乃木園子は勇者である ~リベンジの章~   作:てんぱまん

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【第24話】What is an ideal

 

「未来に帰ってくれって...どいういうこと..?もしかして私のこと嫌いになっちゃったの...!?」

 

深刻な顔をして聞いてくる園子。それを見た須美と銀は、

 

『あはははははははっ!!!』

 

と腹を抱えて笑った。

 

「ええっ!?なになに!?」

 

「あはは!...園子違うって。満開が実装された後の未来はどうなってるか知りたいなって思ったから頼んだだけ!そんな風に思うなんて...フフフ...おもしろい...!」

 

「ふふ...。もしかしたらそのっちがまた苦しい目に合うかも知れないから申し訳ない気持ちで頭を下げてお願いしたのよ。そもそも、私たちがそのっちを嫌いになる理由なんてないじゃない!」

 

「そうだぞ!あたしらは園子が大好きだ!嫌いになるなんてありえん!!」

 

銀は自信を持って『えっへん』と胸を張る。

 

「なんだ~....よかった~...。でもまあ、確かに確認は大事だね。せっかく使える力なんだから、存分に使っておかないと!」

 

園子はその日のうちに三ノ輪家に寄り、鉄男と接触した。一緒に来た銀と須美にタイムリープする瞬間を見られてしまったが、今更トリガーが鉄男であることを二人にバレても問題はないと判断した。

 

 

バチっっっ!

 

 

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--

 

「........っち........のっち........そのっち!」

 

「ん...むにゃ...?」

 

園子が眠たい目を無理やり開けながら顔を見上げると、そこには須美が教科書を持って立っていた。いや、須美というよりも『東郷美森』と言った方が正しいだろうか。

 

「もうお昼休みも終わりよ!次は移動教室だから早く起きて~!」

 

「わ、わっしー...?」

 

「え?」

 

「わっしーが....生きてる...!」

 

園子は涙目になって東郷の手を強く握った。

 

「ちょ...そのっち....どうしたの?」

 

「............いや...ひどい悪夢を...見ていただけなんよ~」

 

その時、その言葉を聞いて東郷がピクッと反応した気がした。

 

「あんたら...手取り合ってなにしてんのよ...。」

 

「あっ、夏凜ちゃん...。」

 

「えっ!?にぼっしーもいる!?」

 

「『いる』って...失礼ね!毎日いるじゃない!」

 

なんとそこには夏凜も平然として存在していた。ということは銀は...?園子は少し心配になる。

 

「東郷さ~ん!夏凜ちゃ~ん!そのちゃ~ん!みんな準備できた~?」

 

「...園子のことだから、ギリギリまで寝てたんだろ?」

 

と、後ろから二人に声をかけられる。聞き覚えのある声に、園子はすぐバッと振り返った。そこにいたのは友奈と銀だった。園子は大きく目を開け、その場で固まる。

 

「ほら、準備できたなら行くわよ。.......ってあれ、園子?」

 

夏凜が移動するように急かすが、座ったまま動く気配がない園子に気を止める。その様子を見た東郷と銀は園子の前に立ち、

 

「お~い園子~?」

 

「大丈夫そのっち?まだ眠いの?」

 

と顔を覗かせて声をかけてきた。中学生の姿をした、讃州中学の制服を着た二人が目の前に立っている。自分の間近に立っている。園子は思わず心の声が出てしまった。

 

「やっと........やっと...成功した........?」

 

『...!』

 

間近にいた東郷と銀は、園子がボソッと呟いた言葉を聞き逃さなかった。

 

「なによ園子、どしたの?早く行くわよ。」

 

「........。...夏凜ちゃん、ここは東郷さんと銀ちゃんに任せて私たちは先に行こっか!」

 

「えっ?ちょおっ........!」

 

「ほらほら行くよ~!...じゃあ三人とも、お先に失礼しま~す!」

 

友奈は何かを感じ取ったのか、その場を三人だけにし、夏凜の背中を押して移動先の教室に向かった。

 

「園子......お前、もしかしてあのときの園子か...!?」

 

