バカとテストと召喚獣 PA18外伝   作:Mr.ペンギン

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~前回のあらすじ~
遂に始まったAクラスとFクラスの5回制一騎打ち。3回戦目は明久と優子との戦いだが、点数差とほとんどのAクラス陣の予測に反して接戦となり、苛立ちと戸惑いを見せる優子達とそれに反発する雄二ら3人と光輝達。一触即発になりかけたこの悪い流れを食い止めたのは、対立を憂い我慢できなくなって涙を流す菜々実だった。それから美月、直道も同調し、そして罵声を浴びせられていた明久も優子達に「噂だけで決めつけないでほしい」と優しく訴え、諭した。それらが功を奏し、優子は考えを改めることを約束し、他のクラスメイトにも次第にその雰囲気が広がっていった。そして3回戦は優子の勝利で幕を下ろたが、この試合後の優子はどこかすっきりしたような柔和な表情となり、試合中に明久の人柄を見たAクラスは良い方向へ変わっていこうとしていた。


第肆話 芽生え

明久「ごめん雄二。やっぱり負けちゃったよ…。」

 

三回戦を終えた明久が、両手を合わせながら心底申し訳なさそうな顔を浮かべて雄二達の元に戻ってきた。しかし三人はそんな明久を咎めることはしなかったし、それどころかよくやったと言わんばかりの顔をして彼を迎えた。

 

雄二「なぁに気にするなって。むしろ相手チームの主力の一角である木下姉とあそこまで互角に渡り合えたんだから、ある意味こっちの勝ちさ。」

 

康太「…しょうがないさ。…ナイスファイト。」

 

秀吉「負けたとは言えども、姉上相手にお主はよくやったのじゃ。そんなに気に掛けるでない。」

 

明久「皆ありがとう。ちょっと僕トイレに行ってくるね。」

 

雄二「あぁ、行ってこい。」

 

そして、明久は一旦教室から出た。

 

 

 

雄二「なぁ?そう言えば島田と姫路はどうした?」

 

秀吉「む?そう言えば見掛けんのぉ…?それ以外のクラスの人間はおるようじゃが…。」

 

康太「……それにしても馬鹿に大人しい。」

 

雄二「…………?……!ちょっと待て!あいつらまさか………!!」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

明久「あぁ~スッキリした~。」

 

明久は用を足すと、とても爽やかな顔を浮かべてトイレから出て、Aクラス教室へ向かった。

 

明久「遅くなるといけないし、早く教室に戻ろう。」

 

明久がAクラスに向かって廊下を歩いていると、二人の人物が突如立ち塞がった。

 

島姫「「アキ(明久君)!!!!」」

 

明久「ん?やぁ美波、姫路さん。どうしたのってイダぁぁぁー!!ちょっとちょっと二人共どうしたのさ突然!?どうして僕の両腕が曲がらない方向に曲げるんだい?!」

 

姫路「明久君!なに木下さんと馴れ馴れしく接しているですか!!」

 

島田「そうよそうよ!何で木下と握手なんかしてんのよ!!」

 

明久「えーっ!何かまずかったの?!」

 

島田「握手していた時の木下、めちゃめちゃ嫌がってたのよ!!分からなかったでしょ?!」

 

姫路「そうです!なのでそんな木下さんに変わって私達がオシオキですっ!!」

 

明久「うわわわわ本当!?ちゃんと後で木下さんに謝るからやめてー!!いたたたたっ!!!」

 

姫路「謝ってすんだら警察なんていりませんよっ!普通に考えればわかることです!」

 

島田「アンタがやったのは一種のセクハラ行為なのよっ!だからオシオキするのよっ!!」

 

明久が彼女達の暴力に喘いでいたその時だった。

 

 

 

パァン!パァン!

