(また未来が変わった...。さては再びタイムリープしたな?...それにしてもこの未来は変わりすぎてる...。)
「友奈、明日は大橋方面集合だからね。忘れないでよ!」
「あっ、大丈夫だよ夏凜ちゃん!ちゃんとわかってるわかってる!」
「......本当かしら...くれぐれも遅れないようにね。」
「夏凜ちゃんこそー。」
「っ!!...私がそんなへまするはずないでしょ!」
「え~?...昔はあんなに部活サボってたのにー。」
「いつの話よ!」
(三好夏凜、楠芽吹、犬吠埼樹、そして卒業した犬吠埼風...。勇者部にいるのはこれだけ。例の先代勇者三人組は讃州中学に入学すらしていない...。一体過去で何をしたんだ。少し調べる必要があるな...。)
友奈は芽吹をマークし、彼女の動向を探った。園子がタイムリーパーであることを知っている彼女ならば何か行動を起こすはずだと踏んだからだ。そして案の定、芽吹は動き始めた。
(ん...?あれは......犬吠埼風。わざわざ卒業した彼女と会って話とは...。何を企んでいる。)
友奈はギリギリまで近づいて耳を澄ませ、話の全貌を聞いた。...そして二人が別れたのを見計らい、友奈は風に近づいた。
「あの...風先輩!」
「うおっ、えっ!?友奈!?...なんでこんなところに!?」
「...すみません風先輩...。芽吹ちゃん今日様子おかしかったからつけてきて......そしたら風先輩と会ってて...。」
「ふ~ん、そう...。」
「ごめんなさい!!話の内容、全部聞いちゃいました!」
「うっ...や、やっぱりぃ~...?」
「はい...。でも、本当にやるんですか?大赦本部に潜入して、先代勇者の園子さんを連れ出すなんて......。」
「......。......ええ。もう決めたことだわ。後輩の頼みだし、本人だってとっても真剣だったから。心配しなくて大丈夫よ!作戦はバッチリ、大赦の目なんか簡単にすり抜けられる!...一年前私たちを騙したあいつらには、これくらいの天罰が必要なのよ!」
風はガッツポーズしてそう言う。そして急に澄ました顔になって静かに告げた。
「......できるだけ現勇者部のみんなを巻き込みたくなかったから芽吹は私に相談してきたんだけどね...。あんたに聞かれちゃったから。でもお願い!みんなには言わないで欲しいし、友奈も全然協力とかしなくていいから!!余計な心配とかしないで!」
「でもっ...!協力し合うのが勇者部じゃないですか!そんなことを聞いて、私が黙ってられると思いますか!?」
「......。...そ、そうよね...。あんたなら当然、止めてもそうするわよね...。」
「でも......風先輩、本当に芽吹ちゃんに協力していいんですか?」
「...えっ......?」
「だって、芽吹ちゃんが助けようとしてるその先代勇者って......"風先輩が恨んでいる人ですよね"...?」
「っ!?...う、恨んでる!?何物騒なこと...そもそも会ったことないし私がその人を恨むなんてこと、どう考えたってありえないじゃない!」
「...私、聞いたことあります。......二年前の勇者達がバーテックスと戦ったときのこと。二人の勇者が亡くなって、生き残った勇者はたった一人。現実世界にも大きな被害を出したとか...。」
「...!......なんでそんなこと友奈が知って...」
「風先輩と樹ちゃんは、その被害者ですよね?」
「......!!」
「その人たちが四国をうまく守れていれば...二人のご両親が事故で亡くなることもなかったし、風先輩と樹ちゃんも一生消えない火傷が残ることもなかった......違いますか?」
「.........。...どこで知ったか知らないけど、そこまで知ってるなら仕方ないわね。...そうよ。昔まで...勇者になる前までは恨んでた。その人たちがしっかり守っていくれていれば、今私たちはこんな思いをしなくてよかったのに...ってね。でも実際に勇者になって、そのお役目の大変さを痛感した。それに昔の勇者システムは精霊によるご加護がなかったって言うじゃない。...その状況でよくこの世界を守ってくれたと......感謝するようになったわ。」
「......。」
「...彼女たちは私たちの命の恩人。お母さんとお父さんは死んじゃったけど、樹と私のことを生かしてくれてありがとうって。だから、今の私は彼女のことを恨んでなんかいない。」
「......本当ですか?」
「えっ...?」
