【第1話】Time Leap
神世紀301年 4月
激しかったバーテックスとの戦いを終え、天の神を退けた。そして同時に神樹も消えた。そのため壁も無くなって壁外だった場所は火の海ではなく、あれ果てた本当の風景が姿を現した。そう、彼女たちは終えたのだ。300年以上前からの因縁の対決を---。
大橋 英霊碑
「ミノさん、もうすぐ新学期だよ~。私たち、中学三年生になっちゃう~」
「春休みもあと三日で終わりだものね。」
東郷と園子はこの日二人で、ある勇者のお墓参りに来ていた。彼女たちの友達で、かつて一緒に戦っていた同期の勇者---三ノ輪銀である。
「新学期どうなるんだろうね~」
「新しい部員も入ってくるだろうし、楽しみね。」
「勉強難しくなりそう~....もっと寝ちゃうよ~....」
「勉強面に関しては、たぶんそのっちは大丈夫だと思うわ....」
東郷は苦笑いでそう答える。
「ねぇねぇ~、ミノさんも向こうでお勉強しないといけないんだからね~?さぼっちゃダメだよ~?....あっ、私たちの教室で一緒に授業受けてもいいんだよ~!」
「銀は今の授業内容でも結構苦労してそうだものね....」
「全く....ミノさんは私たちがいないとダメなんだから~」
二人はそんな何気ない会話を続け、時間はあっという間に過ぎていった。
「あら!もうこんな時間だわ....」
「え~....もっとお話していたいよ~....」
「気持ちは分かるけど....早く帰らなきゃね。また来ましょう!」
「....うん、そうだね!またすぐ来よう~!」
園子は元気に返事をし、二人で銀の方を見て言った。
「またね!ミノさん~」 「またね!銀!」
二人はそう言って銀に別れを告げ、英霊碑をあとにした。
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帰り道、二人は途中で困っている人を助けながらもバス停を目指した。
「いろいろとやってる間に時間かかっちゃったわね....この時間まだバスあるかしら....?」
「え....」
「?そのっち....どうしたの....?」
園子は一点を見つめて立ち止まっていた。やがて、その方向に指をさして言った。
「あれ....」
東郷は園子の言われるがまま、その方向を見る。そこにはいたのは見覚えのある顔だった。ビニール袋に日常用品を詰め込んで横断歩道を渡ろうとしている。
「あれって....もしかして、鉄男くん....?」
東郷の質問に、園子は黙ってゆっくりと頷く。
「私....ひさしぶりに見た....あの日以来だよ....。」
園子はボッーとしながら信号待ちをしている鉄男をじっと見つめる。
「私もそうよ....。随分と、立派になったわね....!」
「うん....おっきくなったよ~」
園子は嬉しそうに微笑むと、そのまま歩き出した。
「あ、そのっち?別に鉄男くんが行こうとしてる方向でもバス停にいけるわよ?せっかくだから鉄男くんに....」
「....別にいいよ。」
園子は東郷の言葉を遮るようにして断る。
「だってさ....鉄男くんは私たちのことどう思ってるかしらないし....なにしろ、私たちがミノさんのこと守ってあげられなかったんだから....鉄男くんに悪いよ。」
「........。」
「だからさ、わっしー。こっちから帰ろう!」
「........うん、そうね...。」
園子は笑顔でそう言うが、本当は鉄男に一言くらいかけたかった。だがここは、彼の気持ちを優先した。家族である、弟である彼も....同じくらいの苦しみを味わったのだから。
そんなことを考えていたその時....
キキッー!
刹那、車のスリップ音が響く。
『....!!!』
その音に反応した二人は咄嗟に後ろを向いた。そこには、バランスを崩し、スリップしたトラックが猛スピードで鉄男の方に突っ込んできていた。あまりにも突然のことで、鉄男はその場で固まってしまっている。
それを見た園子は一目散に鉄男の方へと走り出した。
(間に合え....!!)
そうとだけ願って無心で走りつづけた。そしてついに、園子は精一杯手を伸ばし、困惑している鉄男の手を掴む。トラックが突っ込むよりも先に、鉄男の手を取ることに成功したのだ。
そこまでは覚えていた。しかし、そこからの記憶はなかった。気づいたときには彼女は、家のベッドに寝ていた。
「.........ん.........ぅん.........あれ.........?......えっ!?....ここ、私の家....だよね....?確か....鉄男くんを助けようとして....」
園子は手のひらや体を見たりするが、特にケガはしていない。
「ケガはない、か....。....ん....?なんかおかしいような....」
その違和感は服にあった。私服だったはずなのに今はパジャマを着ている。
「ええっ!?服まで違う!?」
不思議なことが次から次へと起こり、驚いた園子はベッドから立ち上がる。しかし、そこでもまた驚いた。
「あれ....なんか低く感じる....」
部屋全体が大きく感じた。そう、背が縮んでいたのだ。
さすがにこれはおかしいと思い、夢じゃないかと疑った。また、自分は死んだのではないかとも思った。しかし、頬をつねっても痛いし、心臓も音をたてている。
(一体....なにがどうなってるの~!?私はどうなっちゃったの~!?)
謎は一向に深まるばかり。とりあえず自分の部屋の外から出ることにした。自分の家の召使いたちが少し若く見えた気がした。洗面所に向かい、顔を洗う。やっぱり背が低く感じた。顔も少し幼くなっているような....。時間が経つにつれてどんどん気になることが増えていく。園子はリビングに行って窓の外を見た。
(外は明るい....もう朝みたいだ....もう何がどうなって....)
その時、母がリビングに入ってきた。
「あら、園子。まだ家にいたの?早く朝ご飯食べて行かないと遅刻するわよ~」
「え、あ....うん....」
お母さんだ。お母さんに関してはあまり違和感を感じなかった。やっぱりちょっと若返ってる気はするけど。
園子はさっさと朝ご飯を食べ終え、学校に行く準備をしようとする。しかし....
「あれ....?制服がない....。」
どこを探しても讃州中学の制服は見当たらなかった。カバンもない。教科書もない。だんだんわかってきた気がした。そして、次の瞬間....それが確実になる。
「園子様。制服とランドセルならこちらに。」
「........えっ....?」
園子は聞き間違いかと思ったが、召使いは明らかにそう言った。召使いは制服とランドセルを持って待機している。
(え....!?嘘でしょ!?こんなことが実際に....。し、信じられない....けど、いきなりどうして....!?)
園子は召使いに言われるがまま、制服に着替え、ランドセルを背負って家を出た。そこでスマホを取り出し、いろいろと調べてみる。
(わっしーも、ゆーゆも、にぼっしーもいっつんもフーミン先輩も....!全員の連絡先がない....!)
そして、今日の日時を見る。
「神世紀........298年4月10日....?.......。......あ....そっか....。...私、わかっちゃった~....。」
ぴったり三年前にタイムスリップしている。園子はここまで生活してその事実を現実としてしっかり受け止めた。もちろんなぜこうなったかはわからないが、過去に来れたということはつまり....。
「これはきっと....神樹様が最期にくれた私へのチャンスだ....。これならきっと....これから起きる最悪なことを変えられる!」
(第二話につづく)