やがて樹海は四国全域を包み込み、三人は不思議な空間となった大橋の先を睨みつける。そこにはバーテックスが三体目視できた。
「三体...!」
「そうか...。ってことはこの後うじゃうじゃ増えるってことだな?」
「うん...そうだよ。まずはこの三体から倒す。海で泳いでるヤツは黒いガスを噴射してきて視界を奪う。その上にいるヤツは電撃で攻撃してくるよ、雷みたいに。........そしてその奥にいるのが一番厄介な...」
「おっけー園子!とりあえず手前の二体から片付けよう!」
「ええ!行きましょう!」
三人は一斉にスマホを取り出す。銀は再度キュッとリボンを手首に巻き、須美は銀の髪留めを強く握った。そして同時に勇者システムを起動させる。
光に包まれた三人は新たな勇者服を纏い、進化した武器を手にする。
「よろしくね。あなたの名前はシロガネよ。」
須美は新武器の狙撃銃にそう名付けた。
「お、武器に名前?かっけー!なんでシロガネなんだ?」
「...私が最高にかっこいいと思うものからとったの。」
「かっこいいもの?」
「ふふ、銀には内緒よ!」
「ええ~ズルいぞ~!このあと絶対教えろよな!........えっと...あたしの武器は刀か?前のずっしりとした斧よりずっと軽くなったな!」
銀は二本の刀をブンブン振り回す。彼女の勇者服は夏凜の勇者服と全く同じものだった。武器も同じくそうだ。
(にぼっしーの勇者服をミノさんが...!ちょっと違和感?でも似合ってる!)
「園子は?」
「あ、私?私は変わらず槍だね~。」
「でもなんか違うな?」
「実はね...これ伸びたりするんよ~!わっしーのも、ミノさんのも前よりずっと強い武器になってるよ~!」
「期待する価値はありそうね。」
「よしっ!どんな武器かはだいたいわかった!早速実戦行くか!」
「先陣は私がとるわ!」
須美はそう言い、三人は一斉に飛び上がってバーテックスに接近する。途中で須美だけ外れ、狙撃ポイントとなる場所をとるとバーテックスに狙いを定める。
(まずは海に潜ってるヤツから...!)
須美はうつ伏せになり、銃口を向けて数発放つ。
ボコーン!ドーン!ドガーン!
見事すべて命中し、バーテックスの動きは止まった。その間に急接近していた園子と銀は一気に畳みかける。
「くらえ~!え~~いっ!!」
園子は槍を伸ばし、バーテックスの上部を刺す。
「続いて横からだっ!」
銀は刀を何本も取り出し、バーテックスの体へ投げつけた。これも全部突き刺さり、着々とダメージを与えていく。
(いいコンビネーション...!やっぱりミノさんの存在はデカい...!)
すると海のバーテックスの動きが止まり、今度は頭上のバーテックスが動き始めた。
「あっ...園子上っ!」
「...!!」
銀の忠告も間に合わず、園子は電撃を食らってしまう。
「うわっ......。」
しかし、その電撃は烏天狗のバリアによって防がれた。
「........ふぅ...ビリッときた~...!」
「園子大丈夫か!?」
銀がこちらによってきて園子の隣にしゃがむ。
「大丈夫、無傷だよ~。セバスチャンのおかげでね。........あ、ほら見て。私の満開ゲージ。」
園子は自分の満開ゲージを銀に見せる。
「こうやって溜めていくんだよ。ダメージを負っていけば自然と溜まっていく。」
「!...要するに、好きなときに好きなように満開できるってわけじゃないんだな。」
「そ!」
そんな会話をしている中、バーテックスたちは容赦なく攻撃してくる。先ほど攻撃を浴びさせたバーテックスが例の黒いガスを噴射してきた。
「うおっ...!ホントだ...何にも見えない!」
「ミノさん!わっしー!高く飛んで!」
園子は二人にそう叫ぶ。そして三人とも一斉に高く飛んだ。
「よし...!煙幕を抜けた...!これで狙える!」
「二人とも、このままあいつを叩くよ!」
「いや...待て園子!!」
「...え?」
園子と須美は目の前のガスを噴出しているバーテックスにしか目がいっていなかった。しかし、銀だけは頭上を見上げていた。高くジャンプしたことにより、電撃を放つバーテックスに近づいていた。
「あ...!」
園子と須美は銀の向いている方向に気がつき、両者とも上を見る。
「まずい...!!」
銀は攻撃される前に攻撃してやろうと、刀を構える。しかし、
ジバババババ!!
