【第36話】E N E M Y
三週間後
「みなさん、今日の活動は地域清掃です!やる場所も広くてかなり大変そうなので...助っ人に来てもらいました!」
「どーも諸君!前勇者部部長の犬吠埼風よ!」
「...でしょうね...。」
夏凜はため息をしながらそう言った。この日は勇者部の活動で地域清掃を行う予定だった。
「『でしょうね』ってなによ夏凜!私じゃ不満!?」
「いや...助っ人って言ったら風くらいしかいないじゃない?樹が一番呼びやすいし。」
「まあまあ...。それくらいにしといて早く作業始めようぜ!結構時間、かかりそうなんだろ?」
二人の言い争いが激化する前に銀が止め、樹に指示を促す。
「そういえばここって........この前みんなでキャンプしたところだよね?近くに海もあって眺めが綺麗なところ!」
「そうね、友奈ちゃん。私たちみたいにキャンプでここを利用する人も多いみたいで、マナーのなっていない人たちがゴミをそのままにするらしいの。」
「困った話なんよ~。そういう人たちはキャンプやらないで欲しいよね~。」
「本当にそうですよね。ということなのでここ周辺をお掃除します!あらかじめ私が分担わけしておきました。東側は夏凜さんと銀さんで、西側はお姉ちゃんと東郷さんで、友奈さんと園子さんは海付近をお願いします。」
「さすが我が妹~!たくましく成長してるわ...。」
風はそう言って樹に抱きつくが樹はそれを慣れた対応で軽く受け流した。
「樹ちゃんはどこを?」
「私はここをやります。ゴミが一定量集まったら一度ここへ持ってきて新しいゴミ袋を持っていってください。」
『了解!』
六人は返事をし、それぞれの作業場所へ分かれていった。
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あれからかなり時間が経ち、すでに空は赤くなっていた。夕日が海に反射し、四国らしい瀬戸内海の幻想的な風景が広がっている。
「そのちゃん!新しいゴミ袋持ってきたよ~!」
「おっ、ありがとうゆーゆ~。」
「全くひどいよねー。まさかここの海にこんなにゴミが捨てられてたなんて...。」
「そうだね~...。このゴミ袋がいっぱいになったら今日はもう終わりにしよっか!」
「うん。みんなももうすぐ終わるって言ってたし。もう一踏ん張りだ~!」
と、言って友奈はゴミ拾い用のトングを手に取る。しかし、
「................けど、その前に。」
「........ん?」
友奈の前に道をふさぐようにして園子が立った。
「ちょっと休まない?ほら、あの木陰で。ずっと日に当たって作業してたからキツかったでしょ?」
「え?あ、ああ~そうだね!...びっくりした~。今のそのちゃんちょっと怖かったよ~?」
「ええ!?本当!?疲れが出ちゃってるのかな~...?ごめん!」
園子はそう言い、二人は木陰へ向かってちょっとした石に腰掛けて水分補給をした。
「........ふぅ、そろそろ行こうか、そのちゃん!」
少し休憩すると友奈はそう言い、元気よく立ち上がる。本当に今日一日中ゴミ拾いをしたのか。それくらい疲れを感じさせないほど彼女はまだ元気だった。
「ちょっと待って。ゆーゆ。」
「え?」
またもや園子は友奈の前に立ちふさがると、彼女の目をじっくりと見つめた。
「ゆーゆは........私がタイムリープしてるのを初めて知ったのは『メブーと私の会話を病室の廊下で聞いちゃった時』って行ってたよね?」
「え...?急になに...?...そうだけど........。」
「それは、本当?」
「う、うん...!本当だよ!でもなんで?」
「........。...ちょっとおかしいからだよ。辻褄が合わないから。あの世界はわっしーがミノさんのかわりに犠牲になり、メブーが讃州中学に来た。にぼっしーが讃州中学に編入していない『にぼっしーが勇者ではない世界』だった...。でもゆーゆ、メブーが愉快犯に殺されちゃったとき言ってたよね?『夏凜ちゃんは急にいなくなるし...』って。にぼっしーがいなくなる世界線のこと、ゆーゆは知らないはずなのに。」
「...!」
「そう言ったの覚えてる?」
「あのときは........あまりにショックで頭の中がごちゃごちゃになってたからかも...。」
「確かにそうかもしれないね。けど他にも気になる点があるんよ。その未来でわっしーと初めて会ったゆーゆは雰囲気に合わせてわっしーと接したって言ってたよね?でもそれって変な話だよね~。ゆーゆのことならなんでも知ってるわっしーが何一つ違和感を感じないんだからさ。さすがに急遽親友を演じるなんて、常人でも一つや二つ、違和感を覚えると思うんだ。」
