「わっしー、ミノさん!........行くよ!」
「ああ!」
「ええ!」
三人は一斉に勇者システムを起動させる。そしてそれぞれの武器を握りしめた。
「........今のところ二体しか見えないな。」
「あとからもう一体来るんよ。油断は禁物だよ。」
「ええ。わかってるわ。もう一体姿が見えるまで隠れていましょう。」
三人とも冷静だった。状況を判断し、落ち着いた行動をとる。これも作戦の中の一つであった。
「ん....!あいつだな....!」
「そう。私が体験した二つの未来では、あいつの攻撃のせいでこちらのリズムが崩れた。」
「じゃああいつは矢を飛ばしてくる敵ね....。銀、そのっち、そろそろ攻撃に移りましょう。」
「ああ。」
「うん....!それじゃみんな、作戦通りに!」
「行くぞ!」
銀と園子は隠れていた樹海の茂みから飛び出し、バーテックスたちの前に出た。一方須美は今の位置よりさらに後ろへ飛び退き、見晴らしがよい場所に立つ。園子は移動しながら銀に話す。
「ミノさん!まずはあの赤いヤツからだよ!」
「ああ!見た目でだいたいわかった!反射板使うヤツだろ?」
「そう!さすがミノさん~!」
やがて二人はキャンサーバーテックスの前に立つ。
「....銀とそのっち、目標地点への移動を確認。」
須美はそう呟き、手を挙げる。それは園子と銀に対する合図だった。
「わっしー準備できたみたい~。」
「よし!........お前ら、よくもあたしを殺したな!もう一つの未来では須美を!そして、よくも園子を苦しめたな!....だがそれは別の未来の、別の世界の話だ!今からあたしたちがその未来を変えるっ!覚悟しろっー!!」
銀はバーテックス相手にそう叫び、園子の方を向いて小さく頷いた。それを見た園子も同じように頷いた。これを合図に、二人は左右に分かれ、戦いが始まる。
二手に分かれた園子と銀は作戦通り、キャンサーバーテックスを撹乱するようにしてすばしっこく動き回る。それに対してバーテックスは反射板をブンブン振り回し、まるでハエを叩き落とすかのような動きで二人を迎え撃つ。
「くそっ!こいつ反射板何個も持ってるからなかなか近づけないぞ!」
「大丈夫だよミノさん!今は落ち着いて動き回ってればいい!そのうちわっしーが....」
ちょうどその時、須美の放った矢がキャンサーバーテックスに突き刺さる。
「!?....須美すげぇ!!反射板の間をくぐり抜けて本体に当てやがった!」
攻撃を喰らった反動により、バーテックスはバランスを崩して体を斜めに傾ける。反射板の激しい動きも止まった。
「ミノさん!今っ!!」
「ああ!いくぞ園子!連携攻撃だぁー!!」
園子と銀は一気に距離を詰め、
「とりゃあっー!!!」 「やあっー!!!」
それぞれの武器を振り上げ、思いっきり振り落とした。
バキンッ!! ザクッ!!
強力な二人の連携攻撃は、バーテックスを再起不能にするに近いダメージを与えた。
「よし、やったぞ園子!」
「ミノさん!こっち来て!」
「え?」
その途端、無数の矢が空から降ってくる。
「うおっ!?」
「大丈夫ミノさん!私が守るから!」
園子は槍を傘に変形させ、矢から銀を守る。そしてサジタリウスの放った矢は近くにいたキャンサーバーテックスの体に突き刺さる。
「おっ!ラッキー!」
と、次の瞬間、二人めがけてスコーピオンの尾がバットを振るような感じで迫る。が....
バシュッ!
スコーピオンの尾は須美の矢に射抜かれ、二人に当たる寸前で止まった。
「おおっ!!須美ナイースっ!!」
「....本当に、わっしーファインプレーだよ~!」
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「ふぅ....危なかったわ。でもあいつら、そのっちと銀に気を取られてこっちには気づいてない。今のところ7.10作戦は順調だわ。」
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「今のうちに、あいつのトドメ刺しますか!」
銀はそう言うと、斧をがっしり持って回り始めた。
「終わりだっ!まずは一体!!」
高速回転し、まるでコマのようになってバーテックスの体をそこら中切り刻む。バラバラに崩れ落ちたキャンサーバーテックスは倒され、消えてなくなる。
「やった....!一体倒せた....!」
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「次はスコーピオンバーテックスね....。二人とも!次の攻撃準備に入って!」
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「おっ、須美から合図だ。どんどんいくぞ園子!」
「うんっ!」
園子たちは移動し、スコーピオンのところまで走る。が、その間にサジタリウスが矢を放ってきた。
(!?....どうしよう!ミノさんを守る時間はない!)
