乃木園子は勇者である ~リベンジの章~   作:てんぱまん

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勇者部編
【特別編】Yuki Yuna is a hero


 

車イスに腰かけ、今日から暮らす家を見上げる少女が一人。

 

「ここが...私の家...?大きい...。私ってこんなにお金持ちだったかしら...?」

 

塀に囲まれ、手入れされた門に玄関。外見だけでもわかるほど和風テイストですばらしい家だった。少女は門をくぐり、家の周りを見渡す。

 

「こんにちは!」

 

「...!!」

 

と、突然後ろから声をかけられ、少女は思わず体をビクッとさせた。

 

「......。」

 

「今日からこの家に住むお隣さんだよね?」

 

初対面とは思えないほどぐいぐい来る。何も返答できないまま、その人物はこちらに寄ってきた。

 

「私、結城友奈!あなたは?」

 

目の前の人物は自己紹介をすると手を差し出し、車イスの少女の名前を聞く。

 

「........東郷...美森...。」

 

ようやく声を発することができ、少女は友奈と名乗る人物の手を握って握手した。

 

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時は神世紀299年4月。香川県讃州市に引っ越してきた少女、東郷美森は結城友奈という同い年の少女と出会った。彼女の明るさと笑顔に惹かれ、東郷はあっという間に彼女の虜となっていた。友奈は東郷にとても良くしてくれて、春休みの間だけで意気投合し、とても仲良くなった。町の案内や今年から入学する中学校の話、それぞれの趣味や経験した話など...話題は尽きなかった。

ある日、満開の桜を見に友奈に車イスを押してもらって二人でお花見に言ったときの話である。

 

「わぁ~...きれい...!」

 

「........そうだね~...!...そう言えば東郷さん、ずっと気になってたんだけどそのピンいつもしてるね。」

 

友奈は東郷が前髪に付けている花柄の髪留めを指差して言った。

 

「あぁ...これ?...とても気に入ってるの。私の宝物...。」

 

「そうなんだ!いや~会ったときからとっても似合ってるなって思って!」

 

「え~本当...?」

 

「本当だよ!すごく可愛い!」

 

「!........ありがとう...友奈ちゃん...!友奈ちゃんのその髪留めも......すごく可愛いよ。」

 

東郷は少し恥ずかしがりながら友奈にそう言った。

 

「ホント!?ありがとう~!私もこれ、お気に入りなんだ♪」

 

友奈は元気いっぱいの笑顔を東郷に見せる。この笑顔が周りをも元気づけた。彼女は東郷にとって太陽のような存在。いつしか、彼女のいない生活など考えられなくなっていた。

 

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神世紀299年4月...讃州中学校に入学した私と友奈ちゃんは入学してすぐに犬吠埼風という先輩に『勇者部』という部活に入部してみないか、と誘われた。彼女もまた、友奈ちゃんみたいに元気いっぱい!みたいな方で...私たちは彼女の言う『勇者部』に入部することにした。

 

「ようこそ勇者部へ!我が部活は世の為、人の為...何事も勇んで活動する部活よ!地域の人たちから来た依頼に応えるの!」

 

部室はけして広いとは言えず、もっと言えば家庭科準備室を借りているくらいだ。

 

「あの...部員って私たちだけなんですか?」

 

「ギクッ...早速痛いところを突くわね後輩クンよ...。そうよ。部員は私とあなたたちだけ!」

 

「ほう...三人...!」

 

三人ならば、この部室も十分の広さだろう。風先輩が今までひとりで活動してきたのかというところは少し気になるが、彼女は私がそんなことを気にしているとも知らず部活の説明を続ける。

 

「依頼はこのパソコンに送られてくるようにしてるの。......けど、それが案外めんどくさくてね...。」

 

「なら、私がホームページを作りましょうか?」

 

「ほ、ホームページ!?...さすが我が部の精鋭...!できる後輩ね...!」

 

「は、はぁ...?」

 

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「風先輩~!勇者部五箇条なんてものを作ってみたらどうでしょうか!」

 

「勇者部五箇条?またずいぶんといきなりね...。」

 

また別の日、友奈ちゃんの提案で私たちは『勇者部五箇条』というものを作った。

 

一,挨拶はきちんと

一,なるべく諦めない

一,よく寝てよく食べる

一,悩んだら相談!