それも間に合わず、広範囲の電撃が園子たちを襲う。
「うっ.......!」
「わあっ......」
(まさかこんな広い範囲まで電撃を放てるなんて...!遠くにいたわっしーまで当たってる...。)
三人はまた地面に戻され、倒れる。ガスの中に後戻りしてしまったため、また周りの様子が見えない。
「くっ...!みんな無事か...?」
「ミノさんまだだよっ!まだくる!!」
休む暇もなく、バーテックスは電撃を放ってくる。どこから飛んでくるかわからない電撃に、園子たちは防御などろくにできなかった。さらにガスとの化学反応を起こし、樹海に火がつく。園子たちは火の海の中で必死にあがいた。
(このままじゃやられる...!満開ゲージも溜まった。あたしがやるしか...!)
銀は満開を使おうとするが、
「ミノさんとわっしーはそこにいて!私がやる!!」
「え?ちょ、園子!!」
「満開っ!!」
園子はなんの躊躇いもなく、満開を発動した。その力は絶大で、満開しただけで周りのガスと火を一瞬にして消してしまった。
「ぅ........まわりの火が消えた...?あ...!!」
「すごい...これが満開...?」
須美と銀がゆっくりと見上げると、神々しい光と服に包まれた園子が宙に浮いていた。二人は思わず息をのむ。
「........!...かっけぇ...。」
「そのっち...まるで神様みたい...。」
園子は船のような物に乗り、二つの大きな球体を手にし、船を操る。
「...できればここで使いたくなかったんだけどしょうがない。......一瞬で終わらせるよ。」
園子はそう呟くと船を進め、周りに浮かんでいる大きな槍のようなものを何本も動かした。それは自由自在に動かせるようで、不規則に動いている。
パンっ!
園子が手をたたいた瞬間、その槍が一斉にバーテックスを串刺しにし、一瞬にして消した。あれほど苦戦していた電撃を放つバーテックスをたった一撃で。
「トドメだよ。」
さらに園子はそう言うと、体をなくしたバーテックスから飛び出た三角推に槍を刺す。すると七色の光を出して消滅した。その様子を見た下にいるバーテックスは殺されまいと逃げ出した。
「おっと、逃がさないんよ~」
園子はニコッと笑いながら片手のひらを下にかざす。それに従うかのように、槍はバーテックス目掛けて雨のごとく飛んでいった。
グサッグサッグサッ!!
為す術なくあっという間に追いつかれ、全身を貫かれたバーテックスは体をバラバラにして崩れ去った。園子は先ほどと同じようにバーテックスから飛び出した三角錐を壊す。やはりそれも七色の光を出して消えた。
「よし........このままあいつも...!」
園子はそのままの勢いで奥に陣取っているバーテックスに向かっていく。が、、
「!........うっ...。」
突然空中でよろめいたと思うとそのままバランスを崩して落ちていった。
「...園子...!?」
「そのっち...!」
二人はすぐさま彼女が落ちた場所に駆け寄ると、満開状態が解けた園子が倒れていた。
「うぅ...満開でいられる時間はたったこれだけか...!昔の体感よりもずっと早い...!」
「そのっち!!大丈夫!?」
「あとは任せろ園子。あたしらも満開ゲージが溜まった。すぐに片を付けてやる!」
「!...待ってミノさん!」
園子はすぐに起き上がり、銀の手を掴んで止めた。
「今満開してわかった...。満開できる時間はほんの少しだけ。限られてる。それにわっしーは......満開していいのは一回だけだよ。」
「えっ...?どうして...?」
「わっしーは二回目の散華で記憶を失う...。だからできるだけ通常状態で戦って欲しいんだ。自分の身が本当にピンチになったときだけ使っていい。もっかい言うけど一回だけだよ。」
「........ああ。園子の言うとおりだな。あたしらも須美が危なくなったら全力で守る。だから安心して戦ってくれ。」
「でもそれじゃ私は二人の足手まといに...!!」
「ならないよ!...約束したでしょ?みんなで守り合うって!」
「そうだぞ須美~!須美もその射撃で充分戦えるし、あたしらのサポートもバッチリできるだろぉ?」
「...二人とも...!ごめんなさい...。」
「すぐ謝んなって!........ほら、ヤツが来るぞ。」
向こうも自分たちの位置に気づいたらしく、大きな火の玉を作り出している。
