「勇者ぁぁぁ~パ~~~ンチっっ!!!」
ゴゴゴゴ............バリンっっ!!!
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「............はっ!!我はどうなった!?............ここは...?」
ベッドから起き上がり、辺りを見渡す。何が起こったのか頭が追いつかなかった。その瞬間、窓に映った自分の姿を見て驚く。
「................これは...どういうことだ...?」
そこに反射して映っていたのは一人の少女だった。
「............これは、我に打ち勝った人間の姿...?一体何が...。........うっ...!」
急に胸が苦しくなり、ベッドに横たわる。
(あなた何者!?私の体返して!)
「......なんだっ...これはっ......我の中に誰かいるのか...?ソナタこそ...っ...何者だ...!」
(私は結城友奈!この体の持ち主だよ!...何が起きてるかわからないけど、気づいたときにはあなたに乗っ取られてた!)
「そうか......つまり我は...人間であるソナタと...っ...一つに...ぐっ...!」
友奈は心の中で暴れ、なんとか主人格を取り戻そうと試みる。
(もしかしてあなた...天の神...?残ってる最後の記憶は、あなたを倒したと思った時...。ねえみんなは!?無事なの!?何もしてないよね!?)
「うぐぅっ........暴...れるな...我もわからない...!ソナタと同じ、状況なのだ......!」
部屋の中を見渡しているうちにふとカレンダーが目に入った。
(神世紀300年........4月...1日...?)
「!?........なんだ、これは...過去に戻っているとでも言うのか...?」
(あなたがやったの!?やられたくないからって私の体を奪ってまで過去に戻ったってこと!?)
「し、知るか......!過去に戻るなど......神である我でもなし得ない御技...。人間が勝手に空想したものにすぎない...!我もこんなことが起きているなど、到底信じられん...!」
(え...?じゃあ本当になんでかわかんないの...?......でも返してよ!これは私の体なの!!私の体であなたに好き勝手されたら......みんなが危険!)
「........我の体は消滅した...。この魂、体を失えば残りはさまようことしかできない。......ちょうどいい機会だ、この肉体を手に入れたおかげで人間を近くで観察できる...。この体はいただくとする...!」
(え......?なに勝手なこと言ってるの!!そんなことダメ!!絶対許さない!!!)
友奈は更に抵抗する。そのたびに天の神は苦しんだ。
「くっ......黙れ!!」
(........!!........ぅぅ...。)
天の神は強引に友奈の動きを封じた。
「ソナタは邪魔だ。我の体の中にソナタの存在は必要ない。もう二度と出てこれぬよう、この身が朽ちるまで封印してやる。」
(そんな........こと...させるか......!うおおお........っ!)
「人間ごときが。一度神に勝てたからと言って調子に乗るな。......結局ソナタ一人だけではどうにもならんのだ。......フンッ!!」
(あああっ......!!)
こうしていとも簡単に友奈の心は封印された。そしてそれから、天の神は友奈のフリをして生きるようになった。完全に、完璧に、『結城友奈』という人物を演じた。勇者部の仲間たちと協力し、自分がつくっている化け物たちを自分の拳で倒した。友奈が言いそうな綺麗事だけを吐き、生きてきた。だがそんなある日、突然東郷美森が消えた。周りの記憶からもすべて消え、存在ごと消えた。しかし友奈だけは記憶が残っていた。理由は、それが同じ『神』の仕業だったからだ。
(確か......ちょうどこの時期に生贄としてあの人間の体を捧げたんだったかなぁ。......良い機会だ。)
結局この後、勇者部の全員が東郷のことを思い出すことになる。神が存在を消したのになぜ人間たちが思い出したのか、あまりにも信じられないことだったので驚いた。これが人間の絆...?いや、そんなもので思い出せるはずなど........まぐれに決まっている。自分にそう言い聞かせた。
そしてすぐさま東郷救出作戦に動き出す。園子の満開の力で友奈だけ東郷の元へたどり着くことができた。
「........。」
友奈は静かに東郷に触れ、鏡のようなものに手を突っ込んだ。
(抵抗するな........我はソナタだ。)
(!!!)