「え...?」

 

「いつしかいたわよね?...未来から来たそのっちが。........あのときの、三年後のそのっち?」

 

「あ........覚えてるの...二人とも...?三年前の話を...?」

 

「ああ!もちろんだとも!やっぱり未来の園子なんだな!あ、いや...今となっては今の園子か...。ん?...じゃあ昨日までの園子は...」

 

「銀、ややこしくなるから考えるのはやめときなさい...。」

 

「えへへ...は~い!」

 

「それにしても、あれから三年経ったのね...いつかまた会えると思っていたけど、それが突然今日だなんて...!」

 

「ホントだよな!あたしも須美も、今こうしていられるのは園子のおかげなんだからな!」

 

「二人がいてよかったよ本当に...!私いま最高の気分だよ!...やっとできたんだ、やっと...!」

 

園子は小さくガッツポーズする。でも二人にいろいろ聞きたいことがあった。特に聞きたかったのは三年の間にあった様々ないきさつだ。なぜ銀がいるのに夏凜が讃州中学にいるのか。それも気になる。

 

「.......聞きたいこと、たくさんあるだろ?三年もいなけりゃいろいろと変わるもんだ。今の園子は浦島太郎みたいな感じだな。」

 

「でも........もうチャイム鳴っちゃうわ。」

 

「いいじゃないかたまには...。授業の一時間くらいサボるのも...」

 

「そんなこと絶対にダメよ、銀!友奈ちゃんたちもきっと私たちを待ってるし心配してるわ!」

 

「ぅぅ........須美には敵わんなぁ...そういうことだから園子、悪いけど詳しく話すのは放課後...」

 

「ちょっと待ちなさい。」

 

三人の会話に割り込む、第三の声。園子はその声にも聞き覚えがあった。

 

「えっ!?芽吹ィ!?もう移動したんじゃ...てか授業始まっちゃうぞ!!」

 

「園子には私から話しておく。あなたたちは授業に行きなさい。」

 

「はあっ!?私から話しておくって...お前、園子がタイムリープしてることを...!?」

 

「それはまた後で詳しく話すから。早く行きなさい。」

 

「でも...。」

 

「いいから!ここは任せて。」

 

芽吹はなんとかして二人を移動先の教室に行かせると、誰もいないクラスの自分の席にズッシリと腰かけた。

 

「なんで...?....その制服、それにここにいるってことは...メブーまで讃州中学に...?全員揃ってる...?」

 

「ええ。全くその通りよ。」

 

芽吹はそう言うと、笑顔になって園子に手を差し出した。

 

「やっぱり園子、あなたって本当にすごいわ。本当にやってくれたわね!...今までお疲れ様。」

 

「え...?」

 

「ここは、まさにあなたが思い描いた世界。みんなが幸せな生活を送っていて、わいわい部活やって、元気よく学校に通ってる...。全員生きてる。あなたの理想の世界。」

 

芽吹の言葉を聞いているうちに自然と涙が流れてきた。ここまで本当に苦しかった。とても長かった。何度も悩んだ。何度も絶望を見せられた。人の苦しそうな顔を見た。それらからやっと解放されたんだ。自分のやりたいことを、先祖代々からの因縁に片を付けられた。最後までやり遂げられたのだ。

 

「おめでとう園子。あなたの...勝ちよ...!!」

 

「ホント...?ついに達成できたの...?」

 

「そうよ。もう大丈夫。......今までつらかったわよね。ご苦労様...。」

 

園子はやがて号泣し、その場に崩れ落ちた。芽吹はすぐさま園子に近寄り、背中をさすってやった。園子の嗚咽と一緒にチャイムが鳴る。授業が始まってしまったらしい。

 

「ぐすっ.......あ...チャイム...。」

 

「行かなくていいわ。」

 

「え...でも...。」

 

「あなた、気になってるんでしょ?すぐさま知りたいに違わないわよね。...なぜ東郷と銀が生きているのに、みよ...こほん、夏凜と私が讃州中学にいるのか。」

 

「...!」

 