一,なせば大抵なんとかなる

 

三人で話し合って内容を決めた。そして大きな模造紙に油性ペンで書き、部室の壁に画鋲で刺した。

 

「おお!なかなかいいんじゃな~い?」

 

「さすが友奈ちゃんね。」

 

「へへ、これからもがんばっていきましょー!勇者部ファイト~!」

 

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「よ、よろしくお願いしまひゅ!......い、犬吠埼...樹でひゅ!」

 

私と友奈ちゃんが二年生になると風先輩の妹、樹ちゃんが入部してきた。

 

「ほら樹~緊張しすぎよ~」

 

「リラックスリラックスだよ!樹ちゃん!」

 

「は、はい!」

 

入部したての樹ちゃんは動きが全部かたくてちょっと面白かったのを覚えている。けど、直に慣れてきて...。新入部員も加わり、いい感じになってきたと思った。しかし、ある日突然私たちの日常は一旦、終わりを告げた。一番最初に『それ』が起こったのは授業中だった。クラスメートたちの動きが急に止まって、音という音がすべて消え去り、無音になった。

 

「あ、あれ......?みんな......」

 

「友奈...ちゃん...。」

 

「東郷さん!?東郷さんも動けるの!?」

 

「う、うん...そうみたい...。でも一体なにが...。」

 

その瞬間、私たちの携帯が鳴り響いた。画面には『樹海化警報』の文字。

 

「なに...これ........。」

 

私たちは教室を出て、他の教室ではどうなっているのか見に行こうとしたときだ。窓の外が一瞬光ったと思うとその光が一気にこちらに近づいてきて私たちを飲み込んだ。

 

「ぅ............あ...!!」

 

気づいたときには全く知らない場所にいた。友奈ちゃんと二人きり...人はおろか、建物さえ一つも見えなかった。

 

「どこここ...!?辺り一面虹色だ~...!」

 

「さっきから何が起こって...!」

 

「友奈!東郷!」

 

そのとき、後ろから呼ばれたと思うと風先輩と樹ちゃんが走ってきた。

 

「風先輩!樹ちゃん!......二人もいてよかった...一体これは何が起こってるんでしょうか?」

 

「三人とも、今はとりあえず落ち着きなさい。....こっちへ。」

 

風先輩はそのまま私たちを先導した。樹ちゃんは風先輩の手をずっと握っている。こんな状況になって怖いのだろう。その気持ちは私も友奈ちゃんも同じだった。ある程度進み、比較的屋根みたいになっているところまでやってくると、風先輩は止まった。

 

「これは樹海化という現象よ........残念だけど、私たちの班があたりだった...!」

 

「あたり...?」

 

風先輩によると、私たちはバーテックスという化け物と戦わなければならないそうだ。通称『勇者』。勇者部を作ったのも、風先輩がこのために勇者候補生を集めるためだった。そして彼女は中学生ながら大赦という組織の人間だった。私は騙されたような気持ちになった。あのとき私たちに狙って話しかけ、勇者部に入るように促し、入部させた。すべては彼女の思惑通りになっていたのだ。いきなり戦えと言われ、しかも負けたら世界が滅びるという大役...戦えるのは私たち四人だけであり、あまりにも責任が大きすぎる。覚悟など当然決まるわけがなかった。

けど、友奈ちゃんはそんな風先輩を許した。仕方ないと、勇者部を作ってくれたおかげでみんなに会えたと...。逆に今までひとりでそれを抱え込んでいた彼女に対して『すごい』と同情までした。

 

「友奈ちゃん...!」

 

私はますます彼女に惹かれた。彼女の手は震えている。彼女も十分怖いはずなのに、普通こんなこと言えるだろうか。奥には見たこともないくらい大きく、禍々しい見た目の化け物がこちらに向かってきている。そして卵のようなものが飛び出したと思うと、こちらに迫ってきて樹海にぶつかって爆発した。早速私たち見つけ、殺そうとしているのだ。

 

「三人とも逃げなさい。ここは私がやる!」

 

風先輩はそう言い、前に立った。友奈ちゃんはすぐさま私の乗る車いすを押して逃げてくれた。

 

「私も手伝うよ!お姉ちゃん!」

 

「樹!?なに言ってんのよ逃げなさい!」

 

「ダメだよ!お姉ちゃんを置いてなんかいけない!」

 

一方、樹ちゃんは風先輩と一緒に残った。勇者部に入部したての時から考えると彼女の成長が感じられた。二人は最初に勇者に変身し、バーテックスに立ち向かっていく。私たちは物陰に隠れ、ただただ風先輩たちの様子を遠くから見ることしかできなかった。友奈ちゃんは風先輩と電話を繋ながら何か話している。そんな時だ。ひょんなことで突然一気に形成逆転し、二人はヤツの爆弾の餌食になった。

