乃木園子は勇者である ~リベンジの章~   作:てんぱまん

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【第21話】Against Fate

 

「いいか?今まで通り普通に接するんだぞ!」

 

「わ、わかってるわよ銀!いつも通りに....!」

 

銀と須美の会話が病室の外から聞こえてくる。どうやら過去の園子と話すつもりで作戦会議をしているようだった。

 

(アハハ....二人とも声デカいよ....中まで聞こえちゃってる....。それに結局、今の私は未来の私だしね~)

 

 

ガラッ

 

 

「よ、よお園子ォ!元気かー?」

 

「体調は....ど、どうかしら?どっか変なとこない?....おかしいところとかいつもと違うみたいな....」

 

「須美!一言多いぞ!」

 

「あっ、あっ、なんでもないなんでもない!気にしないでそのっち!」

 

「フフフフ....二人とも違和感ありすぎだよ~!そんなので過去の私と接しようとしてたわけ~?....かわいいな~二人とも!」

 

『えっ?』

 

園子の口振りを聞いて二人はぽかんとする。

 

「........ど~も。未来の、私だよ。もう一回戻ってきた....。」

 

「例の園子なんだな....!やったぁ!!また会えた!よかったー!」

 

銀は園子の手を取り、無邪気に喜ぶ。が....

 

「その感じ....しかも戻ってきたってことはまたダメだったのね....?」

 

須美は銀と対象的に、悲しそうな表情でそう聞く。

 

「うん、そうだよ....。あの三体をみんなで倒せたのにまたダメだった....。今度のもなかなか苦しい未来だったよ....。」

 

「ま、まじかよ....!今度はどうなってた!?」

 

「ミノさんもわっしーも、二人とも........死んだことになってた....。」

 

『え....!?』

 

須美も銀も顔色を変えて驚いた。

 

「それはどういうこと....?あの後、私たちはまた別のお役目で命を失ったってこと....!?」

 

「うん....そういうこと....。それに、私もただでは済んでなかった。右手、両足がなくなってて....他にも傷だらけだった。それでも私が無事だったのは....二人が命を懸けて守ってくれたから。ミノさんとわっしーがタイムリープできる私を信じてくれたんだよ。本当にありがとう....。」

 

「なるほど....確かにあたしらは園子がタイムスリップできるのを知らされていたわけだしな........。未来のあたしら結構やるじゃん!うん、賢明な判断だったと思う!」

 

「変わったのはそれだけじゃない....。私の未来の仲間もおかしくなってた....。だけどその他の仲間たちが命がけで、必死に、私をタイムリープするために導いてくれて....ここに戻ってこれた。」

 

「いろいろと大変....だったのね....。」

 

「....私は、その未来の友達たちのためにもがんばらなくちゃいけないんだよ....!」

 

園子は拳を握り、二人に自分の意志を伝える。

 

「おいおい、ひとりで抱え込もうとするなよ?こっちではあたしらがお前の仲間なんだからな。いっぱい頼れよ。」

 

「ミノさん....!」

 

「でも........今度はどうしたらいいの?作戦練って戦えば勝てる、まともな相手....というわけにはいかないのでしょう?」

 

「うん....。あの数、あの強さには今の勇者システムで勝つなんて夢のまた夢の話。だから....勇者システムを強化する!」

 

「強化!?....そんなことできんのか!?」

 

「私が一番最初にいた世界では、ミノさんが命を失ったのが理由で勇者システムがアップデートされた....。さっき私が行ってきた世界の場合は、二人が命を失ったから....のちの勇者たちが使う勇者システムがパワーアップされた。つまり、大赦は誰かが犠牲にならないとシステムを改善する動きはしない。」

 

「えっ....!じゃあそんなのどうすればいいんだよ....!?」

 

「『大赦に直接頼み込む』....それしかないわね。」

 

「わっしーの言う通り!こっちからお願いするしかない!....大赦だって私たちに世界を委ねてるんだから私たちの言うことに逆らえず、素直に言うことを聞いてくれると思うよ。........ただ....」

 

「『ただ』....なんだよ?」

 

「いや...やっぱりいい。.....この話はまた今度にするよ。私が退院してから、ね!」

 

「お、おう....そうか....。」

 