「あ、あれは...!!............私が夢に見たのは........あれだ...!」
須美はそう呟く。あの火球が完成して発射されれば樹海はまるごと吹き飛ぶだろう。
「...園子、立てるか?」
「うん...!まだまだ!」
園子は右目を気にする素振りを見せながら立ち上がる。それを見た銀は二人の前に立った。園子は彼女の小さいのに大きく見える背中を眺めた。
「...あたしがあいつを止める。園子は一旦須美を連れて遠くに離れてろ。」
「えっ...?でも!ミノさんだって満開で何を失うかわからないんだよ!?」
「そんなことわかってるよ。だけど、いちいちそんなん言ってちゃ戦えないだろ?」
「...!まぁ...そうだけど...」
「少なくとも、お前が前に見た未来では私は普通に生きてた...ってことは大丈夫なはずだ!だから安心しろ、園子。」
銀は振り返り、園子の頭を優しく撫でてそう言った。園子は銀の笑顔を信じ、
「...わかった。バーテックスを倒したあとに出てくる三角形のもの...『御霊』を壊せば完全に倒せるから。今まで追い返すまでが精一杯だったけどアップデートされた勇者システムなら倒せる。........それじゃ任せたよ、ミノさん!」
と詳しく説明してから後退した。
「...どうかご武運を。」
須美もそう言い、後ろにさがる。
「すぅ.......はぁ......。」
銀は大きく深呼吸すると、二カッと笑いながらもバーテックスを睨みつけて叫んだ。
「よ~しっ!!いっちょぶちかましますか!!」
銀は指の関節をパキパキ鳴らし、低い体制になって雄叫びをあげる。
「満開っ!!!」
赤い光が銀を包み、牡丹の花が空に輝く。園子同様、似たような満開装束を纏った銀もまた、とても神々しかった。遠くでその様子を見ていた二人は銀の放つオーラにすっかり見とれていた。
(ミノさんの満開はにぼっしーのと全然違う...!満開前の勇者服は一緒だったのに...ミノさんの場合は武器だった斧が変化して『爪』みたいになってる...!四本足の大きい戦艦みたいな...。)
おそらくその違いは、使用者によって異なるのだろう。どっちにしろ、かっこいい銀の姿に釘付けになっていたのは確かだった。
「覚悟しろバーテックス...。この三ノ輪銀様がお相手だ!一世一代の大勝負!タイマン張りやがれっー!!」
銀は叫びながらバーテックスに突っ込んでいく。作り途中の火球があるのにも関わらず、そんなのもお構いなしに猛スピードで向かっていった。
「おりゃああああああああ!!!」
銀は両手にある水晶のような球体を動かし、乗っている戦艦を操る。その動きはとてもパワフルでスピードがあり、戦艦の爪は火球を切り刻んでかき消した。
「よっしゃ!一気にトドメっ!!........ここから、出ていけっ~~!!」
銀はそのまま最後まで決めようとする。ブーストを発生させ、高速でバーテックスごと結界ギリギリまで突進する。そして樹海の壁に激突して止まった。
「うっ...さすがに無理しすぎたか...。ん...?」
消滅したバーテックスの体から、御霊が飛び出す。御霊は空に飛び上がると壁の外へ逃げようと動き始めた。
「逃げるつもりか...!こら待てっ!........!!うっ...。」
そのタイミングで満開の時間切れが訪れ、乗っていた戦艦が消えて銀は地面に落ちた。そのせいで御霊は壁の外へ逃げてしまった。
「はぁ...はぁ...。あれ...?特におかしいところはないな...。でもそれなら逆に良い!あいつは絶対に逃がさん!」
銀は満開の力を使用したことによる息切れだけで、どこかの機能を失ったという感覚は特になかった。銀は立ち上がり、そのまま結界外へと御霊を追いかける。
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「銀...あんな壁ギリギリまで...。」
「まずい...!もしかしてミノさん壁の外に...!?」
園子は昔の自分の記憶を振り返り、銀がとるであろう行動を考えた。
「わっしーはここで待ってて!ちょっと行ってくる!」
「え?そのっち!?」
園子はそう言い残すと全速力で壁へと向かう。
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「なんだ...これ........。」
