「くっ....!うぅ....」
「!........んうっ....!」
二人は敵の攻撃が飛んでくる度、体を呈して樹海を守る。
「もう少しだ....もう少しで満開ゲージが....!........ぬあっ!?」
「!!....銀っ!!」
銀は不思議な触手なようなものに捕まり、身動きが取れなくなる。空中に浮き、足をジタバタさせる以外にできることはない。
「あのバーテックス....!そのっちがケガでいなかったときに銀と二人で倒したバーテックスだわ...!確かこいつ爆弾も...」
須美の予想通り、ラグビーボール状の爆弾が須美目掛けて飛んできた。須美はそれを狙撃銃で撃ち落とし、銀に向かって叫ぶ。
「銀!今助けるからね!!」
須美はそう言って触手の根元を狙って放つ。が、
「なっ...!あなたたち邪魔よ!!」
周りのバーテックスたちが盾となり、射線を切る。ましてや弾の装填に時間がかかる狙撃銃である。やがて須美はバーテックスに囲まれ、銀を救うどころか自分の身も危うくなっていた。
「どいて...!お願いだからどいて!!早くしないと銀がっ...!」
「くっ...ぬうっ......んんんっ~...!コラ~...離せ~...!!」
何もできないまま時間だけが過ぎようとしていたとき、
ズゴゴゴゴゴーン
地響きのような音がこちらに近づいてきたと思うと、バーテックスが数匹吹っ飛んだ。
「!!来てくれた...!」
銀は待ってましたとでも言うようにその方向を見た。
「二人とも、遅れてごめん...!ミノさん、今助けるよ!!!」
園子を危険と判断したバーテックスたちは、須美の相手から園子に切り替えて立ちふさがる。
「どいて~~~!!!」
園子は構わず突っ込み、満開の力で強行突破する。
「行けっ~~!そのっち~!!!」
「うおおおおおおおっ!!!」
バーテックスの群れを抜け、園子は銀に手を伸ばす。だがしかし、そこで時間は来てしまった。
「うっ...!?あがっ......」
運悪く銀に手が届くすれすれのところで園子の満開は解けた。
「ゲホッ...ゲホッ...!あともうちょっと...だったのに...!ぅぅ...早く...立たなきゃ...!」
園子は生まれたての子鹿のように立つのに苦戦している。満開の影響だ。足の機能ももうすでになくなっていた。先ほど蹴散らしたバーテックスたちがもう傷を修復し、迫ってきている。
「園子大丈夫かっ!!後ろから来てるぞ!............!?あ、あれ...!?」
銀はある異変に気づく。自分を捕らえているバーテックスが壁に向かって進み始めているのだ。
「おいお前っ!何するつもりだ!!」
「なんで...壁の方へ...?神樹様がいるところと真反対なのに...。」
「まさか...!」
須美はいち早く感づいた。このバーテックスがしようとしていること、それは...
「ヤツらの攻撃では、精霊のご加護もあって私たちを倒すことはできない...。けど神樹様の結界の外、火の海に持って行かれれば全部ヤツらの思い通りになる...!」
そう。銀を壁外へと連れて行き、自分のすみかとも言える場所で銀を倒す...そういう魂胆だった。
「バーテックスにそこまでの知能がっ...!どうしよう、私が、なんとか...なんとかしないと!!そのっちは動けない...私が...私がやるしか...ないんだ...!」
須美はどんどん離れていく銀を見ながら焦る。
「園子!!須美!!あたしは大丈夫だ!!なんてたって精霊がついてる!壁の外に持ってかれたとしてもそこでコイツをぶっ倒してやるさ!だから満開は使うな!あたしに構うなっー!!」