鏡のようなモノだけでなく、周りの風景も反応を見せる。ここは天の神の中なのだ。
(驚くのも無理はない。我もまだわからないことだらけだが...どうやらタイムスリップをしたらしい。この人間の体を手に入れてな。つまり我の存在は二つになった。...協力しよう、この未来の我よ。我は身近で人間を観察することにする。........安心しろ、我が二人もいれば神樹など敵ではない。とりあえずこの人間は返してもらいたい。...今のところは必要なのでな。...またいつか話し合おうではないか。)
天の神は理解したのか、抵抗をやめて東郷をスッと返した。
「ふふっ...ははははは...!...感謝する。これから二人で頑張っていこうではないか...『我』よ。」
こうして天の神は同じ存在同士組むことになった。強大な力を持つ神が二つになれば誰も勝てるわけがない。絶対的な力を手に入れられる。
「........ぅぅ...?」
「東郷さん...?」
「あれ...みんな......?」
「やった...東郷が目を覚ましたわよ!」
昏睡状態だった東郷はやがて目を覚ます。少し前まで自分の隣でどんな話が繰り広げられていたのかも知らずに。
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「さて...これからどうするか。」
友奈は自分の部屋のベランダから夜空に輝く星を見ながら考えていた。
(東郷美森は無事救出...本来の流れならば自分が祟りに遭い、神樹と神婚することになる........。その結末は最終手段だ。もう何度か過去に戻ってもう少し人間界を楽しみたいところだ。)
少し体が冷えてきたので自室に戻ってイスに腰掛ける。
「........このままでは神樹は寿命を迎える。祟りに遭ってないとしても大赦のゴミ共がここに来るのも時間の問題だな...。........ならば、明日試してみるか。」
部屋の電気を消してベッドに入る。
(かなりの『賭け』だが........おそらく、我がタイムスリップしたのはこれがきっかけ........。)
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翌日、友奈は東郷の家にお邪魔していた。
「東郷さん!今日はね、東郷さんに私の料理を食べて欲しくて来たの。」
「友奈ちゃんの料理!?!?........ズルッ........楽しみだわ!!」
東郷は興奮してよだれを垂らす。友奈は「だからちょっと台所借りるね」と言って調理の準備を始めた。
「東郷さ~ん、包丁どこ~?」
「確か下の引き出しに入ってるはずよ。フライ返しとかと一緒に。」
「あっ...本当だ~ありがと~」
「........うん...。」
そのとき、東郷は何だかわからなかったがどこか異変を感じた。
「東郷さんってさぁ、たまに考えがぶっ飛んでるときあるよね~。常に私のことばっかり考えてるっていうか?」
「えっ!?!?........い、いいいいやいやそんなこと...」
「そんなに私のこと好き...?」
「!!!........もちろんよ!!世界で一番大っっっ好きッ!!!」
「本当~?食べちゃいたいくらい?」
「本当よ!本当本当!!食べちゃいたい......って...え?」
「ふふっ♪そうなんだね!私も東郷さんのこと好きだし、そう言ってもらって嬉しい!」
「ちょ、ちょっと友奈ちゃん...何やって......」
友奈は自らの首もとに包丁を突き立てていた。それもにっこにこの満面の笑みで。
「精霊の力があるからって......そんなおふざけしちゃだめ!!今すぐやめて!危ないわよ!........友奈ちゃんらしくないわ...!」
「でも東郷さん、私のこと食べちゃいたいんでしょ?........今日東郷さんに食べて欲しい料理は『私』!そのために来たの!」
「へ......?何を言って......」
「残さずに、綺麗に食べてね♪」
「友奈ちゃんっ!!!」
ザクッ!!............ブシャッーーー!!!!
白く滑らかな肌に刃物が刺さり、そこから噴水のように勢い良く赤い液体が吹き出した。
カランガラン...