「ここまでのいきさつ、全部話してあげる。」

 

二人は授業をサボり、園子は三年の間になにがあったのかすべて芽吹から教えてもらった。満開が実装された後、本来の歴史通り東郷は記憶を失い、讃州中学に入学した。一方園子と銀は大赦内で祀られていたらしい。同部屋だったのと、完全に動けなくなるほど散華しなかったためまだ気持ちは軽い方だったらしい。そして夏凜と芽吹がなぜ讃州中学にいるのかだがそれは園子と銀が現勇者たちに対し、少しでも戦力を増やしてあげたいと願ってスマホを大赦に寄付したからだった。勇者候補のトップだった夏凜と芽吹は無事その選考に受かり、完成型勇者として園子と銀の端末を受け継いだ。そうして讃州中学に入ったらしい。やがて、散華から解放された銀と園子は普通の生活に復帰。東郷のいる讃州中学に途中入学した。

 

「ま...私が知ってることはこれくらいかしらね。」

 

「ありがとう~とってもわかりやすかったよ~!........でも、よくここまでの情報を集められたね~?私がこっちに帰ってきてこんなすぐに...。」

 

「それが...私も不思議なのよ...。いきなりこの記憶が飛び込んできたの。........今までこんなことなかったのにね。」

 

「ふ~ん...それは気になるねぇ...。」

 

今までのタイムリープの特徴として、園子を除いてタイムリープのことを知っている人物は未来が変わった瞬間がわかる。知っている人が突然消えたりいつの間にか違う場所にいたり...園子が過去を変えたからそれに伴って未来も変わるからだ。しかし、今までその未来になるまでの過程の記憶が残っているなんてことはなかった。

 

「...私も引っかかってるわ...。これは友奈もそうなのかしら...?でも、良い未来になったことは変わりないんだし、きっと大丈夫よ!」

 

「うん...そうだね...!そう...だよね...。」

 

以前の風のこともあった園子はまだ少し不安だった。

 

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---

 

時間は過ぎ、放課後。感覚的には久しぶりに部活へ行く園子はこの時間を楽しみにしていた。芽吹と共に向かい、ガラッと部室のドアを開けて入室する。

 

「あっ!...園子ぉ!五時間目サボったわよね!?芽吹も!!」

 

そう言ってつっかかってきたのは夏凜だ。

 

「えっ!?...お二人ともサボったんですか...!?」

 

奥で何か作業をしていた樹も声をかけてくる。

 

「違うのよ夏凜、樹!........園子が具合悪そうにしてたから付き添いで...ね...?」

 

「!?........そ、そうなんよ~!なんかあのとき頭痛くってね~...あ、もう大丈夫だよ!」

 

園子は芽吹のアドリブに一生懸命合わせた。

 

「確かに様子はおかしかったわね...。ごめんなさい、大丈夫...?寝過ぎとかかしら...?」

 

園子は本当に心配してくれている夏凜に悪いと思った。心の中で謝ると、後ろからまた部員が大勢やってきた。

 

「みんなこんにちは~!!今日も勇者部ファイト~!」

 

「ファイト~!!」

 

「ふふ、銀も友奈ちゃんもいつも通り元気でなによりだわ!....ふぁいと~」

 

友奈、東郷、銀も到着し、部室が賑やかになる。

 

「さて...これで全員かしらね。」

 

「そうだね夏凜ちゃん。...では樹部長!お願いします~!」

 

友奈にそう言われ、樹は前に立たされる。

 

「え、えっと........もうすぐ仮入部期間中が始まります!勇者部もなんとしてでも新しい部員が欲しいところです!」

 

「勇者部の活躍は世に轟いている........きっと人気間違いなしだな!」

 

「けど銀、人気が出過ぎて入れない人が出てしまう可能性もあるわよ?」

 

「...私は、男子の部員もアリだと思ってるわ。気弱な男子たちに勇者部のボランティア精神と熱血を叩き込んでやるの!」

 

「にぼっしー怖いよ~...。」

 

