どうかそれでも寛大な心で読み続けてくれると嬉しいです....!最終話までは必ず書き切るつもりなのでご安心を!それでは最新話お楽しみください!
「わっしーは........どこにいるのかな....?」
園子がその質問をした途端、明らかに二人の顔色が変わった。
ザザ....
風が吹き、外の木々が音を鳴らす。その風は病室の開いている窓から入ってきてカーテンを揺らした。そして彼女たちの髪も。
「園子....やっぱりあなた....」
「....芽吹。」
芽吹の言葉を、銀が遮る。病室には、さっきの雰囲気からは考えられないほど妙な緊張感が漂っていた。
「....芽吹、すまないけどあたしたち二人で話をさせてくれないか?」
「銀....。」
「....頼む。」
銀のキリッとした真剣な顔を見た芽吹は、
「........わかった。外にいるわ。」
と理解して病室から出ていった。病室にいるのは銀と園子だけ。銀の表情から、事の深刻さが伝わってきた。やはり自分は、それほどのことを言ってしまったのであろうか。嫌な予感が....当たってしまっているのだろうか。園子はとても不安になり、銀の顔を見つめた。すると銀は
「ケガしたの、本当は手だけじゃないんだろ。」
と言ってきた。ケガをしたのは本当に手だけなのだが、この世界の未来がどんな歴史を辿ったのか知らない園子は彼女の話に合わせ、
「う、うん....実はそうなんだ....。ここ二年間くらいの記憶が曖昧で....事故の影響なんだと思う。」
と言った。それを聞いた銀は顔を下にさげ、大きく息を吸い込んでから吐くと、腰掛けていた園子のベッドの横にあるイスから立ち上がった。そうして窓際に寄りかかり、園子の方を見て冷たくこう言った。
「単刀直入に言う。........須美は、あたしのせいで死んだ。」
「........え....」
ザザザ....
またしても風が吹く。それは窓際に移動した銀の髪を激しく揺らした。園子は目を大きく開き、口をポカンと開けたまま動けなくなってしまった。だいたいわかっていたつもりでもやっぱり信じられなかった。信じたくなかった。せっかく理想の未来を迎えられたと思ったのに。....園子は絶望した。きっとあの作戦は失敗したのだ。悪い予感が当たってしまった....いや、園子の予想以上に悪い結果だった。
「ミノさんの........せいで....?」
園子は銀のその言葉が気になった。銀は目を閉じてゆっくりと頷き、「ああ。」とだけ言った。
「なんで....なんでよっ....そんなわけない....わっしーが死んじゃったなんてっ....!作戦は....?あのときの作戦はっ?!失敗したの!?」
「落ち着け園子。........途中までは完璧に進んでた。けど........あたしが調子乗ったから....」
「....えっ....」
「須美は....あたしをかばって死んだんだ!!」
「!!!」
「くっ....!あのときの須美の姿は、一生忘れない....!この後悔の気持ちは絶対に晴れることはない.....!」
「わっしーの....姿....?」
園子の問いに、銀は顔色を悪くして涙を流し始めた。園子はそこでもまた驚いた。銀の泣いているところは初めて見たからだ。彼女はこれまで園子たちの前で涙を見せることはなかった。彼女は強かった。だが....この世界の銀は、過去に縛り付けられていた。二度とやり直すことのできない、過去の自分の過ちに....。
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『おりゃあああああああ!!』
銀と園子の一斉攻撃で、スコーピオンの体は粉々になる。
「よっしゃ!一体撃破!」
銀はそう言うと華麗に着地し、残りの二体のバーテックスを睨んだ。
「いい感じだよミノさ~ん!」
「おっ、園子!お前もよかったぜ!」
二人はそう言ってハイタッチを交わした。
「それにしても、園子自身が考えた作戦を園子が忘れるなんて事、あるか普通?」
「えへへ~、でも本当に見覚えないんよ~あのノートのことも~二人が丁寧に作戦教えてくれなかったら今の敵さえも倒せなかったかもね~」
「おいおい、まじに覚えてないんだな....。それと、まだ戦いは終わってないぞ園子!あとの二体をさっさと片付けちゃおうぜ!」
「了解~!」
園子と銀はそう言ってキャンサーに狙いを定め、急接近する。
「覚悟しろ、バーテックス~!!!」
銀はそう言って斧をブンブン振る。しかし、その暫撃はあっさり反射板にはじかれてしまった。
「うおっと!あの板硬って!!手がしびれる~....」
「あの板、かなりの強度みたいだね....ミノさんの攻撃をはじき返すなんて....」
「くっ....ここは三人力を合わせるんだ!あたしたちみんなで撹乱して、反射板の隙をくぐり抜け、攻撃しよう!」
「おおっ!今日のミノさん冴えてる~!」
「へへ、そうだろ?........よし、もしもし須美!そういうことだから行くぞ!」
銀は電話を取り出し、須美に向かって言った。
「話は聞こえてたわ。行きましょう!」
須美のその声で三人は一斉に動き出す。須美が矢を放ち、キャンサーはそれを反射して防ぐ。園子と銀はそれぞれ別の方向へ動いてすばやくキャンサーの周りを走る。
「やあっ!!」
園子が攻撃。が、それもまた防がれてしまった。しかし、もうこれでキャンサーを守る反射板はすべて使ってしまっている。もうキャンサーの体はがら空きだ。
「っしゃああああー!!くっらえ~!」
銀の強烈な一振りが、キャンサーの体に傷をつける。
『やった~!!!』
園子と須美が声を合わせて喜んだ。
「へへっ!どんなもんだい!」
銀はそう言って二人に親指をつき立てて見せる。その時だった。
シュシュシュシュシュシュ!!