包丁が下に転がり、友奈は後ろに倒れる。
「ぁぁ............ぁ........?............え....なに........これ........。友奈....ちゃん........?」
東郷は今起こったことが何一つ理解できずにただ呆然としていた。吹き出した赤い液体は東郷の方にまで飛び散り、彼女はその液体を体に浴びていた。
「いやあああああああああああ~~~~っっっっ!!!!!」
バチっっ
「はっ!!........ここは...?」
次に友奈が目覚めた時にはベッドの上にいた。そしてすぐさまカレンダーを見る。そのカレンダーには神世紀300年4月と記されていた。
「ふふ、ははははは........やった...成功だ...!!やはり我の睨んだとおり!タイムスリップ、いや...タイムリープのトリガーはこれだった!!......我がタイムリープをするためのトリガーは........『死』だ...!」
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「........ねぇ...あいつマジ最近調子乗ってるよな...。」
「まじそれな...!ガチうざい...w」
学校で過ごしているだけで聞こえてくる誰かに対しての悪口。
(........ふん...学校とは学ぶところではないのか...?他人の悪口ばかり...。聞きたくもない会話が、嫌でも耳に飛び込んでくる。)
『この度は私の不祥事により、皆様に多大な迷惑をかけてしまったことを........』
家で見るニュースは政治家の不祥事、そして偉そうに語るコメンテーター。
(人間たちの世の中をよくするために活動するのが政治家なのではないのか?...税金を私的に使う?あまりに理解し難い。......それにコメンテーター共も人のことを言えないような秘密事をしているときもあるだろう。テレビで見ている限り裏の顔は誰にもわからないからな。...全く、人というものは結局『欲望』なのだな。)
ネットを開けば誹謗中傷。それに差別や詐欺、次から次へと明るみになる芸能人のスキャンダル、逆恨みによる事件...。あまりにも愚かな行動ばかり。神の身にとって人間界はその醜さによって囲まれていて、とても居心地が悪かった。しかし...
「今日も依頼がたくさん入ってるわよ!分担して終わらせちゃいましょう!」
『おっー!!』
(部活の...こやつら勇者たちだけは違う........。醜さを感じない...。なぜだ........?元々この犬吠埼風も勇者たちを集めるためにこの部活を設立したはず........それなのになぜここまで部活に熱心になれる...?なぜ部員たちも誰一人手を抜かない?三好夏凜もすっかり人が変わった。)
「?...友奈ちゃん...?どうしたの、行くよ?」
「あ...ごめん東郷さん!ボッーとしちゃってたぁ~。」
(部員同士で恨み合いもなく、ケンカもない...。これほど長いこといるのに不思議だ...。........人間はみんな醜い生き物ではないのか...?...でも、なんなんだこの気持ち...。なんだかここにいるときだけ我は...........いや、違う!!そもそも我は神、心など存在しない!こやつらだって同じ人間だ...!何か裏の顔があるのは絶対だ...!そうさ、300年前の勇者だって........。)
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何度タイムリープしても人間の世界は変わらなかった。どの未来もすべて悪口や誹謗中傷、不祥事が繰り返され...同じような未来だった。
(結局人間は人間か...。繰り返しタイムリープすることでわかってきた。感情がある限り恨みや争いは生まれ、やがて潰し合う。他の生物には人間ほど感情はない。だからすべて野生の本能で生きている。それでいいのだ。すべては自然のサイクル...それを壊したり一個人の勝手な感情で同族で潰し合う生物などやはり存在価値はない。........勇者のこいつらだって同じ人間。きっと変わらず心の奥底に妬みや恨みが存在し、愚かな感情が芽生えているはずだ。...全く、人間の体になってしまったせいか我にいらん情が生まれていたらしいな。本当に、感情というものは邪魔で鬱陶しい。)
『人間という生物は無価値で、秩序を乱す存在』。そう結論づけた天の神は次の段階へと移るため、準備を始めた。
タイムリープを続けて9回目。この世界でも東郷救出のため、友奈は天の神本体への接触を試みていた。
(この作業もすっかり慣れたな...。)
「東郷さーーんっ!!!」
(この演技も何度目か...。)
鏡らしきものに手を突っ込み、東郷を引っ張る。そしてそのときにまた『自分』とテレパシーを交わした。
(やぁ、ソナタにとってはさっきぶりかな?『我』よ。自分と話す機会はこれくらいしかないからな。手短に話そう。......もう人間たちの観察は十分だ。直に次の段階へと移る。これが成功すれば我らは今よりもずっと強大な力を手に入れられ、我らとまともにやり合える者は存在しなくなる。...我の完璧な計画を話そうではないか。)
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(それでは、よろしく頼むぞ。次に合うとき...それは作戦を決行する時だと心得よ。)
そう言い残すと東郷を連れてそこから離れた。
(...そう、それこそ『無敵』になる。相手がどんな神だろうが我には敵わなくなる...。あのとき我を倒したあの力が現れたとしても、到底敵うものではない。)
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しかしそんなときに突如起こった想定外の現象で、その計画は一度延期にされる。
「そのちゃんが車に轢かれた!?........うん!すぐ行く!」
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「........傷とかの外傷はないのに、ずっと目覚めないみたい...。」
「そのちゃんは...大丈夫ですよね...?」
「きっと大丈夫よ。園子は今までだってどんな困難も乗り越えてきたぶっ飛んでる奴じゃない。」
「......。」
「東郷さん...?どこ行くの?」
東郷は黙って園子の元から離れていった。それが気になった友奈はバレないように彼女を尾行した。すると、
「あの........鉄男くん...えっとね........今から変なこと言うんだけど........」
「!!...やっぱり、東郷さんもですか...!?」
「え...!?」
東郷が病院の待合室で会っていたのは銀の弟、三ノ輪鉄男だった。
(あれは確か...二年前に死んだ勇者の弟...。なぜここにいる?)
