乃木園子は勇者である ~リベンジの章~   作:てんぱまん

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【第20話】Vindictive

 

風は両手でがっしりと刃物を持ち、体制を低くとってこちらを睨んでくる。もう覚悟は決めているようだった。

 

「な、なんですか風先輩!....そんな危険な物を持ってなにしようとしてるんですか!」

 

「芽吹....どきなさい。あなたには悪いことしないから....その後ろにいる『悪魔』をこっちに渡して。」

 

「はぁ....?なに血迷ったことを!どうしてしまったのですか!!」

 

小学校の敷地内と言っても、ここは周りの死角となっている。だが、騒いでいるのが聞かれてバレるのも時間の問題だろう。

 

「風先輩!早くそれをしまってください!」

 

「芽吹にも....話したことあるわよね....?」

 

風は芽吹の呼びかけを無視し、勝手に自分の話を続ける。すると風は片手でゆっくりと服をめくり、腹部にある火傷の古傷を見せた。

 

『....!!』

 

それを見た二人は驚き、目はその傷に釘付けになる。

 

「三年前....ソイツがちゃんと戦わなかったから私はこうなった....。樹はこれよりひどい傷をつけられた。そして両親を失った....。樹海が大きく傷ついたことによる被害、そうでしょ?乃木園子。」

 

「な、なにこれ........!?フーミン先輩はこんな傷なかったはず!いっつんの話だって聞いたことない!!」

 

「わ、私もよ....!きっと風先輩が言ってる『私』のことはこの世界の『私』だ....。私もこんなことは知らない!」

 

「あら、芽吹ったら知らないなんて言って........忘れちゃったのね....。でもこれ見てわかったでしょ?そこにいる女が....私の家族をぶち壊したのよ!!!」

 

「!!!」

 

「自分のしたことも知らないで....あんたは大赦の厳重な警備の中でのうのうと生きてた。大赦に守られ、『世界を守った英雄だ』と称えられ....唯一の生き残りとして祝われた。....三年前アンタのせいで災害に巻き込まれた私たちにとってはね、お前は『悪魔』なのよ!大切なものを奪った、人生を狂わせた『悪魔』なの!!」

 

「そんな........そんなことになってたなんて....!ごめんなさい....ごめんなさい....。」

 

狂ったように罵声を浴びさせる風を前に、園子は混乱していた。そんな園子を、

 

「....大丈夫よ、園子。なに風先輩の言ってること真に受けてんのよ!風先輩がこうなってしまったのはたまたまこういう未来になってしまったから。あなたが過去に戻って、また未来を変えたら元の風先輩に戻るわ!」

 

「メブー....!」

 

「だから今は、風先輩を切り抜けて鉄男くんと接触する!そしてタイムリープすることだけを考えるのよ!あなたが過去にさえ戻れば、すべて済む話!」

 

「....わかった!」

 

風はまた一歩こちらに近づく。そうする度に、芽吹は一歩下がる。

 

(落ち着け....!この状況を切り抜ける策を考えるのよ!なんとしても....園子だけは守らなくちゃいけない!)

 

「風先輩........それであなたの欲求は満たされるのですか?」

 

「........はぁ?」

 

「あなたが園子を殺めれば、樹が悲しみます!....そして樹はひとりで生きていくことになります....!」

 

「........!」

 

「あなたの一番大切な妹が苦しむんですよ!姉が人殺しになるんですよ!........復讐だとか何とか言って....それで樹は救われますか....?あなたは自分勝手なことをしない人間のはずだ!私の知ってる風先輩は、こんなことしない!!」

 

「........あんたに....なにがわかる....。」

 

「えっ....?」

 

「知ったような口きいてんじゃないわよ!!!」

 

風は泣きながら怒り狂っていた。再び刃物をギュッと握り、こちらに迫ってくる。感じたことのない気迫。風が人間ではなく、鬼のように見えた。そして同時に芽吹と園子はこう思った。

 

(....これは、風先輩じゃない....!)  (....これはフーミン先輩じゃない....!)

 

「死ねっー!!乃木園子ォォォォ!!!」

 

風は力強く地面を蹴り、ダッシュで刺しに来る。

 

(風先輩が樹よりも自分の復讐心を優先するなんて....!信じられない!!)