「それにしても、次の侵攻はいつかしら....。」

 

「!!....そうだ、次バーテックスが攻めてくるのはもうすぐだよ!」

 

『ええっ!?』

 

「確か........もう明日だった気がする....!ミノさんのお葬式の最中に来た覚えがある....!」

 

「なんだそいつ!不謹慎だな!!....あたしの葬式中に来るなんて良い度胸じゃねぇか!許せねえ!」

 

「....こう聞くと銀の発言が不思議でならないわ....。」

 

「大丈夫だよ二人とも!きっと私がいなくても勝てるよ!あのとき来たバーテックスは一体だけで、私たち二人だけでも勝てたし!........でも、わっしーも私もあの時はかなり怒ってたからね~....。ミノさん譲りの『気合い』と『根性』で乗り切ったんよ~!」

 

「つまり、それで倒せる相手ってことね!」

 

「おい須美ィ!『気合い』と『根性』を舐めるなよ?」

 

「別に舐めてなんかないわ。二人でも勝てる相手と聞いて安心しただけよ。」

 

「とりあえず二人とも!....私たちだけでこなすお役目はあと二回だよ!もうすぐ終わるんだ。」

 

「ええっ!?あと二回!?明日の侵攻乗り越えたら次ラスト!?........なんだかちょっと寂しいかも....。」

 

「ということは........問題のお役目はその最後の戦いってわけね....。」

 

「そうだよ。あの戦いは今でも覚えている....。」

 

園子は自分の心臓に手を添えて言った。

「........地獄、だった....。」

 

『....!!』

 

昨日のことのように思い出せる。容赦なく侵入してくる多くの十二星座バーテックス。自分のことも、勇者のことも、なにもかも忘れて戦闘不能になった須美の姿....そして自分を軽蔑するかのような須美の怯えた目。どんどん動かなくなっていく自分の体、戦うごとに感覚がなくなっていき、死に近づいているかのような散華の感覚。実際は死から遠ざかっているというのに、なんともたちの悪い機能だなと思った。最後の方はもう、自分はすでに死んでいるつもりで戦っていた。生きているかも死んでいるかも判断がつかなくなっていたのだ。........よければ死んでいた方がマシ。そう思うほどがむしゃらに動き続けた。終わった頃にはもう、樹海が天国だと錯覚するほど精神的にも肉体的にもズタボロになっていて....。

 

「........はぁ....はぁ........はぁ....もう二度とあんな目に遭うもんか....!」

 

「そ、そのっち大丈夫!?」

 

「落ち着け園子!....ほら、水だ!」

 

「!....ありがとう、ごめん二人とも....。思い出しちゃってさ....。」

 

「相当、つらかったのね....。」

 

「....もう大丈夫だよ。秋を切り抜けるまで頑張らないとね!」

 

『........。』

 

「私ね、三人でクリスマスを迎えることが夢なんだ....。まあ、その前にハロウィンがあるけど....あの時のクリスマスは一人だったからさ....。毎年クリスマスは嫌な目に遭うんだ。この前だってゆーゆが....。」

 

「何言ってんだよ園子。....そんな当たり前なこと言って。あたしたちはいつまでも一緒だろ?バーテックスなんかドーンとぶっ倒しちゃってさ!三人で楽しもうぜ!」

 

銀はブンブン腕を振り回して言った。

 

「そのっち、そんなに心配なら約束しましょ!....はろえんもくりすますも、なんなら年末も一緒に過ごす!ってね!」

 

「!....うん、そうしよう!」

 

須美に賛同し、三人は丸くなって小指を結んだ。小指で繋がれたサークルが生まれ、そのうち三人は歌い始めた。

 

『指切りげんまん嘘ついたら針千本の~ますっ!指切った!』

 

「はい!これでもう約束破れないわよ!何が何でも守ってもらわなくちゃね~?」

 

「もちろんだ!あたしは、二人のどっちかがもし破ったら本当に針千本飲ませるつもりだからな!」

 

三人は終始笑っていた。園子はさっきの未来が悪夢だったかのように感じるほど幸せだった。

 

(本当にありがとう....二人とも。やっぱりわっしーとミノさんは、私が生きるにおいて必要な存在だ....。私の生きる糧だよ....!)