「過去の記憶が変わったんでしょう!?」
「!!.....え、ええ!そう!...まさかあなたもだなんて...!」
(!!........過去の記憶が...変わっただと...!?なぜ突然...?我は何もしていない........まさか!!)
友奈は続けて聞き耳を立てる。
「俺は今、『お姉ちゃんを守ってあげて』っていう言葉が急に頭の中に出てきました...。それも、園子さんから言われている言葉で...!」
「私も!今までそのっちと話した覚えのない内容の会話が飛び込んできた...!」
(なんだと...?それってつまり......いやそんなはず。)
「友奈?」
「!!」
突然後ろから声を掛けられ、友奈は驚いて後ろを振り返った。
「あっ...なんだ風先輩か~。驚かさないでくださいよ~...。」
「ごめんごめん、そんなつもりなかったんだけど...。」
「風先輩はなんでここに?」
「急にあんたが飛び出して行っちゃったから心配して来たのよ。そこで何してたの?なんか隠れてるみたいで...」
「いやいや!な、なんにもしてません!心配かけてごめんなさい~、今すぐ戻りますから!」
友奈はそう言って風と一緒に戻っていった。これ以上深堀りされたらたまったもんじゃない。
「東郷は見た?」
「あ~、ちょっとおトイレ行ってるみたいです。」
「ふーん。」
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「東郷さん...これはどういうことなのでしょう...。」
「う~ん...そのっちが目を覚まさないのと関係があるのかも...。」
「え?」
「だって、そのっちが事故に遭ってから突然二人の記憶が塗り変わった。しかもそのっちが言った言葉だけ。」
「確かに...どうして?」
「わからない...そのっちの身に何が起きているのか...。」
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(結局、あの二人を見失ってしまった...。一体どこに行ったんだ?)
と、その時だった。
シュン......!!
(!?な、なんだ...!?)
あれから病院を出て二人を捜していたはずなのに、いつの間にか商店街に立っていた。つまり...突然、友奈は瞬間移動したのだ。
(これは...別の誰かが未来を変えた...?そうでもない限り、こんな現象は有り得ない!!)
すると風から連絡がくる。内容は夕方にみんなでお見舞いに行こうという内容だった。
(.........なっ...乃木園子が目を覚ましただと...!?...ん...?なんだこの内容は。おかしいぞ。......『銀と芽吹は先に行ってる』だって...?芽吹?誰だ?それに銀というのは三ノ輪銀のことか...?バカな...あいつは二年前、キャンサーたちと相打ちになったはず...。生きているはずがない!...やはり......)
友奈は走って家へ向かうと、東郷の家を訪ねた。
(とりあえず今はひとりで乃木園子と合うのはまずい...。あいつのことだ、怪しまれる可能性があるからな。まず東郷美森に二年前の話をさりげなく聞きだしてからだ!)
しかし、いくらインターホンを押してもなにも反応はない。
(留守か...?ならば携帯で...!)
「.........えっ!?」
そこで彼女は思わず声に出して驚愕してしまう。なぜなら、自分の連絡帳から東郷の名が消えていたからだ。
(は...?どういうことだ?東郷美森は存在していない...?生贄になったのか...?いや、今は神世紀301年の4月...我が『我』を倒すふりをしたから、人々は『我』が消え、領土を取り戻したと思い込んでいる。本当は力を抑え込んで隠れているだけなのだが...。それだからあり得ないはずなのだ!!)