「っ!!!」
上空から突如として飛んでくる無数の矢。須美のではない。もう一体のバーテックス、サジタリウスのものだった。その無数の矢は銀めがけて落ちてくる。
「ミノさん危ないっ!」
もっとも近くにいた園子が真っ先に気づき、槍を変形させて傘状にし、銀を守る。
「あっ!園子!ありがとう....助かった....!」
「ふぅ~....危なかったぁ。ミノさんは今のうちにあいつを攻撃して!」
「!....わかった!」
銀は元気よく返事すると斧を傘代わりにして矢の雨から抜け出した。
「不意打ちなんてズルいぞ!!お前はこの三ノ輪銀様が、お仕置きしてやるっ!」
銀は上空に高く飛び上がり、斧を振りかざす。しかしその瞬間、妙な音が聞こえた。
バキンッ!!
銀の背後、いや下からその音は聞こえた。銀は空中で後ろを振り返る。
「........なっ!?!?」
そこには、キャンサーの反射板で思いっきり弾き飛ばされた園子がいた。先ほどの音は槍と反射板が当たった音で、園子の骨が折れた音でもあった。
「がはっ........!」
園子は血を吐き出し、勢い強く壁に叩きつけられる。
「園子っー!!!」
銀は攻撃を止め、園子の近くに駆け寄った。しかし、園子は
「私は大丈夫!ギリギリで槍使って軽減できたから、当たりどころはまだ良い方だよ....!」
と言った。なぜキャンサーの反射板が園子を攻撃したのか。それはキャンサーに与えたダメージがまだ足りなかったからだ。キャンサーの傷は浅く、頃合いを見計らって園子を攻撃したということだ。
「....っ!でも....」
「!!!....ミノさん後ろっ!!」
「えっ....?」
園子に気を取られている間に飛ばされた、無数の矢の雨。防ぐ時間も、避ける間もなかった。その時銀は死を覚悟した。しかし....
ドンッ
後ろから誰かに押された。そんなの一人しかいない。今動けて後ろにいる人物...。
銀は押されたことにより、その矢の雨から逃れることができた。が、
グサグサグサグサッ!!
後ろから生々しい音がする。銀はすぐさま後ろを振り返った。そこには案の定残りの勇者、鷲尾須美がいた。
「須........美........!」
銀は言葉を失った。須美が目の前で穴ぼこだらけにされたからだ。多くの矢が彼女の体を貫通。須美の体からは噴水の如く大量に血が吹き出し、銀にまでも降りかかった。須美はあっという間に真っ赤に染まってしまった。須美は表情を変えずに膝をどさっと地面に着いた。
「わあああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」
銀は悲痛の雄叫びをあげる。須美の体は誰が見ても一目で、すでに絶対に助からないとわかった。銀はショックでおぼつかない足を一生懸命動かして須美に近づく。すると須美は銀に向かって最期に、こう言った。
「来ちゃ........ダメ............ぎ....ん........」
ザシュッ!!