どんどん話は膨らみ、やがて脱線して部室内が騒がしくなる。

 

「ちょ、ちょっと皆さん静かにしてください!!!」

 

『うっ...!は~い...。』

 

樹が怒鳴ったことにより、ようやく収まった。

 

「いいですか、今日は部員勧誘のための作戦会議です!...もしも入部希望者が少なかった場合、奥の手がなにもないというのはいけないと思ったので!」

 

「やっぱり勇者部が求めるのは強い正義感を持った精神と寛大な心だと思う。...その志を持った生徒を探すべきだと思うわ。」

 

「右に同感!」

 

「芽吹先輩...何かの試験じゃないんですから...。東郷先輩もノリに乗らないでください...。」

 

「私は誰でも入れて、元気よく活動してる部活ですっー!って素直に言えばいっぱい集まると思うよ!誰でも何人でも大歓迎!!」

 

「いや友奈、大ざっぱすぎだわ....」

 

すかさず夏凜のツッコミが入る。園子は話し合いの風景を見ていて圧巻されていた。

 

(これだよこれこれ...!ボケ役とツッコミ役が見事にわかれてる...!完璧なチームプレー!パーフェクトな言葉のキャッチボール!!)

 

もはや芸術。話し合いに入るどころか園子は久しぶりの部員の会話を聞いて楽しんでいた。

 

「なぁ、園子は良い案あるのか?」

 

と、いきなり銀に話を振られる。

 

「そうね。園子ずっと黙ってたじゃない。」

 

夏凜もそう言い、みんなの視線が一斉に園子の方に向く。

 

「わ、私!?えっと.......えっとね...。」

 

園子がもごもごしているとそこへ...

 

「ようよう勇者部諸君!私のかわいい後輩たち!元気にやってるかっー!?」

 

と言ってズカズカと部室に入ってくる女性が一人。彼女は私服でパンパンのビニール袋を持っていた。

 

「お姉ちゃん!?」

 

「よっ!樹!部長はしっかり務まってる?」

 

「あんた...ほとんど毎日来るわね...。」

 

「なによ~本当は夏凜も嬉しいんでしょ~?」

 

「なっ...!」

 

「あはは、ま...こんだけ来れるのも多分今日が最後よ。明日から高校始まっちゃうからね~。春休みももう終わりよ。...明日からバラ色の青春生活が始まるんだわ~...!」

 

浮かれている風に対し、一同は悲しそうな顔をする。

 

「ん?...みんなどうしたのよ?」

 

「風先輩...もう来れなくなっちゃうんですね...。」

 

友奈はうつむいて言う。

 

「もう!ほら、そんな顔しないで友奈!...みんな私がもう来なくなると思ったの?たまには顔だすから!だから元気出しなさい!」

 

「風先輩...!」 

 

友奈は少しだけ明るい顔になり、風に寄った。

 

「ふふっ...私もここが大好きだからね。みんなのことも。」

 

風は友奈にしか聞こえないくらいの声でそう言った。

 

「風先輩...あなたには本当にお世話になりました。途中入部にも関わらず、よくしてくれて...。」

 

「芽吹!堅すぎよ!もうお別れムードとかやめて!?」

 

「ま、私もあんたには感謝してるわよ...。」

 

「え?今夏凜なんか言った?」

 

「なあっ...!絶対聞こえてたでしょ!?」

 

「いやぁ、本当に聞こえなかったって!みんなもそうでしょ?」

 

風の問いに一同は大きくうなずく。そしてみんなの視線が一気に夏凜に集まった。

 

「ほらほらぁ、もう一度言ってごらんなさいよ~」

 

「うっ...!ぅぅ...ああ、もういいわよ!」

 

『えぇ~...。』

 

「なによみんなして!さすがに恥ずかしいわ!」

 

「え、なに?恥ずかしいことなの?」

 

「...っ!!もう風、いいって言ってるでしょ!さっさと帰りなさい~!」

 

「ええっ!?今来たばっかりじゃな~い!!」

 

その後、風が持ってきた差し入れを食べながらみんなでわいわい昔話で盛り上がり、あっという間に一日が過ぎた。

 