「........っ!」
「つまり、ゆーゆは『にぼっしーのことも、わっしーのことも知っていた』。あのときに初めて聞いていたとするならば、知っているはずのない二人のことを。」
「........そのちゃん...。」
「正直に答えて。」
園子は一度目を閉じ、深く息を吐いてから目を開いて言った。
「ゆーゆも...『タイムリープ』してるよね?」
「!!!え...?私が...タイムリープ...?何言ってるの...。」
「タイムリープしてるなら全部説明がつくんだよ。私よりも前にタイムリープしていたとするならば...私が何度も変えた未来、一つ一つ全部知ってるっていうことが。」
「えぇ...?さっきからいきなり質問攻めしてくるし...。私訳わからないよ!..........もしかしてそのちゃんは私を疑ってるの...?まさか前の未来で芽吹ちゃんを殺したのも私だって言うの!?」
「........。」
「私がそんなことするわけないじゃない!!」
「...そうだよ。だから自分でも信じられないんだよ。でもいくら考えたって...可能なのはゆーゆしかいないって結論になっちゃうんだ...。」
「そんなっ...!どうしてよそのちゃん...!」
「あなたの目的は、リベンジをしようとしている私を諦めさせること...または同じタイムリーパーの私を殺すこと...。理由はまだわからないけど...。だからありとあらゆる手で私の計画を邪魔した。『風先輩を使い』、『私の未来の協力者を消し』、精神的に追い詰めていった。...直接手に掛けなかったのは私がなかなか隙を見せないようにしてたからかな?」
「知らない...!知らないよそんなこと!そのちゃんを殺す...?ふざけないでよ!ありえない!!」
「ごめんねゆーゆ。けど、本当に怒りたいのはこっちなんだよ。」
「...え......?」
園子がギラっと友奈を睨みつけ、友奈は彼女の覇気に気圧された。
「もうあなたを...信じられないんだよ。」
その恐ろしい気迫に、友奈は思わず涙を浮かべる。
「てっちゃんとも...会ってたんでしょ?」
「え........?」
「私が前に行った過去でてっちゃんは交通事故で亡くなったの。しかも私の目の前でね。私を庇って犠牲になった...。そして彼は最期に一生懸命何かを伝えようとしてくれた。......よく聞こえなくて結局まだ全部はわかってないけど...『私と会う前に誰かと会ってた』っていうことはわかった。」
「........誰か...?」
「そしてその『誰か』が現場に来たんだと思う。ちゃんとてっちゃんを殺せたかどうか確認しにね。てっちゃんは血相を変えて私の後ろに立っている人を見てた。私はその姿を見ることはできなかったけど...。」
「........何が...言いたいの...?」
「........。...体に全く異常が見られないのがおかしいけど......私が最初にいた世界のゆーゆなら自ら手をかけないで『メブーを殺すこともてっちゃんを殺すこと』もできたんだよ。」
「え...?そんなの.....!」
「...それは神様に異様に気に入られているゆーゆだけに起こった現象...『天の神』がゆーゆにかけた災い...そして今、前の未来にも今この未来にも神樹様の結界があって、『天の神』が鎮座してる!!」
園子は語気を強めて続ける。
「『伝染』する『祟り』の力を使えば........容易にできちゃうんだよ...!!」
「....天の神の『祟り』ってこと...?私はもうなってないし治ったよ!あれは高熱もでて吐き気もして気持ち悪いし、こんな元気でいられない!」
「......私の考えはね、天の神の『祟り』にあっている最中になにかのきっかけがあって、ゆーゆはタイムリープしたと思ってる。その時に『時をつかさどる』という常識を超えた現象が原因で祟りによる体への負担が消え、伝染して他の人を苦しめる効果だけ残った...と考えてる。つまり、ゆーゆは私も知らない未来から来た......タイムリープの先駆者ってこと。」
「私はタイムリープなんてしてない!...祟りのことだってあれから一度も話したことないし!」
「じゃあ...烙印くらいなら体に残ってるんじゃないかな...?」
園子はそう言うと彼女に近づいて少し強引に友奈の胸元を見た。しかし、
「!?!?........え...?」
園子の予想は外れ、友奈の胸元には 何 も な か っ た 。
「そんな...!いや、きっとどこかにあるはず...!」
園子は友奈の体を隅々まで調べるも...