「本当にそれは本心ですか?自分に嘘をついているだけじゃないですか?そうやって言い聞かせてるだけじゃないんですか?」
「ちょ、ちょっと......急にどうしたのよ...。」
「彼女のせいで自分は苦労し、樹ちゃんも火傷を気にして自由に服を着れない......。それが風先輩は許せるって言うんですか?」
「それは......」
「許せないですよね?自分の心に正直になってください、風先輩。」
「友奈...あんたさっきから変よ!どうしたのよ、こんなこと聞くなんて...!」
「いいから答えてください。家族をめちゃくちゃにされて、一生残る傷をつけられて、あなたは許せるんですか?」
「............!!」
友奈は風に詰め寄り、目の中をじっと見つめた。そして、
(...見えた。)
友奈は風の心の揺らぎを見逃さなかった。昔を思い出し、ほんの少しだけ芽生えた恨みの感情。それを一瞬だけ感じ取った友奈は風に『暗示』をかけた。
「あっ............。」
突然風はよろめき、友奈につかまる。
「大丈夫ですか?風先輩。」
「あっ......うん...大丈夫。......あれ、私なんで友奈と一緒にいるんだっけ...?なんか話してた...?」
「いや、今ちょうど会っただけですよ!本当に大丈夫ですか?」
「うん。ありがと...。それより...芽吹との話は聞いてなかったわよね?」
「芽吹ちゃん?会ってたんですか?」
「いや、知らないならいいのよ!...じゃあそろそろ私行くわ。たまに部活、顔出しに行くから!」
「はい!いつでも待ってます!」
友奈はいつもの笑顔で答え、風を見送った。
(これで下ごしらえ完了...。あとは作戦決行を待つだけ。...まさかこの能力が役に立つときが来るとはな。過去と未来を繰り返す中で偶然見つけたもう一つの能力...。.........ふふっ、それにしても能力発動前に我と話していた記憶が消えるオマケ付きなのは実に便利だ。)
友奈は鼻歌を唄いながら上機嫌でその場をあとにした。
--------------
翌日、もう一度芽吹の動向を探りながらうまく彼女らと合流できるように友奈は動いた。
(楠芽吹と乃木園子が向かった方向は......このままいけば三ノ輪銀の家か。もちろん、この未来も乃木園子にとっては大ハズレな未来だから鉄男と会って再び過去に戻るという魂胆だろう。犬吠埼風も先ほど三好夏凜と会っていた。我のかけた暗示は順調に成長しているようだな。......しかし、今日は平日だろう?小学校に向かわないのか?...まぁ、いい。先回りしておくか。)
友奈は彼女らよりも早く三ノ輪家に向かい、二人が到着するのを隠れて待った。やがて二人はやってきて三ノ輪家を訪ねる。しかし当然ながら鉄男は出てこなかった。それから芽吹と園子は小学校にいると結論づけ、向かおうとしたとき...
「芽吹...ちゃん...?」
「!!」
時を見計らって友奈が声をかける。
「えっ!?ゆ、友奈!?」
当然ながら芽吹は驚いて彼女の名前を言った。
「どうしてここに!?...依頼は!?」
「えへへ~...サボってきちゃった~。それより、背中の子は...。」
友奈はおぶられている園子を心配そうに見る。
「...!い、いえ!彼女は私の友達なのよ!」
「ケガ...してるよね...?それもかなりひどい...。」
「こ、これは...!」
芽吹はそう言いながら後ずさりする。
(楠芽吹...我が来たという予想外のできごとにかなり焦っているな...。)
友奈は芽吹を壁際に追い詰めると、彼女の耳元に顔を近づけてそっと言った。
「...大丈夫だよ。私、全部知ってるから。」
『えっ...?』
それを聞いた二人は戸惑う。
「それはつまり.........どういうこと?」
「私、この前ね...そのちゃんの病室から二人の会話が聞こえてきちゃって...。そのちゃん、タイムリープしてるんでしょ...?」
『!?!?』
「ごめんね!盗み聞きするつもりはなかったんだ...。でも、本当にあの後世界が変わって、気づいたらみんなそのちゃんのことを知らないんだもん...。びっくりしちゃったよ。もしかしたらあの話をしてた芽吹ちゃんなら私と同じで、世界の変化に気づいてるんじゃないかって思って......しばらく芽吹ちゃんの行動を観察させてもらってたんだ...。」
「友奈...!知ってたなら言ってくれてよかったのに...!」
「ほ、ほらだって...!........そんなこと聞きにくいって言うかさ...なんというか...本当にごめん!」