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下校の時間になり、園子は銀と芽吹とともに帰り道を歩いていた。

 

「いや~!今日は楽しかったね~!」

 

「ほんと、懐かしい話ばっかりだったな~。........新入部員加入の件は全然話し合えなかったけど...。」

 

「........。」

 

芽吹は黙ったまま、ずっと真剣な顔をしていた。凛々しい顔が夕日に照らされる。そんな芽吹が気になった園子は、彼女に話しかけてみた。

 

「メブー...?大丈夫?」

 

「あ........あぁ...。」

 

「そういや芽吹こっちでいいのか?お前、確か夏凜とルームシェアしてるんだよな?だから家も一緒だろ?」

 

夏凜兼芽吹の家があるのは園子たちとの家とは反対方向だ。後から聞いた話によると勇者のお役目として大赦から派遣されたときに、二人で同じ部屋に暮らすことになったらしい。最初は考え方の相違により、ケンカが絶えなかったそうだが時間と勇者部との出会いがきっかけで彼女たちは変わったらしい。おかげで今は親友同士だ。

 

「帰りにね、ちょっと寄りたいところがあって...あ、ちょうどここでお別れよ!また明日...。」

 

「えっ?お、おい!」

 

銀の質問にろくに答えず、芽吹は何かを隠しているようにそそくさと走っていった。その際、芽吹はさり気なく園子に耳打ちをした。

 

「明日の放課後、時間とっといて。」

 

そうとだけ残し、二人の前から姿を消した。

 

「!........メブー...。」

 

「一体どうしたんだろうな、あんな急いで...。あ...それより、今の園子は未来の園子だったんだな!いろいろとなにがあったか教えてやるよ!」

 

「あ~...メブーから全部聞いたから大丈夫~。」

 

「えっ...?.......やっぱり...芽吹もお前がタイムリープしてたの知ってたのか...。」

 

「あれ?知らなかったっけ~?」

 

「いやいや初耳だよ!あっ!もしかして未来で園子に協力してたのは芽吹...?未来の仲間の一人か!そう考えたら勇者部のみんなも...!?」

 

「まぁ、だいたい合ってるね~。タイムリープのこと知ってるのはゆーゆとメブーだけだけど~」

 

「そいつは驚いた...!」

 

「あ、来たよ~」

 

園子が手配した車がようやくやってきた。さすがに大橋方面まで歩きで帰るのは現実的ではない。そのため、帰りは毎日中学校の周辺に自家用車を来させるようにしていたのだ。園子は銀と共に後部座席に乗り、家に帰った。今考えてみれば銀を自分の車に乗せるのも初めてだった。

 

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翌日。この日は休みの日だったが部活があった。新生勇者部となった後も、依頼は全く絶えていなかった。風は休みの日にも関わらず入学式。そんな風の晴れ舞台のために樹は部活を休んだ。

 

「今日は樹ちゃんがいないから私たちだけでがんばろう!勇者部ファイトー!」

 

友奈は今日も元気いっぱいで拳を突き上げる。

 

「本当にあたしらだけで大丈夫か...?そういや副部も決めてなかったし、まとめる人いないぞ?」

 

「適任って感じの人がいないね~...。」

 

「なに言ってるのよ、こういうのはそのっちが向いていると思うわ。」

 

東郷はニコニコして園子を見る。

 

「ええっ!?私~!?」

 

「確かに、三年前はあたしらをまとめてたリーダーだったわけだし...この中では一番マシかもな。」

 

「ええ~責任重すぎるよ~にぼっしー助けて~!」

 

「........。」

 

夏凜はボッーとしていて上の空だ。

 

「お~い夏凜~?夏凜~!」

 

「夏凜ちゃ~ん!お~い!!」

 

「あ........なに、二人とも...。」

 

友奈と銀の呼びかけに対しても、元気がない。

 

「........。そう言えば、芽吹ちゃんがいないね?」

 

「あら、本当。気づかなかったわ。夏凜ちゃん、芽吹ちゃんは風邪でもひいたの...?」

 