 

 

 

島姫「「ひゃっ!?」」

 

島田と姫路の頬を叩く鋭い音がした。そして、そこにはさっきまでいなかった一人の人物がいた。

 

明久「えっ……?木下さん……!」

 

優子「吉井君の帰りがやけに遅いと思ったら、アンタ達揃いに揃って吉井君に一体何やってんのよっ!」

 

明久を守るように島田と姫路の前に立ちふさがり、腕組みに仁王立ちをして二人を睨み付ける。二人は一瞬怯んだが、今度は怒りを優子に向けた。

 

島田「ちょっと!いきなり何すんのよ!邪魔しないで頂戴!!」

 

姫路「そうです!暴力反対ですっ!!」

 

優子「こんなの見れば阻止するのは当然の事でしょう!それと、あの握手はアタシが望んでやったんだからセクハラには入らないわよ!本当に嫌なら最初から手を差し伸べるなんてしないわよ。こじつけもいい所よ。あと、暴力反対とか言ってたけど、先に吉井君に暴力を奮ったのはアンタ達の方でしょ?!被害者ぶるのやめてくれるかしら!?醜いわ!」

 

一頻り捲し立てると、今度は明久の元へ駆け寄った。この時の優子は、一騎打ち後に見せた優しい顔になっていた。

 

優子「吉井君、大丈夫?」

 

明久「う、うん…。平気平気…。」

 

優子「とてもそんな風には見えないわよ…。それにしても酷い……!!もうこんな奴ら放っておきましょう。関わるだけ時間の無駄よ!肩を貸すわ。そうね、一旦保健室に行った方が良いわね…!」

 

そう言って、優子が明久を担いで保健室に連れて行こうとしたその時―

 

 

 

明久「木下さん、危ないっ!」

 

優子「え?…きゃっ!!」

 

明久は不意に優子を強く押した。その勢いで優子は尻餅をついた。

 

優子「よ、吉井君。いきなり何を…。」

 

優子がそう言いかけた時、ガンガンとさっきまで優子がいた場所にいた明久が二人の釘バットで殴られたのだ。

 

明久「いったぁぁぁー!?」

 

優子「………えっ?」

 

それを見た優子は、驚きを隠せなかった。もし自分があのままあそこにいたら、今頃あぁなっていたこともそうだが、それ以上にただでさえボロボロの明久が優子を守る為に、自分が傷付くことを選んだことに驚いた。そんな明久を見た島田達は、ニタリと不敵に笑った。

 

島田「あらあら♪そんな女を守る為にそこまでするなんて、ホント優しいんだから~♪」

 

姫路「そうですね~♪感心しちゃいました♪私達がいると言うのに、妬けちゃいますね~♪これはオハナシ案件ですね~♪」

 

そして、二人は再度明久に暴行を加え始める。

 

優子「アンタ達いい加減にしなさいよっ!!どこまで吉井君を傷付ければ気が済むワケっ?!」

 

島田「っるさいわねっ!!ウチらがアキに何をしようとアンタには関係ないでしょう!」

 

姫路「そうです!他クラスの貴女は引っ込んでおいて下さい!」

 

そんな口論をしていた時、島田と姫路のいる所の向こうから誰かが全力疾走してきた。

 

西村「コルァァァ!!姫路に島田!貴様ら一体吉井に何をしてる!!」

 

島姫「「に、西村先生!?」」

 

西村「貴様ら纏めて補習室に連行だっ!そこでその腐りきった精神を鍛え直してやるっ!!」

 

姫路「そ、そんな!理不尽です!」

 

島田「何でウチらが!?」

 

西村「安心しろ。坂本、土屋、木下以外の連中も一緒だからな!それとその釘バットは没収だぁ!!そんな物騒なもの、学校に持ち込むんじゃない!!」

 

島姫「「そんなぁーーーっ!!」」

 

二人を担いだ西村に、優子は聞いてみた。

 

優子「せ、先生。これは一体…?」

 

西村「あー実はな、高橋先生を通じて坂本から、吉井が危ないって連絡が来てな。3人以外の奴らも吉井を襲う準備をしてたらしいんだが、そっちは3人で潰したってんでまずそいつらを補習室に送って、それから来たんだ。そう言うことだからこれからこいつらに灸を据えてやるんで、すまんが吉井を頼んだぞ。」

 

そう言い残すと西村は、島田と姫路を担いで補習室へ去っていった。優子は再び明久に駆け寄った。

 

優子「バカッ!!ただでさえそんなに傷付いてるのにどうしてアタシなんかを庇って…!」

 

彼女がそう尋ねると、明久は少し笑って答えた。

 

明久「だって、木下さんの様な可愛い美少女が傷付いて苦しむ所を見たくなかったから…。」

 

優子「ふぇっ…///!?」

 

明久の思わぬ発言に、優子はまた頬を赤く染めた。

 

