きららファンタジア 断たれた絆と蘇る理想郷   作:伝説の超三毛猫

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 2月28日、きららファンタジアがサービスを終了しました。きららファンタジアを作ってくれたすべての皆様、たくさんの思い出をありがとう。
このゲームの思い出は、私達の中に永遠に生き続けることでしょう。願わくば、また違う形で出逢いたいものです。

あと2話くらいで4章を締めくくらせる事が出来るだろうか………文字数増やすしかないか。
今回のサブタイの元ネタは「ぼっち・ざ・ろっく!」より「十二進法の夕景」です。


“彼女は、いわば緑の眼をした怪物だ。人の心をなぶり、貶める賤しい化け物。だが弱いゆえに心を狙う怪物。渡辺綱に斬られた橋姫のごとく、所詮は唾棄すべき存在でしかない。”
 …木月桂一によるロベリアの人物評


第42話:十二進法の軍略

 

 

 コッド先生の手記を見つけてから2日。

 神殿勢による、神殿奪還作戦が開始されていた。

 日にちを空けたのは、実行日がそう書かれていたからだ。その理由もバッチリ書いてあり、それも俺やシュールさんでさえ納得できる内容だったので、実行を翌日ではなく、2日後にしたのである。

 

 そんな中、俺ことローリエはというと……

 

 

「うぅぅ…なんでこんな雨の中進まなきゃいけないのよぉ……無理ぃ…後で絶対風邪ひいて死んじゃう………」

 

「そう言うな、うつつ。雨の進軍は冷えるが、その分お釣りが来る。進むなら今しかあるまい」

 

「まさか、コッドさんが雨まで予想して作戦を組んでいたなんて……」

 

「そうだな……雨なら、狙撃の心配もグッと減る。奇襲にはもってこいだ」 

 

 

 降りしきる雨の中、建物に隠れながらきららちゃん御一行を引き連れて、神殿へと向かっていた。

 水面に浮かぶように佇む神殿が見える位置になると、近くの建物に隠れ、雨をしのぎながら時を待つ。

 

 

「でも、ローリエは大丈夫なのかい?

 雨で銃が使えないのは、君も同じじゃあないのかな」

 

「その点については心配ない、マッチ。

 なにせ俺のパイソン&イーグルの薬莢はちょっとやそっとの水じゃなんともないんだよ」

 

 まぁ厳密には火薬は使っておらず、薬莢の尻部分に小さな爆発魔法の紋章を書いておき、撃鉄が衝撃を与えると起動する仕組みになっているのだが、これもまた濡れるとダメになるのには変わらない。だが、現代の弾丸のように火薬に相当する部分を金属で覆っているので、軽い雨に降られた程度では不発弾になることはない。

 

「それにしても……本当に大丈夫なのかな?

 街の人に、危険や迷惑がふりかかったりしないのかな?」

 

「それも、コッド先生の手記にあった。住宅街方面の水門が閉まっていれば、まず大丈夫だと」

 

 最初にこの作戦を見た時、きららちゃんとうつつが心配したのはそこだった。

 敵を倒すことが出来ても、守るべき街の人々や捕まった神官たちに被害が及んだら意味がない。もっともな懸念だ。

 でも、そこはどうやら先生も考えていたようだ。作戦案には、閉じるべき水門と開けておく水門、そして作戦実行時に開ける水門が事細かに記されていた。また、水門開放時の推定の水量も神殿への被害も書かれていた。

 

「作戦に絶対ってモンはねーが……ノープランに緊急脱出路から攻めるより100億倍は良い」

 

「それにしたって……こんな作戦、今でもちょっと怖くて仕方ないよ。だって、思いついても普通やらないじゃあないか―――」

 

 

 マッチが何か言おうとした時。

 ゴォォォ、と水路の上流方向から音がしてきた。

 そろそろ作戦開始だな。備えとけよ、皆。

 

 

「―――()()()()()()()()()()()()()殿()()()()()()、なんてさ」

 

 

 マッチの呟きがクリアに聞こえた直後、量と勢いを増した濁流が、神殿に直撃した。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 水路の街・神殿最奥部。