東郷の問いに、夏凜はゆっくりと首を横に振った。そして一言、呟く。

 

「昨日から........帰ってないの...。」

 

「........え?」

 

一番不穏に思ったのは園子たった。昨日の芽吹のこともあり、それはとても気になる話だった。

 

「あいつのことだから...夜遅くまで体鍛えてるんだろうなって思ってその日は寝たんだけど、今日の朝になっても布団は敷かれてなくて...。畳んで先に部活に行ったのかなって思ってみたけど、それも違ったみたいで...それから連絡もしてみたけど全然...。」

 

「それってつまり...芽吹ちゃんはいなくなっちゃったってこと...?」

 

「行方不明...!」

 

みんなは一斉に芽吹に連絡してみた。しかし、どの携帯も反応を示さない。

 

「これ...結構ヤバいやつだよな...。」

 

「すぐさま捜しましょう。そして警察にも連絡、夏凜ちゃんは同居人として事情聴取を受けて。」

 

「わかったわ...東郷...。」

 

「あたしと園子も警察に行くぞ。たぶん、最後にあいつと会ったのあたしたちだと思うから...。」

 

夏凜は小さくうなずくと、少し猫背になりながら立ち上がった。

 

「それじゃあ友奈、東郷...どうかよろしく...!お願い、芽吹を見つけて...!」

 

「任せといてよ夏凜ちゃん!きっと大丈夫だよ!あのすごく強い芽吹ちゃんだよ?なんにもないに決まってる!すぐに見つけてあげるから、夏凜ちゃんは安心して!」

 

「友奈...!ごめん.......みんな...。私が昨日のうちにみんなに言っていれば何か変わったかもしれないのに...!」

 

「過去のことを振り返ってもしょうがないわ。とりあえず今は、夏凜ちゃんのすべきことをやるのよ。」

 

東郷は教えを説くようにそう言い、友奈と共に部室を出て行った。一方、夏凜、銀、園子は警察へと向かい、捜索願提出と情報提供を行った。そしてその後、夏凜たちも芽吹捜索に加わった。

 

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あれから時は経ち、日が沈みかけている。部員たちは二グループに分かれて捜索を続けていた。みんなでよく行く場所や芽吹のお気に入りの所などいろいろなところを捜したが、手がかりすらも全く見つからなかった。また、一日中街を走り回っていたため全員疲弊していた。

 

「友奈ちゃん、一回休みましょう...?私たち、もう一日中捜し回ってるわよ...?」

 

「まだ...まだだよ東郷さん...!今度はあっちに行ってみよう!」

 

「でも友奈ちゃん...!このまま続けたら体に悪いわ...!」

 

「私は大丈夫だよ!...それに私、諦められない。絶対今日中に見つけてあげるからね...芽吹ちゃん...!」

 

そう言って友奈はまた走り出す。

 

「あっ...!...そうだ、私だって...友奈ちゃんに負けてられないわ...!友奈ちゃんが頑張ってるんだから、私も!」

 

東郷は一生懸命友奈の後ろをついていった。

 

------------

 

それでも尚、芽吹は見つからない。警察からも有力な情報は得られなかった。部員たちは一度、ある公園に全員で集まって作戦会議をすることにした。

 

「そのちゃん...そっちはどう...?」

 

「こっちはまだなにも...。...ゆーゆとわっしーの方は?」

 

「こっちも一切見情報ナシ...。」

 

しばし沈黙が続き、一同は目を細めて黙りこくる。

 

「誰か........いっつんには連絡した...?」

 

園子のその質問に誰も答えない。樹には全員誰も知らせていないようだった。

 

「樹は今日...風の入学式でいなかったんだから...。せめて今日だけはたった一人の家族のために...そっちに集中してほしくて...。」

 

夏凜はいつになく元気のないボソボソ声でそう言った。そんな夏凜を見た友奈は彼女の手を取り、

 

「一回夏凜ちゃんたちの家に行ってみよう!もしかしたら芽吹ちゃんしれ~っと帰ってきてるかも!」

 