その言葉を発した次の瞬間、トドメを刺すかのように今度は大きい一本の矢が須美の腹部を貫いた。須美はこれでもかというほどの多くの傷を負い、腹に大きな穴をぽっかりと開けて樹海に倒れた。須美の体から溢れてくる鮮血が樹海をどんどん赤く彩る。
「須....美........?そ、そんな........ああぁぁぁああぁぁ....」
銀は須美の側に到着すると、彼女の体を抱き上げて顔をじっくり見る。須美は細く目を開けたまま、体中とその周辺を紅に染めて動かなくなっていた。その目からはもう、光は感じられない。須美は、完全に死んだのだ。
「........うわああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!くそっ!!くそっ!!くそっ!!くそっ!!くそおおおおおおおっ!!!........お前....バーテックスっーー!!!!!」
銀は斧を取り出し、バーテックスに突っ込んでいく。
「許さないっ!!許さない許さない許さないっ!!お前らだけは絶対に!!!」
その姿を見た園子も、ゆっくりと体を起こして槍を出した。
「よくもわっしーを........わっしをおおおおおおおっ!!!」
二人は暴れた。野生本能のまま行動する獣のように。戦いが終わったあとは、二人とも大の字で倒れて空を見ていた。
「園子....あたしたちこれからどうしたらいいんだろな。」
「わたしもわかんない。もう........なにもかも嫌だよ....」
「....あたしもだ、園子。もういっそのこと....あたし....」
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「これが二年前の話の全貌さ。」
「わっしーは....体中穴だらけで死んだ....?」
「そうさ。体中真っ赤っかに血で染めてな。あそこで油断してなきゃあんなことになってなかった。それに、お前にまでひどいケガをさせた....」
「....わたしは大丈夫だよ。そのときのケガなんてもうとっくに治ってるし。」
「いや........それだけじゃない。あたしは、お前のことを忘れてたじゃないか....!勇者をしていたことも、大切な友達のことさえも忘れて、呑気に勇者部で友奈たちと活動してた....」
園子はまたしても驚いた。
(そっか....わっしーが死んじゃったから本来のミノさんの立場と全部逆になってるんだ....)
「それも気にしないで。神樹様に供物として渡してたんだからどうしようもないことだよ~」
「でもっ....!」
「あ~、ほらいいから!ねっ?........つらいこと、いっぱい思い出させちゃったね。ごめんね、ミノさん。」
「........うん。」
「抱っこ、する?」
「........うん。」
「おいで。」
園子は優しく銀を抱いてあげた。やっぱり銀の温もりを感じる。銀が生きているのはとても嬉しいことだ。しかし、三人一緒でなくてはならない。まさか今度は須美が死ぬことになるなんて....。園子は強く銀を抱きしめた。
(この未来もダメだ。もう一回やり直さなくちゃ....!)
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夜になって勇者部のみんなが園子のお見舞いに来た。銀は付きっきりで園子の側にいたので、合流する形になった。
「あら乃木!意外と元気そうじゃない!」
病室に入ってくるのとほとんど同時に風が元気よく話しかける。
「うん!あんまり大したことなかったんよ~。今まで心配かけてごめんね~」
「いえ!不幸中の幸いでなによりです!」
樹は笑顔でそう言うと、
「はい、これ。みんなでお菓子を作ってきたんですよ!」
と言って包みを園子に渡した。
「樹の料理もだいぶ上達してきたからね~。味は保証するわよ!」
風は腰に手をやって自慢気に言う。
「ほらそのちゃん!食べて食べて!」
友奈が包みを開けるように急かす。さっきからしゃべらない芽吹はずっと微笑んでその光景を見ていた。
「ふふふっ!なんだろ~」
園子はわくわくしながら包みを開ける。そこには....
「あっ....」
「?....あれ、そのちゃん嫌いだったっけ....?」
「あ、い、いや!好き好き!大好きだよ~....!」
包みの中に入っていたのはぼた餅だった。よく東郷が作ってみんなに振る舞っていた。その本当の世界が、ここにはないのだ。ここにいるみんなが東郷のぼた餅を食べたことがないのだ。園子は一個味見程度にそのぼた餅をかじる。....おいしい。実に不思議なことに、そのぼた餅の味は東郷の作るぼた餅とよく似ていた。園子は心の内から気持ちがこみ上げてきて、口を抑えて涙を浮かべた。
「おいしい....すごく....すごくおいしいよ~....」
「そのちゃん!?!?大丈夫!?」
「ちょ、乃木ぃ!?泣くことはないでしょうに!?」
「そ、園子さん!お茶とハンカチですぅ!」
風と樹は大げさに慌てる。
「ふふ、私たちの作ったぼた餅がそれくらいおいしかったということね。感動するほどに。」
「芽吹~....?そのキャラどうした~?」
ボケをかます芽吹に、銀がツッコむ。
この世界も、楽しくないわけではなかった。しかし、やはり物足りない。おもしろくて、個性の強い『東郷美森』がいないのはどこか寂しかった。彼女がいないと勇者部ではない。いや、彼女だけではない。もう一人いない。園子は風たちが入ってきて揃った瞬間に異変に気づいた。さらに、もう一つ。勇者部員たちが来る少し前に銀からちょっとだけ聞いた『楠芽吹』の存在について---
「ねぇ、にぼっしーは?」
唐突に、園子がそう聞いた。その言葉を聞いた一同は一斉に黙り、それぞれ顔を見合わせるとこう言った。
「にぼっしー?ゆるキャラかなんか?」
「私も知りません....。友奈さんは?」
「私も聞いたことないよー。芽吹ちゃんは?」
「私も。....もしかしてまた園子の夢の話とか?」
「あ、もちろんあたしもないぞ!」
全員がそう答えた。園子のこの言葉で病室内が一気に不思議な空気に包み込まれる。
(やっぱり....)
