乃木園子は勇者である ~リベンジの章~   作:てんぱまん

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【第26話】The Last Time Leap

 

コツコツ....とコンクリートと靴がぶつかり合って鳴り響く音。その中でかすかに海の波の音も聞こえる。それくらい静かだった。園子はそのまま足音をたてながら英霊碑の周りをぐるっと回った。

 

(特におかしいところはない........か...。変わったところと言えば...)

 

園子は銀の名前が刻まれていたはずの石碑の前で止まった。そこには何も記されていない。まっさらの石だ。

 

(今考えてみれば...この何も刻まれていない石碑は誰か犠牲が出たときにすぐ作れるようにするため...?そうだとしたら不謹慎すぎるな...。でも、あの大赦のことだ...。)

 

園子は海風に吹かれ、ハッと我に帰る。余計なことを考えてしまっていた。

 

(!........こんなこと考えるのはやめよう...それだけでも嫌になる...。)

 

園子はまた移動し、今度は派手に破壊された大橋を眺める。当初は、これが自分たちの守るべきものだった。

 

「結局...どの未来でも大橋が壊されることは変わらないみたいだね~。......でも、それはどうしてもしょうがないと思うんだ。これだけは...。あの軍勢だったんだもん...。私たちは....よくやった方だよね...。」

 

園子の脳裏に別の未来で見た風の顔が思い浮かぶ。大きな殺意と激しい憎しみを爆発させ、刃物を持って自分に向かってくる風の姿が。風と樹の両親は自分が樹海に大きな被害を与えてしまったせいで亡くなった。そのせいで姉妹共々窮屈な思いをして暮らしている。

園子は身震いした。またわからなくなる。自分は何をしたら正解なのか。........自分も本当は心のどこかで思っているのだろう。すべてを救い、守り通せることは不可能なのではないかということを...。

 

「いけない...また別のこと考えちゃった...。今調べるべきことに集中しないと!」

 

園子は大橋周辺を隅から隅まで調べるため、地に這いつくばったり逆立ちして見方を変えてみたりと色々な方法を試してみた。しかし、手がかりとなるような物は一切見つからない。そんなことをしているうちにいつの間にか綺麗な夕焼けが現れていた。集中していたせいで思っていた以上に時間が過ぎてしまっていたらしい。

 

「........園子姉ちゃん...?」

 

と、突然後ろから声をかけられた。独特な呼び方と声質でその声の主が誰か、園子は一瞬でわかった。すぐさま振り向き、彼の名を呼ぶ。

 

「...てっちゃん!?」

 

「ひさしぶり!...あ..ニュース見たよ。芽吹さんのこと...」

 

「!........そう...。それでわざわざ私を捜してくれてたの?」

 

「あぁ...まあ、うん...。おつかいの帰りだけどね。」

 

鉄男は両手に持ったパンパンのビニール袋を園子に見せる。

 

「......歩きながらさ、ちょっと話さない?俺も力になれることがあるかも。」

 

鉄男はそう言って自分の家の方をちょこんと指差す。

 

「...そうだね。今日はこの辺で切り上げておくとするかな。わかった。......ああ、その荷物私が持つよ。」

 

「えっ?いや、大丈夫だよ!......これくらい俺ひとりで...。」

 

鉄男はそう言うがとても重そうだ。園子は少し強引に鉄男が持つ片方の荷物を持った。

 

「いいから!せめて片方だけでも!」

 

「...っ!......じゃ、じゃあ...お言葉に甘えて...。」

 

二人の背中に夕日が差す。歩いていくうちに狭い路地に入り、今起きている『異変』について話した。

 

「そうか...やっぱり神樹様がいるんだな...。」

 

「えっ!?知ってたの!?」

 

「一昨日小学校から外見たら『壁』が見えたからさ。あのときは本当に驚いたよ。」

 

鉄男はそう言って空を仰ぐ。ビニールがカサカサ音をたて、その音で周りの自然の音は遮断されていた。

 

