話じゃ。
お主とて、こんな“死にぞこない”に下されたくなかろう?
今のうちに降伏すれば、少なくとも恥も刑も軽く済むぞい」
このおじいちゃんが負ける気が、全然しないんですけどぉ!!!?
キャラクター紹介&解説
ローリエ
敵の襲撃の裏に確実に何かが関わっていることに勘づきながらも、うつつを守るために足を動かす拙作主人公。シュールと合流したことで味方の所在を知り、最優先で警護する対象を見抜いてシュールへ的確に指示を出した。
シュール・ストレミング
攻め込んできた敵を迎撃する傭兵団を束ねる女傭兵団長。ローリエと合流した際には予め他の面々の大まかな居場所を把握していた。きららの所在は分かっていなかったが、部下への聞き込みを行いつつ、きららの救援に向かった。
きらら&スズラン
襲撃してきた時にピンポイントで襲われるという、原作とは全く違うシチュエーションで会敵した公式主人公&守銭奴。ほぼ孤立無援で、スズランからの襲撃を逃れるために川に飛び込んだ公式とは違って、シュールの救援が間に合ったことで、一点反撃のための立て直しができた。
住良木うつつ&コッド&ロベリア
公式では水路の街の神殿から出てこなかったロベリアだが、拙作ではゲリラの本拠地であるホテルに立てこもっている神官たちや傭兵団を分散させたのちに、本命のうつつを攫うために直接登場。シュールやローリエ、タイキックやきららをウツカイや洗脳した暴徒、スズランを使って散り散りにさせて足止めをした後、うつつを攫う手はずだったが、コッドの保険により未遂に終わり、コッドの救援が間に合う。次回、二人が激突する。
△▼△▼△▼
コッド「どうやら、間にあったようで良かったのう」
うつつ「うぅぅぅぅ……助かったぁ…怖かったよぉ…」
シュール「まだ油断はできないわ。スズランはきららちゃんと私が組んで戦っても互角そうだし、ロベリアに至ってはまだ未知数の実力なんだから」
ローリエ「そうだな……ヒナゲシから得た情報には、ロベリアの頭の良さはあったが、具体的な戦い方はなかった。ヒナゲシも知らなかったみたいだしな……」
コッド「それでも、勝つしかあるまいて。儂の後ろには、うつつちゃんがおるんじゃからのぅ」
次回『謀略!ロベリアの脅威!』
コッド「次回もお楽しみにのぅ。」
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次のキャラクターのうち、最も好きなのは?
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アリサ
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コリアンダー
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シュール・ストレミング
-
シュナップ・ストレミング
-
ロシン・カンテラス
-
タイキックさん