園子はだんだんわかってきた気がした。彼女は続いてこう聞く。
「じゃあ........三好夏凜って子は....?」
「....っ!!どうしてあなたが彼女のことをっ!?」
いち早く反応したのは芽吹だった。
「あらなに芽吹。知り合い?....私たちは....知らないわよね?」
風の問いに、芽吹を除く勇者部員たちはそろって頷く。
「園子....あなたどこで三好さんの名前を....?」
「あ、えっと........私ずっと大赦で祀られて寝てたじゃない?その時にふと一人の神官さんから聞いたんよ~」
「........よく覚えてたわね、そんなこと....。でも、なんで急に三好さんのことを私たちに聞いたの?友奈たちだって知ってるはずもないのに....」
「そ、それはね~........」
まずい。思わず聞きすぎた。そりゃこうなるはずだ。芽吹は顔を迫らせて園子の答えを待つ。と、そこに....
ガラッ!
いきなり病室のドアが開いたかと思うと、ズカズカとひとりの少年が入ってきた。
「鉄男ぉ!?どうしてここに!?」
銀が声をあげて驚く。
「えっと......銀ちゃんの弟さん?」
「はい!あなたは確か友奈さんですね....?えっと.....突然で悪いんですがみなさん!!早くここから出て行ってもらえませんか!!」
『ええっ~~!?』
鉄男の突拍子もない発言に、友奈たちは戸惑う。
「ちょっと待てよ!なんなんだよ、どうしたんだ急に!?」
銀が慌てて彼の肩を掴んでそう言う。
「俺は園子姉ちゃんと二人で話したいんだ!」
その鉄男の態度に対し、芽吹は彼に近づいて見下すようにこう言った。
「........そんなに急用なのかしら?それなら私たちが帰ったあとでもできると思うけど?」
「うっ....」
芽吹の謎の威圧感に押され、鉄男は後ろに食い下がる。
「ごめんなさいね。私も、どうしても園子に聞きたいことがあるのよ。気になってしょうがないことがね。」
「そ、それでもっ!!今日は帰ってくださいっ!!!」
鉄男は強引に芽吹の背を押し、園子の病室から追い出そうとする。
「ちょ、ちょっと....!」
「ムフフフ....。芽吹、今日はここくらいまでにしておきましょうか!ここは、将来の勇者部のかわいいかわいい後輩に譲ってあげましょ!....鉄男くんよ!園子とはつまり、そういうお話ってことなんでしょう?」
風はそう言って不気味に笑みを浮かべる。
「お姉ちゃん怖いよ~...」
「ちょ、ちょっと待ってください風先輩!?『そういうお話』ってなんすか!?まさか鉄男、園子のこと...!」
「あ~もうっ!!姉ちゃん違うから!あと俺、勇者部に入るとか一言も言ってませんから!」
「え~!違うの~!?」
友奈がやけに驚いて鉄男に迫る。そのキラキラした目を見た鉄男は、
「うっ....!う~ん........まぁ、考えては........おきますよ........」
と答えた。その返答を聞いた友奈は安堵の表情を浮かべると、
「よし、じゃあみんな帰ろうか!」
「ちょ、友奈....」
「ほらほら、芽吹ちゃん!また明日!....それじゃ、まてねーそのちゃん!」
と言って友奈たちは芽吹をなだめながら病室を出て行った。
「ふぅ............これでなんとか俺たちだけになったな。」
「ありがとうてっちゃん~!危なかったところだよ~」
「........。」
「....てっちゃん?」
「........園子姉ちゃん....なにが起こってるんだよ....俺すげぇ怖ぇよ....」
「えっ....?」
鉄男は強く拳を握って震えていた。一体なにがあったのだろうか。
「俺、園子姉ちゃんのタイムリープのことを美森姉ちゃんと一緒に調べてたんだよ....でも、突然連絡が途絶えて、ちょっとまばたきした瞬間に美森姉ちゃんの連絡先ごと消えたんだ....。そしたら、美森姉ちゃんは二年前に死んでることになってて....家に帰ったら帰ったで姉ちゃんは普通にいるし........なぁ園子姉ちゃん....過去で何があったんだ?」
「そっか....タイムリープのことを知ってるてっちゃんからは変化した未来がそう見えるんだね。私は、過去であの作戦のことを二人に伝えた。そして一度、7月10日を迎える前に未来に戻ってきた....。」