「........それで、芽吹さんが亡くなったのは神樹様が関わってる...と?」

 

「まぁ...だいたい今のところはそう考えてる。...てっちゃんの意見はどう?何かある...?」

 

「そうだな...俺は........」

 

やがて路地を抜け、少し大きい道に出た。ビニールのカサカサする音も車の走行音には劣り、いくつか車が走る音が聞こえる。

 

「...『時空の歪み』...とかじゃないかな。」

 

「........えっ...?」

 

これはタイムリープのトリガーとなる鉄男だからこそ、得られた考えだった。

 

「...園子姉ちゃんは覚えてる?......最初の頃のタイムリープは過去に戻るまでに全く『ズレ』がなかった。つまり、手をつないですぐに過去に戻れてたんだよ。......でも最近はどう?手をつないだ後もしばらく未来の記憶が残ってる。前回、勇者部のみんなが命がけで園子姉ちゃんを俺のところまで連れてきたとき...そうだったでしょ?手をつないだ後も未来の記憶を持ったまま俺たちと話してた。」

 

「あ........確かに...。」

 

「何度もタイムリープを繰り返すことによって、きっと『時空の歪み』が生まれたんだ。...もしかしたら、結末は同じでも、本当の過去で言っていたことと少しだけ違うところとかあったかもしれない。」

 

「あ......ちょっと話の道筋が違ったところが何個かあったかも...!」

 

日常での銀と須美との会話を思い出し、園子は考えた。

 

(『時空の歪み』...私がタイムリープを繰り返したせいで時の流れがおかしくなった...?もしそうだとするならば...)

 

「俺はこの説を提唱するかな。よくファンタジーで言うだろ?時間に干渉しすぎるなって。...そういうのは全部こういうことが起きるからなのかもな。......あと、俺はタイムリープできるのは...できてあと数回だと思うんだ。」

 

「えっ...!?どうして...?」

 

「この考えが合っているとすると、過去に戻るための時間のブランクが大きくなっていくと思うんだ。......そしてそのまま最終的には、もう戻れなくなるかも...。」

 

「...そうかもね。でも......そんな心配は必要ないよ。悪い未来になっても良い未来になっても次でタイムリープするのは最後にするって...決めたから。みんなと約束したから。」

 

「...!!...そっか。じゃ、頑張らなくっちゃな!」

 

鉄男は無邪気に笑った。その顔はどこか銀に面影があった。やっぱり兄弟は性別が異なっても似るのだろうか。鉄男のその顔を見て、園子は少し気持ちが軽くなった。

歩行者信号が赤になり、鉄男と園子は横断歩道の前で青になるのを待つ。

 

「ふぅ...重いな...。」

 

鉄男はうっかり隠していた気持ちをこぼす。そして地面にビニール袋を置いた。やっぱりさっきのは嘘だった。片方だけでもキツそうだ。いや、そういうところも彼の優しさのひとつかもしれない。

 

「......ありがとね、てっちゃん。てっちゃんのおかげで別の視点から見た考えを知れた。それも視野に入れて調べていくよ。」

 

「あっ、俺も手伝うよ!...姉ちゃんは助かったって言っても芽吹さんのことを救いたいし!......それに...園子姉ちゃんの手助けしたいから...。」

 

「え?いや、てっちゃんはいいよ!小学校大変でしょう?それにこれは勇者以外が絡んだら危険だよ!」

 

「今更何言ってんだよ!...確かに俺は勇者じゃないけどさ、今までだって協力してきただろ?タイムリープのトリガーとして...必ずできることがあるはずだ!だから頼む!どうしても力になりたいんだ!」

 

鉄男は手を合わせ、頭を下げて必死に頼む。この頼み方も銀そっくりだった。園子は思わずクスッと笑ってしまう。

 

「......てっちゃん...。私はみんなに助けてもらってばっかりだね~。」

 

「いやいやそんな......助けてもらってるのはこっちだよ!だって姉ちゃんも........」

 

鉄男がそこまで言いかけたとき、園子は気がついた。向こう側からスピードを一切緩める気配もなく、大きなエンジン音をたてながらこちらに向かってくる車に。

 

(あ........)

