乃木園子は勇者である ~リベンジの章~   作:てんぱまん

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【第34話】Restart

 

翌日、まだ太陽がてっぺんだけ姿を見せている時間帯。少女が一人、寒いにも関わらず外に立って海を眺めていた。その様子はなんとも異様で、身体中に巻かれている包帯を解きながら海を見ていた。

 

「............。」

 

少女の名は乃木園子。数時間前まで体の一つも動かせなかった彼女が、今ではそれが嘘のように体を動かすことができる。...彼女の体が動くようになった理由...それはただ一つしかない。本来の歴史通りに事が進み、そのまま終わったという事だ。つまり、東郷は壁を破壊し、それを友奈たち勇者部員がすべて丸く収めた。そして神樹から供物を返された...ということだ。正確には返されたと言うよりも『仮り物』を与えられただけなのだが。

 

「園子...?」

 

「!...ミノさん...!」

 

後ろを振り向くと銀が立っていた。園子を探しにここまで歩いてきたみたいだった。二人ともポカンとした顔で見つめ合い、やがて銀は走り寄って園子に飛びついた。

 

「ついに...ついにあたしらは解放されたんだな...!手を動かせる...歩ける...そしてなにより目が見える!」

 

「うん...うん...やっとだよ...。本当によかったね、ミノさん...!」

 

二人は感極まり、思わず涙を流す。ここまで本当に長かった。銀は朝日に照らされる海を見て静かに呟いた。

 

「海って...こんなに綺麗だったんだな...。」

 

久しぶりに見る外の風景...二人にはすべて美しく、何よりも綺麗なものに見えた。そこで二人は肩を寄り添ってしばらく海を眺めることにした。

 

「身の回りのものが全部輝いて見える。物が見えるって当たり前のことだと思ってたけど...とっても尊く儚いものなんだな...。園子のかわいい顔も久しぶりに見れてめっちゃ嬉しい!」

 

「もう...ミノさんったら。...私も久しぶりに元気なミノさんを見れてすんごく嬉しいんよ~!」

 

「え?...あたしは今までだって元気...」

 

「いや、なんかね~今のミノさんは自由になって内に秘められていたものが解放された感じがするんだ~。心の奥底から喜びと嬉しさが伝わってくる。...本当に、よかった。」

 

「...!」

 

「...ミノさん、そのリボンつけてくれたんだね~。嬉しいよ~」

 

この二年で銀はだいぶ髪が伸びていた。その伸びた髪を大橋の戦いで園子があげたリボンを使い、結わっていたのだ。それも、ポニーテールで。

 

「...あ、ありがとう...。だいぶ髪が伸びてたからやってみたんだ。ポニテは初めてやるんだけど...どうかな...?」

 

「うん、すっごく似合ってる!よりミノさんの可愛さが増したよ~!」

 

「ホントか...!?よかったぁ...ならこれからはこの髪型にしよっかな!」

 

銀はそう言うとニカッと笑い、真っ白な歯を見せる。すると、海から吹いてきた風が二人の髪を大きく揺らした。二人は顔を見合わせると急に銀が後ろに小さくぴょんっと跳んで言った。

 

「なあ園子!せっかく体が動くようになったんだからさ!いっぱいいっ~ぱい走り回ろうぜ!今まで寝てた二年分まとめてさ!」

 

銀はそうやって小学生のようにはしゃぎ回る。

 

「あっ、ミノさん気をつけ...」

 

「うわっ!」

 

と、ちょっと走り出したところで銀は転んで倒れてしまった。

 

「ミノさん大丈夫~!?」

 

「あ、ああ...大丈夫...。だけど........」

 

前のように体がうまく動かない。いや、動かし方自体を忘れている。二年もの間寝ていたからか小学生の頃かけっこでいつも一番をとっていた銀の姿はもうそこにはなかった。

 

「『気をつけて』って言おうとしたんだけど遅かったね...ほら、私たち久しぶりに体を動かすじゃない?だからまだ走ることに慣れてないんよ~。まず最初はリハビリが必要だね~。」

 

「........これ、前みたいに元通り走れるようになるか...?」

 

銀は不安になって園子に尋ねる。

 