「....ミノさん!斧を傘代わりにして守って!」
「ああ!言われなくっても!これくらいは自分で守る!」
園子は槍を展開、銀は斧を頭の上に構えて矢を防ぐ。しかし、
「うぐっ....」
「!?ミノさん!!」
「へへっ....大丈夫....!かすり傷さ!」
斧のわずかな隙間を通って、いくつかの矢が銀を傷つけた。そうしてやっとスコーピオンの前までたどり着く。スコーピオンは近づかれまいと尾をブンブンと振ってきた。
「うおっ....あぶねっ....!」
「こいつ、尻尾さえなければ勝てるのに....!はっ....!?」
またしても矢が飛んでくる。園子と銀はそれぞれスコーピオンの攻撃を避けたために余計に遠ざかってしまっい、またしても園子は銀を守れない。
先ほどと同じように、銀は斧を傘代わりにするがやはり、
ザシュッ!グサッ!
「くっ....ぬうっ....!」
「ミノさん!!」
隙間を通り抜けて銀を傷つける。
「大丈夫大丈夫....!はぁ....はぁ....ちょっぴり痛いだけさ!」
銀はそう言うとまたすぐに動き始める。銀の体には生傷が多く刻まれていた。
(....!私ががんばらなきゃ!!)
その銀を見た園子はそう思って動こうとするが、背後から一振り。スコーピオンの尾が迫っていた。
(!?....矢に気を取られてて気づかなかった....!)
園子はギリギリのところで傘を向け、攻撃を最小限にするが、
「わっ....!」
ふっ飛ばされて派手に地面に転がってしまう。カランコロンと音を立てて園子の手から武器が離れる。
「!!園子っー!!」
「....ミノさん前っ!!」
今度は尾の先....毒が含まれている針を向け、銀めがけて刺してきた。
「ぬっ....ぐぐ....うわっ....!」
銀は斧を用いて危機一髪でガードするが、さっきの園子と同じように後ろへ飛ばされた。
「ミノさんっ!!!」
「ぐっ....!はぁ....はぁ....大丈夫だ....園子は?」
「私も....大丈夫!」
銀と園子はまた一つに固まり、武器を構えてバーテックスたちの前に立った。
「どうする園子。あいつらも多少の知識があるせいで、二体固まって攻めてきてやがる....!こっちの作戦がわかっちゃったか....?」
「これから一体ずつに別れさせるのは難しい....そういうことだね。」
「........ああ....。」
すると、園子の横からカタカタという音がする。それは銀の持つ斧が小刻みに震えていることによって生み出されている音だった。
「ミノさん....?」
そう、三ノ輪銀は震えていたのだ。よく見てみたら冷や汗も掻いている。
「へへ....あたしらしくないよな。自分でも不思議だよ。....あたし、あいつらに恐怖してるみたいだ。」
「きょ、恐怖....?」
「ああ....。あたしは、これから起こるかもしれない未来のことを知った。そして実際に今、ヤツらが優勢になっている。園子言ってたよな?....もう一つのお前が見た未来では、一体のバーテックスは余裕で倒せたけどその後苦戦して須美を失ったって....。もちろんあたしが死ぬかもしれないってのも怖いけどさ....」
銀は震える左手を右手で抑えるとこう言った。
「なによりも....お前ら二人のどっちかが死ぬかもしれないってのが怖いんだよっ....!」
銀は今まで心の内に隠していた自分の気持ちを打ち明けた。ずっと二人を不安にさせないために無理にでも明るく振る舞っていたのだ。もちろん侵攻が来る前は倒す気満々で、未来を変えるという強い意志があった。だが、一体目を倒した後....。こうして攻められていることにより、眠っていた不安感が一気に高まったのだ。
「そうだよね。ミノさんももちろん....そういうことあるよね。」
「..........。」
「でもミノさんいつも言ってるじゃない?『私たちがいる、一人じゃないよ』って。だからね....」
園子はそこまで言うと、銀の震える左手を優しく包み込むように握った。
「安心して!私たちは勝てるよ!....今は相手が優勢でもそんな状況、何かのきっかけさえあればいつだって変えられるんだから!神樹館勇者三人組は最強!!三人一緒ならどんな敵も、どんな困難も乗り越えられる!!」