 

信号無視した車だった。しかし、動きが不自然だった。何も猛スピードで歩道に突っ込んでこようとしているのだ。そして信号待ちしていたこちら側の車に衝突。

 

 

ドッガッーン!!!

 

 

車は何か爆発したのではないかと思うくらいの大きい音をたて、追突された車はダイナミックに横転しながらこちらに転がってきた。

 

ほんの一瞬。

 

普段の園子の反射神経なら避けられただろう。しかし、このときは鉄男に意識がいってしまって一手遅れた。

 

(私...潰される...。)

 

園子はそう覚悟したのだが、

 

「園子姉ちゃん危ないっ!!!」 

 

 

ドン、、、

 

 

ガシャグシャガシャッン!!!

 

 

横転した車はそのまま勢いを止めずに歩道に転がり、斜めになってブロック塀に突っ込んだ。

 

 

ズザザザ........

 

 

「ぅ........うぅ...?...一体なにが......。」

 

園子は地面に転がり、ゆっくりと起き上がった。押されたおかげで助かったようだ。だが、さっきまで自分たちが立っていた場所に異様な形で車が横転していた。

 

「え........?てっちゃん........?...イヤ................。」

 

悪い考えが脳裏によぎる。自分の周りに鉄男の姿は見えない。園子は急いで横転している車のそばに寄った。

 

「きっと大丈夫だよね........てっちゃん...てっちゃん...!」

 

やがて園子は見つける。車とブロック塀に挟まれて身動きがとれなくなった鉄男の姿を。両足含めた左半身が潰され、はみ出しているのは頭と右上半身だけだ。

 

「嘘...ヤダ........てっちゃん!!!」

 

鉄男は顔を真っ赤に染め、潰された左半身からは大量の赤い血が流れているのがわかった。服に染み出し、元の色がなんだったのかさえも判別がつかないほどだ。園子は出ている鉄男の右腕を引っ張った。が、全くびくともしない。

 

「絶対...絶対助けるからね...!......あっ、そうだ勇者システムを使えば!」

 

しかし、スマホを触ってもなにも反応しない。勇者になれる機能はもう大赦に回収されてしまったし、そもそもこの未来の園子は勇者ではない。芽吹が園子の代わりだった。

 

「くっ...!........ぅぅ...!!」

 

園子はそれでも鉄男を出そうと、今度は車を動かそうと押してみる。だが、それも虚しい行為だった。

 

「園子............姉ちゃん............。」

 

「!!...てっちゃん...!?意識あるの!?」

 

「........なん...とか...園子姉ちゃんは...?」

 

「私は大丈夫だよ!...待ってて。すぐ助けるから!そこから出してあげるから!」

 

園子はそう言ってなんとかして助けようと奮闘する。だが園子は冷静ではなかった。まだ救急車さえも呼んでいない。ただただ焦り、恐怖し、落ち着いた行動をとれていなかった。『また大切な人を失いたくない』その気持ちがかえって悪い方向に出ていた。

 

「よかっ........た........無事で...。でも、園子姉ちゃん........俺を助けるようなことは........しないでくれ........。」

 

「........えっ!?...な、なんで!?」

 

「........どうせ助からない...こんなに血が...出てる........すごい眠いし......。」

 

「いいや助かるよ!!絶対助かる!!私が助ける!!!........死なせるなんてことさせない!私があなたを守るんだから!........だから、だから大丈夫!!....てっちゃんがこんなことで死ぬなんてあり得ない!!」

 

「園子......姉ちゃん......もう......全身の...感覚が...ないんだ........どこも...動かせない........喋るのが...精一杯で........喋れるうちに........喋っておきたい...んだ........。」

