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ゴゴゴゴゴゴゴゴ..........
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バシャッ!
今日も須美は毎朝の日課であるお清めを行う。冷水を体にかけながら彼女は考える。
(昨日見た夢........きっとあれは神樹様からの神託だ...。大きな火の玉のようなもの...?太陽みたいなものがこちらに迫ってきていた。...あれがきっと最後の侵攻に関係するんだ。また新たな敵が現れる。そのっちの言ったとおり...数が多くて、強くて厄介なバーテックスたちが大橋へ........。)
須美は仕上げの冷水を頭から勢いよく被り、それから気合いを入れたかのように立ち上がった。
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最後のタイムリープをしてから時は過ぎ、季節は夏から秋へと変わっていた。園子はあれからいろいろ考えた。そして新たに思い出したこともあった。最初にタイムリープしたときから今まで、なにがあったか振り返り、まとめた。やがてそうしているうちにだんだんと怖くなっていった。...今まで信用していた仲間たちを疑う自分が。
「お~い、園子ぉ?ま~たボッーとしてんのか?」
「あっ...ミノさん...。」
そんな時に銀が顔を覗かして声をかけてくる。
「もうすぐハロウィンだぞ!園子はどんな仮装する!?」
(!...もう...そんな季節か.....。)
学校の休み時間での会話だった。一方須美は腕を組み、まじめに別の話題を提示した。
「銀!...確かに楽しみだけれど、その前にそれよりも大切なことがあるでしょ?もうすぐはろえんってことは最後の侵攻ももうすぐなのよ!...それの作戦を立てなくちゃ!」
「あ~...わかってるよぉ...。でもあたしら、鍛錬一生懸命がんばってるし、園子が見た未来ではあたしたち勝ってんだろ?なら大丈夫だって!」
「その油断のせいで未来が変わってるかもしれないわよ?もうどんな未来になるのか知ることはできないんだから...。やり直しはできないのよ!」
「そうだよミノさん~。...どんな結末になるか知っちゃったせいで気が抜けて未来が変わっちゃうなんてこともあるからね~。......もう私の力はなくなったも同然なんだから...。」
銀は自分の油断が要因となって崩れた未来もあることを、園子から聞いて知っている。それを思い出して銀はハッとなった。
「........そう...だな...。でもハロウィンはハロウィンで楽しみたいだろぉっ!?」
「まあそれもそうだけれども...。」
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結局この日の放課後に三人でイネスへ向かった。そこでジェラートを食べながらまた学校で話した話題をあげる。
「今日はジェラートを食べにイネスへ来ただけじゃない........仮装に必要な道具を買いに来た!」
「はろえんがもうすぐだと言っても........まださすがに気が早いんじゃないかしら?」
「いいや!何事も早めの準備は大切だぞ!」
銀はそう言いバクバクとジェラートを食べ、「ごちそうさまっ!」と言って席を立つ。
「ほら行くぞ~!レッツゴー!」
銀はその勢いのまま走り出してしまった。
「あっ!ちょっと銀!」
「...ミノさんも........怖いのかな。」
「........え...?」
園子の唐突な言葉に、須美は思わず聞き返す。
「...あんなにハロウィンの準備に没頭しちゃって...最後の戦いの話を全然しようとしない...。私が未来で鉄男くんを守れなかったから...ミノさん、ちょっとビクビクしてるのかもしれない...。」
園子はスプーンで食べ終わった容器をコンコンと叩きながらそう言った。
「........そうかしらね?私はいつも通りに見えるけど。」
「...え...?」
「目の前のことに没頭する...それはいつもの銀じゃない!全然気にしてないって言ったら嘘になるけど、三年も先の話、今はあまり気にかけてないと思うわ。きっと単純にはろえんを楽しみたいだけよ。」
「........そう...かな...?」
「そうよ。...だからそのっちは責任感じちゃダメよ?自分のせいだとか、そういう考えはダメ!」
「お~い!!二人ともなにしてるんだよ~!!早く来いよ~!!」
銀が遠くから手を振り、なかなか来ない二人を呼ぶ。
「ほら、行きましょうそのっち!」
「....!...う、うん!」
結局、この日は何を買うか迷いすぎてあまり買い物ができなかった。ただ三人でショッピングを楽しんだだけだった。
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次の日。須美と園子の二人で登校していると、後ろから二人の名を呼びながら走ってくる人物が一人。それは銀だった。いつもギリギリなのに今日は珍しく早かった。トラブルに巻き込まれず、スムーズに学校まで来れたらしい。三人は学校に到着すると階段を登り、廊下を歩いて教室に入った。そこには、三人を待っていたとでも言うように多くの児童たちがいた。園子たちが来たことに気づいたクラスメートたちの中から数人がこちらに寄ってくる。
「あの........三人ともお役目さ...私たちのために頑張ってくれてるんだよね?」