 

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翌日。二人は当然のようにお見舞いに来てくれた。だが、楽しく話している最中に突然二人は目の前から消えた。....不思議な感覚だった。周りの人から見たらこんな感じなのか。二人がこの世から急に消されたみたいで嫌だった。当然、二人は例のお役目をこなすためにいなくなったのだが。

それからいなくなってすぐに二人から連絡が来た。それはバーテックスを無事倒したという報告だった。連絡が来たのは二人が消えてからほんの一瞬だった。実際、二人は結構長く戦っていたであろう。それが、現実世界では何事もなかったかのように時間が進んでいる。まるで戦っていた事実は最初からなかったかのようになっている。

 

(こんな感覚なんだな....。現役勇者で、お役目が来るのがわかってて、目の前で人が消える感覚って....こんな感じなんだ....。)

 

園子は二人が大橋から帰ってくるまでにいろいろ考えた。自分たちがバーテックスに手こずり、樹海が大きく傷ついたとき、現実世界に影響が出るのはいつなんだろう。樹海化が戻って全部すぐ起こるのか、時間をおいてから少しずつ影響が現れるのか。....風から見た『あの時』の景色はどうだったのか。両親が目の前で死に、樹と自分が火傷に苦しむ情景。どんな災害で被害にあったかはわからない。が、長い時間地獄にいたのは間違いない。他にも考えた。いきなり災害に巻き込まれた人は....私のせいで死んだ人たちはどんな気持ちだったのか........。彼らも前の私と一緒で突然日常を奪われた仲間....。勇者か勇者じゃないかなんてのは関係ない。どちらもバーテックスのせいで大切な人を失った。または自分が命を失った....。いや、バーテックスのせいじゃなく自分たちのせいか?自分たちがミスしなければ、さっしと倒せていれば彼らは生きていたはず....。園子はとにかく考えた。そして、須美と銀が戻ってきたときにはもうなにが正解でどうしたらいいのか....よくわからなくなっていた。

 

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とある日の夕方

 

「ねぇ....二人に聞くけどさ.....」

 

「なんだ?」   「なにかしら?」

 

「........私たち、バーテックスを倒せばいいんだよね?樹海をなるべく傷つけず、自分たちもなるべく傷つかず....バーテックスを倒せばいいんだよね?」

 

『........。』

 

園子の話を聞き、須美と銀は顔を見合わせる。

 

「そうすれば世界は救われるんだよね?誰も傷つかないで助かるんだよね?....バーテックスを倒し続ければすべて済む話なんだよね?私たちがしてることは....世界のためなんだよね?」

 

「........園子、どうした。」

 

「またなにか....一人で考え事してたのね?未来でなにか言われた?」

 

「!!....私の心、読まれちゃったか。うん....。いろいろ考えているうちにね、よくわからなくなっちゃって....。」

 

「園子........お前が初めてタイムリープしたとき、もうバーテックスの元凶との決着はついて、全部終わってたんだろ?」

 

「あ........うん....そういえばそうだ....。」

 

「そ!....つまり人類はいつか必ずバーテックスを打ち破れる日は来るんだ!その日まで私たちは世界を守り続けるんだよ!....園子が体験した未来は園子にしかわからないけど、今できることをやる。それしかないと思うぜ!」

 

「こういうときの銀の言葉は胸にくるものがあるわよね....。そうよ、そのっち。だから今を楽しみなさい。そのっちは今よりも昔よりは戻れないのだから!もう小学六年生の私たちといられるのも今のうちよ?」

 

「もしかして........私の考えすぎ?今悩んでもしょうがない?」

 

『そうだよ!』

 

二人は元気よくそう答えた。須美と銀の笑顔を見た園子はパッと花開いたような顔になり、

 

「わあっ!!元気出た~!ありがと~~!!」

 

と言って二人に抱きついた。それ以来、一度園子はその未来のことを考えるのをやめて今のことだけを考えるようにした。そうしているうちに、その記憶はだんだんと薄れていった。

 

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三ノ輪家 居間

 

「乃木さんちの園子さん!完全復活だぜい!」

 

『退院おめでとっー!!園子ー!!』

 

 

パンパンッ!