 

「!!!...樹ちゃん!!風先輩!!」

 

友奈ちゃんは携帯を片手に二人の名前を叫んだ。繋いでいた電話で何度呼びかけても反応はない。

 

「ど、どうしよう......二人が...!」

 

「ぁ........友奈ちゃん...あいつが...!」

 

二人を倒し、次は私たちを殺そうとこちらに標的が向く。

 

「友奈ちゃん!私を置いて逃げて!!」

 

私は咄嗟にそう叫んだ。ほとんど無意識にそう言っていた。大切な友達に、私の憧れる人に死んで欲しくなかった。自分が足手まといになり、彼女が巻き添えをくらえば終わりだ。だから彼女だけでも逃がそうとした。だが、友奈ちゃんは...

 

 

「そんなっ...!友達を置いて逃げるなんて......!」

 

そこまで言ったとき、友奈ちゃんは覚悟したかのように携帯を握り締めた。

 

「そうだよ......友達を置いていくなんてこと、できるわけない。」

 

「!?...友奈ちゃん!?」

 

友奈ちゃんは逃げるどころか、私の前に立って化け物を睨みつけた。

 

「........ここで友達を見捨てる奴は...勇者じゃない!」

 

爆弾が友奈ちゃん目掛け飛んできて爆発する。おそらく、直撃だ。

 

「きゃあっ!友奈ちゃん!!」

 

強い爆風がこちらにも吹いてきて、一瞬黒い煙で視界を覆われた。だが、視界が晴れた瞬間に見えたのは拳を前に突き出して何事もなかったかのように立っている友奈ちゃんの姿だった。彼女の右拳の部分が妙に光って変化している。どうやらあの爆弾を正拳突きで防いだようだ。

 

「私...嫌なんだ。誰かが傷つくこと、苦しい思いを...することっ!」

 

次々に飛んでくる爆弾を、友奈ちゃんは諸ともせずに回転蹴りなどの格闘術で防ぐ。その動きはプロの格闘家のごとく、とても滑らかだった。

 

「そんな思いをさせるくらいなら......私が...がんばるっ!」

 

友奈ちゃんは高く飛んだ。人間の跳躍力じゃない。これも風先輩たちと同じ、勇者の力なのだろう。

 

「友奈...!」

 

「友奈さん...!」

 

風先輩たちも意識を取り戻し、友奈ちゃんに釘付けになっていた。

 

「友奈ちゃんっ!!」

 

彼女はそのまま敵に突っ込んで行く。

 

「おおおおおおおおお!!!勇者ぁ~...パーーーーンチっ!!!」  

 

そのまま友奈ちゃんの一撃が炸裂。バーテックスの体の一部が一瞬にして吹き飛んだ。想像もできない破壊力。たった一発のパンチでここまでの威力だ。

 

「すごい...!」

 

「これが...」

 

「友奈ちゃん...?」

 

三人ともすっかり彼女に見とれていた。友奈ちゃんはそのまま、傷つけたバーテックスを見上げて覚悟の台詞を吐いた。

 

「勇者部の活動はみんなのためになることを、勇んでやる...。私は讃州中学勇者部、結城友奈!......私は...勇者になる!」

 

これが彼女たちの初陣。初めての戦闘。そして、一人の少女が勇者になることを決めた、まさに歴史的瞬間。少女の名前は結城友奈。どこにでもいるような普通の女子中学生。だがこの瞬間にその立場は180度変わった。後に彼女は世界の救世主となる。彼女の勇気が、明るさが、諦めない不屈の精神が世界を大きく変えることになる...。

 

今、彼女は『勇者になる』と発言したが、私にとっては違った。彼女はこの時既に、私の、私にとっての、立派な『勇者』であった。

 

(第31話に続く)




ということで今回は番外編!東郷目線で『結城友奈の章』の勇者になるまでを自分なりに短くまとめて書きました!東郷さんが主役なのはなんか新鮮で書いててなかなかおもしろかったですw
さて、次回からは本格的に本編のストーリーが進んでいきます。勇者部編は大赦内での銀と園子のやりとり、激化する勇者部組の戦いの様子、『勇者の章』の一部まで詰め込んでいく予定です!そして黒幕の正体へ迫っていく重要な話になっていくのでこれからもぜひ楽しんで読んでいただけるとうれしいです!
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