「...わかったよ、ゆーゆ。教えてくれてありがと!これで仲間が増えたね!」
「えっ...?」
「本心を言うと、あんまり知られたくなかったけどさ......今のこの状況から考えて、タイムリープのことを知っている人が増えたのは心強いよ!」
「園子...。」
「わ、私もいろいろと知りたいことたくさんあるけど今はそのちゃんたちに協力するよ!私にできることなんかない?」
(ふっ...これで我はなんの疑いもなく乃木園子に近づくことができる。彼女たちは我の本当の正体も知らず、今まで通り信用して一人の協力者として我を見る。...我ながら完璧なプランだ。)
神樹館小学校までの移動途中、園子は友奈にこんなことを聞いてきた。
「ねぇ、ゆーゆ...。」
「なに?そのちゃん。」
「ゆーゆってさ......わっしーのこと知らないんだよね...。『東郷美森』って子...知らないんだよね...?」
「東郷...美森...?さぁ...。そのちゃんのお友達?」
「そう...だよね...。ううん、なんでもない。忘れて!」
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「死ねっー!!乃木園子ォォォォ!!!」
(ここまで『能力』の影響が出ているとはな...。)
「メブー!避けてっー!!」
園子は自分をおぶっている芽吹にそう言う。しかし芽吹はここまで走ってきた疲労で思うように動けない。
(ここは......彼女らに協力するとしよう。)
「たあっー!!」
「ぐっ...!」
そのとき、友奈が前に飛び出した。風の手を掴んだと思うとそのまま地面に叩きつけ、見事に締め技をキメている。
「!?...ゆ、友奈!?」
「芽吹ちゃん早く!締め技はあんまり得意じゃないんだ!...解かれるのも時間の問題!早く鉄男くんのところへ!」
「すごい...!さすがゆーゆだ...!」
「わかった!ありがとう友奈!...このチャンス、無駄にはしない!準備はいいわね園子!!」
「...うん!」
(だが......今の犬吠埼風はそう簡単にお前らを逃がしてはくれんぞ?)
「させるかぁっ!!」
風が足を伸ばし、芽吹の足に引っ掛けて転ばせた。
「うわっ...!」
全速力で駆けた芽吹はその勢いのまま激しく転び、背中にいた園子も芽吹から離れて地面に転がった。
「どうしちゃったんですか風先輩っ...!やめて...くださいっ...!それにしてもすごい力...!女の子じゃないみたい...!」
(我ながら自分の力が恐ろしいくらいだ...ふははっ...!)
「くっ...!足の先まで使って邪魔するなんて、あなたもしぶといですね...風先輩...!」
「行かせない!行かせないんだからあっ!!私がソイツを殺すまで逃がすものかぁっー!!!」
「そこまでして復讐したいですか...!」
(さて、そろそろ来るころかな...?)
天の神の予想通り、どこからか現れた樹が風を抱きしめた。風の異常な様子に気づき、夏凜が連れてきたのだ。
(もちろんそうするだろうな。......だがいつもならこれで収まるだろうが今日はそうはいかんぞ。犬吠埼風は完全に我の術中にはまった。もう彼女は我の思い通りに動く人形と化したのだ!!)
「あれ........?おかしいなぁ...体が言うこと聞かない...。いつからこうなってたんだろうな...?誰か止めて...!私を止めて...!あいつを殺したくてたまらないのよ!!なんなのこの衝動...!最初はこんなことまでしようなんて思わなかったのに!ここまでしたいなんて思ってなかったのに!!」
風はそう泣き叫びながら地面に落ちている刃物を拾い、
(ここはわざと...)
グサッ!
「うっ...!?........あああああっ~!!」
動きを止めていた友奈の腕を刺した。それにより拘束は解かれ、風は立ち上がる。
「あぁ...私、友奈のことを...!あぁ...あぁ...ホントなんなのこれ...。」
(ぐっ...!かなり痛む...が、これも演じるためだ...。次は......!)
風は泣きじゃくりながら友奈に刺した刃物を抜き、それを投げる体制を作る。
「あ........私、投げようとしてる...?やめて...こんなことしたくない...!私の大切なものを...自分でどんどん壊してる...!やめて........やめてぇ........止まって........やだあああああああああああああああっ!!!」
(...投げろ。)
投げられた刃物は園子に向かって飛んでいく。が、刃物は園子を外れた。その代わりに当たったのは...
