バカとテストと召喚獣 PA18外伝   作:Mr.ペンギン

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~前回のあらすじ~
新たなスクールライフをスタートするにあたり、即席のパーティーを始めようとしていたが、それを良しと思わなかったのが優子を筆頭とした他のクラスメイト達だった。ここから大きく話が膨れ上がってしまい、様々な価値観の違いから最終的に対立するまでに事態が発展してしまい、早くもAクラスに纏まりが失われることとなった。一方、ひょんなことから光輝達は明久達と意気投合し、仲良くなった。そしてEクラスとの試召戦争を制したFクラスに、優子がAクラスの大使として宣戦布告をしたのであった。


第参話 小さな勇気が起こした奇跡

宣戦布告されてから2日経ったこの日は、AクラスとFクラスとの試召戦争当日である。前日の交渉によって5VS5の一騎討ちで決着を付ける事になり、更に翔子の提案で負けた方は勝った方の言う事を聞く事になった。

 

そして現在、Aクラス教室で一騎討ちが行われていた。一回戦は数学で佐藤美穂が島田美波に勝ち、二回戦は総合科目で姫路瑞希が久保利光に勝って1VS1とお互い一歩も譲らぬ接戦を繰り広げていた。

 

高橋「それでは三回戦を始めます。選手は前へ。」

 

明久「じゃあ行ってくるね。負けたらごめんよ。」

 

雄二「取り敢えず全力でな。がんばれよ。」

 

優子「あら?貴方がアタシの相手なのかしら?観察処分者さん。」

 

明久「あはははは…。自覚があるだけに、いざ面と向かって言われると流石に耳が痛いや…。」

 

高橋「科目はどうしますか?」

 

明久「世界史でお願いします。」

 

高橋「分かりました。それでは両者、始めて下さい。」

 

明優「「サモン!」」

 

世界史

Aクラス Fクラス

木下優子 387点VS吉井明久 172点

 

優子「ふぅん…。Fクラスの割にはよく取れてるじゃない。」

 

明久「これでも自分なりに頑張ったんだけど、やっぱり直前だけって言うのは流石に無謀だったかぁ…。」

 

優子「ま、良いわ。早いとこ終わらせてあげる。」

 

そう言うと優子の召喚獣はランスを構えて、明久の召喚獣に突進を仕掛けてきた。しかし明久の召喚獣は、横にずれて回避し、木刀で足を引っ掻けた。そして転けたところで一気に攻撃を仕掛け、ダメージを与えた。

 

Aクラス Fクラス

木下優子 342点VS吉井明久 172点

 

優子「ウソ…、何で…?」

 

明久「そうだね…。観察処分者の唯一の長所…、とでも言っておこうかな?」

 

優子「どう言う意味よ…?」

 

明久「観察処分者はね、召喚獣を使って先生の雑用をこなすんだ。そのお陰で召喚獣を使う機会が多くて、召喚獣の操作に慣れちゃうんだよ。」

 

優子「成程ね…。それは驚いたわ。アタシとした事が少々見くびってたみたい。なら何とかして貴方に攻撃を与えてやるわ!」

 

優子の召喚獣は体勢を整え、再びランスを構え、突き刺してきたが、今度はジャンプして避けて、後ろに回り込んだ所で木刀をぶつけまくる。ただ、完全に避けきった訳ではなく、足をかすってしまった為、明久の召喚獣も少しダメージを受けた。

 

世界史

Aクラス Fクラス

木下優子 271点VS吉井明久 150点

 

『おいおい嘘だろ…!?学園最低のクラスで、しかも観察処分者の吉井にこんな取り柄があったなんて…!』

 

『学園のクズの癖にやるわね…!何か逆に腹が立ってきたわ…!』

 

優子「どうして…、どうしてアタシがFクラスの奴なんかに…!観察処分者のろくでなしなんかに…!クズしかいないFクラスなんかに…!」

 

この時にも尚Aクラス側からは心無い声が飛び出す。

 

雄二「くっ…!あいつら黙って聞いてりゃあ………!!」

 

康太「……いくら何でも言い過ぎだ…!」

 

秀吉「流石のわしも我慢の限界じゃぞ……!!」

 

光輝「おどりゃあ……!どいつもこいつもざけやがって………!」

 

光輝達3人や雄二達が怒りを露わにしつつ、またしても一触即発の事態に発展しかけようとした、その時だった。

 

??「あ…、あの………!ひっく!その……!すんっ…!ふぇぇぇ…………!!」

 

突然誰かが啜り泣く声が教室内から聞こえ、その声のする方に全員が一斉に振り向いた。そこには、菜々実が蹲って泣き出していた。突然の事態にその場にいた全員が驚いていた。

 