と言った。

 

「そ、そうね...。行ってみる価値はあるかも...!これでもし何事もなかったかのように家に居たらどうしてやろうかしら。」

 

夏凜はなにか企んでいるような悪い顔をしてそう言った。友奈のフォローのおかげで少しだけふざけられるくらいの元気が出たみたいだ。二人はそのまま夏凜の家に向かい、その場には園子、東郷、銀の三人だけが取り残された。

 

「........あたしら...だけになっちゃったな。」

 

「...二人とも、少し休憩しましょうか。今日一日中ずっと走り回ってたでしょう?」

 

「うん...。そうだね。」

 

三人はブランコに腰掛ける。そして沈みかけている夕日をボッーと眺めていた。

 

「考えてみたら...私たち三人だけになるのも久しぶりね。」

 

「...そうだな。中学に入ってからは勇者部のみんなと一緒にいることが多くなったんだし。」

 

銀はそう言うとブランコをこぎ始めた。そのブランコは少し錆びているらしく、動く度にギィギィ音を立てる。

 

「........ねぇ、二人とも覚えてる...?三年前の夏頃、みんなで自分の夢言い合ったよね~。」

 

「そう言えばそんなこともあったわねぇ...。よく覚えてるわ。」

 

「あ、あはは...あれか...。ちょっと恥ずかしかったやつだな~...。」

 

「!...おお、ちゃんと二人とも覚えてるんだねぇ~...!」

 

二人ともかなり鮮明な記憶を持っていたため、園子は驚いた。

 

「.............あの時から夢、変わってない?二人とも。」

 

「........。」

 

「........。」

 

二人はその質問になかなか答えなかった。園子にはそれがなぜかちょっとわかる気がした。

 

「まぁ........確かに...。母国に対する愛は変わらず...いや、さらに深まってはいるから私は変わっていない、かな...?」

 

「........。私もね~、今もまだ小説は書き続けてるし...二人がモデルの小説も...。」

 

『ええッ!?私たちがモデル!?』

 

銀と東郷は声を揃えて驚いた。見事にハモっていたため、それがおかしくなって三人ともアハハっと笑った。

 

「銀は...?」

 

「........。えっ...?」

 

「銀は........変わってないの...?」

 

「あ、あたし...?あたしは...。」

 

すると銀はブランコをこぐのをやめた。銀の顔はカアッと赤くなり、モジモジしている。そしてボソッと呟いた。

 

「あたしも............変わって...ない.......、かな...。」

 

と言った。

 

「え?なんて?」

 

「も、もう言ったぁ!二度目は言わないからな!恥ずかしいから!」

 

「ムフフ~。ちゃ~んと私には聞こえたよ~?」

 

「そのっちだけずるいわ!教えて教えて!」

 

「だあっ!!それはダメだぞ須美!そもそも思春期真っ只中のか弱き女子中学生にこんなこと言わせんなぁっ!」

 

「ほほう~........?ということはつまり...。」

 

「はっ...!しまった言い過ぎた...!」

 

「それはそれはいいことですわ、銀さんや~!」

 

東郷に弄ばれ、銀は悔しそうにしながら頬をぷくっと膨らませ、また顔を真っ赤にさせる。

 

「くうっ........!コラっ!許さんぞ須美~!」

 

「捕まえられるもんなら捕まえてみなさ~い!」

 

キャッキャッと二人は追いかけっこを始めた。逃げる東郷とそれを追う銀。園子は笑いながらその情景を見ていた。一日中捜し回っていたというのに、その疲れが嘘のように走っていた。

 

(あぁ...幸せだ...。メブーの言うとおり、ここは本当に私の理想の世界なんだ...。........よし...!)