 

「弱音吐いちゃダメっ!!!.....絶対、絶対大丈夫だからっ!私を信じてっ!!」

 

園子はそうは言うものの、さっきからずっと涙をボロボロ流していた。こぼれ落ちる涙が鉄男の顔にぴしゃぴしゃと降りかかる。

 

「........お願いだから...やめてくれ......。俺の話を聞いて欲しいんだ......これが俺の望みだよ......だからお願いだよっ........園子姉ちゃんっ........!」

 

鉄男もまた、泣いていた。その顔を見た園子は思わず手が止まり、しゃがんで彼に顔を近づけた。

 

「へへ........聞いて...くれるんだな........。...実は俺...園子姉ちゃんと...会う前に........ゴホッ!ゲホッ!」

 

鉄男は一生懸命喋ろうとするが、咳で遮られる。一瞬に血を吐き出す。内蔵も潰されて傷ついているのだろう。

 

「!!...てっちゃん!!」

 

「園子........姉ちゃん....に........会う前........に........いつ....き....さんに........呼ば....れて........そこ........で........はぁ....はぁ....................な........ん............な....................した....。」

 

「...え?なんて...?」

 

途切れ途切れになっており、園子はよく聞き取ることができなかった。もう一度言ってほしいと頼みたいところだが、鉄男の顔はもう真っ青になり、目もほとんど開いていなかった。

 

「............は............と.............たた..............いん.....だ...。........ゆ............さ........だっ...!芽吹.......さ...も...そう...だ.......。」

 

「てっちゃん!!しっかり!!!」

 

園子は鉄男の顔を両手でがっしりとつかみ、意識が途切れないように呼びかけた。顔を近づけ、大声で彼の名を叫ぶ。それが効いたのか、鉄男の声が少し聞こえやすくなった。

 

「はは........そん...なに........大声...出されちゃ........目を...閉じたくても........閉じられねぇな...。」

 

「てっちゃん........君はひとりじゃないよ...!私が近くにいるから...!」

 

園子はそう言うと自然に両手で鉄男の手をがっしり握った。その時園子は鉄男がフッと笑ったような気がした。

 

「........それで...いい........園子姉ちゃん...。」

 

「........え...?」

 

「........俺........園子....姉ちゃんに会えて...本当によかった........おかげでこんな...夢を見させてもらった...。ありがとな........。」

 

「なに...言ってるの...。まだ、まだ幸せな未来になってないじゃない!!私、こんなんじゃ終わらせないよ!もっと、もっと良い未来にしてみせるから!!........だから...だから............生きてよっ!!!」

 

鉄男の意識はさらに朦朧とする。呼吸も深くなり、表情の変化もなくなってきた。涙も止まり、流れなくなっていた。

 

「ごめ...んな........園子...姉ちゃん........。やっぱ...それ........無理............うだ........。俺が....なく........も....これ........通りに........かんばって....くれ....!芽吹さんや、姉ちゃんたちのために....!..........これが、最後の....タイムリープだ...!」

 

「いやだぁっ!!!てっちゃんっ!!!」

 

その瞬間、閉じかけていた鉄男の目が急にカッと開いた。園子を見ているわけではない。視線の先は園子の後ろだ。そして彼女も背後に人の気配を感じた。

 

(誰か後ろにいる...?もしかて、助けが来た...?)

 

だが少しおかしい。助けが来たとするならば、鉄男はこれほど恐怖しているかのような視線を送るだろうか。何かに怯えるような、ゾンビでも見るかのような感じであった。園子は後ろを見ようと振り返ようとするが、園子自身も意識が薄れてきた。

 

(もしかして........てっちゃんの手を握ったから...タイムリープを...?)

 

園子は地面に手を着き、朦朧とする視界の中で鉄男を見た。最後に、園子は鉄男が言った言葉を聞き逃さなかった。彼の最期となった言葉を。

 

「黒幕は................-----」

 

 

バチっっっ!