「大丈夫だよ~!精霊のご加護もあったからすぐ前みたいに元気な体に戻るんよ~!...私も昔なったときにすぐに復帰できたからね~。わっしーたちと同じ讃州中学に通えるようになるのも意外とすぐだよ~。」

 

「本当か!?よかった~........!!もしこのままだったらあたし超ショックだったよ...。」

 

「でもミノさん、ここ二年分の勉強を取り戻さないとね~。...そうしないと授業についていけなくなるよ~?」

 

「げっ!!勉強!?ヤバい忘れてた!!それだけはご勘弁を~!園子様~!」

 

「ふっふっふっ~...私がビシバシ教えてあげるから安心して~。」

 

「........ぁぁ........園子が鬼に見える...!あたしにとっちゃバーテックスよりも怖いかも...。」

 

そんな愉快な会話をしながら二人は室内へ戻っていった。だが喜んでいられるのも今のうちだけだ。

 

(ようやく自由に体が動かせるようになった..。これで思う存分好きなように行動できる。......さて、相手はタイムリープできる私に対して、その度に対抗してきた人物だ...。一筋縄ではいかない気がするけど...私だってこの二年間、ずっと計画を練ってきたんだ。...もうあなたの正体はわかってるんだから。)

 

園子はふと立ち止まり、空を見上げる。

 

「........ん?どした園子?」

 

「........いや...なんでもない!」

 

 

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数日後

 

「お、おお~...!これが讃州中学の制服...!あたしの晴れ姿...!」

 

「ふふ、ミノさんとっても似合ってるよ♪」

 

「おう、園子も!」

 

今日から二人は讃州中学に入学する。銀はポニーテールの髪を揺らし、軽快なステップを踏む。一方、初めて見る銀の制服姿に園子はちょっと感動していた。

 

(何度も頭の中で想像した...ミノさんの制服姿...。それが今現実として目の前に...。)

 

「ほらほら、行こ!園子!!」

 

「え?」

 

「早くしないと、遅れちゃうぞ~!」

 

「あ、ちょっと待ってよミノさん~!」

 

銀は園子の手を引っ張り、外に連れ出す。銀の伸びた髪が一歩進むごとに大きく振れる。今は少し肌寒い季節だ。こんな季節なのに、園子は一瞬銀の周りに桜が舞っている幻覚が見えた気がした。

 

「そんなに急がなくたって大丈夫だよ~」

 

「えへへ、だってさ.....今日からあたし、華の中学生なんだぜ!そりゃあこの興奮を抑えられるわけないだろ?........だからさ園子ぉ~あたしのわがままに付き合ってくれよ~。園子は二度目かもしれないけどあたしにとっちゃ初めてだからさ~。これからの学校生活...ワクワクが止まらないんだっー!!」

 

銀は晴れ渡る広い青空に向かってそう大声で叫んだ。そんな彼女を見ているだけで園子は幸せな気分になった。

 

「な~んだ、そういうことだったのか~。だったら気安い話さ!........私はミノさんに、どこまでも付き合うよ~!一緒にはしゃぎ尽くそー!!」

 

「オー!!」

 

銀と園子は登校ギリギリの時間まで外ではしゃぎ尽くした。制服を汚しそうでヒヤヒヤしたがさすがに初日からそんなことにはならなかった。だが最終的にはしゃぎ疲れ、冬だというのに汗だくになってしまった。

 

「はぁ...ふぅ~...そろそろ行かないとだな。」

 

「うん。早く車に乗ろう!」

 

二人は乃木家の私物の車に乗り込み、讃州中学へ向かった。

 

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「はぁ...はぁ...ヤバい遅刻だ~!」

 

二人が学校に着いたときにはもう朝の会が始まっている時間になっていた。学校周辺は完全に静まりかえっている。もちろん、生徒たち全員登校したからだ。園子と銀は学校の階段を駆け上がり、そのまま廊下を突き抜けてあらかじめ指定されていた教室に飛び込んだ。

 

 

ガラっ

 

 

「すみません遅れました~!」

 

銀の元気いっぱいな声が教室内に響き渡る。中にはいきなりの大声にビクッと反応した人がいた。

 

「...。心配して待っていたところだったよ。二人とも大丈夫ですか?」

 