一方銀は、壁の外へと出てこの世界の真実を目の当たりにした。どこまでも続いている火の海。真っ赤な風景がずっと向こうまで広がっていた。
「園子から話は聞いてたけど...まさかここまでなんて........。本当の本当に、地獄じゃないか........。」
すると、壁外に出た銀を発見した星屑たちが一斉にこちらにやってくる。
「!!やべっ...!」
銀は軽い身のこなしで星屑たちを避け、すかさず反撃の一撃を食らわせた。
「ミノさん!!」
その時、園子も壁外にやってきた。
「園子...!お前が見た風景はこれだったんだな...!これは確かに地獄だ...。壁の中にいる人たちは外がこんなんになってるのも知らないなんて...!」
壁外では話す余裕もろくになく、次々に容赦なくバーテックスたちが襲いかかる。しかし、彼女たちはそんな攻撃をもろともせず、一撃も食らわずに倒し続けた。
「そのっち!銀!」
「わっしー!?待っててって言って...。」
「私だけ待ってるわけにはいかないでしょ!........あ...!?」
須美も壁外の風景を目の当たりにし、その場で固まってしまう。
「嘘...こんな........!?」
「まるでファンタジーの世界だよな、須美...。私も信じられない。」
「ここまでひどいなんてね...。」
「とりあえずみんな、中へ............あっ!?」
園子が壁内へ須美たちを連れて行こうとしたとき、火の海のずっと向こう側で大型バーテックスが大量に作られていくのを見る。
「!!........あ、あれか...!しかも結構な数...。」
「ああやってバーテックスは作られてたのね...。ここからが本番と言ったところかしら。」
「二人とも、気を引き締めて乗り切ろう。...ここを乗り越えれば次の機会に繋げられる。........あの炎のずっとずっと向こうにいる天の神を倒さない限り...バーテックスは無限に生み出されるのだから...。」
園子たちは後退し、樹海に戻る。そして三人並んでバーテックスたちが来るのを待つ。やがて横並びに多くのバーテックスが入ってくるのが目視できた。
「来た...!」
須美はバーテックスたちを確認すると二人に向かって頷き、一人下がって狙撃体制に入った。いわゆる二人の援護役だ。
「ついにだな、園子。あたしらのクリスマスと新年は、今このときにかかってる。」
「そうだね。がんばろう、ミノさん!」
二人は顔を見合わせると「うん」と首を縦に降り、同時に叫んだ。
『満開っ!!!』
二つの花が上空に二輪咲き誇り、樹海を明るく照らす。希望の光が人類を滅ぼそうとする絶望に立ち向かうかのように、その二人の姿は絶望の象徴とも言えるバーテックスと見事に対比されていた。
「あたしは左側の十体をやる。園子は右側の十体を頼んだ!真ん中は...めっちゃ強そうだから最後二人でやるぞ。」
「おっけー!任せて~!」
「そんじゃ行くぞっ!!」
銀の掛け声で両者は二手に分かれた。猛スピードで敵の大群へ向かっていく。バーテックスたちは進行の妨げになる邪魔者を排除しようと、多種多様な攻撃を放つ。
「そんな攻撃...もう食らわないんだよっ!」
銀は満開の時間制限を気にし、敵の攻撃をお構いなしに突っ込んでいく。
「おりゃおりゃ!とりゃあああああああっ!!!」
銀はやたらめったら戦艦を動かし、バーテックスを切り刻んでいく。満開状態でいられる時間が短い分、適当に暴れまわって少しでもダメージを与えさせるのが銀の策略だった。だがその勢いも、
「うぐっ...さすがに敵が多すぎる...。」
完全にバーテックスに囲まれてしまい、四方八方から攻撃を受ける。さすがの銀もこれには対処できず、そのまま二回目の満開が切れてしまった。
「くそっ...突っ込みすぎたか...!はぁ...はぁ...。」
ドサッ
銀はそのまま地面に転がり、バーテックスの標的となった。
「満開が切れるタイミングが悪すぎた...!このままじゃやば...」
バーテックスは一斉に攻撃を放ち、一対多数の場数で銀を倒そうとする。
「わあああっ!!」
銀は敵の攻撃でまともに行動できず、その場でうずくまることしかできなかった。精霊が守ってくれてはいるものの、体験したことのないほどの衝撃が銀を襲う。言うなればリンチだ。
(くうっ...なんとか、なんとかこの状況を...そうだ、もう一回満開を!)