「ぐっ...!」
「!!...メブー!」
刃物が当たった場所は芽吹の足だった。芽吹はまたしても派手に転び、園子が地面に放たれる。
(乃木園子に命中させなかったのは『あえて』だ。...そこからならタイムリープとなんらかの関係のある三ノ輪鉄男と自力で接触できるだろう?)
すると鉄男の方から園子に近づき、そのあとに手をつないだ。
(......ほう...。わかったぞ、ソナタがタイムリープをするのに必要なのは何なのか。三ノ輪鉄男と握手をすることだろう...?これで必要な情報は集まった。ソナタも今のでだいぶ精神的に追い詰められたろう。)
「.........樹ちゃん...大丈夫...?」
友奈は刺された部分を押さえながら放心状態の樹に声をかける。
「......お姉ちゃん...!」
「樹ちゃん...?」
「......あっ、はい。大丈夫です...。私よりも友奈さんこそ......」
「私も大丈夫!...ちょっと痛いくらいだよ。」
(ちょっとなわけがないがな。)
天の神は能力を解くと、ゆっくりと立ち上がった。
「私.........私は......」
「風先輩、落ち着きましたか?」
「芽吹......私は...ぁぁぁ...!」
「心配しないでください。あなたのことも全部、園子が救ってくれます。」
芽吹は風の背中をさすりながら優しくそう言った。
(さて......これでまた未来が変わる。......次はどんな未来を見せてくれるんだ?...乃木の末裔よ。)
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そこから数十時間後、讃州中学校
「わっしーが...生きてる...!」
園子は涙目になって東郷の手を強く握った。
「ちょ...そのっち...どうしたの?」
「............いや...ひどい悪夢を...見てただけなんよ~。」
その様子を友奈はチラチラ見て観察していた。
(過去から戻ってきたか...。しかし、今回の未来はよくできすぎている。...つまらんな。もう成功させてしまったのか。)
天の神がそんなことを考えているうちに夏凜も園子と東郷の会話に入っていった。
「えっ!?にぼっしーもいる!?」
「『いる』って...失礼ね!毎日いるじゃない!」
(そろそろ我も話題に入るか...。)
友奈は銀を連れて園子に話しかけた。
「東郷さ~ん!夏凜ちゃ~ん!そのちゃ~ん!みんな準備できた~?」
「...園子のことだから、ギリギリまで寝てたんだろ?」
園子はその瞬間すぐにバッと振り返った。園子は大きく目を開け、その場で固まる。
「ほら、準備できたなら行くわよ。........ってあれ、園子?」
夏凜が移動するように急かすが、座ったまま動く気配がない園子に気を止める。その様子を見た東郷と銀は園子の前に立ち、
「お~い園子~?」
「大丈夫そのっち?まだ眠いの?」
と顔を覗かせて声をかける。
「やっと........やっと....成功した........?」
(当然、感傷に浸るか...。まあいい。たとえ過去でソナタが成功したとしても、我がこの未来を壊せばまたタイムリープをしなくてはいけなくなる。......せいぜい今のうちだけ精一杯、存分に喜んでおけ。)
「なによ園子、どしたの?早く行くわよ。」
「........。...夏凜ちゃん、ここは東郷さんと銀ちゃんに任せて私たちは先に行こっか!」
「えっ?ちょおっ........!」
「ほらほら行くよ~!...じゃあ三人とも、お先に失礼しま~す!」
友奈はそう言って夏凜の手を持ち、その場から走り去った。
(我がこれまでにないほどの絶望をソナタに見せてやろう。)
友奈はこれから園子が見せる表情や絶望する声を想像しながらニヤリと笑うのであった。
--------------
その日の放課後
「芽吹ちゃん!」
「......ん?どうしたの、友奈。」
「園子ちゃん...どこにいるか知らない?」
「園子?園子ならさっき銀と一緒に帰っちゃったけど...」
「あっ...そう...。」
「......。...何?なんか相談事?」
「あっ、まぁそうっちゃそうなんだけど...」
「私でいいなら相談に乗るわ。」
「ほんと!?......あっ、いやでも...。」
「...私じゃダメ?」
「...いやいや違う!そういうわけじゃなくて!...じゃあ一つ、約束してくれたら話す!明日までに必ずそのちゃんにこのことを話して!」
「......え、ええ...わかったわ。」
「じゃあちょっと部室に来て。ここじゃ人が多すぎるから。誰かに聞かれたら大変。」