担任は二人に優しく呼びかけてくれた。銀と園子は息を整えながらも「はい」と答える。

 

「見ろ、園子...!須美と一緒のクラスだ!友奈さんもいる!」

 

銀は後ろの席を小さく指差して興奮気味に小声で言った。

 

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「東郷さん!...あの二人って...!」

 

「うん...!そのっちと銀だわ...!」

 

一方こちらは予想外の見知った顔に驚いていた。

 

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「...ということで今日から新しくクラスメートが増えます。自己紹介どうぞ。」

 

担任にそう促され、二人は教卓の前に立つ。

 

「みなさんども!今日から讃州中学に転入する三ノ輪銀です!好きな食べ物は...イネスのしょうゆ豆ジェラート!よろしくな!」

 

「乃木園子で~す!よろしくお願いします~。」

 

「じゃあ二人とも、あの後ろの席へ。」

 

 

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放課後

 

「こんにちは~!!勇者部入部希望の乃木園子と~...」

 

「三ノ輪銀だぜー!!!」

 

放課後になると二人は勇者部に訪れ、入部届けを提出した。

 

「えっと...?」

 

『誰?』とでも言いたそうな顔で風は困惑していた。その顔を見て園子が発言する。

 

「二年前、大橋の方で勇者やってたんだぜー!」

 

「二年前...先代勇者!?」

 

夏凜がいち早く反応した。

 

「また二人と勉強できるなんて...!」

 

「私もわっしーと勉強できて嬉しいよ~!居眠りしてたら起こしてね~。」

 

「あたしも頼む!午後は特に!...勉強もニガテだし...。」

 

「もう...しないように気をつけてよね。」

 

東郷は二人と手を取り合い、このテンションの中見事に手懐けている。

 

「扱いが慣れてるわね...。」

 

「まるで二人のお母さんみたいです♪........おっ、これは...!」

 

「ん?なになに~?」

 

どうやら樹は占いをしていたらしく、一枚のタロットカードを一同に見せた。

 

「『運命』のカードです!意味はまさに運命的な出会い...」

 

「おおっ!さすがいっつん当たってる~」

 

「!ちょ...おい園子...!」

 

「えっ...占ったことありましたっけ...?初対面ですよね...?」

 

「あっ............ついノリで言っちゃった~!あはは~」

 

園子は頭をかきながら必死に弁解した。

 

「んじゃ、新たな勇者部員も入ったことだしなにかお祝いでもしましょうか!」

 

「いいですね風先輩!パーティーだ~!」

 

友奈がそう言い、拳を上に突き上げる。

 

「ふふっ、これからよろしくね!ゆーゆ!」

 

「あたしからも!よろしく友奈!」

 

園子と銀は友奈に近づき、手を差し出した。友奈は一瞬二人の顔を交互に見ると、

 

「うんっ!よろしくね!そのちゃん、銀ちゃん!」

 

と言って握手を交わした。

 

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---

 

「いや~!初日から楽しかったな勇者部ー!」

 

「うんっ!これからワクワクドキドキだよ~!」

 

部活が終わり、二人は大橋方面に戻るために乃木家が手配した車へと向かって歩いていた。するとそこに

 

「そのっち~、銀~!」

 

と、手を振りながら向かってくる人物が一人。

 

「!わっしー!」

 

「はぁ...はぁ...今から三人で集まれない...?」

 

「えっ...?」

 

「...二人の体は元通り自由になった...私の足も記憶も戻った...だからこれまでのこと、いっぱい二人に話したくて...。約束を破っちゃったことの謝罪も合わせて...。」

 

「須美...。」

 

「...。...うん、わかったよ。じゃあわっしーも一緒に車に乗って。このまま私の家に直行でいいかな?」

 

「ええ。ありがとう。」

 

「あたしも大丈夫だ。」

 

「ふふっ、じゃあ決まりだね。........これでようやく、三人で一緒にいた頃に戻れた気がするよ。これまではわっしーの記憶がなかったけど...今は違うからね~。」

 

「...そのっち...。」

 

「そうだな。...ひさしぶりの神樹館勇者組大集合~!今日は長い夜になりそうだ...!」

 