 

 

途中で途切れてしまい、そこまでしか聞こえなかった。彼が残した最後の言葉...そして一生懸命伝えようとしていたがよく聞き取れなかった『園子に会う前の話』。過去に戻っている間、園子は頭を働かせ、やがて一つの結論が導かれた。彼は、『三ノ輪鉄男はすべての元凶を知っている』...と。

 

「!!........はぁっ...はぁっ...!」

 

「!...園子!過去に戻ってたのか!?」

 

「鉄男くんと握手した瞬間にそのっちの様子が変わった...。過去と未来を行き来するために必要だったのは鉄男くんだったのね!」

 

「あ........二人とも...。」

 

そう言えばタイムリープするときに鉄男と握手するところを二人に見せたのだった。二人は未来で起こったことを知る由もなく、目をキラキラさせて興味津々になっていた。

 

「は...?タイムリープ...?何言ってんの...?」

 

そう言うのはこの中で唯一タイムリープのことを知らない過去の鉄男だった。

 

「!!........てっちゃんっ!」

 

鉄男を見た園子はすぐさままた彼の手を握った。

 

「えっ!?ちょ、また未来に行っちゃうのか!?」

 

「今行ってきたばかりじゃない!」

 

二人は未来の話を聞きたいのか、園子の自分勝手な行動に頬を膨らませる。

 

(お願いっ........戻って........!)

 

園子はひたすら願った。しかし、いくら時間が経ってもいつものビリビリが来ない。タイムリープする感覚は訪れなかった。

 

「........ぅぅ...そんなっ........!まさか本当に........最後になるなんてっ...!」

 

「そ、園子...?」

 

「そのっち...未来はどうなってたの...?」

 

園子は一旦心を落ち着かる。そして鉄男を別の部屋に行かせて三人だけにした。

 

「........今までで...一番良い未来だった...。」

 

「本当!?...なら、私たちはこれで...!」

 

「........けど、おかしくなってた。これもまた今までにない現象。...バーテックスの元凶が...完全に倒せずにいた。」

 

「!........それって...いつまたバーテックスが攻めてくるかわからない状況ってことか...?」

 

「うん...。さらにそれだけじゃとどまらない。だんだん歯車が狂い始めて...奇妙なことばかり起きた...。やっと、今度こそ成功したと思ったのに...。いつもいつも私が未来に帰った途端に悪くなる!!」

 

「!!........そのっちが帰った途端に...?それまではよかったのにってこと...?」

 

「そう。だからおかしいんだ。私はここでようやくそれに気づけた。たぶん、裏の力が働いてる。........私のタイムリープの力に似た何かが。きっと...!」

 

「でも........それどうするんだ?...そんなことになってるんじゃ今のうちにできることって...あるのか?」

 

銀の問いに、園子は答えられなかった。いや、答えられなかったっというよりも無視した、と言った方が正しいだろうか。園子は突如、その問題を置いて鉄男のことを話し始めた。

 

「...それよりミノさん。あなたに、謝りたいことがあるの...。私が近くにいながら、守れなかった...救えなかった...。」

 

「え...?なんだよ急に...。」

 

銀は戸惑うが、そんなこともお構いなしに園子は頭を下げ、冷たく言い放つ。

 

「てっちゃんが........未来で死んじゃったんだ...。」

 

「........。...は........?」

 

「ごめんっ...本当にごめんっ...!いきなり車が突っ込んできて、それから私を助けるためにてっちゃんは........私の代わりに、車の下敷きに...!」

 

「なに...言ってんだよ...?勇者たちだけの問題じゃないのか...?なんで一般人の鉄男が巻き込まれるんだよ!」

 

「........。」

 

「さっきのそのっちの反応は........手をつないでも未来に戻ることができなかったから...?それで鉄男くんが未来で亡くなったことを知った...。」

 