 そこには現在、神殿を乗っ取り、街を支配せんと企むテロリストが占拠しているワケだが、珍しいことに、その日は占領した当事者以外の人物がひとり、いた。

 

 

「大丈夫だったん? 大神官コッドの爆発を受けて…」

 

「大丈夫なんかじゃあないわ。まさかあそこで自爆魔法(エクスプロウド)を使うなんてね……」

 

「覚悟が決まりまくってたんだな、アイツ。オレの転移がちょっとでも遅れてたらヤバかったぜ」

 

 

 中華服のロベリアと華美な姿のスズランが各々コッド戦の感想を漏らす。

 大神官コッドは、うつつを守る際、死に際に己の命と引き換えの大爆発を巻き起こしたのだが、彼女たちはどうやらかろうじてそれから逃れていたらしい。

 最初に問いかけた―――カウガールファッションの少女・スイセンはその答えを受けて安心の息を漏らした。その手には、手に馴染んだ旧式の拳銃(リボルバー)ではなく、ウィンチェスターライフルのようなショットガンが握られている。

 

 

「いずれにせよ……コッドは死んだわ。

 後はシュール・ストレミングを始末すれば指揮系統は混乱に陥る。

 そうなれば残りは烏合の衆のようなものよ」

 

「コッドの次はそいつを狙い撃てばいいのー?」

 

「いいえ。そう簡単でもないわ。警戒されてるかもしれないしね。

 ハイプリス様に無理を言って借りた戦力ですもの。万一にも失うなんてあってはならないわ」

 

 

 ロベリアは、油断はしない少女であった。

 結果を見れば、コッドの始末は成功した。

 だが、あそこまで粘られるのは想定外だった。スズランが来なかったら、どうなっていたか分からない。

 だから、スイセン―――『美食の都』から引っ張ってきた狙撃要員は今後の戦いでも確保しておきたい。

 

「…今度狙うのは彼女じゃあないわ。別の人間よ」

 

 呪具と扇の調整を始めたロベリアは、悪辣な笑みを浮かべ、その名を出した。

 

 

「―――八賢者・カルダモン。彼女は再起不能にするんじゃあないわ。こっちに引き込むのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その直後であった。

 部屋全体が、プールをひっくり返したかのように大量の水に降られてびしょ濡れになったのは。

 

「「「!!!?」」」

 

 ドバァァ、と派手な音を出して襲いかかってきたとんでもない勢いの水流に、3人の真実の手は、面食らった。

 

 

「ぶわぁ!? 急に何なんだッ!!?」

 

「うぎゃーーーっ! ウチの火薬がーーッ!!!?」

 

「これは…川の氾濫!?

 ばかな、ここまでの氾濫が起きる大雨じゃあない筈なのにッ!!」

 

 

 悲鳴をあげるスズランとスイセンをよそに、ロベリアは終わらせたはずの計算をやり直す。

 確かに昨日の夜から雨は降っていた。だが、水路の街の水排出の効率と川の増水量からして、そう簡単に水路が氾濫を起こすなどあり得ない。

 脳内で再演算したが、そこから弾き出たのは最初の計算結果と同じだったし、第一この程度の雨で川や水路に氾濫されては、まずまともに人の住める街になっていない筈なのに……!?

 

 

「ウツーー!」

 

「くっ…何よ、こんな時に……」

 

「ウツウツ、ウツーツ!!?」

 

「………敵襲、ですって………!!?」

 

「はぁ!!?」

「うっそーー!!?」

 

 

 続いて、ウツカイが持ってきた凶報にロベリアは絶句した。

 突如見舞われた洪水に、狙い合わせたかのような敵襲の報せ………そこでようやく先の鉄砲のような氾濫が、異常気象による災害ではなく、神殿側の策略であったことを悟ったのだ。

 

 

 そこからの行動が一番早かったのは、ロベリアだ。

 まず、自身が両腕に巻いていた宝石のブレスレット群……これらを全て外し、スズランに投げ渡しながらこう言った。

 

「スズラン! 攻め入った奴らを返り討ちにしなさい…!」

 

「これは…ルビーちゃん、か。前金として貰っとく」

 

「成功報酬なら出すから突破されるんじゃあないわよ……」

 