銀は攻撃の雨の中、なんとか立とうとする。しかし、
「あ、あれ...?右足が、動かない...。」
銀は立てなかった。全く力が入らなかったのだ。銀の右足はまるで重りのようで、引きずることしかできない。
(これが...散華......。)
銀は『体の機能を失う』ということを実際に体験し、恐怖心を抱いた。そんな時ちょうどそのタイミングで満開ゲージが溜まった。
(!...今使えばここから抜けられる...。でもまたこの足みたいにどこかが...。いや、なに言ってんだあたし!!もう覚悟は決めたはずだろ...!!)
「満...」
もう一度満開を発動しようとしたとき、急にバーテックスたちの攻撃が止まった。見上げてみると、敵はいくつもの光線に身を貫かれていた。
「!!......これって...!」
銀は光線が飛んできている方角を見る。銀の予想したとおり、そこにいたのは
「す、須美...!?」
銀や園子と似た戦艦のようなものに乗り、次々にバーテックスたちを撃ち抜いていく。やがて須美は隙を見計らって銀に接近し、
「銀、乗って!!一旦退くわよ!」
と言った。銀はすぐさま須美の戦艦に乗り、猛スピードでバーテックスの大群から身を退く。その間も逃がさまいとバーテックスは追ってくる。それを須美は撃ち抜きながら命がけでなんとか逃げ切った。
「須美...!お前満開を...!」
「満開じゃないと歯が立たなそうだったからね。でも本当によかった。銀が無事で...。」
「須美...ごめん...あたしのせいでたった一回の満開を使わせちまって...。あたしが突っ込みすぎたせいだ...。」
「思い詰めないで銀!私は約束を果たしただけよ。銀を守るって約束をね。...私はあなたたちのためなら例え記憶をうしな...」
「それはダメだ!!この戦い乗り越えてクリスマスやら正月やら三人でまだまだ遊ぶ...それも約束だろ!?」
「...!」
「あたたちには精霊がついてくれてる。傷つくことはない。だから須美はもう満開を...」
「うぐっ...。」
「!...須美...!?」
ちょうどそこで須美の満開状態が解かれる。銀はすぐさま須美を抱きかかえ、地面に着地した。
「須美!大丈夫か!?」
「ぅ...銀...ありがとう。あれ...?」
須美は銀から離れて立とうとするが、なかなかうまくいかない。足がどちらとも全く動かないのだ。
「........須美、もしかしてお前...立てないのか...?」
「!...ええ。両足とも全く...。」
「えっ...!?くっ...たった一回満開しただけなのになんで両足持ってかれるんだよ...!」
ゴゴゴゴ...