銀は顎に手をやってそう言った。一方東郷はここでは終始明るい顔を見せなかった。三人は車へと乗り込み、園子の家へ向かった。

 

 

 

乃木家宅

 

「お~...園子の部屋久しぶりだな~。」

 

「二年間いなかったからほとんど変わってないけどね~。ささっ、二人とも座って座って!つもる話でもしましょうや~。」

 

園子はそう言い、ジュースとお菓子を持ってきて二人に差し出した。

 

「........。」

 

「...?...どした須美?なんか元気ないじゃんか。」

 

「えっ?...あっ、いや...」

 

「責任、感じちゃってるんだよね~。」

 

「!!」

 

「みんなのおかげでこうしていられるけど、もし止められてなかったらこの世界は存在してないからね~」

 

「...。」

 

「...自分のやっちゃったことを後悔してるんでしょ?」

 

「...相変わらずさすがね、そのっちは。」

 

東郷はちょっと微笑みながらそう呟いた。そしてなぜかどこか嬉しそうだった。

 

「........でも、それだけじゃない。私は...あのとき二人と交わした約束を破って二回満開をした...。それで記憶を失って、それで....」

 

「だ~か~らっ!もうその話はいいって!こうしてまた三人会えたことだし、結果オーライだろ?」

 

「そうだよ~。私たちは気にしてないし、むしろまたわっしーとこうして一緒にいられて嬉しいんよ~!」

 

「二人とも...。........だいたいそんなこと言うんじゃないかって思ってた...。けど...」

 

東郷は座り直すと頭を深々と下げた。お手本のような綺麗な土下座だ。

 

「それでも!二人が許してくれたとしても!私の心は許さないと言ってる!!せめてこうして謝らないと...私の心はモヤモヤしたまま晴らされない!だから...本当にごめん...銀、そのっち!」

 

「わっしー...」

 

銀と園子はそっと彼女に寄り添い、頭を上げさせた。

 

「じゃあ......これでようやく満足したか?」

 

「........うんっ...。」

 

「なら、もうあたしたちに頭下げるなんてするなよ?あたしらそんなの全っ然気にしてないんだからな。」

 

東郷を落ち着かせ、一段落着いた後、園子が話したかった本題を持ちかけた。

 

「わっしー...ミノさん...これからの計画を話すよ。」

 

「ああ。確か...打倒!天の神!だったな。」

 

「そう。...バーテックスを作り出し、本土全てを火の海に変えたすべての元凶...。............そいつをね、倒すきっかけとなったのはわっしーなんだよ。」

 

「えっ...?私...?」

 

「...わっしーが結界を破壊したことで神樹様の寿命が縮まったんだ。それから大赦がそのことを突き止めた。そして神樹様の寿命を延ばすため、巫女としても勇者としても認められているわっしーに、『奉火祭』...生贄になるように頼んだんだ。」

 

「...私が...生贄に...!?」

 

「彼女は考えた。そんなことを私たちに話せば当然みんな許すはずがない...。でも、生贄になることを拒否したらこの世界は消えてしまう...。そこでわっしーは誰にも話さず、自分の判断で生贄になることを決めた...。こうなってしまったのはすべて自分のせいだとすべてを背負い...私たちに平和に暮らしてほしいと願ってその身を捧げた。......ちゃんと心配されないように『東郷美森』という人間が存在しなかったことにするという条件付きでね。」

 

「........。」

 

「わっしー、わかってると思うけど私はこれから起こる出来事をすべて知ってる。だから話して。大赦の人たちが奉火祭の話を持ち掛けてきたとき。...相談して。私が天の神を誰にも負担をかけないで倒す方法を探すためにそれが必要なの。お願い。」

 

「もちろんあたしも協力する。須美をそんなつらい目に遭わせたくない。」

 

「........。じゃあ一つだけ質問するけど........」

 

「?........なに...?」

 

「それは...二人に負担がかからない?」

 

「........。」

 

「二人ともつらい目に遭わないと約束できる...?私だって、そのっちと銀が苦しむのは見たくないしそんなの嫌だから...」

 

「........それは...」

 

園子は当然体を張るつもりでいた。そのため自信を持ってイエスと返事ができなかったのだ。

 

「大丈夫だ。」

 