「えっ....?」
「ごめんね、てっちゃん....。私、やっぱり怖くなっちゃってさ。作戦のことは二人に伝えたから未来は変わったんじゃないかって思ったんだ。だから本番を迎える前に試しに戻ってきた。そしたらこうなってた....」
「........そうですか....」
鉄男は終始呆然としていた。
「じゃあ....まだやり直せるってことですか....?」
「....うん。」
「!....よかった~!」
鉄男は園子の答えを聞いて安心し、肩をなで下ろす。おそらく鉄男は園子が過去で失敗したのだと思ったのだろう。だからもうやり直せなくなるのではないかと考えたのだ。鉄男も園子と同じで銀だけが助かってほしいとは思っていないのだった。三人一緒の平和な世界を望んでいるのだ。
「でも........こういう未来になっちゃったってことは作戦は失敗しちゃったってこと。過去の私も奮戦してたみたいだけどダメだったからね....だとするとどうすればいいのか....。」
「それは、過去の園子姉ちゃんだったからだろ?」
「え....?」
「今、園子姉ちゃんはこの未来のことを知った。だったら....今の、つまり未来の園子姉ちゃんなら変えられる!」
「でも........自信ないよ....。私が精一杯二人を守ろうとしてもあいつらの攻撃は多種多様で自分を守ることさえも怪しいくらいだもん....」
「なに弱気になってんだ!さっきまでの覚悟はどうしたんだよ!このままじゃダメ、そうだろ?」
「........。」
「........と、まあ....こんな未来を見たらそら弱気にもなるか....だって、過去に戻って万が一失敗したらそれはそれでもう二度とやり直せないわけだからな。」
鉄男は心配そうな目で園子を見つめる。
「........いくらでもこっちにはいれる。できるだけ考えて考えて答えがまとまったらまた過去に戻ればいい。今のうちはゆっくり休むべきだよ。いろんなことが頭に入ってきたろ?疲れてるはずさ。」
「うん。この未来にはしばらくいることにするよ。でも....休むことはしない。」
「えっ....?」
「調べたいことがあるんだ。....『楠芽吹』について....!」
「確か、園子姉ちゃんの知らない人でしたっけ....本当に見覚えがないんですか?」
「うん。それにこの未来ではみんな、にぼっしーのことを知らなかった。つまり....にぼっしーの代わりがメブーってことかもしれない。」
「?........メブー?」
「あっ、今つけたあだ名~」
「いや早っ!!........っと、とりあえずそれは置いておいて....」
「だから明日、メブーに伝えようと思う。私がタイムリープしていることを。」
「!?....ほ、本気かよっ!?」
鉄男は身を乗り出して驚く。園子は冷静なトーンのまま話を続けた。
「今日話しただけでわかった。メブーも信頼できる良い人だって。なんで私がにぼっしーのことを知ってるのか疑問に思ってたし、良い機会だと思う。」
園子は至って真剣に考えていた。彼女の目を見つめ、それが本気なのだということを確認した鉄男は、
「....わかった。ここは園子姉ちゃんに乗ろう。明日、病室内を芽吹さんと園子姉ちゃんの二人きりにするように俺がやっとくから。好きなだけ話したいこと話せばいい。」
「....ありがとう。」
こうして園子は病院で一晩明かした。いろいろなことがありすぎて情報の整理がつかず、なかなか眠ることはできなかった。やがて朝になり、神世紀301年4月9日。
彼女はよほど話の続きをしたかったのだろう、朝早くに園子を訪ねてきた。
「園子。おはよう。朝早くから失礼するわ。」
「あれ、メブー朝早いんだね~」
「....ずっと気になってからね。昨日の話。」
「うん。私も....。メブーに聞きたいこと山ほどある。」
「えっ....?」
芽吹は困惑した表情を見せる。外からは小鳥のさえずりが聞こえ、射し込んでくる朝日が園子を照らす。
「まず言わなくちゃいけないことがあるんだけどね。........実は私、タイムリープしてるの。」
「........は?」
「私は過去からきた。別の未来の人間。」
(第12話に続く)