すると頭上から不穏な音がして二人は空を見上げる。そこには体を真っ赤に燃やしながら進んでいく星屑たちの姿が見えた。
「!!...な、なんだこいつら!?」
「銀...あそこ!」
須美は星屑たちが来た場所を指差す。その先には真ん中に陣取っているバーテックスが星屑を次々に生み出していた。
「最初に...火球をつくっていたヤツよ。」
「あたしが倒し損ねたヤツか...!くそっ...こんなこともできるのかよ!」
勇者システムの補助機能が発動したのか、銀は突然立てるようになった。須美も同様に、勇者システムのサポートで立ち上がる。
「銀!とりあえずこいつらを止めないと!早くしないと...」
「ああ!神樹様の所に追いつかれる!」
銀と須美は飛び上がり、星屑たちを撃破していく。
「こらお前ら止まれ~!」
いくら斬り倒しても、いくら撃ち抜いてもきりがなかった。...数が多すぎる。二人で倒しきるにはあまりにも不可能な数だった。そして何匹かの進軍を許してしまう。
「あっ!あいつら前に...!」
「くっ...!でもこっちも目を離したら前に行かれるわ...どうしたら...!」
「あたしが満開するしかないだろ!...こんなザコ共に使いたくなかったけどしょうがない!......満開っ!!」
銀は即座に満開を使い、神樹の元へたどり着こうとする星屑たちにあっという間に追いつき、大きな爪で一気に切り裂いた。
「オラオラオラっー!!」
一瞬。たった一瞬で銀は星屑を殲滅させた。さっきまで苦戦していたのが嘘のようだ。
「銀すごい...いくら数が多かろうとも関係ない...。やっぱり満開の力って偉大だわ...!」
「はぁ...はぁ...ようやく片付いたか...。なんでだしらんけどあのバーテックスはもうちっこいのを出さなくなったな...。うっ...。」
満開が解け、銀は地面に落ちる。
「銀!大丈夫!?」
「あ...あぁ........なんか...逆に楽になった気がする...。」
「え...?」
「いや....疲れなくなったっていうか...息切れしなくなったっていうか........。そういや初めて満開した時もなにも失わなかった感じだったし。」
「...散華に良いことなんてないはずよね...?」
「ああ。そのはずだけど...でもこれならもっとたくさん戦えるぜ!疲れない体になったんだからな!」
銀はガッツポーズしてそう言うと、
「.....あ........。」
突然須美がこの世の終わりだとでも言うような顔をして見上げている。銀は疑問に思い、後ろを振り返った。その瞬間、銀も須美と全く同じ顔をすることになる。
「こ、こいつらいつの間に........!」
銀と須美のすぐそばまでに先ほどの大型バーテックスたちが接近していたのだ。星屑はこいつらが須美たちの元へ行くまでの時間稼ぎだった。二人は焦る。この数のバーテックスがさっきみたいに襲ってきたら...。
「くっ...今満開使ったばっかだから、満開ゲージはゼロだ...!」
「私も...。」
二人はピッタリくっつき、ただただバーテックスたちを見上げる。そして考える。別の世界ではあるが、園子はこいつらに加えて合計20体以上の大型バーテックスを一人で倒したということを。彼女がいかに規格外であるか二人は思い知った。
「満開ゲージが溜まるまであたしらはこのまま相手をしなくちゃいけない...けど避けてばっかりじゃダメだ。もちろん満開ゲージが溜まらないってのもあるけど、何より樹海が傷つく...ましてやこの量の攻撃が飛んできたら...!」
「現実の世界への影響は大きくなる...。つまり、私たちができることは........『樹海の盾になる』こと...。」
二人は冷や汗をかきながらも覚悟した。これからすべて敵の攻撃を受け止め、極力樹海を守らなくてはならない。どれくらいの攻撃を受けるだろうか。ダメージはどれくらいなのか...。
「やりましょう...銀。」
須美は静かにそう言い、狙撃銃を構えた。
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「はぁっ...はぁっ...これで...全部やった...?」
一方、園子はたった一人で右側10体のバーテックスを葬っていた。それに要した満開の回数は7回。二回目ということもあり、予定よりも3回程度満開する数を減らすことに成功していた。
「わっしーと...ミノさんは.......?」
園子はもうすでに不自由な体をなんとかして動かし、辺りを見回した。すると、遠い向こうの方でバーテックスたちが集まり、何か爆発しているのが見える。園子は彼女たちが戦っているのだと言うことをすぐに理解した。
(!!........は、早く行かなきゃ...!まだ戦いは終わってないんだ...!!)
園子は勇者システムのサポートに支えられながらも、彼女たちがいる方へ向かった。
(第29話に続く)