『ちょ、ちょっとどうしたの…!何で泣いてるのよ?!』

 

『おいおい別に泣くことないだろう!?どうしたんだよ一体…!』

 

菜々実「ひっく…!だ…、だってぇ……!皆さんが…、喧嘩するから………えっぐ…!」

 

美月「おーよしよし~!なんもなんも〜。」

 

周りが動揺している中、未だ嗚咽をあげて泣き続ける菜々実に近寄り、軽くハグして頭を撫でながらあやす。あやしながら彼女は、先程明久達を罵倒していたAクラスの面々に振り返えらないまま問い掛けた。

 

美月「皆さ…、ななみんがどうして泣いてるか解る…?」

 

普段明るい彼女からは想像がつかない程その声色は低く、静かに怒っているのが感じ取れた。怒っていると言っても光輝達の様に感情的になっているのわけではなく、どちららかと言えばあくまでも教え諭すようにである。

 

美月「この子はね、あんた達があの時から喧嘩ばっかりしててそれがなまら悲しいから泣いてるの。あたし達が知らない所でけっぱっている同学年の子達に対してそのけっぱりを全否定しているようなことを言うから、それが悲しくて泣いてるんだよ…!あの時対立が鮮明になってから、この子はずっと最悪の事態になるんじゃないかってびくびくしてるんよ…!この子だけじゃない、寛定もだし、あたしだってそう。」

 

美月は声を荒げることなく静かに淡々と伝える。すると今度は夏海も話に加わった。

 

夏海「そりゃ最初騒ぎ出したアタイらも悪かったわな。いくら事情を知らんかったとは言え、その件に関してはマジですまんかったってのは7人全員がそう思っちょる。じゃがそれと同時に、まさかそれがこがいな大事にまで発展するとは思いもせなんだけどな。っと話が逸れちまったが、アンタらは『結果が全て』って言うちょったけど、案外そうでもねぇんじゃね?何ならこう言うの、アンタらが身をもって解っちょるんじゃねぇか?」

 

彼女も美月同様に、双方を宥めつつも優子達クラスメイトに諭すように言葉を選びながら伝える。

 

『確かにそうかもしれないけど、でもやっぱり最終的には結果が物を言うんじゃないかな…?』

 

その内のある1人が何気なくそう溢す。すると今度は直道が立ち上がった。

 

直道「何もあなた方が言っていることが間違っているとは言いません。事実、全てにおいて最終的には結果で判断され、そして評価されるのですから。ですがその結果を出すには、プロセスが大切であると言うことをお忘れではありませんか?何をするにしても、十分な結果を得る為には必ずそれ相応の過程を踏むことになります。あなた方だって、このAクラスに入るために相当な努力をしてきた筈でしょう。趣味や遊ぶ時間など様々なものを犠牲にしたのでしょう?」

 

「「「……………。」」」

 

2人をフォローするように優子達に語り、問いかけた直道に対して遂に優子達は何も言えなくなった。するとそんな彼らに罵倒されていた明久が一旦フィールドから離れ、菜々実の元へ向かった。彼女を宥め続けている美月は突然のことに少し驚いていたが、特に警戒する素振りもなく菜々実の顔を上げさせた。その菜々実も最初こそ一瞬ビクッとなっていたが、普段とは違い何故か怯える様子はなかった。

 

明久「僕達を守るために勇気を振り絞ってくれてありがとう。僕達は全然へっちゃらだから気にしないで。」

 

彼は優しい笑顔で菜々実に礼を述べた。その後フィールドに戻り、優子に向き直った。そしてゆっくり口を開く。

 

明久「木下さんやその他の人にも聞いて欲しい。確かに僕は観察処分者で、どうしようもない男だ。実際に自覚してるしね。けどね、人を噂や評判だけで決めつけるのは良くないと思うんだ。だって、実際に接してみないと分からない事があるから…!例えば、雄二はよく僕の事をからかうけど、何かあった時にはすぐに力を貸してくれる親友だ。あと、ムッツリーニは色々変わった所があるけど、いつも僕の事を支えてくれる大切な友達。それから君の弟の秀吉は何かと気にかけてくれるかけがえのない友人だ。こんな風に実際に接してみれば、不思議とその人の中身まで見えちゃうんだ。もし僕の言ったことに賛同してくれるなら、一騎打ちの後でも遅くないから、今日からそうして欲しい。観察処分者である僕が言っても説得力にかけるだろうし、寧ろ生意気言ってるって思われるかもしれないけど、それだけで判断するのはお互い悲しいし…ね。」

 

彼は優子や、自分たちに罵声を浴びせていた他のAクラスの生徒達に呼び掛けた。暫く静寂が空間を支配したが、それも長くは続かなかった。

 