銀は必死にそう叫び、なるべく二人に更なる苦痛を与えないように心がける。が、銀のそんな儚い願いも一瞬で打ち砕かれた。
「満...開っ!!!」
「!!」
「...!!........あ...!?」
空に青白く輝く一輪の花。空中に浮いたその正体は間違いなく、須美だった。
「お前......須美...なにやってんだ!!あたしは大丈夫だって...」
「そいつがどこまで銀を連れて行くかわからない。自分の言動には責任を持つべきよ、銀。その場の勢いで無理なこと言っちゃダメ。」
「で、でもっ...!これでお前は...!」
「とりあえず、今は黙って私に助けられなさい。」
須美はそう言うと片手を前にかざし、
「さっきはよくも...私たちをおもちゃ扱いしてくれたわね。100倍にして返してあげるわ!」
砲台から発射されるいくつもの光線。その光線は鋭く、バーテックスの体を貫いた。最初に園子から助けると、そのまま銀を捕らえているバーテックスも倒し、銀は解放される。
「ふぅ...これで......安心ね!」
須美がそう言った瞬間、彼女の体が光り輝く。散華が始まるのだ。
「!!...須美!」
「わっしー!」
二人は須美の戦艦に飛び乗り、彼女に寄り添った。
「ごめんなさい...勝手にやってしまって...。」
「須美っ...!あたしのせいだ...ごめん...ごめん...!」
「いいえ。銀のせいじゃないわ...。」
須美は銀の頬を撫でるように触り、言った。
「これは私が自分勝手にやったこと...。二人との約束を破った私が悪いの。」
「でもこれで...須美は記憶を...!」
「大丈夫よ。また二年後に会えるから...」
「二年なんて...長いよわっしー...!」
「ごめん...我慢して...ちょうだい...。」
「!...須美...?」
須美の目は今にも閉じそうだ。二人は心配そうに彼女の顔を見る。
「ははは、二人ともそんな顔しないで...。そろそろ時間ね...。あとは、頼んだわよ...そのっち、銀。」
「ぐすっ......ああ。お前の分まで頑張る!」
「また二年後、会おう!約束だよ!!」
「ええ...。これは絶対に破らないわ。約束。」
須美は二人と指切りをすると、最後に園子の頬も触った。園子はその手を強く握りながら涙を流す。やがて須美の目は閉じ、満開どころか勇者状態も解除されてしまった。二人は須美を安全だと思われる場所に寝かせ、大橋方面を見る。
「次に須美が目を開けたときは...須美の記憶はなくなってるんだよな...。」
「うん。まっさらにね。私たちと過ごした時間も全部忘れて、私たちが誰なのかも覚えてない。」
「!...そりゃ、やっぱ目覚めた後に会うのはキツいな...。あたしらは須美にとって赤の他人になってるなんて...。」
「あっ...いや...そう言えば...」
「ん?なんだ?」
「わっしー...ミノさんのことだけは覚えてた気がする...。」
「えっ...?」
「あれは...何だったんだろう...。二年後にもう一回会ったときにはミノさんのことも忘れてたのに...。」
「散華してすぐだったから頭の中がごちゃごちゃしてたんじゃないか?あたしのことだけ覚えてたなんておかしいし。」
「そうかな...?」
そんな会話をしている間にも、再び回復し始めたバーテックス共がまた侵攻を開始する。
「!...ヤツらもう来たぞ...園子!」
「うん...もう一踏ん張りだね!」
二人は武器を構え、ヤツらに立ち向かう。
「あたしと園子のコンビネーションの前にねじ伏せろ!」
息のあった連撃。主に銀が前に立ちながら二人は満開を繰り返し、バーテックス共を葬っていく。そしてついに...