友奈は芽吹の腕を引っ張って部室に移動する。
「そんなに重要なこと...?」
二人は部室に到着すると、椅子を向かい合わせていかにも真面目な雰囲気で話が始まった。
「あのね......芽吹ちゃん...落ち着いて聞いて欲しいんだけど...。このことは、まだ他の誰にも言ってないくてね......。」
「......うん。」
夕日が差し込み、二人を赤く照らす。そして友奈は重い口を開けて芽吹に告げた。
「私......また『祟り』に遭ってるみたいなの...。」
「!?!?......え!?な、なんですって!?」
芽吹は思わずガタッと立ち上がって驚いた。
「そうなの...。まだ軽度なんだけど、体も怠いしちょっと熱もあって......そしてなによりの証拠が...。」
友奈は胸辺りを芽吹に見せた。
「!!......ら、烙印...!」
「最初にそのちゃんに言おうとしたのはタイムリープの力でなんとかしてもらおうって思ったから...。ごめんね芽吹ちゃん!あなたに最初に言っちゃって...。もしかしたら......」
「あんまりマイナスなことを考えちゃダメよ、友奈。話してくれてありがとう。きっとなんとかなるわ。園子が助けてくれる。...でも、原因は不明なの?」
「うん...何でこうなったかはわからない...。気づいたらこれがまたついてて...それから少しずつ症状が出てきた。やっぱりこれはまた『祟り』に遭ってるなって実感しの。」
「そう...。ひどくなる前になんとかしなくちゃいけないわね。今から走れば園子に追いつくかしら...。」
「どうだろう...。そのちゃん帰りは車だから...もう乗ってたら間に合わないね。」
「なら電話で......」
「!!...芽吹ちゃん危ない!!」
そのとき、突然棚の上にあったダンボールが芽吹めがけて落ちてきた。友奈がギリギリで支え、なんとか難をしのぐ。
「!!......ありがとう友奈...!...もしかしてこれ......?」
「......う、うん...『祟り』の力かも...。ごめん芽吹ちゃん!私......」
「謝らないで!!」
「...!!」
「『祟り』がなんだ!伝染する?そんなもん、私には効かないわよ!」
「芽吹ちゃん...!」
芽吹は優しく友奈を抱きしめ、彼女を慰めた。
「...だからあなたが責任を感じることはない。なんにも悪くないんだから。悪いのは全部天の神。友奈にまたこんな思いをさせるなんて、つくづく性格の悪い野郎だわ。」
芽吹はそう言って窓の外を見る。海の遠くには神樹の壁が見えていた。
「この未来になってからずっとおかしいと思ってたわ...。今は4月。本当なら天の神も倒して神樹様は消滅したはず。けどこの未来にはあの壁がある。...つまり天の神も倒せていなくて、まだあの向こうにいるんだわ。」
「......。」
「友奈、まだ戦いは続きそうね。」
「そうだね...。いつになったら、平和な世界にできるんだろう...。」
「きっと大丈夫よ、私たちなら変えられる。」
「うん...!」
(勝手にそう信じていろ。...ソナタが望む世界など、決して訪れない。我がそれを許さない。)
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二人はその後別れ、芽吹は昇降口で靴を履き替えていた。
「あっ、きたきた~メブー!」
「!?...えっ!園子!?銀も!」
そこにいたのはなんと帰ったはずの銀と園子だった。昇降口にはもうこの三人しかおらず、他の生徒は全員帰ってしまったらしい。
「なんでここに!?帰ったんじゃ...」
「いやー須美が『友奈が出てくるまで待ってる』って言ってたからあたしらも付き合おうってなって!」
「それでメブーも来てなかったから私たちはメブーが来たら帰ろうって話してたの~。」
「あぁ、そうだったの...。それで、東郷は?」
「我慢しきれなくなって入っていったよ。すれ違わなかったのか?」
「ええ。たぶん東側の階段から行ったんでしょうね。私は西側の階段から降りてきたから。」
芽吹はそう言うと昇降口を出て三人で帰り道を歩き始めた。
(どうしよう......園子に早速会えたけど...話題を切り出すのが難しい...。ノリで帰り道じゃない方まで歩いてきちゃったし......。)
「いや~!今日は楽しかったね~!」
「ほんと、懐かしい話ばっかりだったな~。........新入部員加入の件は全然話し合えなかったけど...。」
「........。」
芽吹は園子と銀が楽しそうに話しているのをそっと見守った。やっとすべてが成功して、最高の未来を迎えることができた園子は今までと比べて段違いに明るい。