優子「………そうね。確かに貴方の言う通りね。ならアタシ、今日から生まれ変わるとするわ。」

 

明久「へっ?本当にっ!?」

 

優子「えぇ。貴方に大切な事を教えてもらったから。それでアタシもそう思ったもの。…さて、そろそろ決着を付けましょ。」

 

明久「うん!そうだね!」

 

そして、二人の召喚獣はお互いの召喚獣に突撃した。そして―

 

 

 

世界史

Aクラス Fクラス

木下優子 196点VS吉井明久 0点

 

高橋「勝者、Aクラス木下優子!」

 

明久「はぁ~…。やっぱり負けちゃったか…。」

 

すると優子が明久のもとに歩み寄ってきた。

 

優子「吉井君、さっきまであんな酷い事を言ってごめんね。それと、アタシに大事な事を教えてくれてありがとう。」

 

明久「いやいや、僕はただ木下さん達に将来困って欲しくないと思っただけさ。」

 

明久はそう言って微笑んだ。すると優子は、不意に頬を赤く染めた。

 

優子「///………!そ、そう…!と、とにかく、またいずれこうして勝負をしましょう。」

 

優子は明久に手を差し伸べた。明久は迷わず優子の手を握り、握手を交わした。

 

明久「あはは、僕で良ければいつでも良いよ!」

 

彼らが握手をした時、多くの拍手がまき起こった。優子がAクラス陣営に戻ってくる際、光輝達に顔を向けた。

 

優子「中岡君、重谷君、空知君、氷川君、夏海。貴方達に不快な思いをさせてごめんなさい。」

 

それを聞いた光輝達は思わず目を見開いた。少し前まであんなにいがみ合ってた優子が自分達に対し、素直に謝罪したからだ。そんな優子を見た夏海は、にっと笑った。

 

夏海「のぉ優子。オメェ、今最高に良ぇ顔しちょるな。アタイの言っとった事がやっと分かったっぽいのぉ。」

 

優子「今更ながらね…。あっ、そうだ!」

 

彼女は今度は既に泣き止んでいた菜々実と美月の元に駆け寄った。

 

優子「松井さん、悲しませちゃってごめんなさい。美月もごめん。」

 

菜々実「いいえ、もう良いんです…。解ってもらえたのでしたら、それで嬉しいんです…。」

 

美月「あたしもでもうなんも!だってさ、いくらけっぱっても中々結果が出ない人もいるんだしさ!」

 

菜々実ははにかむ様に、美月は夏海同様にかっと笑ってみせた。それを見て優子も思わず微笑んだ。

 

『なぁ…。吉井ってさ、何かすっげぇ良い奴だよなぁ。』

 

『私達、吉井君の事を誤解してたわ。吉井君だけじゃない、坂本君達のことも…!』

 

『よし!この一騎討ちが終わったら謝ろうぜ!』

 

明久の優しさは、優子だけでなく光輝達と対立していた他のAクラスの生徒の考えさえも改めさせた。

 

和博「何や…、こりゃあえらいこっちゃな…!」

 

雅治「あぁ…!信じられなかよ…!」

 

寛定「かー…、ぶったまげただぁ~…!」

 

光輝「まさか明久の優しさがアイツらをこがいにも変えるとはのぉ…!吉井明久…、実に興味深い。」

 

直道「一時はどうなるかと思いましたが、ともかくこれで一件落着のようですね!」

 

利光「全くだ。それにしたってこの変わりようには流石に驚いているよ…!」

 

美穂「そうですよね。あんなにギスギスしていたのが、まるで始めからなかったかのような…!」

 

愛子「だよねー!ボク達だけじゃどうにもできなかったのに、吉井君のあの一言だけでこんなにガラッと変わっちゃうなんてね~。」

 

翔子「……吉井は私達にないものを持ってる。…吉井は凄い。」

 

どうにかクラス内の対立が無事解消され、最悪の事態を避けられて一安心していたが、同時にクラスの心までも動かした明久の人柄を間近で見て感心する主要のAクラスサイドであった。

 

高橋「ここでしばらく休憩に入ります。次の試合は10分後に行います。」

 

2VS1。依然として互角の勝負が続いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたが?
以前の作品との違いは、優子達の考えを改めさせるきっかけです。こちらでは菜々実、美月、夏海、直道がその役割を果たしましたが、ベースになった作品では寛定(以前の作品では氷太と言う名前)でした!
それでは、ここで今回登場した方言を紹介します!
・けっぱる:頑張る(北海道)
・こがいな:こんな(広島)
・えらいこっちゃ:とんでもないかことだ(大阪、京都、兵庫等)
・かー:いやはや(山形)

~次回~
第肆話 芽生え
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