「ぁ........ぅぅ....」
「!!」
銀は園子のうめき声で我に帰った。バーテックスを睨みつけていた目を、今度は心配する眼差しで園子を見た。
(そうだ....!まずは園子だ....!あたしはなにをやってる....!!)
「園子っ!!....大丈夫か?」
銀は園子に駆け寄り、背中におぶってバーテックスたちから離れる。
「私....どうなっちゃったの....?」
「後ろから矢で脚を貫かれたんだ。大丈夫、心配ない。これくらい命に関わることは....」
「ごめんねミノさん....。」
「えっ....?」
「私のせいで、陣形が崩れた....。」
「........。なぁんだ、そんなことかよ!それに関しては全っ然問題ない!」
二人が逃げている間、須美に援護されながらもなんとかバーテックスの目を撒くことができた。
銀はある程度の位置まで移動すると、そこに園子を寝かせた。そして銀は自らの勇者服を破り、それを園子の傷口に巻いて応急処置をした。
「よし....これで今できることはやった....。」
「ミノさん....私まだ戦えるよ!」
「はぁ?何言ってんだお前....。そんな体で戦えるわけないだろ!」
「でもっ....!」
「無理すんな!ここはあたしと須美でいける!........もう一体倒したんだ....あと二体くらい....!」
銀は振り返ってまたバーテックスを睨みつける。
「ミノさんだって傷だらけじゃない!........ミノさん焦ってるでしょ....?」
「!....大丈夫だ。任せとけ....。例えあいつらが怖いとしても、ここは頑張りどころだろ。」
「........。」
園子は銀の顔をじっと見つめる。それを見た銀はふう、と息を吐き、
「........ごめんな。ついカッとなっちゃって....。園子をこんな目に合わせたあいつらが憎たらしくてな。....でももう落ち着いた。お前のおかげだ園子。」
と言った。銀は武器を出すとバーテックスの方へ行こうとゆっくり歩き出す。
「....ちょっくら行ってくるよ。すぐ倒してすぐ帰ってくる。園子はそこであたしの活躍を見てな!だからそれまで少しのお別れだ。」
銀はそこまで言うとゆっくりと園子の方を振り返り、こう言った。
「........またね。」
(........!!!)
その言葉を聞いた瞬間、園子の中でなにかビビっと電流が走るような感覚に陥った。
(ダメだ....!ダメな気がする....!なんだろうこの感覚....とっても嫌な予感がする....!やっぱりミノさんをひとりで行かせちゃダメだ....私の中の『何か』がそう言ってる!!)
「うおっ!?....園子ぉ!?」
気づいた時には、銀の足を掴んでいた。絶対に行かせないようにがっしりと掴んでいた。
「ど、どうしたんだよ園子!?」
「ダメだよ....やっぱりダメだよ!三人で戦わなくちゃあいつらには勝てない!私の中で『何か』がそう叫んでるんだ!!」
「『何か』....?未来の記憶か?」
「わからない....でもそうなんだよっ!とにかく嫌な予感がするんだ!このままじゃきっと........」
「そんじゃどうすんだよっ!!その足でまともに動けるか?」
「........。....私の武器は変幻自在に変化する....。飛び道具にだって使えるんだよ。」
「えっ....?その槍が?」
「ただの槍だって思ってもらっちゃ困るよ。今までだって見てきたでしょ?傘にもなるし階段にもなる。」
「........わかった。だがこれだけは約束してくれ。」
「....なに?」
「無茶だけは....するなよ。」
「ふふっ....ははははははっ!!」
「!?な、なにがおかしい!?」
「あ~いや、まさかミノさんにそれを言われるなんて思ってなかったからさ~。........ミノさんこそ、無茶しないでね。」
「........ああ!」
そこまで話したところで須美から着信が来る。
『二人とも!そっちにバーテックスが向かってるわ!』
「!?感づかれたか....!わかった!須美はそのままそこから戦ってくれ!あたしたちも戦闘態勢に入る!」
『あたしたちって....そのっちは大丈夫なの!?』
「私は大丈夫だよ~!まだ戦えるから!」
『........わかったわ。それじゃ、ここであいつらとの決着をつけましょう!』
「了解!」
銀は園子から離れ、二体のバーテックスの前に堂々と立つ。
「さぁて....随分と大暴れしてくれたじゃねぇか。だけどな....」
銀は斧で地面に線を引く。そして、
「ここから先は、あたしたちが通さないっ!!」
戦闘が始まった。銀は軽快な身のこなしでバーテックスを撹乱。バーテックスも負けじと攻撃を放ってくる。
「もうその攻撃は覚えた!....その攻撃も、見たよさっき!!」
銀は見事に攻撃をかわしながら着実にダメージを与えていく。例え銀に隙がでても....