 

(そんなっ....!このまま来るの!?メブーが正面のままだよ!?このままじゃ私じゃなくてメブーのことを....!)

 

完全に我を失っている。このときの風は誰かに操られているようだった。

 

「メブー!避けてっー!!」

 

園子を背負っているだけでなく、ここまで走ってきた疲労で芽吹は思うように動けない。

---終わった。

二人とも完全にそう思ったが....。

 

「たあっー!!」

 

「ぐっ....!」

 

そのとき、風の動きが突然停止した。突進してきた風を止めたのは友奈だった。風の手を掴んだと思うとそのまま地面に叩きつけ、見事に締め技をキメている。

 

「!?....ゆ、友奈!?」

 

「芽吹ちゃん早く!締め技はあんまり得意じゃないんだ!....解かれるのも時間の問題!早く鉄男くんのところへ!」

 

「すごい....!さすがゆーゆだ....!」

 

「わかった!ありがとう友奈!....このチャンス、無駄にはしない!準備はいいわね園子!!」

 

「....うん!」

 

芽吹は再び鉄男の元へと走り出す。が....。

 

「させるかぁっ!!」

 

風が足を伸ばし、芽吹の足に引っ掛けて転ばせた。

 

「うわっ....!」

 

全速力で駆けた芽吹はその勢いのまま激しく転び、背中にいた園子も芽吹から離れて地面に転がった。

 

「どうしちゃったんですか風先輩っ....!やめて....くださいっ....!それにしてもすごい力....!女の子じゃないみたい....!」

 

(まずい....!ゆーゆの締め技が解かれちゃう!)

 

「くっ....!足の先まで使って邪魔するなんて、あなたもしぶといですね....風先輩....!」

 

「行かせない!行かせないんだからあっ!!私がソイツを殺すまで逃がすものかぁっー!!!」

 

「そこまでして復讐したいですか....!」

 

友奈の拘束が解かれそうになったとき、また風の体を止める少女が一人。一瞬にして現れた。彼女は風を抱きしめるようにして、優しく止めた。それまで周りの誰もがその彼女の存在に気づかなかった。その人物とは....

 

「あっ....!?い、樹....?」

 

現れたのは風の実の妹、樹であった。風はあまりにも驚き、絶句して妹の顔を見ている。

 

「もう....いいよお姉ちゃん....。私、復讐とかしたくないよ....!園子さんがいなかったら、そもそも私たちこの世にいないかもしれないんだよ....?園子さんは復讐相手なんかじゃない!私たちの命の恩人なんだよ!!」

 

「樹が....どうしてここに....!?はっ....!」

 

芽吹が奥を見ると激しく息を切らせた夏凜が立っていた。おそらく全速力でここに来て樹を連れてきたのだろう。

 

「はぁっ....はぁっ....風の様子がおかしかったから連れてきたのよ!....はぁ....はぁ....風を止められるのは....樹だけでしょ?」

 

「....!........ナイスアシストよ夏凜ー!!」

 

芽吹はとても嬉しそうにそう叫び、ゆっくり立ち上がった。

 

「みんな....ありがとう!いっそのこと....最初からこうしておけばよかったのかもね....!勇者部はやっぱりみんな強い!....さ、今度こそ行くわよ園子!」

 

「うん!行こう!」

 

「園子、今度は風先輩のことも助けてよね!こんなのこりごりだわ!」

 

「....もちろんだよ!」

 

芽吹は再び園子を背負い、また走り出す。

 

------

 

「離しなさい樹....!」

 

「えっ....?」

 

「もう私は、やめられないのよ....!自分でもなぜかわからない....!体が止められないのよ....!あいつを殺さなきゃって気持ちが、収まらないのよ....!自分が怖いわ!こんな自分が怖い!!」

 

風はまた狂気地味た表情をすると、激しく体を動かして樹を振り払った。

 

「お、お姉ちゃん....!?」

 

「風先輩っ....!まだこんな動ける体力が....!」

 

友奈も全力で止めているが、暴れ牛のごとく暴れまわる風を前に気圧されていた。

 