優子「で、でも!だからって無茶はダメ!!まずは自分の身体を大事にしなさい!良い!?」

 

明久「あはは…。善処はするよ…。」

 

明久は困ったような苦笑いをした。まるで小さい子供を叱るように明久に怒る優子だが、同時に度重なる彼の無自覚な発言にまんざらでもない様子を見せてもいた。無論、明久がこのことに気づくことはなかったが。

 

光輝「うぉ~い!」

 

Aクラス教室の方から光輝と雄二が走って来た。

 

雄二「すまねぇ明久!くそ…!俺が島田と姫路の様子にもっと早く気付いてりゃ…!!」

 

光輝「おいおいおい明久!!お前どがんしたんならその傷!?」

 

優子「あ、実はね…。」

 

~事情説明中~

 

優子「…って事があったの…!」

 

光輝「ほいじゃったんか…!おっどりゃあ…!アイツらよくもわしのダチをこがん目に…!」

 

優子「とにかく、アタシは吉井君を保健室に連れて行くわ!」

 

雄二「残念ながら今日は保健室の先生はいねぇぞ。」

 

優子「えぇ!?こんな時に…!じゃあどうすれば…。」

 

どうすればいいか悩む二人だが、光輝がすかさず立ち上がった。

 

光輝「うしっ!ならわしと姉貴で診ちゃる!」

 

この言葉を聞いて、明久と優子が驚いた。

 

優子「出来るの!?」

 

光輝「あぁ。実はの、わしも姉貴も医学の心得があるんじゃ!治療するのに必要なものは一通り持っちょるけぇ、わしらが責任持って診ようじゃねぇか!」

 

明久「気持ちは嬉しいけど大丈夫大丈夫…。いつもの事だからね…。」

 

それを聞いた光輝と優子は驚いた。

 

優子「いつもの事って、まさか毎回島田さん達にやられてるの!?」

 

雄二「そうだ。俺達としてもやれる対策とか明久のフォローはやっているが、それでもあいつらはしょうもない理由を付けてこういうことをしちまうんだよ…!!」

 

雄二は苦虫を嚙み潰したように吐露する。

 

光輝「おどれ…!ますます気に入らんのぉ…!!ほいじゃあわしらは明久を連れて先に教室に戻っちょるぞ!急を要する!」

 

雄二「ほら明久、歩けるか?」

 

明久「う…、うん。ありがとう皆…。」

 

優子「ごめんけどアタシは後から行くわ。すぐ戻るから!」

 

光輝「分かった!ほいじゃ後程な!」

 

光輝と雄二は自分達の首に明久を腕を組ませ、Aクラスの教師に向かって移動した。

 

 

 

 

~優子side~

 

2人が吉井君を連れ戻した後、アタシも現場を後にして歩いて教室へ向かっている。それと同時にちょっとした考え事をしている。それは―

 

「吉井君、すごいな…。」

 

吉井君の事だった。

 

今日みたいに一騎討ちでやりあう前は、Fクラス且つバカの象徴である観察処分者だからクズで最低な奴なんだとしか思ってなかった。

でも、そんなものは大間違いだと言う事に今日気付かされた。

本当の吉井君は強い心を持ってて、何よりもすっごく優しい素敵な人。彼は自分の事を今の今まであんなに侮辱してたアタシやその他のクラスメイトが更正すると信じて、そして坂本君達を守るために大事な事を教え諭してくれた。それと、さっきアタシが島田さん達の追撃を受けないようにする為に、身代りになってくれた。それでなくてもあんなにボロボロだったのに。普通の人でも相当の覚悟がいるけど、吉井君はそうじゃない。覚悟がなくても体が勝手に動く。今まで色んな人に出会ったけど、あんなに他人を思える程無限の優しさを持つ人は吉井君だけだと思う。

それにしてもアタシ、本当に今日どうしたんだろ?今日は吉井君に振り回されっぱなしだ。さっきから吉井君の事を考えるだけですごくドキドキするし、胸が高鳴る。こう言うのって、恋愛もので見た事がある。

 

そう自分で不思議に思った。だけどそのくせ、すぐにその答えは意外とあっさり叩き出せた。

 

「アタシ、吉井君が好きなのかな……?いいえ…、アタシは、吉井君が好き…///」

 