「えっ...?」

 

銀はキリッとした眼差しで須美を見つめて答えた。

 

「この作戦は...あたしと園子、そして須美とでやる。園子がタイムリーパーなのを知っているあたしら三人だけでな。だからお前も一緒に手伝うんだ。...もしあたしらが大変そうにしてたらお前が自分で止めればいい。」

 

「え...ミノさん...?」

 

「...。わかったわ。それで了承する。」

 

「よしっ!決まりだな!」

 

銀の言動であっという間に決まった。そうすると銀は立ち上がり、手のひらを前に差し出した。

 

「ひさしぶりにやりますか!...遠足の日以来だな!」

 

その言葉を聞いて二人はピンときた。園子と東郷もやがて立ち上がり、銀の手のひらの上に乗せた。

 

「これからもよろしく須美、園子!...そして、なんとしてでも天の神に打ち勝つぞ~!!」

 

「神樹館勇者組再始動ね。」

 

こうして第二の作戦が始まった。そしてその日は意外にも早くやってくるのだった。

 

------------

 

約一週間後

 

「そのっち、銀...ちょっと来て。」

 

昼休み、東郷は友奈と夏凜の目を盗んで園子と銀を体育館裏へ呼び出した。

 

「......昨日、大赦の人たちが来たわ。」

 

「!...こんなに早く来てたんだ...。」

 

「とりあえず『考えさせてください』って言って帰した。...これから先どうする?」

 

「ちょっと待て。ここで話すのはマズくないか?時間もあんまないし、帰ってからじっくり練った方がいいと思う。」

 

「...それもそうだね。今日、二人とも予定は?」

 

「私は大丈夫よ。」

 

「あ~...そういえば今日は両親が夜中まで帰らないって言うから金太郎のお世話をしなくちゃなんないんだよな~...。」

 

「それならミノさんの家に集まらない?金太郎くんのお世話とお手伝いを兼ねて!」

 

「そうね。私も久しぶりに銀の弟さんたちに会いたいわ!」

 

「そうか?...二人がそういってくれるならそれでいいぞ!大歓迎だ。」

 

「じゃあ決まりだね!」

 

早急に話し合いたかった園子は、なんとしてでも今日中に意向を固めるため少々無理やり銀の家で作戦会議することに決めた。だいたい園子の考えはまとまっている。東郷が天の神の元へ奉られる時に園子たちもついていき、壁外及び天の神の調査をすること...だった。東郷についていけばギリギリまで近づけるのではないかと考えたのだ。そうすれば何かしら掴めるかも知れない。敵方を探るのは重要だ。あとはこの考えを二人に聞いてもらい、具体的な行動方針を決めて了承してもらうだけ。

 

 

ガラッ

 

 

「ただいま~鉄男っ~?」

 

銀が玄関を開けたのと同時に弟の名前を呼ぶ。すると奥から足音が聞こえてきて「何~?」といいながら三人に姿を現した。

 

「鉄男覚えてるか?姉ちゃんの友達!今日は園子と須美を入れるから。」

 

「お邪魔します~!」

 

「お邪魔します。...久しぶりね、鉄男くん。」

 

「!!!」

 

二人を見た鉄男は誰が見てもわかるほどの驚いた顔をした。すると突然縮こまり、

 

「!........汚い家ですがどうぞ...。」

 

と言った。園子も東郷も彼に会うのは約二年ぶり以上だった。

 

(てっちゃん...。)

 

また一回り大きくなっている。二年も会わなければ当然か。園子の脳裏にふと思い浮かんだ。車に押しつぶされ身動きが取れなくなった、血まみれの彼の表情を。彼は命を振り絞り、園子にヒントを与えてくれた。あの時の彼は今の彼よりも成長した姿なのだが。

三人は家に入り、銀はお茶を持ってくると言って台所へ行ってしまった。園子と東郷は居間の畳に座った。その間、園子はずっともじもじしながらこちらを見ている鉄男が気になっていた。

 

(第35話に続く)




ようやく自由の身となった銀と園子。そして園子は二年ぶりに鉄男と再会します。この再会が意味するものとは...?次回、早くも勇者部編完結。そして物語が大きく進展していくと思います。次回もお楽しみに!
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