「ふぅ...これで残りはあいつだけ...!」
あと残るのは二人で一緒に倒そうと言って最後まで倒さなかった例のバーテックスのみだけだった。燃えた星屑を生み出し、規格外の火球を作り出せる...まさにボスと言ったような風格、そしてそれに見合った強さのバーテックスだ。
「園子、大丈夫か!」
「うん!...ミノさんはまだまだ元気そうだね...!」
「ああ!だいぶ前にな、なんでだか急に息切れしなくなったんだ!」
「えっ...?」
嬉しそうに言う銀とは対照的に、園子は焦るように銀の鼻に手を近づけた。
「ちょっ...どうしたんだよ園子?」
いきなりのことに銀は少し戸惑う。
「ミノさん......息してる...?」
「........。は...?」
「ミノさん...呼吸、さっきからしてないよ...?」
銀が失った体の機能は、どうやら肺の機能らしかった。呼吸をしないから息切れしない。そういうメカニズムだったのだ。
「そっか...。この現象はそういうことだったんだな。」
銀の体の謎が明らかになった瞬間、大橋方面が赤く光り始めた。
「!...あいつ、また火球を...!」
「打たれる前に倒すよ!」
二人はこのままの勢いで一気に距離をつめ、トドメを刺そうとしたが、
「あ........!あいつ、ちっこいヤツも出して来やがった!しかもさっきより数が多い!」
「時間稼ぎってことか...!ミノさん!さっさと小さいのも倒すよ!」
「おう!」
二人はまた満開を使用し、星屑たちを次々に葬る。しかし、
「しまった!一匹逃がした!」
どさくさに紛れ、二人の壁を突破した一匹の星屑が神樹の元へと進む。
「園子、あたしはあいつを追う!ここは頼んだ!」
「わかった!」
銀はすぐさま星屑に近づき、倒そうと試みる。星屑のすぐ先には須美が気を失って倒れている場所が見える。そして星屑は須美を喰おうと向かっていく。
「!!あいつ...もしかして須美を狙ってる...!?」
銀は頭に血が上り、戦艦を動かした。
「お前に須美は触らせねぇよ!!」
銀はギリギリのところで星屑を倒した。ちょうどその時、満開も解けてしまう。
「うっ......。危なかった...。」
銀はよろよろと立ち上がる。もう今度はどこの機能を失ったかなんてわからないでいた。繰り返すうちに散華することに慣れてしまったのだ。
「早く園子のところに戻らないと..!」
「........あの...」
「!!!」
突然後ろから声をかけられ、銀はすぐに振り返った。彼女の思っていたとおり、そこには須美がちょこんと座って起き上がっていた。ようやく気がついて目を覚ましたのだ。
「須美...!お、起きたのか...!?」
「あの........ここは...どこなんでしょうか...。それに...さっきの化け物は一体...。」
「覚えて...ないのか...?」
「...はい。お恥ずかしい話なんですが...どうしてここにいるのかも、今までどうしていたのかも、よく....。」
「そ、その喋り方...どうしたんだよ...?」
「........え...?」
「ほら、あたしだぞ?三ノ輪銀!銀だよ!」
「........。」
須美はじっと銀の顔を見つめると、銀のことを少し怖がるかのようにしてこう言った。
「........どなた...ですか...?」
「!!!」
「そうだ...そのっちは...?」
「........え...?」
「そのっちはどこ!?」
「...ど、どういうことだよこれ...!」
銀は戸惑いを見せるも、なんとかして心を落ち着かせる。そして須美の高さに合わせてしゃがみ、彼女の肩に手を置いた。
「いいか。お前は鷲尾須美。どこにでもいる小学六年生だ。そしてあたしはお前の友達の三ノ輪銀!乃木園子もそうだ。」
銀は胸の苦しさをぐっとこらえながら続けて話す。
「たとえ記憶を失っても...離れ離れになったとしても...あたしたちの絆は壊れることはない。心の中でずっと一緒だ。あたしたち神樹館勇者の友情は、神様でも誰であっても引き裂くことはできない。だから...これだけは覚えていて欲しい。あたしたちはズッ友だ。......しばらく会えないけど必ず...二年後に会いにいくからな!」
「...?」
銀は一方的に話し続けたため、須美は彼女が何を言っているのか全くわからなかった。ただキョトンとし、彼女の顔を見つめていただけ。
「...またいつか会える、その日まで。」
銀は立ち上がり、ゆっくり後ずさりして須美から離れる。須美はとても不安そうな顔をしていた。銀は彼女に寄り添ってやりたかった。しかし、自分にはまだやらなければならないことがある。須美のためにも、世界のためにもやらなければならないことが。
「ちょっ...ちょっと待っ......!」
「元気でな、須美。......またね!」
銀はそれ以上須美の言葉を聞かないように彼女の言葉を遮り、さっさと須美から離れた。須美はまた視界が曇ってくるのを感じる。去っていく銀を見ながらもごもごと口元を動かすとそのまま倒れ、気を失った。
(振り返るな...!振り返るな...!)