「南無八幡....大菩薩!」
須美がサポートし、バーテックスに対しても銀に攻撃を与える隙を与えない。
「よし、いい感じ!」
銀は両手の斧を勢い良く振り下ろし、スコーピオンの尾を切断。
「今だ園子っー!!」
「くらえっ~~~!!」
先ほどの場所に隠れていた園子が槍の先の部分をミサイルのように飛ばす。
ドゴッーン!!
「おお........思った以上に強力....さすがだな....。」
園子の放ったミサイルはスコーピオンの体を貫き、その体はボロボロに崩れていく。その威力は銀ですらも感嘆するほどだった。
(((あと一体....!)))
スコーピオンの体が崩れて消えたとき、三人は同時にそう思った。
「覚悟しろっー!!....ぬっ!?」
銀は真正面から向かおうとしたが、またしても矢の雨が降り注ぐ。
「くっ....!守ってばっかじゃ倒せねぇよ....!」
------------------------
「またあの攻撃....!援護しなくちゃ!」
須美は矢を放ち、サジタリウスにヒットさせる。その瞬間、銀に対するサジタリウスの攻撃は止まった。銀に対する攻撃は---
「止まった....?........いや、違う....。須美逃げろっー!」
今度は須美に向かって矢を放った。標的を変えたのだ。
(あいつ....わっしーに矢をわざと射させてわっしーがいるところを探したんだ....!今までずっとわっしーの援護が邪魔だったから....わっしーから先に倒すことにしたんだ!)
-----------------------
「え!?....矢が、こっちに....わっ....!」
須美は危機一髪矢を避けられたが、
-----------------------
「もしもしわっしー!わっしー!!」
(電話に....出ない....!)
須美は避けた反動により高いところから落ちた。受け身もうまくとれず、頭を強く打って気絶してしまったのだ。
「どうだ、須美は....?」
銀は一度、園子のところへ戻ってきて状況を聞いた。
「電話、出ないよ....。どうしようミノさん....もしわっしーが....!」
「そんなこと考えるな。それにきっと須美なら大丈夫さ。....あんなんでやられるほど須美は弱くないぞ。」
「....!....そうだよね!」
「ああ、そうだ。んじゃ、あいつはあたしら二人で........」
銀はそこまで言った途端、動きが止まった。同様に園子も。なぜなら、銀が園子のところへ戻ってきたことにより、バーテックスに園子が隠れている位置がバレてしまったからだ。もう完全にこちらを見られている。二人は全く同じ絶望の表情を見せた。
「ま、まじかよ........。」
「ミノさん逃げてっ!このままじゃ二人ともやられる!」
「何言ってんだ園子!お前を置いていくなんてできるかよ!!それに、あたしはお前を守るって約束したじゃんかよ!!」
(はっ....そうだ....私、なにやってんだろ。普通なら私がミノさんを守らなきゃいけないのに....タイムリーパーである私が、未来を知ってる私が守らなきゃいけないのに....私はまたミノさんに守られてばっかり。私は昔からなにも変わってないの....?いや、私は変わった。昔では経験してないことも今ではしてる。私は、私は三年前の弱い私じゃない!)
園子は銀の前に出た。彼女の盾になるようにして動かない右足を引きずりながら。
「園子なにしてんだっ!?」
「ミノさん大丈夫....あなたは、私が守るよ!私だって、強くなったんだから!」
サジタリウスが矢を放ってくる。園子はまた斧を傘状に展開させ、必死に銀を守る。
「ぐっ....ぬうっ....!させない、もうさせないっ!!」
「園子....。」
カンッカンッカンッ!ガッガッ!