「それって...すごく大変なんだろ?なんていうか........命がけ、みたいな。」
「え........?」
突然のことに、三人とも口をあんぐり開けて立ち尽くす。
「だって...前に乃木さんが大怪我で入院して、三ノ輪さんは全身傷だらけになってた時期もあったじゃない...?確か...遠足の後あたりとかに...。」
「でも最近は急に消えたりしないよな。...お役目しばらくないんじゃないか?...終わったのなら、朝の会とかの時に先生から伝えられると思うし。」
「あぁ........まぁ...。」
「もしかして、あたしらのこと心配してくれてるのか?」
「でももう大丈夫よ。もうすぐ終わるから。」
三人はこれ以上お役目について深堀りされないようにとりあえずクラスメートたちを安心させようとした。しかし、
「ってことはやっぱり次がひさしぶりのお役目になるってことだよね...?実は...私たち全員で話してさ、しばらくなかったんだから今度はすごく大きいお役目なんじゃないかって思って...。」
「だから俺ら、少しでも力になれればって応援の思いを込めて作ったんだ!」
と言うと、奥に立っていたクラスメートたちが一枚の大きな布を広げて三人に見せた。
「あ........!」
「こ、これって...!」
クラスメートたちが掲げていたのは三人に対する応援メッセージを込めた横断幕だった。しっかり丁寧に作り込まれており、見ただけでかなり時間をかけたであろうということが伝わってきた。
「みんな........こういうことは禁止されているはずでしょ?」
須美はまじめにクラスメートたちへそう言う。だが、
「そんなのわかってるよ。承知の上でみんなで作ったんだ!」
「これくらいしかやれることはないと思ってな!」
「すごい...!あたしたちのために...!ありがとなみんな!」
三人はその横断幕を受け取った。未来を変えても、変わらず起こる出来事もある...特にこれは園子にとって予想外であったため、少し驚いた。
(前はミノさんが死んじゃったのがきっかけだったけど........そうじゃなくても作ってくれるなんて...!)
「........。とにかくこれは、先生にバレないようにしないとね。」
須美も本当は嬉しいはずなのに優等生としての顔を振る舞っていた。
「あと少し、がんばってね!...鷲尾さん、三ノ輪さん、乃木さん!」
「ねえねえ、お役目が終わったらいっぱい遊べるんでしょ?」
「え...?うん...。」
「やったぁ!私、鷲尾さんともっと仲良くなってみたいと思ってたんだ!」
「そ、そうなの...!?よかった...ありがとう...!」
須美は少し照れている様子で言った。一方園子はただ優しく見守っていただけであった。満開の後遺症さえ、攻略できれば。なんとしてでも神樹館小学校で過ごす冬を迎えたい。そして無事に卒業も...。
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「街のそこら中かぼちゃだらけになってきたね~。」
「我が国の寛容さが目に見えてわかるわね。」
「須美、園子、今日こそなにか買うぞ!」
別の日、三人はまたイネスに立ち寄っていろんな商品を見てまわった。
「この魔女の帽子かわいい~♪」
「そのっち!?頭!頭!」
「へ?」
園子の頭にはいつの間にか魔女の帽子を被った精霊が居座っていた。
「ああっ、出てきちゃダメだよセバスチャン!」
『セバスチャン?』
銀と須美は声を揃えて訪ねる。
「命名したんだ~!烏セバスチャン天狗!」
「なかなか独特だな...園子らしい...。」
園子が指を鳴らすと精霊がパッと消える。しかし、園子の頭上から消えただけで端末内に入ったわけではなかった。今度はパンプキンの玩具の中に入る。そしてそのまま空中に浮いた。
「だから勝手に........ん...?おお~!これはこれでかわいいんよ~!」
「そのっち!そんなことよりも早く精霊を........。」
「わ~見て~!かぼちゃが浮いてるよ!」
「あらホント、どういう仕組みかしら?」
通りすがりの親子にその光景を見られてしまう。須美は咄嗟に体で精霊を隠し、
「あ、アルファ波で浮かんでいます~...。」
と、苦し紛れに答えた。
「ええっ!?すごい~!」
と、反応する園子。須美は園子を睨んで早くしまうように指示するが園子は動こうとしない。代わりに銀が精霊を見えないところへ移動させて隠した。
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鷲尾家 客間
「え........それじゃ須美は...!」
「........。」
「そんな........それじゃあまるで...あの子たちは生贄じゃないですかっ!!」
「........。」
須美たちがイネスで遊んでいる間、安芸は大赦装束を纏って鷲尾家に訪れ、満開の後遺症について話していた。須美は鷲尾家の娘ではない。須美は勇者適性が高かったため、大赦内の中でも格式が高い鷲尾家に養子として入った。今まで鷲尾夫妻が我が子同然として育ててきた須美の迎える運命。それを伝えられた鷲尾夫妻は大きなショックを受けていた。
「なんとかならないのですか...?...まだ小学六年生だと言うのに...。」
「...これはどうしても避けられないことなのです。勇者として選ばれた者の運命...。どうかご理解を。」
「そんなっ...!あまりにも、あまりにも酷すぎますよ!」
「........ですが、私は信じています。」