 

園子はダンッとブランコから立ち上がる。ついに捕まった東郷は銀とプロレスごっこを繰り広げている。

 

「二人とも!もうひとがんばりしよう!...絶対メブーを今日中に見つける!」

 

と二人に呼びかけた。園子の唐突の発言に、二人はお互いの体が絡み合ったままキョトンと固まった。

 

「...そうね!がんばりましょ!」

 

「くう~...!!この件はまた後日だ!覚えとけよ~?須美~!」

 

「...!........まだ許さないというの...!?もうお願いだから勘弁して...。」

 

「いやダメだ!あたしの怒りはまだまだ収まらな~い!」

 

「ほら、もうそこら辺にしといて二人とも行くよ!!」

 

園子はまるで二人のお母さんのような口調でそう言い、三人は公園をあとにした。

 

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結局、この日中に芽吹を見つけることはできなかった。家にも戻った形跡はなかったらしく、そのまま夜になってしまい部員たちは家に帰ることを余儀なくされた。その日は警察に任せたが、未だ連絡はない。園子は芽吹のことが心配で心配でよく眠れなかった。

 

「ふぁ~...むにゃむにゃ...。」

 

「あら、園子。昨日は眠れなかったの?いつもより眠そうじゃない。」

 

「あ、お母さんおはよ~...。うん...眠れなくってね...。」

 

「また夜遅くまで小説描いてたんじゃないの?朝ご飯もうそこにあるからそれ食べて。私はもうお仕事行っちゃうからよろしくね?」

 

「ふぁ~い...。」

 

園子の母親はそう言って家を出て行った。いつものことだ。父親なんて普段顔を合わせることはない。大赦のトップはそれだけ忙しくて大変なんだろう。園子はいつもの日常のようにテレビをつけ、朝ご飯を食べ始めた。放送されているニュースは芸能人の結婚やゴシップ、政治問題など様々だ。と、そこで流れてきたあるニュース。こんなニュースは滅多にないから目についた。

 

『昨夜、愛媛県某所の廃工場にて未成年の女性のバラバラ遺体が発見され、警察は捜査を進めています。』

 

「バラバラ遺体...?こんな物騒なニュースなかなか聞か...」

 

と、次に流れてきたアナウンサーの発言で、園子の思考は停止した。カランコロンと箸を床に落とし、口をポッカリ開けて体の動きが止まる。園子が聞いた言葉は、

 

『身元の所持品から、遺体は香川県讃州市に住む楠芽吹さん14歳と見られ........』

 

と言ったものだった。そこからはニュースの音声が耳に入らなくなり、園子はすっかり混乱してしまった。

 

(え........?今、なんて...?............嘘...嘘だ...ありえない...!メブーに限ってそんなこと...。だってメブーすごく強いし、こんなことされる筋合いだってなんにもない...。私の、私の聞き間違いだよね...?)

 

そう思って園子はまたニュースに聞き入る。

 

『楠芽吹さんは一昨日の夜から行方不明となっており、警察に捜索願が出されていました。』

 

間違いなく言っている。特徴も、何もかもすべてが噛み合っている。

 

(やだよ...やだよそんなの...!全部終わったんじゃないの....?ここは私の求めてた理想の世界なんじゃないの!?......なんでメブーが殺されなくちゃいけないの....!?...こんなひどい殺され方しなくちゃならないの...!!)

 

園子は家を飛び出た。スマホを確認したが、夏凜からも誰からの連絡もない。園子はとりあえず夏凜の家に向かうためにとにかく走った。

 

(守れなかったの...?また失うの...?どうして...どうしてっ...!?また私の友達が、大切な人がっ...!)

 

園子は走っている途中でこけてしまい、派手に倒れた。そして、痛みではなく悲しみとつらさによる影響で大粒の涙がこぼれ始める。園子は何度かアスファルトの地面を殴った。

 

「うっ...うっ...うわあああああああっ~...!!ああああああああっ~...!!!」

 

絶頂の幸せから突き落とされたどん底。園子は再び思い知った。この世界は残酷なのだということを...。

 

(第25話に続く)




今までで一番良かった未来にも関わらず、また歯車が狂い始めました...。一体なにが原因なのか、未来で起こっていることはなんなのか...。
おそらく誰にも想像がつかない展開を考えております(笑) どうぞこれからもお楽しみいただけたら幸いです。
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