考えられるのは一つしかなかった。
(未来を...変えたな...!この事象は乃木園子が目を覚ましてから急に起こった。...これでもう確定したな。もうひとりのタイムリーパーは...。)
天の神は焦りもせず、憤りも感じなかった。逆に今彼の心の中に芽生えたのは『好奇心』だった。
「ふふっ...はははははははは!!そうだよ...そうじゃなきゃおもしろくないもんねぇ!...このまま私があっけなく終わらせるなんて、あなたたち人間はそんな簡単にやらせてくれないものねぇ!!......人間を殲滅させるのはもう少し後にしよう...。そのちゃん、あなたがどう運命に抗うかお手並み拝見と行こうじゃない...。」
その後、友奈は風たちと一緒に園子のお見舞いに行った。
「ねぇ、にぼっしーは?」
その時、園子は唐突にそう聞いた。その言葉を聞いた一同は一斉に黙り、それぞれ顔を見合わせる。
(?...自分で把握していないのか...?...まあいい。反応を見るか。)
「にぼっしー?ゆるキャラかなんか?」
まずは風がそう答える。
「私も知りません...。友奈さんは?」
次に樹。
「私も聞いたことないよー。芽吹ちゃんは?」
友奈はそう言い、あえて芽吹に聞いた。
「私も。...もしかしてまた園子の夢の話とか?」
「あ、もちろんあたしもないぞ!」
全員がそう答えた。園子のこの言葉で病室内が一気に不思議な空気に包み込まれる。
(...にぼっしーなんてあだ名は勇者部に来てから名付けられたから楠芽吹は知る由もないか...。だが、そうとなれば質問を変えてくるはずだ。)
「じゃあ........三好夏凜って子は...?」
「...っ!!どうしてあなたが彼女のことをっ!?」
いち早く反応したのは芽吹だった。
(やはりな...。)
「あらなに芽吹。知り合い?私たちは知らないわよね?」
風の問いに、芽吹を除く勇者部員たちはそろって頷く。
(当然犬吠埼風たちは本名を聞いてもわからず、面識があるのは楠芽吹だけ...しかし、一体どういう関係なのだ?)
「園子...あなたどこで三好さんの名前を...?」
「あ、えっと........私ずっと大赦で祀られて寝てたじゃない?その時にふと一人の神官さんから聞いたんよ~。」
「........よく覚えてたわね、そんなこと...。でも、なんで急に三好さんのことを私たちに聞いたの?友奈たちだって知ってるはずもないのに...」
「そ、それはね~........」
園子は言葉に詰まって目をそらす。一方芽吹は顔を迫らせて園子の答えを待つ。と、そこに...
ガラッ!
いきなり病室のドアが開いたかと思うと、ズカズカと三ノ輪鉄男が入ってきた。
「鉄男ぉ!?どうしてここに!?」
銀が声をあげて驚く。
(...?...なぜ今まであまり関係のなかった三ノ輪鉄男がここに...?事故で助けられたからと言って、まだ幼い彼がこんな夜遅くに見舞いだなんて考えにくい...。)
「えっと......銀ちゃんの弟さん?」
「はい!あなたは確か友奈さんですね...?えっと...突然で悪いんですがみなさん!!早くここから出て行ってもらえませんか!!」
『ええっ~~!?』
鉄男の突拍子もない発言に、友奈たちは戸惑う。
「ちょっと待てよ!なんなんだよ、どうしたんだ急に!?」
銀が慌てて彼の肩を掴んでそう言う。
「俺は園子姉ちゃんと二人で話したいんだ!」
その鉄男の態度に対し、芽吹は彼に近づいて見下すようにこう言った。
「........そんなに急用なのかしら?それなら私たちが帰ったあとでもできると思うけど?」
「うっ...」
芽吹の謎の威圧感に押され、鉄男は後ろに食い下がる。
「ごめんなさいね。私もどうしても園子に聞きたいことがあるのよ。気になってしょうがないことがね。」
「そ、それでもっ!!今日は帰ってくださいっ!!!」
鉄男は強引に芽吹の背を押し、園子の病室から追い出そうとする。
「ちょ、ちょっと...!」
(この反応...何かあるな。...三ノ輪鉄男...重要な存在に違いない。)
「ムフフフ...。芽吹、今日はここくらいまでにしておきましょうか!ここは、将来の勇者部のかわいいかわいい後輩に譲ってあげましょ!...鉄男くんよ!園子とはつまり、そういうお話ってことなんでしょう?」
風はそう言って不気味に笑みを浮かべる。
「お姉ちゃん怖いよ~...。」
「ちょ、ちょっと待ってください風先輩!?『そういうお話』ってなんすか!?まさか鉄男、園子のこと...!」
「あ~もうっ!!姉ちゃん違うから!あと俺、勇者部に入るとか一言も言ってませんから!」
「え~!違うの~!?」