銀は自分にそう暗示しながら園子の元へと急ぐ。この間に銀は一人で静かに涙を流すのであった。
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「園子!」
「ミノさん...!ちょうど片付いたところだよ!」
二人は無事合流するも、バーテックスはもうほとんど火球を作りきっていた。園子と銀は大橋を睨む。
「お、大きい...!」
「まずい...!あれはもう...発射されるよ...!」
「え...!?あんなでっかいの飛んできたら...!」
「私たち二人で絶対に止めるよ!それしか方法はない!」
「ああ!わかった!!」
その瞬間、完成した火球は神樹めがけて発射される。それを見た二人は瞬時に反応し、声を合わせて叫んだ。
『 満 開 っ ! ! ! 』
園子は9回目、銀は10回目の満開。二輪の花が横並びに咲き誇る。その中心から火球に突っ込んでいく光が二つ。そしてそのまま火球に激突した。
「ぬ........ぬおおおおおおっ........!!」
「んんっ...ううううううっ~.......!!」
『はあああああああああああっ~~!!!』
銀と園子は全力で火球を押し、跳ね返そうとするが全く動かなかった。むしろ神樹へと進む動きは一向に止まらず、二人ごと押し返されて進んでいる。
(ゆーゆたちのときでさえ五人でやっとだった火球...!ミノさんと私だけじゃとても...!)
しかしそれでも園子は諦めなかった。後ろには須美がいる。世界を守る神樹がいる。それを壊させないためにも諦めるわけにはいかなかった。
「ぬううううううっ~...!!止まれ~~...!」
「うおおおおおおおっ........!」
二人とも顔を赤くして全力以上に力を出して押し続けるが相変わらず全く効果はない。
(どうすれば...どうすればっ...!)
園子は焦っていた。この火球を止める術はどこにも見つからない。だがその時、銀が唐突に呟いた。
「あたしが......あたしがやらなきゃダメだよな....!」
「........えっ...?」
次の瞬間、銀はいきなり園子を押して火球から遠ざけた。その反動で園子はバランスを崩し、満開が解かれて落ちていく。
(!?一体どういうつもり!?ミノさん!)
「すまんな園子...こんなあたしを許してくれ。......あとは、お前に任せたぞ。」
「ミノさん...?...ミノさん!!ミノさぁぁぁぁぁんっ!!!」
園子はドボンと海に落ちる。その中からでも赤い炎の色はよく見えた。
(...ミノさん......)
だんだんと意識が遠のいていく。園子はそのまま海深くへと沈んでいった。
「くうっ...!うおおおおおおおっ~~!!」
園子がいなくなったため、銀にかかる負担が一気に大きくなる。
「あたしは決めたんだ!樹海の盾になるって!...これが樹海にぶつかれば四国はただじゃ済まない...。だからあたしが守る!この球がいくら大きかろうが全部あたしが...受け止めるっ!!」
銀の叫びに反応し、彼女の体は光を発して一気にブーストする。そして火球に大きな圧力をかけていく。
「はああああああああああああっ~~!!!!」
ピカッ............ドッガーーーン!!!