「うん...。私が未来にいたときにはまだかろうじて息があったから...。でもこれで確信した...てっちゃんは...未来で死んだっ...!」

 

銀は衝撃を受け、しばらくボッーとしていたが、やがてこう言った。

 

「鉄男の判断は........正しかったと思うよ...。」

 

「え........?」

 

園子は顔を上げて銀の顔を見る。

 

「だって、タイムリープできる園子がその事故で死んじゃったら全部終わりだからな。........それが一番最悪なこと。鉄男はきっとそう考えたんだろう...。なんとしてでも園子を過去に戻らせるため...命を懸けたんだ。........懸命な判断だったと思う。さすが........私の弟だ!」

 

銀はそう言うが、彼女の顔面はしわくちゃになっていた。言っている言葉と、表情がまるで逆だった。

 

「........ごめん二人とも!あたし、ちょっとしばらくひとりになってるわ!」

 

銀はそう言うと、いち早くこの場から離れた。かなり大きな精神的ショックを受けたらしい。

 

「み、ミノさん...!」

 

「...そのっち、私は鉄男くんがそのっちを助けたのは単なる理想の未来のことだけを考えての行動じゃなかったと思う。」

 

「えっ...?」

 

「きっと咄嗟だったのよ...。鉄男くんだってそのっちと付き合いはそれなりにあるんでしょ?だから、鉄男くんもそのっちを守りたいって思ったんだと思う。」

 

「........!」

 

「........未来の鉄男くんがいなくなってしまった以上、もう未来には帰れない...。これが、最後の挑戦になるのよね...?だったらもう失敗は許されないわ。」

 

「う、うん...!」

 

園子は大きく縦に首を振り、須美に対して決意表明する。そして園子は考える。鉄男が最期に残した言葉を思い出しながら、彼がなにを伝えようとしたのか必死に考察した。

 

(てっちゃんは...私に会う前に誰かに会ったと言っていた........。おそらく買い物にも行く前だろう。........そこできっと知ったんだ。でも、たぶんそのときはイマイチわからなかったんだ。...だけど、あの事故に巻き込まれて全部理解した。てっちゃんは誰なのか気づいた...すべての元凶、黒幕に!)

 

園子はさらに記憶を巡らせる。

 

(そう言えば........てっちゃん言ってた...。『芽吹』って言葉も...。最期に、私の後ろを恐怖するかのような目で見た...!そして、黒幕って言ってた...。そっか...私の後ろにいたのは、黒幕本人だったんだ...!ちゃんとてっちゃんが死んだかどうか確かめに来たんだ!........そして、てっちゃんがなんであそこで黒幕の名前を言おうとしてたのか...それはきっと、黒幕はてっちゃんが知っている人...だから...?)

 

だんだんと繋がってくる。鉄男が芽吹の名を出した理由はおそらく、あの事故は芽吹の件と同一犯が行ったものだからだろう。なぜ園子に会う前の話をしたのか、園子に一体なにを伝えたかったのか。...そして園子は思わず有り得ない考えが頭によぎる。しかし、それ以外考えられなかった。やり方はわからないが、何かの方法を使って芽吹と鉄男を始末し、園子を追いつめる。そして最終目標は乃木園子。こんなことができるのは自分たちのことをよく知っている人しかできない。園子の出した結論は、これしかなかった。

 

「...黒幕は............勇者部の中にいる........!」

 

(第27話に続く)




鉄男の途切れ途切れの文章は物語が進んだら明かそうと思います!
余談ですが、ここまでの全26話までの間に黒幕だと考えられる発言(ボロをこぼしている)があります!ぜひ探してみてください....。感想などで読者様たちなりの考察を聞かせていただけたら嬉しいです(笑)

黒幕はズバリ誰だと思いますか!全然予想でいいのでぜひ投票してみてください!

  • 友奈
  • 東郷(須美)
  • 夏凜
  • 芽吹
  • 勇者部外の人物
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