「メブー...?大丈夫?」
いろいろと考えているうちに園子が心配して話しかけてきた。
「あ........あぁ...」
芽吹はそっけなく答え、自分の中で結論を出した。
(......明日、まででいいのよね...。今日だってもう遅いし。...こんな楽しそうにしてる園子を見たら...。)
ずっと側でサポートしてきた芽吹は彼女が今どれだけ嬉しいかよくわかった。できるだけこの事実は伝えたくなかったのだ。...また彼女が苦しむことになるかもしれないから。できるならばもう少しだけ長く幸せに過ごして欲しかった。
「帰りにね、ちょっと寄りたいところがあって...あ、ちょうどここでお別れよ!また明日...」
芽吹はそうはぐらかし、さり気なく園子に耳打ちをした。
「明日の放課後、時間とっといて。」
そうとだけ残し、二人の前から姿を消した。
(今日気をつけて帰ればいいだけ。...大丈夫、『祟り』なんて今日必ず来るだなんて決まってないもの。)
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その後も芽吹は最新の注意を払いながら一人で帰り道を進む。すると、
「ねぇ、お姉ちゃん。今一人なの?」
突然後ろから男二人がやってきて話しかけてきた。
「......。」
「ねぇ~無視しないでよ~ほらぁ。」
男は芽吹の手をつかみ、強引に引っ張ろうとするが、
「いててててて!!」
逆に芽吹が男の手をひねり、激痛を与える。
「何ですか?今忙しいんです。あと、勝手に私のこと触らないでください。警察呼びますよ?」
「...粋がるなよ、ガキが!」
それを見たもうひとりの男が芽吹に襲いかかる。が、
「だあっ!?いてっ!がっ!」
芽吹が一瞬でのしてしまった。
「なんだこいつ...!女のくせに...!!」
「わかったら今すぐ帰ってください。」
「くっ...!だけど、俺らも諦めきれないんだよぉ...!」
「...?」
「......お前みたいな生意気で強くてかわいい子には初めて会うからよぉ...!俺たちの癖にどストライクだぁ...!!」
その言葉を聞いた芽吹はゾゾゾっと鳥肌が立つ。ここまで気持ち悪い思いをしたのは初めてだった。やはり芽吹は警察を呼ぼうと思い、携帯を手にしようとする。だがその時、
「......今だやれぇっー!」
バッ!
いきなり後ろからもう一人男が現れた。
「...っ!!」
「さすがに三人目には気づかなかったろう? か わ い 娘 ち ゃ ん ?」
ガッ!!
芽吹はレンガのようなもので殴られ、一瞬で意識が遠ざかって地面に倒れた。
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「......ぅぅ......っ...ぅん...?」
「おっ、起きたかい?かわい娘ちゃん♪」
「......はっ!!ここはどこ!?私は...いっ...!」
「あんまり動かない方がいいよ。頭レンガで殴ったんだから。」
(!!......う、動けない...!?)
芽吹はここから逃げようと足や手をジタバタさせようとするが完全に固定されてしまっていて動かない。寝そべっている芽吹のことを三人の中年の男が覗いてじっと見ている。
「ここはね、廃工場だよ。周りには住居もないし人通りも少ない。どれだけ助けを呼んだって誰にも聞かれることはないんだよ☆」
「は...?ふざけんじゃないわよ!!早く私を解放しなさい!!こんなこと許されると思ってるわけ!?」
暴れるごとにガシャガシャと音が鳴る。どうやら鉄製の金具で大の字にされているようだった。
「おおぅ...ぅぉ...元気でいいねぇ...!」
「おいこら、よだれをたらすなよ。...ほら言ったろう?かわい娘ちゃんよ。俺たちは気の強くてかわいい女の子が好きだって。」
芽吹は彼らの目を見て恐れた。常人ではない目をしている。それに先ほどの発言。芽吹は気持ち悪さと今から何をされるんだろうという恐怖心でいっぱいだった。
「今から...私になにをしようとしてるわけ!?...変なことしたら......どうなるかわかってるんでしょうね!!」
「あぁ...普通誘拐して全く動けないようにしたらやることは一つだよねぇ...。まぁ、それは普通の男ならの話だけど。」
「......どういうこと...?」
「俺らはそういうことに興奮するわけじゃないんだ。そこらの誘拐犯と一緒じゃない、そいつらよりもイカれたおかしいヤツらなのさ。」
自分から言うということは自覚があり、相当ヤバいということなのだろう。