 続いて、予測外の鉄砲水の影響で火薬が残らず湿り、うろたえているスイセンにこう指示する。

 

「スイセン、転移装置でハイプリス様に助けを呼びに行きなさい。

 いま濡れた弾はもうぜんぶここに捨てちゃっていいわ」

 

「わ、分かった! ウツカイの援軍を呼んでくる! ロベリアはどうするんよ?」

 

「闇に落ちた神官と傭兵をハイプリス様の下へ送る準備をするわ……」

 

 

 流石に、“真実の手・妙手”は伊達ではない。

 自然現象に見せかけた不意打ちを受けても尚、即座に冷静さを取り戻し同僚に指示を出してのける。

 スズランが敵を蹴散らしに前に出て、スイセンが転移装置に走っていくのを見届けてから、自身も行動を開始する。

 早くしなければ、自分達以外の誰かが、攫われた者たちを連れ戻しに来るかもしれない。

 そうして、人質のいる部屋まで行き。

 

 

「おや、君は…たしか“真実の手”のロベリアだね?」

 

 

 ―――そこで、八賢者・カルダモンと遭遇した。

 

 

「(馬鹿な……早すぎる…ッ!?)」

 

 

 あまりの予想外に出てきた本音を、かろうじて飲み込んだ。

 確かに、ロベリアの策では、次の狙いはカルダモンだった。

 だが、こんな不意打ちを受けた上に他に優先する事がある状況で、相手にしていられる程楽な相手ではない。

 スズランもスイセンも手が離せない。援軍もすぐには望めない。

 そんな状況下で、行く手を遮るように立っているカルダモン相手に、ロベリアは戦うしかないと決断を下す。

 

 

「君を捕まえて、水路の街を解放させてもらう」

 

「こうなったら仕方ないわね……呪ってやるわ……」

 

 

 妙手の使い手と、最速の八賢者が、人知れぬ神殿の廊下にて、激突した。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 水路の街には、当然ながら水門がある。

 コレは、雨などによって降水量が増えたり、逆に日照り続きで雨の不足が予期された時に、街に流れる水を調整するためだ。この存在が、水の氾濫や干ばつで街の大打撃を未然に防いでいるのだ。

 当然ながら、水門を開けるべきか否かの見極めは、素人ができようはずもない。俺だって初見でできるかどうか怪しい。

 

 しかし、この作戦の発案者―――今は亡きコッド先生なら可能だった。長い間、水路の街の神殿長としてここに就いており、この街の水害に細心の注意を払い続けてきたあの人だからこそできる作戦。

 

 それが事細かに手記に書いてあったが故に、俺達はこの作戦を実行できている。

 シュナップさんに傭兵達や神官たちの指揮と水門の管理を任せつつ、時が来たら一気に水門を解放し、貯まりに貯まった水を、住宅街から被害を出すことなくリアリストが占拠している神殿だけを狙い撃ちにする。

 そして、動揺している隙を突いて流れが速くなった水路に船を乗せて不意打ちを行う………

 

 その名も―――「打ち水掃除大作戦(ランプ命名)」!!!

 

 

「成程、コレが打ち水か…勉強になったぞ」

 

「…………俺の知ってる打ち水じゃあないんですけど」

 

「打ち水どころか災害じゃないのぉ……」

 

「いっ…いいんですよ今は作戦名なんて!!!

 ほら! 水の勢いが治まる前に船に乗る!」

 

「い、いやだぁ…! 絶対事故って転覆しそうなんですけどぉ…!?」

 

「言っている場合か! もう傭兵のみんなは行っちゃったぞ!」

 

 

 …やや可愛げのある作戦名とは裏腹の凶悪な自然災害による先制攻撃と、その後に神殿へ流れていった傭兵達の乗る船を見送った俺達は、停泊させていてギリギリ流されていない船に乗ると、まだ勢いが元に戻り切っていない川の流れに乗って、神殿へと突貫した。

 神殿への攻め込む順番として、カルダモンと傭兵部隊の大半に切り込み隊長を任せ、俺達はシュールさんやロシンと一緒にその後に乗り込む。

 このまま押し切ってやるぜェッ……!!