「えっ...?」
安芸は頭を下げた後、自分の気持ちを鷲尾夫妻に明かした。
「私は彼女たちを信じます。...今までどんなお役目も、ひとりも犠牲者を出さずにこなしてきた彼女たちです。常に三人一緒で協力し合い、チームワークも抜群です。彼女たちなら........多少の障害は残ってしまってもきっと乗り越えられる...私はそう信じています。」
安芸はそう伝えると二人に問う。
「.........あなた方はどうお思いになりますか...?」
『........。』
二人は少し困った顔で見合わせた。そして安芸は最後にこう言う。
「...どうか、彼女たちを信じてあげてください。我々はそれしかできません。我々大人は無力なのです。彼女たちを見守ることしかできないのです。」
安芸は二人に一礼し、「失礼します」と言って鷲尾家を後にした。
(私たちは願うことしかできない。それ以上もそれ以下もできない。...私のしていることは本当に正しいことなのか...?これも世界を救うため...?そのためならあの子たちを犠牲にしていいの...?...こんなことになるなら、こんな思いをしなくてはならないなら大赦なんて今すぐ辞めたいくらいだ。だがそうするわけにはいかない。あの子たちの面倒は私が責任を持って最後までみる。こうなってしまった以上は、私が彼女たちを支える。例え、見守ることしかできないとしても...心が折れようとも......。)
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イネスからの帰り道。夕日が照らす一本道を、三人は横に並んで歩く。
「いや~今日は楽しかったな!」
「でも銀、やっぱり私しょうゆ豆ジェラート味はあまり好きじゃないかも...。」
「ええっ!?いやあれが一番だろ!?」
「私はやっぱり抹茶の......。」
「いやいや!しょうゆ豆ジェラートだ!」
「が、頑固ね...。」
「ミノさん、それだけは譲れないからね~!」
「ああ!しょうゆ豆ジェラートが世界一!いや、イネスまるごと世界一!!」
銀の胸を張って言った発言に、二人はクスッと笑いかける。須美は空を見上げながら今日の出来事を振り返った。
「...お父さんからもお母さんからも誉められて、友達からも応援されて......お役目がある私たちは幸せだ。.....って思ってた。でも、それは表向きの話...。」
「........ああ。あたしも最初勇者に選ばれた時はすっごくうれしかったよ。めっちゃ誇らしかった。けど今は複雑な気持ちだな...。大赦の裏の顔を知っちゃったからさ。ついでに未来のことも...。」
「........私が元々いた未来ではね、この横断幕はミノさんのことがきっかけでみんな作ってくれたんだ。でも今回は別の理由で作ってくれた。...がんばろうよ二人とも。どっちにしろ、私たちがやることは一つしかないんだから!」
園子は二人の顔を見る。銀も須美も微笑んで頷いた。と、そこで風が吹く。ザザ...と音を立てて枯れ葉が揺れる。その時、須美は何かを感じ取ったのかのようにバッと後ろを振り向いた。
「........須美...?」
「...来るんだね...?」
「ええ...来る...!」
「!?...須美、わかるようになったのか!?」
その瞬間、三人のスマホが一斉に鳴る。勇者システムのアップデートにより、追加された樹海化警報だ。これで樹海化が起こるタイミングがいつ来るかわかる。
「......実は私、昨日の夢で神託らしきものを見たの...。...こんなの初めてよ。やはりそのっちの言うとおり、厳しい戦いになるのだということを伝えてくれたんだと思う...。大きな火の玉が三つ...。」
「火の玉...?また新しいタイプだな。」
「気を引き締めていこうね!集中!集中!」
「おっ、そうだ!」
銀は何かを思いついたのかと思うと、いつも髪につけている花柄の髪留めを取って須美に差し出した。
「あたしがいつもつけてるピン!須美が持っててくれよ!」
「えっ...?」
「........ほら、本当の未来なら須美は記憶を失っちゃうんだろ?だからそうならないようにってことでお守り!あたしらのことを忘れないっていう、約束の印みたいなもん!」
銀はそう言って須美の手に髪留めを託す。須美はその髪留めをじっと見つめると、ギュッと握りしめた。
「髪につけてもいいんだぜ?」
「...ふふ、戦いが終わってからにするわ!」
「......じゃあ、私はミノさんにあげるよ。」
「えっ?あたし?」
園子も同様にいつもつけているリボンを銀に渡した。
「ミノさんも油断しちゃダメだからね。どこのなんの機能を失うかわかんないんだから。だから私もお守りとして!」
銀は園子のリボンを受け取り、気合いを入れるかのように手首にキュッと巻いた。
「へへっ、ありがとよ園子!あたしも戦いが終わったらつける!」
「わあっ!きっと二人とも似合うよ~!早く見たいな~!」
やがて時が停止し、大橋に一本の光が射す。ひさしぶりの樹海化が始まった。その光はどんどんこちらに迫ってきてすべてを覆い尽くしていく。ついにやってきた決戦の刻。園子にとって一、二を争うトラウマだ。園子は強く大橋に射す光を睨んだ。
「二人は私が守るからね!」
「あたしも!須美と園子を守る!」
「全員...私が守るよ!」
三人は手を繋ぎ、そのまま樹海化の光に飲み込まれていく。そして最後に、三人同時に声を合わせて言った。
『約束。必ず一緒に帰ろう!!』
(第28話に続く)