その時、銀が槍を握りしめている園子の手を優しく握った。
「園子....一緒にやるぞ!!あたしだって舐めてもらっちゃ困る!お互い守り合うんだからな!!」
「ミノさん....!」
二人で槍を支え、サジタリウスの攻撃が止まるまで永遠と守り続ける。
「くっ....!向こうもしぶといな....!」
「でもこっちだって負けないんだから!」
「ああ!今に見てろバーテックス!これがあたしたち勇者の........」
銀は強く地面を蹴った。園子と槍ごとサジタリウスに突っ込んでいった。別に園子は驚かなかった。園子も銀はそうするだろうと考えていたからだ。二人は矢を弾き返しながらサジタリウスに迫る。
「気合いと!!!」
一定の距離まで近づくと、園子は傘を瞬間的にミサイルに変えて放った。大きな爆発音がなり、サジタリウスの体にヒットさせる。
「根性と!!!」
銀は槍を踏み台にして高く飛び、上空から大きく斧を振り下ろす。
『魂ってヤツよっーーー!!!』
二人の攻撃は完璧に決まった。園子は槍を使って受け身を取り、銀はそのまま綺麗に着地した。爆発したり斬られたりしたサジタリウスバーテックスはやがて崩れ落ち、鎮火の儀が始まった。
「たお....した....?」
園子は安心してその場で寝転び、空を見上げた。
(もう力....入らないや....)
「嘘....やった....やったな園子ぉー!!!」
「二人とも、倒せたのね!」
「あっ!須美ィ!」
奥から須美が小走りでやってくる。
「ごめんなさい....私、気絶しちゃってたみたいで....。」
「いやいや!むしろ大活躍だったぞ須美!お前の援護がなけりゃあたしはとっくに死んでただろうな!はははっ!」
「そんな縁起でもない....。」
「それにしても、勝ててよかった!....ああっ!?須美、頭から血出てるぞ!?」
「ああ、きっと頭を強く打って気絶したときね。大丈夫よ。ちょっとくらくらするけど....」
(やった....やったよ....ミノさんもわっしーも元気みたい....これで、これで未来が変わるはず....!)
「聞いてくれよ須美!最後のヤツすごかったんだぜ!ミサイルがボーン!ってなってあの矢を弾きながら突撃してさ!な、園子!!」
「........うん....そうだね....。」
「園子....?」
「ごめん二人とも....私、もう意識飛んじゃうかも....。」
「そんな........ちゃんと止血したはず....!」
「そのっち....その肩の傷は....?」
「ん?あ、きっとさっきの流れ弾だね~....。自分でも気づかなかったよ~....。」
園子の左肩にも穴がぽっかり空いていた。先ほどの矢の一つが彼女の肩を貫通したのだ。
「足の傷もちゃんと止血できてない........あたしが焦ってたせいだ....。」
「大丈夫だよミノさん....。」
「大丈夫なもんかっ....!だって、だって今お前....すっごい肌白いぞ....!」
「まだなの....?まだ樹海化は解けないの!?」
「二人とも落ち着いて。私は助かるよ。それだけはね、言えるんだ。」
『........。』
二人は園子の話に集中することにした。
「だって今、私すっごい幸せなんだよ....?本当ならさ、三人でこの戦いに勝つことはなかったんだからさ....。せっかく勝ったのに、今度は私が死ぬなんてありえないじゃない....?」
「........そのっち....!」
やがて樹海化が解け、三人は大橋付近に戻ってきた。依然、園子の血は止まらず、元の世界の地面も赤く染まっていく。
「だからね、これは嬉し涙だよ....。二人が今流してる涙もそうでしょ....?また元の楽しい生活ができると思うと私、とってもとっても嬉しくて........」
そこまで言うと銀に口を塞がれた。
「........わかったから、もう喋るな。傷口が余計に広がる....。」
「........そうだね。そろそろ....寝ようかな....。」
「一つだけ、私たちと約束してそのっち。」
須美はそう言って近づくと、銀と須美の手を重ね、その上に園子の手も置いた。
「また、三人で遊びましょう。次の週末はそのっちにお料理教えなきゃいけないんだし!」
「ああ、そうだな。夏祭り行くのもいいな!」
「あはは....そうだね~....三人で花火見て....射的とか....おいしいものとか........いっぱい............」
「........そのっち....?」
「お、おい....園子....?」
園子は最後まで話すことができずに深い眠りに落ちてしまった。
(本当に、ミノさんとわっしーと過ごすこれからが楽しみで仕方ないよ~!!)
(第17話に続く)
園子の生死はいかに....ってところで今回は終わらせていただきました笑
こうして7月10日は過ぎました。ということで、7.10作戦編も次回で最終話です!お楽しみに!