火球は大橋を巻き込み、海の上で大爆発を起こした。火球周辺は跡形もなく破壊され、大橋は大破した。
その大爆発の衝撃で園子は目を覚ました。まさかと思い、急いで海から陸に出る。
「...!お、大橋が...!でも樹海はなんともない...!........ミノさん...ミノさんは...?」
園子は辺りをキョロキョロ見渡すが、銀の姿は見えない。
「まさかあの爆発を...!?...ミノさん!ミノさ~ん!!」
園子は彼女の名前を叫びながら捜す。すると、
「あっ!ミノさん!よかっ...」
銀を発見した。しかし...彼女はボロボロになり、うつ伏せで倒れていた。勇者の変身も解け、神樹館の制服を着ている。
「ぁぁぁ.......ミノさん...!ミノさんっ!!ミノさんっ!!!」
いくら体を揺らしても反応はない。彼女は発言通り、樹館の盾になったのだ。あの火球をすべて受け止め、大爆発をもろにくらった。
「なんでいつも...また...どうしてっ...!」
バーテックスはまた新しい火球を作り始めている。園子は彼女のそばに座り、大粒の涙を流した。
「どうして私ばかりいつも一人になるの......。せっかく、せっかくこうならないように私が頑張ろうって決めたのに......。なんのためのタイムリープなの......。」
園子はギュッと拳を握る。その握力は爪が手に食い込み、血が出るほどの力だ。そして立ち上がり、振り返ってバーテックスを強く睨む。歯を食いしばり、ギリギリと音を鳴らす。園子の中にあるのは強大な怒りだけだった。一度こうなれば彼女を止められるヤツはもう誰もいない。
「......許さない...あんただけは...。あんたさえいなければ...ミノさんもわっしーも......全部あんたのせいだ...。」
そして静かに呟いた。
「............満開。」
これで10回目の満開。銀と須美の協力もあって満開した回数は元の世界の半分まで抑えられていた。
園子はそのまま突進し、火球など気にせずに突っ込む。今の彼女は目の前のバーテックスにしか眼中になかった。
「うわああああああああっ!!!ああっ!!やあっ!!わあああっ!!!」
園子はメタメタに切り刻み、幾度も体を貫かせ、粉みじんになるまで徹底的に攻撃し続けた。
「ああっ!てやあっ!!だああああああっ~!!」
最後に両手を前に突き出し、御霊を複数の槍で貫通させて決着がついた。
「............。」
攻撃が終わると、樹海は静寂に包まれた。先ほどまであれほど騒がしかったのにそれが嘘のようだ。樹海はたった一人、園子だけになった。やがて満開が解け、地面に落ちていく。ちょうどそれと同時に樹海化も解けていく。....決着はついた。戦いは終わったのだ。
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気がつくと三人は大橋付近の広場、芝生に並んで寝転がっていた。その中で園子だけ目を開けていて、なにやらぶつぶつ呟いている。
「終わったよ...ミノさん、わっしー。」
隣で寝たままの二人は何も返さない。だが彼女は話し続けた。
「ねぇ、ミノさん、わっしー。これから何しよっか~。お役目も終わったことだし、これでずっと遊べるよ~。」
『......。』
「なんにも気にせずに、ただ毎日を過ごす...私、これから楽しみだよ~..........ねぇ、二人とも聞いてる~?」
『......。』
「......お願いだから、返事してよ...。一人にしないでよ!約束...したじゃない!」
園子は悔しかった。また涙がこぼれる。拭いたがったが両手とも全く動かない。
「私たち...勝てたんだよ...?この世界を守れたの。これから自由だってのに......こんなのってないよ...。起きてよ、これからも一緒にいてよ!」
園子は二人の手を握りたがった。だがそれも叶わない。やがて大赦の神官たちがやってきて園子たちを運ぶ準備をする。三人を見た神官たちは手を合わせ、まるで彼女たちを神であるかのように扱い、箱のようなものにいれて運ばれた。
「ミノさんは...?わっしーは...?どこに連れてくの!?」
「........。」
神官は何も答えず、三人は別々のところへ運ばれていく。
「待ってよ!二人をどこに連れてくの!?離れ離れにさせないで!一緒にいたいの!待って!待って!!」
必死に訴えるも、彼らは聞く耳を持たない。そして園子は今でも鮮明に思い出せる"例の場所"へと運ばれた。
(また......ここで過ごすのか...。)
園子は目を閉じ、これが夢であることを祈りながら少し眠りにつくことにした。
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「............ん.......さん...!...ミノさん!」
遠くから自分を呼ぶような声がする...。
「はっ!......園子...か...?」
銀はそれに気づき、パッと目を開けた。