 

 

「うわあああああああああああああああ!!!?」

 

「す、すごい揺れてッ……!?」

 

「ひぇぇぇぇぇっ!?」

 

「『Z○p-a-○ee-D○○-Dah』でも歌おうか?」

 

「よく分かんないけどソレは色々マズいってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」

 

 

 あ、うつつこの手のネタは知ってるんだ。

 まぁこれ、乗り心地は「スプ○ッシュマ○ンテ○」と比べ物にならないくらい最悪だけどな。

 

 急遽出来上がった「ス○ラッ○ュ○ウン○ン」は、神殿との距離が近かったのもあって約2分で神殿の近くに船が乗り上げた形で終了した。

 目を回しているうつつとランプをひっぱりだし、タイキックさんの無事を確認し(彼女が一番タフだった)、きららちゃんの上陸を助けてから、俺達は神殿の中へ突入した。

 

 

「ひぇっ…!?」

 

「こ…」

 

「これは……」

 

「……っ、早速お出ましか」

 

「ん? ……お、住良木うつつ(特大ボーナス)がそっちからやって来るとはな!

 人使いの荒い仕事だったが、ツイてるぜ!」

 

 

 まず、入口をくぐって目に飛び込んできたのは、大半が倒れてしまっている傭兵たち。立ち上がろうとしている奴が多く死んではいないが、神殿の守りに対して攻めあぐねているのは明らかだ。

 そして…そんな数多の傭兵の返り討ちをしていたのが、一人中央に立っていた少女。黄緑ラインの目立つ、高そうな黒のエナメルコートを纏い、なかなかに派手かつ露出度高めな格好をしている。

 

 俺にとっては3度目の出会いなそんな彼女―――スズランは、鎌のような斧をこちらに向け、好戦的な笑みを浮かべた。

 

 どうしてこんな神殿入ってイキナリのタイミングで幹部級のコイツと出くわす?

 待ち伏せ……いや違うな。俺達の攻撃を完全に読んでいたならば、最初の鉄砲水の時点で対策していた筈。

 そうなるとコイツは……急ごしらえの時間稼ぎ。奥にいるであろうロベリアが、何か手を打つ時間を稼ぐ役割を担っているに違いない!

 

 

「皆! コイツは俺に任せて先に行け!」

 

「え!? でも…!」

 

「今コイツにかまってロベリアに何かさせる方がマズいだろう!」

 

「しかし、1人で大丈夫なのか? 何なら私も―――」

 

「ハハッ! 敵の前で作戦練るとか馬鹿かお前ら!!」

 

 

 スズランが、俺の指示を受けて戸惑っているきららちゃん達に、魔法弾を放つ。

 それを、即座に抜いたパイソンで、全弾撃ち落とした。

 

 

「馬鹿はお前だ。バレても問題ないから言ったんだろうが。

 タイキックさん! ランプとうつつについてやれ!」

 

「……大丈夫なんだな?」

 

「当然」

 

 

 タイキックさんの言葉……それは、「任せてもいいんだな?」という確認。俺はそれに強く頷いた。

 虚勢じゃあない。スズランの手札は分かっている。流石に全部は分からねぇが、初戦と違って出し惜しみはしないつもりだ。

 ルーンドローン、ソニックビートル、パイソン&イーグルの各種特殊弾頭に、ショットガン・アイリス、スナイパーライフル・ドラグーン。どれもこれも、エトワリアにはオーバーテクノロジーだ。

 それに………今の俺には、再現魔法「レント」というとびっきりの切り札(ジョーカー)もある。そして……再現できる人物は、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 俺は知っている。

 年をとって現役をとうに終えても尚、サーベル一本と手榴弾で戦車を撃破できる存在を。

 常人に一切悟られることなく対象を始末できる、凶悪な精神エネルギーの数々を。

 泳げなくなることと引き換えに、あらゆる特殊能力を使いこなす人間達を。

 人の一人や二人、用意に消し飛ばせる力を持つ規格外な生物を。

 それらを再現してしまえば、こんな守銭奴など3分足らずで片付けられる。

 勝算は……あるはずだ。

 

 早速その魔法を起動しようとしたその時。

 俺の脇を通ってスズランに斬りかかる存在がいた。

 

 

「「!!?」」

 

「あなたの相手はこの私よ!!」

 

「シュールさんっ!?」

 

「行きなさい皆!