「そんなっ....樹を振り解いた!?風が樹の言うこと聞かないなんてこと、ありえない!!」

 

夏凜も驚き、芽吹に危険を知らせようとする。しかし、鉄男の方に向かって行っているため距離が先ほどよりも遠い。ここからでは伝えられない。

一方、風はごちゃごちゃ喋りながら一度落とした刃物に手を伸ばす。

 

「あれ........?おかしいなぁ....体が言うこと聞かない....。いつからこうなってたんだろうな....?誰か止めて....!私を止めて....!あいつを殺したくてたまらないのよ!!なんなのこの衝動....!最初はこんなことまでしようなんて思わなかったのに!ここまでしたいなんて思ってなかったのに!!」

 

風はそう泣き叫びながら地面に落ちている刃物を拾い、

 

 

グサッ!

 

 

「うっ....!?........あああああっ~!!」

 

動きを止めていた友奈の腕を刺した。それにより拘束は解かれ、風は立ち上がる。

 

「あぁ....私、友奈のことを....!あぁ....あぁ....ホントなんなのこれ....。」

 

------------

 

「!?風先輩が友奈の拘束を抜け出した!?どういうこと....!樹の言うことも聞かなかったわけ!?」

 

友奈の悲痛の叫びを聞いた芽吹が振り返り、状況を見て焦る。鉄男のところまであと少しだ。そんなとき、園子は風について考えていた。

 

(さっきフーミン先輩が言ってたこと........引っかかる....。もしかして........フーミン先輩がおかしくなったのは私のこのタイムリープと似た何かの能力....?私のリベンジを阻止しようとしてる人がいるってこと....?絶対そうに違いない....!そうじゃないといっつんのこともゆーゆのことも無視する風先輩なんて、どう考えてもおかしい!!誰かがフーミン先輩を使って、私を消そうとしてるんだ!!!)

 

------------ 

 

風は泣きじゃくりながら友奈に刺した刃物を抜き、それを投げる体制を作る。

 

「あ........私、投げようとしてる....?やめて....こんなことしたくない....!私の大切なものを....自分でどんどん壊してる....!やめて........やめてぇ........止まって........やだあああああああああああああああっ!!!」

 

風は心の中で必死に抵抗していた。しかし、残酷にも刃物は風の手から放たれた。投げられた刃物は園子に向かって飛んでいく。が....風の直前の抵抗が功を制したのか、刃物は園子を外れた。その代わりに当たったのは....

 

「ぐっ....!」

 

「!!....メブー!」

 

刃物が当たった場所は芽吹の足だった。芽吹はまたしても派手に転び、園子が地面に放たれる。

 

「ぅ....メブー!大丈夫!?メブー!!」

 

「これくらいでへこたれる....私じゃないわ....!でも........これじゃもう走れないわね....。」

 

園子は後ろを見る。こちらには風が感情を入り乱した表情で向かってきている。

 

(早く....てっちゃんに会わないと....!)

 

自分だけでもなんとかして動こうとしたとき、目の前にザッと人影が一つ。

 

(....!て、てっちゃん....!!)

 

「園子姉ちゃん!わざわざここまで会いに来てくれたんだね....!状況がヤバいのは見てわかった!」

 

園子は涙を浮かべながら彼の顔を見て喜んだ。さすがにこの騒ぎを見て気づき、こちらに来たようだった。

 

「来るのが遅いわよ....鉄男くん....。」

 

「すみません芽吹さん....。俺に会わせるためにそんなにボロボロにさせてしまって....。」

 

「いいから早く握手しなさい....!」

 

「あ....は、はい!」

 

鉄男は園子の体を起き上がらせ、残った園子の左手を握る。

 

「園子....風のことも助けるのよ....!なんとかして二人を会わせられてよかったわ....!全く、いちいち過去に戻らせるのにこんな目に遭うなんて....骨が折れるわ。」

 

「本当にありがとうメブー....!絶対に変えてみせるから!....いっつんも、にぼっしーもゆーゆも....みんなありがとう....!次の未来ではわっしーに会わせてあげるからね!」

 

「じゃあ園子....頼んだわよ....!」

 

「うん!任せて!」

 

芽吹はそう言い、だるそうに微笑んだ。園子は最後に、こちらに向かってきている風を見た。

 

(フーミン先輩!この謎は、私が必ず解き明かします!あなたを利用した真犯人を突き止めます!そして、次の未来ではみんな笑っていられる未来にします....!それまで待っていてください!)