「!!よかった~!起きた~!私、一生懸命お願いしたんよ~。せめてミノさんと同じ部屋にしてくれって。ひとりは寂しいからね~。...そしたら願いを聞いてくれて!ミノさんがいるだけでもだいぶ心強いよ~!」
「あたし...生きてるのか...!?あの火球を正面からくらったのに...!」
「うん。生きてるよ。」
「!!...そうか。はは、ここまでくると末恐ろしくなるな。あそこまでの攻撃を受けても生きてるなんて。精霊はあたしらをマジで不死身にしやがった。」
「そうだよ。でも今だけは感謝かな。ミノさんが生きててくれて本当によかった...!」
「園子...。.......なあ...やっぱり須美は...。」
「........。...うん。今おっきい病院に入院してるみたい。」
「........。...そっか。...それにしてもここは、真っ暗だな。なんにも見えない。」
「........?...まあ、確かに明るいのは私たちが寝てるここだけだね~。」
「え...明るい...?」
どうしたのだろう。先ほどから銀の様子が変だ。目の焦点が合っていないし、会話も成り立っていない。
「あの、さ...園子...どこにいるんだ...?」
「え........私はさっきからミノさんの目の前に...」
「あたしは園子の声のする方を見てるだけだ。...なぁ、どこにいるんだよ、姿見せてくれよ。...光一つすら見えない。なんで真っ暗闇なんだよ?」
明らかにおかしい。確かに目の焦点は合っていないとは言っても、その目は園子のことを見ている。さらに、真っ暗闇なんてほどじゃない。二人が寝ているベッド付近は照明が照らしている。
「もしかしてミノさん........目、見えてないの...?」
「............え...?」
「両目とも、見えてないんじゃないの...?真っ暗闇なんてほどじゃない。ここの周りだけは明るいよ。」
「!?...そ、そうか...!じゃああたしは散華で両目を...。」
最後に銀はあの大爆発を受け、その代償として両目の視力を失った。つまりこれから二年間、銀は何も見えない暗黒の世界で過ごさなければならないのだ。
「...あはは、そりゃつらいな...。こんなのが二年も続くのかよ...。」
「...ミノさん...大丈夫。私がいるよ!...私が、ミノさんの目になるから!......と言っても、私も右目は見えなくなっちゃったけど。」
「園子...。ありがとう。」
園子は彼女の手を握ってあげたかったが、二人とも両腕を動かすことは全くできない。銀と園子はどちらも四肢の機能をすべて失っていた。10回ずつ満開をしただけあって、代償は決して軽くなかった。
「気長にゆっくり待とうよ。...こうなっちゃった以上、私たちはそうすることしかできない。」
「......。ま、そうだな。...あ~あ、小学校卒業できずに終わるのかぁ...。...でも、須美には楽しんでもらいたいな。あいつは中学行くんだろ?」
「うん。...でも心配いらないよ!わっしーにできる友達は、とっても良い人たちだから!」
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「........。........ここは...?」
薄暗い空間の中、鷲尾須美は目を覚ます。そして手に何か握っていることに気づき、手のひらの中を見た。
「これは......髪留め...?......なんで私...こんなものを...。」
彼女は入院していた。なぜなのかはわからない。記憶がないのだ。それはとある事故のせいだと、後から聞いた。そして彼女が知らない間に、病室の前に書いてある彼女の名札が入れ替えられた。
彼女の人生は、『鷲尾須美』としての人生はここで終わりを告げる。これから新しく、『東郷美森』として第二の人生を生きていくのだ。だが今そんなことは彼女は知る由もない。残酷な運命に巻き込まれたこと、今までの出来事をすべて忘れ、全く新しい生活が始まることなど何一つ知らないのだ。...ただ彼女にあるものとするならば、なぜか握っていた髪留めだけだった。彼女は不思議とこれがとても大切なものだと、感じていた。
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勇者御記 298.10.11 大赦書史部・巫女様 検閲済
私たちは戦いに勝利した。この世界を守った。けど、失ったものが多すぎる。■■■■、■■■■■、そして■■...私たちは今頃■■で■■を■■■■■■だろうに。
わっしー...今は■■さんか。私たちより軽度でよかった。
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大橋最終決戦編 完
(第30話に続く)
これにて三人の物語は一度、幕を閉じます。結局園子は散華の運命を変えられず、また二年間不自由な思いをすることになりますが銀の存在が彼女の大きな支えとなることでしょう。
さて、これから『結城友奈の章』へと入り、物語の展開点となっていくと思います。次回からも引き続き読んでいただけると嬉しいです!30話はすぐ更新するつもりですのでぜひお楽しみに!