「いいよなぁ...全く......お前本当にかわいいよなぁ...やっぱりこれくらいの年頃だよなぁ...!ほら、お前らも触ってみろよ。肌も潤いがあってすべすべだぜぇ...?」
誘拐犯のひとりはそう言って嫌な手つきで芽吹の腕を触る。
「やっ...!触らないで!!」
「いまからこの綺麗な肌を...切り刻めるなんて......本っ当に最高だよなぁ!!!」
「......え...?」
そう言うと、男たちがなにやら手に取る。スタンドの照明を明るくするとようやく男たちが手に取ったものがよく見えた。
「.........それで...何するつもりなのよ......!」
さっきまで強気だった芽吹もそれを見た瞬間ついにガタガタ震え始めてしまった。
「ハァ...ハァ......やっぱり電動ノコギリに混じって聞こえる叫び声がいいんだよなぁ...!」
「いやいや、普通のノコギリで切って叫び声だけを堪能するのが一番だろ......ハァ...ハァ...!」
「切断する音もいいよなぁ...!」
「ちょ、ちょっと!...切断...?何言ってるのよ...私の質問に答えなさい!何をしようとしてるの!?」
「まずはどこからいく?」
「腕からいこう。」
「そうだなぁ。まずは左腕から...。」
男はそう言うと芽吹の左腕の上にノコギリを構える。
「ねぇっ!!聞いてんの!?今すぐやめなさい!!そんなこと!ねぇ!!やめてっ!!!」
「......どんな音色を聞かせてくれるか...楽しみにしてるよぉ♪」
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「全く......『祟り』の力とはいえ、こんな人間も存在していたとは...。本当に人間というものは理解できん。」
廃工場の上で隠れ、一部始終を見ていた友奈はそう呟いて下に降りた。
「なぁ、これどうする?」
「バカやろう、裏ルートに売り飛ばすに決まってんだろ。」
「いやぁ...俺たちの気持ちも満たされて金も大量に手に入る......まさに一石二鳥だな!!」
男ら三人はそんな会話をしながら盛り上がっていると、
パチ...パチ...パチ...
なにやら拍手のような音が聞こえてきた。それもすごく遅い。夜中でここら周辺は人数が少ないということもあり、三人はビクッと驚いて拍手のした方向を見た。
「誰だ!!誰かいるのか!?」
一人の男が懐中電灯を向ける。そこにいたのはなんと先ほどバラバラにした人間と同じ制服を着た少女が立っていた。
「え...?ガキ...?」
「こんな時間に...?しかもこんなところに...?」
「いや、今そんなこと気にしてる場合じゃないだろ...!恐らく、俺らがやってた所も見てた...!そして遺体も見られた!」
「おめでとう、お兄さんたち。...役目を終えてくれてありがとう♪」
「は...?何言ってんだ...?」
「見られたからには、こいつも捕まえてバラバラにするぞ。」
「ははっ♪一日に二回も快感を味わえるなんて!しかもこいつも超かわいいじゃねぇか!」
「俺...タイプかも...!」
「はぁ......本っ当に気持ち悪いね。どう育てられたらこうなっちゃうんだろう。」
三人は束になって襲ってくる。しかし、
パチン
と友奈が指を鳴らした瞬間、三人はピタッと止まった。
「お、おい......なんだこいつ...!こいつの後ろの白い化け物はなんだ......?」
「げ、幻覚...?幽霊とかじゃ...ねぇよなぁ...?」
友奈の後ろには二体の白い化け物がいた。夜中のこの暗さが余計雰囲気を醸し出す。...そう。それはバーテックス、星屑だった。
「さぁ!ご飯の時間だよ!!私のかわいいバーテックスちゃん!」
友奈がそう言ったとたん、後ろの星屑は一斉に人間に襲いかかった。
「ぎゃああああ!!やめてぇぇえええ!!」
「うわあああああ!!!」
「やだぁぁぁああああああ!!!」
三人は情けない叫び声をあげながら一瞬でバーテックスに喰われていく。
「血の一滴も残しちゃダメだよ?この人たちは行方不明になってもらって、この事件を未解決事件として迷宮入りにさせるんだから!...あー、そこに転がってる芽吹ちゃんはちゃんと残しといて。...さぁ、お掃除お掃除♪」
数秒も経たないうちに、さっきまで騒がしかった工場がスッと静かになった。もう一度パチンと指を鳴らすと星屑はそこにいたのが嘘だったかのように姿を消した。
「ソナタらにはこの星屑の腹の中がお似合いだぞ。......人間のクズどもが。」
そう言い残し、廃工場を後にした。