 ローリエ君も早く!」

 

「一人で大丈夫か!?」

 

「この人には、部下のお礼もたっぷりしないといけないからね! それに…私には、護るべき家族がいる!」

 

「………信じてます!」

 

 

 後から来たのであろうシュールさんが、スズランと鍔迫り合いを始めたのだ。

 きららちゃんは根が優しいのかシュールさんを置いていくことを躊躇っていたようだが、すこしの沈黙ののち、シュールさんにそう告げてから走り出した。

 

「………」

 

 俺もまた、すぐに走り出せなかった。

 ……勝てるのか? そう思ってしまったからだ。

 当たり前だが、シュールさんの実力を疑っているわけではない。だが、俺がやった方が早く、確実なんじゃないか? 『レント』さえ使えれば、足止めの必要性すらないのではないか?

 ……凄まじく嫌味な言い方になるが、そう考えてしまった以上、少なからず足が止まってしまう。

 

「何をしている!? 早く来てくれ!

 先を急げと言ったのは貴方自身だろう!!」

 

「………………」

 

 答えが出ないまま、タイキックさんに呼ばれるがままに奥に進むことになった俺である。

 

 

 

 

「シュールさん、大丈夫かなぁ……」

 

「そうだな……だが、ここに入ってきてから嫌な予感が止まないんだ。急いだ方が良いような気がする」

 

「大丈夫ですよ二人とも! あの人を信じましょう!」

 

「それに、カルダモンが切り込み隊長としてロベリアの元に向かっているはずだ。加勢してあげないとね」

 

 うつつとタイキックさんの心配は尤もだが、ランプとマッチの言うとおり、急ぐしかないだろう。

 シュールさんにスズランを任せてしまった以上、俺たちに出来ることはそれだけだ。

 

「それにしても…珍しいな。

 タイキックさんが、そんなことを言うなんて」

 

「嫌な予感がするのは本当なんだ。

 それに、さっき父上も躊躇っていたではないか。

 シュール殿になにか不安でもあるのか?」

 

「……不安は、ない。

 シュールさんは、傭兵団最強の人だ。伊達に団長やっちゃいない。まず負けることはないだろ。

 ただ、どんな人にも万が一はある。それだけだ」

 

 

 そう……それだけ。

 それだけのはずだ。

 それなのに、心に巣食った不安は全然消えてくれなかったので、全力で神殿内を走り抜けることにした。不安やストレスをぶつけるかのように。

 

 

 

「おおーーっと! ここは通さないんよ!」

 

 

 そうして走ってしばらくすると、今度はまた違った声がしてくる。

 その直後に降ってきたのは、巨大な拳!

 

「危ねぇっ!!」

 

 全員が何とか回避する。

 そして飛んできた拳の主を確認すると……

 

「ウツーーーーーーーー!!!!」

 

 …そいつは、巨大な姿形をしていた。

 流石に、遺跡の街の地下アジトで出会った巨大ウツカイよりかは小さいが、目を引いたのはその大きく変わった見た目だ。

 

 頭はヤギのような形と角をしており、両腕はゴリラ以上に肥大化し、両足で立つ姿はまるで人のようで。

 ウツカイの特徴たる顔をしながら、「悪魔」を形容するかのような姿をした、今までにはいないウツカイだった。

 

 

「うわぉ、流石の破壊力だね、プロト・ガーディアンウツカイ!

 よーし、このままアイツらをけちょんけちょんにしてやるんよー!」

 

「ウツー!」

 

 

 プロト・ガーディアンウツカイと呼ばれたソイツは、傍らにいたカウガール・スイセンの陽気な指示を受けて、両手を振り上げて襲い掛かってくる。

 それらを再びやりすごした後、きららちゃんにちょっと頼みごとをした。

 

 

「なぁ、きららちゃん」

 

「なんですか?」

 

「ここは俺が引き受ける。本来はスズラン相手に戦うつもりだったが……」

 

「な、何を言っているんですか! さっきと違って、相手は2人です! いくらなんでも危険ですよ!」

 