 

 

 

ブチっっっ!

 

 

 

「........あるんすか....!」

 

「はっ....!戻ってきた....?」

 

「はぁ?」

 

園子がいたのはベッドの上。そして両手足が存在し、左足と右肩を負傷している。

 

(間違いない....!三年前だ!ちゃんとこの前の続きからになってる!)

 

「ちょっとー!聞いてます~?」

 

「あっ、てっちゃんごめん!なになに?」

 

「だから!俺と握手したらなんかあるんすか?....ったく、ホントなんなんだこの人....。」

 

鉄男は機嫌悪そうに園子と接する。園子はとりあえず、今はひとりにしておいて欲しかった。考えたいことがあるのだ。風の異常な変化についてまとめたかった。

 

「ご、ごめんてっちゃん!........もう帰っていいよ!」

 

「はぁ!?嘘でしょ!?また握手して終わり!?せめて質問に答えろよ!握手したらなんかあるのかの質問に答えろ!」

 

「ごめん!急用思い出しちゃってさ~!」

 

「入院中に急用もクソもないだろ!.....わかりましたよ!帰ればいいんだな!もう二度と来ませんから!会いませんから!さよなら!!」

 

鉄男はすっかり腹を立てながら、病室のドアを思いっきり強く閉めて帰って行った。

 

「あ~....怒っちゃうのも無理ないよね~....次会ってくれるかな~....。でもね....理由話しても信じてくれないと思うんだ~。それに、話さないのはてっちゃんのことを思ってのことだから....本当にごめんね。」

 

園子は鉄男がいなくなってから謝ると、頭を切り替えて今の状況を整理した。

 

(あの風先輩は....誰かが操ったって説が一番濃厚かな....?確かにあの狂いようはおかしかったし、不自然だった。だとしたらなんで....?誰がどうして私を殺そうとする?なんで自分でやらないでフーミン先輩を使う....?)

 

園子は自分の先祖と話した夢を思い出す。彼女が言っていた言葉を。

 

(『この能力は私だけにあるものじゃない』、『私が思っているよりも長い戦いになるだろう』....確かにその通りかもしれない。その意味がやっと理解できた気がする。そのことを踏まえて今回のタイムリープでわかったこと。それは........信じたくないけど....。私の敵はバーテックスだけじゃなくて、他にもいる....!)

 

園子は勇者部の仲間を使って自分を殺そうとしたことがなによりも許せなかった。おまけに周りまで巻き込んで友奈と芽吹にケガをさせ、樹の心を傷つけた。園子はまるで自分が舐められているように感じた。

 

(いいよ....。相手になるよ。バーテックスだろうが他の敵だろうが全員倒す!....幸せな未来を掴むためなら何度だってやり直す!)

 

園子は天井に手をかざし、また覚悟を決めた。

 

「リベンジ....再開だ!」

 

(第21話に続く)




ついに新たな敵(?)が少しだけ姿を現しましたね。結局風先輩は誰かに操られていた....ということです(雛○沢症候群とかの病気系ではないです!)。さすがに風先輩を悪者にできない....w
まあ、それは誰がやってどのような能力なのかは物語の進展を待っていただくとして、ここから先は一度日常パートに入っていくことにします(二話くらい)!ここまで怒涛のグロ&鬱展開でしたからたまには癒やしの回をってことで....w
ということなので次回からは7月10日以降に銀が加わったらという完全オリジナルストーリーとなっていきます!園子に料理を教える約束、三人で迎える夏祭り、ハロウィン....そして『アレ』が実装........?
今回も読んでいただきありがとうございました!次回もどうか引き続き楽しみに更新を待っていてください!

正直物語の今までの展開は

  • かなりおもしろい
  • おもしろい
  • 普通
  • つまらない
  • かなりつまらない
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