 

 

二人は園子にお祝いのクラッカーを鳴らすと、机の上にケーキを持ってきた。

 

「うわあっ!?なにこれすっごいおいしそ!二人で作ったの!?」

 

「えへへ....さすがにあたしたち二人じゃキツかったからあたしのお母さんにもちょっと手伝ってもらってな。奮発したぞ!」

 

「....今回は特別よ!けぇきなんて初めて作ったわ....。」

 

「わ~い!!ありがとう二人とも~!!大好きだよ~!」

 

園子は飛びついて二人に抱きつく。そしてそのままギュッと自分に近づけ、もう離さまいと言わんばかりにきつく抱きしめた。

 

「もう、そのっち!........そんな言葉....恥ずかしいわ....。」

 

「あはははは!キツいぞ園子!キツいってばぁ~!」

 

「今日はこのままミノさん家でお泊まりパーティーだよ~!今日は寝かせないぜっ~!!」

 

園子はとにかく幸せだった。やがてケーキにかぶりつき、この日は銀の家でパーティーを開いて夜遅くまで騒ぎまくった。途中で鉄男にうるさいと怒鳴られたり、須美のテンションがいきなり上がって暴走したり、枕投げをして盛り上がったり....楽しいひとときは一瞬で過ぎ去った。

 

「そう言えば、ミノさん家に泊まるのも初めてだね~」

 

「そういやそうだな!....うち来るのも初めてじゃね?」

 

「そうだね~!ここにきて初めてだらけだ~!」

 

「二人とも....もう寝なさい....」

 

「須美....もう疲れて寝かけてるじゃん....」

 

「わっしーは夜更かしが苦手なんよ~。明日も休みだからいっぱい遊べるね~!」

 

「さてどうだか....明日起きられるかわからんぞ~」

 

「絶対起きてみせるもん!........そして、二人にお料理教えてもらうんだ~」

 

「おっ!そういや約束してたな!よし、明日はお料理大会だな!....明日も頑張ろうぜ須美!」

 

「すぅ........すぅ............んぅ............」

 

「ありゃりゃ....寝ちゃったよ....。」

 

「わっしーの寝顔、かわいいね~....。」

 

園子が須美の顔をじっと見つめていたとき、いきなり銀が声のトーンを変えてこう言ってきた。

 

「............ありがとな、園子。」

 

「えっ....?どうしたの急に....。」

 

「........お前がタイムスリップして、命懸けであたしを助けてくれなかったら....今あたしはここにいないんだもんな。....三人でこんな楽しいこともできなかったってわけだ。それに、あたしのために何度もやり直してくれたんだろ?ホント、感謝してるよ。........あたしも今、最っ高に幸せだ....!ありがとう園子....!」

 

銀に改めてこう言われ、園子は自然と目が潤んできた。

 

「ちがうよ....。」

 

園子は唐突にそうとだけ言った。

 

「....えっ?」

 

銀は聞き返すと、園子の潤んでいた目から小さな涙がこぼれ落ちる。

 

「ちがうよミノさん....今更そんなこと言って....。当たり前のことをしただけで、私のしたかったことをやっただけでお礼なんか言われる筋合いはないんだよ。........二人のことはね、私にとってかけがえのない存在なの。初めてできた最高の友達。自分の命よりも、なによりも大切な存在なの。........そのためなら、私は何度だってがんばるよ。何度だって助けるよ。何度だって立ち上がるよ。それで私の宝物が救われるのなら。一緒に楽しくいられるのなら。....何回でもやり直すよ....!」

 

「そ、園子....!」

 

それを聞いた銀も、感動しているようだった。ここまで自分のことを思ってくれている園子に対し、心を打たれていた。銀はそれを隠すように、布団にくるまった。

 

「よ、よし!もう寝るぞ園子!........ずるっ....」

 

銀から鼻をすする音がする。

 

「?........ミノさん泣いてる....?」

 

「!!....な、泣いてない!..........泣いてない....ぞぉっ....!」

 

「....やっぱり泣いてるでしょ~!」

 

「泣いてないってばぁ!早く寝ろぉ!」

 

(第22話に続く)




更新遅れて申し訳ありません!
また明日に連続更新として第22話もアップするので楽しみに待っていてください!
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