 

 きららちゃんに話しかけた内容をランプに聞かれたのか、きららちゃんより先に彼女が否と声を張り上げた。きららちゃんもランプの主張に異論はないようで、軽く頷いて「全員でここを突破しましょう」と促してくる。

 だが、全員で突破するのは俺的には「ナシ」だ。それは、ロベリアに時間を与えることを意味する。敵の策士相手に最もやってはいけないことだ。

 だから……俺は、その折衷案を提案する。

 

 

「きららちゃん、1人だけクリエメイトを『コール』して、俺と組み合わせるんだ。

 そうすれば2対2になる。無謀な時間稼ぎにはならないと思うが…?」

 

「! そうか…そうでした! きららさんの『コール』なら、どなたかの力をお借りすることが出来る筈……!」

 

「でもぉ……それで勝てるの……ホントにぃ……?」

 

「心配無用。きららちゃん、確か『コール』する相手は選べたよな?」

 

「? えぇ…クリエメイトご本人の同意が得られれば、ですが……」

 

 

 うつつを筆頭にした「勝てるの?」という心配は無用。

 何故なら、スイセンとはもう既に一度戦っているからだ。

 その時に身をもって受けた彼女の攻撃属性と、ゲームの知識をフル活用して、ひとりのクリエメイトの名前を出した。

 

 

「―――折部やすな。彼女をナイトで『コール』して欲しい」

 

 

 

 

 

 軽い作戦会議が終わった直後。俺の合図で、きららちゃんとタイキックさんが飛び出した。

 

 

「「はぁぁぁぁぁーーーーーッ!!」」

 

「はっ、真っ正面から突っ込んで無駄なことを! やっつけてやれ!」

 

「ウツーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 

 スイセンの眼には、隠れてはいたものの、突破しなければ始まらない事実に気が付いて、きららちゃんとタイキックさんが無策にも突っ込んできたようにしか見えないだろう。

 だが、あくまで彼女達の目的はここを抜けて先に行くこと。お前らを倒す役目はこのローリエがやるんだよ。

 

 

「ウツッ!!!」

 

「ふっ!」

 

「はっ!」

 

 プロト・ガーディアンウツカイの最初のパンチをかわす二人。

 そこで、きららちゃんが手に隠し持っていたものを手放した。

 それは、一見すると金属の棒。だが、きららちゃんとランプ、マッチは知っていた。この形状の棒が、この後どうなるのかを。そしてそれは、俺がそうなるように設計した兵器である。

 

 きららちゃんの手から離れたそれ―――――閃光弾は、地面に落ちてカンと小気味のいい金属音を鳴らした瞬間………辺り一帯に、目が眩む程の光を放った。

 

 

「うわぁぁぁっ!! なんなん!!?」

 

「ウツゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーッ!?!?!?!?!?」

 

 

 スイセンとプロト・ガーディアンウツカイの動きが止まる。

 その隙に、きららちゃん一行は、通路の間を縫うようにして、先へと走っていく。

 少なくともスイセンはそれに気付いたようだが、まだ目が回復している様子がない。それにまだ閃光弾が光を放っているというのに気の早いヤツだ。

 

 視界が回復した頃には、目の前に立っている人物が二人に減っていたことに、スイセンは目を丸くしたようだった。

 

 

「行けるか、やすな?」

 

「あぁぁ…」

 

「?」

 

目が…目がァーーッ!!

 

オイ

 

 

 なんで俺の閃光弾をお前まで食らってんだ。

 しっかりしてくれよ……一応、ナイトでヘイト集めして貰うんだからな?