なーんだそっか。アタシは間違いなく吉井君が好きになっちゃったのね。何かこの一日で、吉井君の全てを見た気がした。優しい吉井君。笑顔が眩しい吉井君。真剣な表情がかっこいい吉井君。ヤバい…、好きだって自覚しちゃったら、ほっぺが確実に赤くなったわ。頬に熱を感じるから間違いないわ。正直恋愛なんて自分には到底縁が無いものだと思ってたし、学業の邪魔になるって思ってたから学生の間は恋愛なんてしないって思ってたのに、まさかこんなことになるなんて…//吉井君に何から何までしてやられちゃったみたい…///

 

そうね…!そうと分かれば、チャンスを見付けて吉井君にアピールしてみましょっ!だから吉井君、今に見てなさい!!絶対に貴方を振り向かせて見せるんだから!!アタシの心を奪った代償は高いわよ♪

 

そうこう考えている内に教室に到着した。ドアを開ける前に落ち着きを取り戻す為に深呼吸をした。

 

~優子sideout~

 

 

 

優子「ただいまー。」

 

秀吉「おぉ姉上!帰って来たか!どうしたのじゃ?雄二達と同時に帰ってくるかと思っていたが…。」

 

優子「ちょっと考え事をしてたの。それより吉井君は…?」

 

康太「……治療中。」

 

秀吉たちを始めクラス中の視線の先には、椅子に座らせ点滴を刺された明久を懸命に治療している光輝と夏海の姿があった。プラスチック手袋を嵌め手術用のキャップを被りながら治療に当たるその姿は、正しく医師そのものだった。

 

愛子「ね、ねぇ…。あの二人、何であんなことできるの……??普通の外来処置があんな簡単にできるって…!」

 

流石の愛子もこの状況に驚いていた。この質問に和博が答える。

 

和博「あぁ、あれか?アイツんとこは医者の家系でな。何ならあの二人、医師免許持っとんで?」

 

「「「えぇーーーーーっ!!?」」」

 

彼の衝撃発言に、一同が驚きの声を上げる。

 

雄二「ちょっと待てよ!あいつら、本当に俺達と同学年なんだよな?!その段階で国家資格を持ってる奴なんか聞いたことねぇぞ!!」

 

直道「いくら医師の家系と言っても流石にそれは無茶苦茶じゃないのでは!?」

 

寛定「あいづらにはな、デンマークとフィンランドに師匠がいるんだべ。その人達の下で医師としてのあれこれを叩き込まれたんだど。手術の時に執刀もしてるし、その才能は瞬く間に開花して難民救済にも大きく貢献したんだべ~!するとこれがCIOMSやWHOの目に留まって、どの国でも通用するように国際医師免許が特例で付与されたんだど!」

 

寛定はふふんと誇らしげに語る。予想以上に壮大なスケールに、この場にいる誰もが圧倒されている。すると―

 

光輝「うし!一丁上がりじゃ!!もう良ぇぞ!」

 

光輝は自分の汗を拭いながら治療完了を告げた。すると真っ先に優子が明久の元へ飛び込む。

 

優子「吉井君!もう大丈夫なの!?」

 

明久「僕はこの通りだよ。心配してくれてありがとう!」

 

心配する優子に優しい笑顔を向ける明久。そんな顔を直視して、またしても優子の頬に熱が帯びていくのであった。すると、明久は次に道具の片付けをする光輝と夏海にも礼を言う。

 

明久「あと二人ともありがとう。凄く気が楽になったよ!」

 

光輝「なーに気にすな!わしらは当然のことをやったまで!」

 

夏海「じゃけどまだ安静にせぇよ!今回だけじゃのぉてこれまでの怪我とかもあるけんの!」

 

無事明久の治療が終わった所で休憩時間終了のチャイムが鳴り響く。残るはあと二回戦だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたか?
旧作との主な違いですが、西村先生が島田と姫路を回収した後に明久達の下に駆け付けたのが光輝と雄二(旧作では光輝のみ)であること、光輝と夏海が明久の治療に携わっている(こちらも旧作では光輝のみ)ことです。
それでは、ここで今回登場した方言を紹介します!
・おどれ、おんどれ:おのれ(広島)
・ほいじゃあ:それじゃあ(広島)

~次回~
第伍話 決着
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