「園子....!」
銀は斧を持つ手をギュッと握り締める。その瞬間、彼女の体の震えが収まった。
「ありがとう園子....。何言ってんだろうなあたし。ずっと自分で園子に言い聞かせてたのに。....そうだよな!あたしたちは無敵だよな!!」
「うんっ!」
「よっし!!やるぞ園子っー!!!」
「オー!!....作戦変更するよ!一体ずつ戦うのは難しくなった。それは二体とも固まって離れる気配がないから。だからこのまま、二体一気に倒す!!」
「了解!」
作戦変更を須美にも伝え、早くも三人は目の前のバーテックス討伐のために動き始める。
「作戦では先に尻尾のヤツを倒す予定だったな。」
「うん!....またどうにかしてサジタリウスの矢を当てられればいいけど....」
「また撹乱するしか方法はないと思う!あたしは行動するぞ!」
「わかったミノさん!危なくなったらすぐに私の近くへ!」
「了解!」
園子と銀はまた樹海の特殊な地形を生かし、二体の周りを飛んで回って動き回る。それを倒そうとして二体ともそれぞれの攻撃を仕掛ける。
「よっ!ほっ....と!当たらんぞそんな攻撃!」
そうしてやっとサジタリウスの流れ矢がまともにスコーピオンの体に刺さった。
「よし!チャンスだよミノさん!!」
「オッケー!園子、さっきの連携攻撃だ!」
スコーピオンの尾を挟むようにして銀と園子が突っ込む。両方から削られた尾は、見事に千切れて吹っ飛んだ。
「しゃあ!!これでこいつはもう敵じゃない!....このまま決める!」
銀は切り離した尾から高く飛び、斧を振りかざした。しかし、
ビュンビュン! ガガガガッ!
「くっ....!さすがにトドメはそう簡単に討たせてくれないよなぁ....サジタリウスめ、邪魔しやがって....!」
トドメを刺されそうになったスコーピオンを助けるため、サジタリウスが銀に向かって矢を放ったのだ。万が一のため、防御もとれるようにしていた銀はすべての攻撃から身を守る。
「へへっ!ようやく斧の隙間から攻撃を食らわないガード方法を身につけられたぜ!」
「ミノさん大丈夫~?」
着地した銀の近くへ、園子がやってくる。
「ああ、園子!この通りピンピンと........。....なっ!?」
そのとき、銀は衝撃の光景を目の当たりにする。
(さっき矢は右下方向から飛んできた....。なのに、なのになんで....園子の後ろ側から飛んでくるんだ!?)
「園子危ないっ!!!」
「え....?」
ザシュッ!!
「あ........ぁぁ........園子っーー!!」
銀は駆け寄りながら園子の名を呼ぶ。
(え........?私、今なにされたの....?もしかしてやられたの....?いや、大丈夫....ミノさんの声もよく聞こえるし目もよく見えてる....じゃあ、この痛みは....。)
園子はその場で倒れた。いや、厳密に言えば立てなくなった。
後ろから飛んできた矢---
それは園子の右股を貫通し、彼女の脚の筋肉を立てないように破壊した。
(どういうことだ!?なにが起こってる!?なんで園子は後ろから射抜かれた!?でも大丈夫だ....!運良く、当たったのは脚だけに見えた....!園子の命は心配ない!今すぐ園子を安全なところへ....。........!!あ、あれは....!?)
銀が見たもの。それは、先ほど倒したはずのキャンサーバーテックスの反射板だった。
(どうして....さっき倒したはず....!)
その反射板は今にも朽ちてなくなりそうであった。あのキャンサーバーテックスは最後の力を振り絞り、この反射板を残すのに賭けたのだ。
そしてその反射板は今、完全に消えてなくなった。
(あの反射板を利用してサジタリウスの矢を反射させたってわけか....!だから逆方向から矢が飛んできた....!だから園子を....)
「くっ....!そこまでして....そこまでしてあたしたちを殺したいかっ....!!」
銀は残り二体のバーテックスを睨みつけた。彼女の心は今、バーテックスに対する怒りと憎しみでいっぱいだった。
「お前らなんかに殺されてたまるかよ...。.........あたしが全員、一匹残らず殲滅させてやる....!!」
(第16話に続く)