友奈がやけに驚いて鉄男に迫る。そのキラキラした目を見た鉄男は、
「うっ...!う~ん......まぁ、考えては......おきますよ......一応。」
と答えた。その返答を聞いた友奈は安堵の表情を浮かべると、
「よし、じゃあみんな帰ろうか!」
と、一言。
(...ここはそれなりに納得できる流れを作っておいて、一度帰った方がよさそうだな。この感じだと楠芽吹は結構面倒くさい性格らしいし、このまま粘っても三ノ輪鉄男が困るだけだろう。...詳しく調べるのはまた明日からだ。)
「ちょ、友奈...」
「ほらほら、芽吹ちゃん!また明日、ね!...それじゃ、またねーそのちゃん!」
と言って友奈たちは芽吹をなだめながら病室を出て行った。
(二人が話す内容を聞きたいものだが...我だけここに残るというのも不自然だ。部員に少しでも怪しまれたら終わりだ。とりあえず今日は全員で家に戻るとしよう。)
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翌日の早朝。友奈はいち早く病院に着き、観察する事にした。...と、彼女の睨んだとおりこんな朝早くから病院にやってくる人物が一人。そう、楠芽吹だ。続いてすぐに三ノ輪鉄男もやってきた。
(...ふん、楠芽吹に昨日のことを話すとかとでも言って乃木園子側から呼び出した...という感じであろう。話す上できっとタイムリープのことについて話さなければならないはすだ。それを他人に聞かれないために何か関係のある三ノ輪鉄男を門番として使った...というところか...。なるほど、そう簡単には盗み聞きはさせてもらえないようだな。さすが乃木園子だ。)
すると、すぐにまた一人入ってきた。
(!!...三ノ輪銀...?こんな朝早くに...?まさかこいつにも話すつもりなのか...?)
しかし、それからすぐに銀は鉄男に連れられて病院の外へと出て行った。
(ふっ...どうやらそれは違ったようだ...。だが感謝する、三ノ輪銀。ソナタのおかげで我は二人の会話を聞くことができる。)
友奈は早足で園子の病室の前まで行き、それっぽいことを言いながら病室の前に立って耳を澄ませた。
「そのちゃん大丈夫かな~?........ん?誰かと話してる...?」
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(......。...なるほど、彼女は彼女なりに精一杯努力していたわけだ。そしてやはり三ノ輪鉄男は何かタイムリープに関係しているな...?あいつには目を付けておこう。)
もうすぐ芽吹が病室から出てくる頃だろう。それを見計らって友奈は病室前から去った。
(今日はもうよい。...十分情報は聞き出せた。なに、そう簡単に理想の未来にすることはできないだろう。じっくり、ゆっくり...楽しもうではないか。)
だがそのまた翌日。天の神ですら想像もできなかった予想外の出来事が起こる。
「え.........?...銀ちゃんが...『自殺』、した...?」
風からそう連絡を受け取った友奈はすぐに家を飛び出した。
(なんだ!?何が起こったと言うんだ!?昨日の今日でなにがあった!?なぜ急にこのタイミングで三ノ輪銀が自殺する!?)
走り疲れた友奈は一度止まり、息を整える。......そして...
「ぷっ......ふふふふふっ...あっ~ははははははははははははっ!!きゃはははははははははははははっ!!!」
歩道の真ん中で狂ったように笑い出した。
「最っ高だ...最高だよそのちゃん!!...今ままでタイムリープしてきたけど、ここまで私の心を高ぶらせてくれたのはあなたが初めてだよ!......こんなこと、いくら繰り返しても起こらなかった!ましてや自殺なんて...。本っっ当におもしろいよ!!!あははははははははっ!」
あまりにも笑いすぎて思わず涙が出てくる。友奈は顔を手で抑えながら静かに呟いた。
「ふふふっ...私、決めたよそのちゃん。...一緒に遊ぼう!......そして、もっと私を楽しませて!!」
そしてそのままよろめきながら壁に寄りかかる。
「あなたがどうやって抵抗するか...。徹底的に精神を追い詰めて、あなたがどんな反応をするかも見たい...!ふふっ...あぁ、とってもとっても...最高な気分だよぉ...♪」
(第39話に続く)
天の神の過去の話は一話で終わらせるつもりでしたが予想以上に長くなってしまったため、二話分にわけさせていただきます...。
胸くそ悪い話が続くと思いますが今はまだ耐えてください...!次回もお楽しみに。