「ない...ない...!いくら聞いても正直に言わないから『祟り』でおかしくなっちゃってるんだと思ってたけど...違う...!?ってことはメブーを殺したのも、てっちゃんを殺したのも、フーミン先輩が暴走したのも...ゆーゆは無関係...?本当に私のために協力してくれていただけだった?にぼっしーが急に消えたと言ったのも本当に頭が混乱していただけで、わっしーが違和感を覚えなかったのもゆーゆのカリスマ性がすごかっただけ...?」
「...ぅぅ~........ぅぅ~........」
園子が正気に戻ったときには友奈はうずくまりながらしくしくと涙を流し、大泣きしていた。園子は無我夢中に友奈を疑い、強引に烙印を探した。そのため彼女は心に大きな傷を負ってしまったのだ。そんな友奈を見下ろしながら園子は絶望する。園子の持論は今すべて崩れ去ったのだ。
「......じゃあ、今までおかしかったのはゆーゆじゃなくて........ 私 の 方 ... ? 」
「そのちゃん........ひどいよ...ひどいよぉっ!!...あんまりだよぉ...うっ........うぅっ........!!」
友奈はうずくまり、永遠と涙を流し続ける。園子は自分がどれだけ取り返しのつかないことを言ったのか思い返し、後悔した。『私は今まで自分を信用してきた友達をこんな状態になるまで疑った』。最低なことをしたのだ。
「ごめんっ...!ごめんゆーゆ...!こんなんじゃ...こんなはずじゃなかった......私は、私はなんてことをっ...!!」
「もうっ......!!なんで...なんでよっ...!私ずっと『違う』って言ったじゃない...!どうして信用してくれなかったの...!信じてくれなかったの!!」
「そ、それは......本当にそれ以外考えられなくて...。」
「本当にひどいよ。......もういいよ、あなたなんかっ...。」
「!!!」
完全に仲が決裂してしまった。園子は自信満々だった先ほどまでの自分を死ぬほど恨んだ。あの自信が今の状況を作ってしまった。........それと同時に園子は心の奥底で安心していた。やっぱり友奈はそんなことをしない人だったのだと。これほど極悪非道なことを繰り返してきた犯人が友奈でなくてよかったと。
「図々しいのはわかってる...。『許して』なんて言わないっ...!だけど私は......」
園子は彼女に近づき、うずくまっている友奈を優しく包み込むようにして抱いた。
「ううっ......うっ............うぅっ~~........ぐすっ...。」
友奈の涙は止まらない。園子はこんなにしてしまった責任としてこのままずっと抱きかかえていようかと思った。............しかし、その考えは次の友奈の一言によって一瞬で吹き飛ぶことになった。
「............ な ん で こ ん な に 早 く バ レ ち ゃ っ た の ・ ・ ・ ?」
「..........!!!!!」
(..............え...?)
園子はその言葉の意味を一瞬、理解する事ができなかった。
「........ぐすっ...ぐすっ........。」
「今........なんて........?」
聞き間違いだ、そうに違いないと自分に思いこませながら再び聞いた。
「ぅぅ........うぅ~........」
友奈は答えずにずっと泣いたまま。だがそのうち何やら独り言を言い始めた。
「............あなたが........他の誰よりも鋭くて........頭が冴えるのは、よくわかってた............つもりだった...!...けど...けど、そんなちょっとの一言で..........ここまでバレてしまうなんて......!!」
「...え........。」
気づいたときには園子は無意識に友奈から離れていた。ゆっくりと後ずさりし、彼女から離れた。彼女の本能がなにやら危険だと察知したのだ。一方友奈はまだ地面に顔をうずくめたまま。
「................まさかわかっていたなんて...!もう少し後に気づいていれば........よかったのに...!」
「........ゆーゆ...?あなたじゃ...ないんだよね....?今さっき号泣しながら『私じゃない』って訴えてたよね!?烙印もないから『祟り』にも関わってない!!『祟り』じゃなかったらあんなこともできるわけがないし...黒幕はゆーゆじゃないんだよね!!そうなんだよね!?」
何を言っているのだろう、私は。先ほどまであんなに彼女を疑っておいて今度はなんだ。彼女を庇っている。自分からふっかけておいて現実から逃げようとしている。まさに今、彼女は自白しているのに。最初はこの言葉を望んでいたはずなのに。
「私は..........少しあなたを侮っていたみたい......。反省しなくちゃ...舐めすぎてたんだ......。」
友奈の声のトーンが変わった。
「ゆーゆ...?え...だから、なに言って......」
すると友奈はのっそりと体を起こし、ゆっくり立ち上がって園子を見た。
「........!!!」
その『眼』を見た園子は言葉を失った。今までの友奈の目ではない。まるで別人のように鋭く、尖った、いかつい『眼』だった。その『眼』で見られているだけで体が動かなくなり、刃物で刺されているかのような感覚が起こりそうなほどだ。....また、その『眼』は先ほどまでと打って変わって 紅 く 、 充 血 し て い た 。
立ち上がった後も友奈はそのまま続ける。
「少し予定が狂っちゃったけど......仕方ない。......とても残念だよ...。でも、正体がバレてたんなら今ここで.........。」
友奈はいつの間にかスマホを手にしていた。そしてキッと睨みつけて一言。
「............ここで、殺すしかないね。」
(第37話に続く)
ついに黒幕の正体が判明し、物語はさらに佳境を迎えていきます。
さて、かなり前に取った『黒幕の正体は誰なのか』というアンケートで4割の方が予想的中されており結構バレバレだったんだなと痛感しておりました...笑
まだこの段階ではいろいろと疑問にあることもあると思います。空白の三週間、ここに至るまでの両者の過去や友奈の秘密など...後々書いていきますので楽しみにしていただけたら嬉しいです...!次回もお楽しみに!