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 ローリエの機転によってスイセンとプロト・ガーディアンウツカイの防御を突破したきらら達。

 あとは神殿最奥部に辿り着き、カルダモンと共にロベリアを倒すだけである。

 

 ―――そう思っていたのだが。

 

 

「くふっ…」

 

「「「「!!!?」」」」

 

「君達はまだ、ソラが正しいと信じているのかな?」

 

 

 きらら達が辿り着いた、神殿の奥で見たものは。

 ………覚悟を決めた目をしたロベリアと、闇のオーラにつつまれ、妖しい雰囲気でそう問いかけたカルダモンだった。

 




キャラクター紹介&解説

ローリエ&折部やすな
 きらら達と神殿に突入後、彼女たちを先に行かせるためプロト・ガーディアンウツカイとスイセンと戦うことになった拙作主人公&それに伴ってきららが『コール』したクリエメイト。ローリエが行ったこのチョイスは、スイセンの属性相性とパーティバランスを考慮した結果なのだが、メタ的には立て続けに迫るシリアスにギャグ漫画のキャラで対抗してやろうという意志が見え隠れしている。

きらら&ランプ&マッチ&住良木うつつ
 シュールやローリエの献身によって、予想以上に早くロベリアのいる最奥部に辿り着いた。しかし、そこで待っていたのは公式と似たりよったりな光景で…?

シュール・ストレミング
 きららとローリエ達の為、そして部下達や家族のためにスズランに勝負を挑んだ傭兵団団長。ローリエはシュールの代わりにスズランと戦うべきか悩んでいたが、部下を痛めつけられた借りがあるため、ここでローリエが代わると申し出ても断っていた。

カルダモン
 神殿への鉄砲水による強襲のあと、いち早く最奥部に着いてロベリアと戦っていたはずの八賢者。しかし、きらら達が到着した時には、彼女に異変が起きていて……?
 余談だけど、公式によってリアリストに堕ちたカルダモンのイラストが出た時には、やつらって露出魔族しかいないのかと思った。

ろーりえ「ふーん、えっちじゃん」
かるだもん「そんな目で見ないで。セクハラで訴えるよ?」
ろーりえ「おいやめろ!」

ロベリア
 公式では十分策を練る時間が与えられていたが、拙作では鉄砲水による不意打ちを受けたことで、策を練る冷静さが奪われている。だが、そんな中でも体制を立て直せるほど頭は回る。

スズラン
 ロベリアに前金を貰い、神殿に攻め入る傭兵達を薙ぎ払い、足止めをしていた守銭奴。うつつを捕まえて特別大ボーナスを得ようとするものの、シュールに止められる。

スイセン
 美食の都から水路の街に助っ人に来ていたカウガールにして、ホテル侵攻の時にコッドを狙撃した張本人。実は彼女はロベリアがハイプリスに無理言って頼んだ結果、新たな装備を携えて街までやって来ていた。使用したライフルはウィンチェスターM1866に近く、ローリエの「アイリス」と形状はよく似ているが、弾丸は拳銃用の弾丸しか使えず、その影響で射程もかなり短い。実はコッド狙撃も、すぐ隣の建物から行った。

プロト・ガーディアンウツカイ
 公式2部5章で登場した型のウツカイが先行登場。とはいえ、ハイプリスのウツカイ開発速度に変化がないので、完成品ではなく試作品であるという設定。話は変わるが、「正規採用品よりプロトタイプの方が強い」という概念は、どこから生まれたのだろうか…?



Zip-a-Dee-Doo-Dah
 映画『南部の唄』に登場する挿入歌。農場経営者の息子が農場の労働者から聞いたウサギの話で流れる。そのウサギの物語はディズニーリゾートで有名なアトラクション『スプラッシュマウンテン』のモデルとなる。ただし、2022年夏頃以降から『スプラッシュマウンテン』でこの曲が流れなくなってしまった。



△▼△▼△▼
ランプ「ソラ様が間違っているか見極めるですって……何を言っているんですか、カルダモン!」

うつつ「カルダモンが何かされて、おじいちゃんを追い詰めたロベリアも襲ってくる! もうだめだぁ、おしまいだぁ……」

タイキック「いや!負けるわけにはいかん! こんな、人の心を弄ぶ女は、必ずタイキックしてくれる!!!」

きらら「ローリエさんもシュールさんも戦ってくれているんです。私達が負けるわけにはいきません!」

次回『ファイティングガール(ズ)』
タイキック「次回も元気にタイキックだ!」
うつつ「何言ってんの…?」
▲▽▲▽▲▽

次のキャラクターのうち、最も好きなのは?

  • アリサ
  • コリアンダー
  • シュール・ストレミング
  • シュナップ・ストレミング
  • ロシン・カンテラス
  • タイキックさん
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