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二日後...今日友奈たちは警察署に来ていた。芽吹の遺体が見つかり、警察から連絡があったからだ。重い空気に包まれ、すすり泣く声が館内に響く。
(やはりこの出来事はだいぶ精神にダメージを与えられたようだな。だがこれだけでは終わらせんぞ。ソナタにはまだ地獄を見てもらう。)
天の神は次に起こす行動を決めていた。後に園子はこの事件の一部始終が天の神の仕業ではないかと突き止め、神と関わりの深い場所に何か手がかりがないか探そうと声を上げる。相変わらずの勘の良さと推理力に、友奈は若干驚きながらも彼女に協力するふりをした。
それから全員と別れ、友奈が向かったのは讃州中学だった。
(我の仕業だと気づいたところで...これから起こる事柄を変えることはできない。)
友奈は部室に入ると、携帯電話を取り出して誰かに電話をかけた。
「......あっ、もしもし樹ちゃん?」
「...友奈...さん...?」
「もう大丈夫...?落ち着いた...?私、樹ちゃんのことが心配で...。」
「...わざわざ心配してくださったんですか...?ありがとうございます...!今は何とか落ち着きを取り戻せて...。」
「本当...?よかった...。ところでなんだけど、今から学校に来れる?」
「学校...ですか?」
「うん。...ちょっとそのちゃんに頼まれごとされてね。......芽吹ちゃんがこんな目に遭った原因を突き止めるために。」
「!!...何かわかったんですか...!?」
「とりあえず来て欲しいんだ。話はそれから。」
友奈はそこまで話すと電話を切った。
(...犬吠埼樹を呼び出したのはあくまで保険だ......。)
ちょっとしてすぐに、樹が部室に到着した。
「ごめんね、樹ちゃん...大変なときに。」
「いえ...大変なのは友奈さんだって一緒ですから。」
「......それで、なんだけど...」
「...はい。私にできることならなんでも...!」
「......銀ちゃんの弟...三ノ輪鉄男くんをここに呼んで欲しいんだ。」
「えっ......?」
当然樹は驚いた。なにせ今まで全く関係のなかった人物の名前だ。
「えっと......それはなんで...?」
「...そのちゃんからお願いされたことをするためには、鉄男くんが必要なんだ。...いきなりさ、あんまり面識がない私が鉄男くんを呼んでもおかしいし...。ここは『勇者部』として話したいことがあるって形にして、呼んで欲しいの。」
「つまり......部長の私から頼めばいいってことですか...?」
「そう!......お願いできるかな?」
「わかりました。友奈さんと園子さんの頼みなら!」
樹は快く受け入れ、早速三ノ輪家の家電に電話をかけた。
「............あっ、もしもし...そちら三ノ輪さんのお宅で間違いありませんか?」
どうやら電話に出たらしい。
『はい...そうですが。』
「今そちらに三ノ輪鉄男さんはいらっしゃいますか?」
『...鉄男は僕ですけど...何か?』
「あっ、申し遅れました。私、讃州中学勇者部の犬吠埼樹と申します。」
『勇者部?姉と一緒の?』
「はい。...突然のことで申し訳ないんですが、今からこちらに......あっ、讃州中学に来ていただくことってできますか?私たちからあなたに話したいことがありまして...。」
『えっ?僕に話したいこと...?それに今から...ですか?......すみません...実は僕、母からおつかいを頼まれていまして...』
樹は携帯電話のマイク部分を抑え、後ろを振り返る。そして小声で
「友奈さん...鉄男くん、おつかいを頼まれてるそうです...!」
と言った。
「じゃあ...おつかいの後でもいいから来てもらえないかな?私はいくらでも待つから。」
「わかりました、聞いてみます!」
樹は再び携帯を顔の横につけた。
「なら、おつかいの後でも構いません。来ていただけませんか?私たちはいくらでも待ちますんで!」
『えっ...!さすがに悪いですよ!...そんなに急用なんですか...?』
「...はい。お願いします...!」
思った以上に粘ってくれる樹を後ろから見て、
(こいつ、案外使えるな...。)
と、天の神は思っていた。
『......わかりました。ならおつかいの前に伺います。』
「いえ!別にお気になさらないでください!先に行っていただいても構いませんから!」
『いや、考えてみればおつかいの後だと荷物が増えて大変になりますから。...それでは今から伺いますんで。』
「......。わかりました。わざわざありがとうございます...!」
電話が切れたようだ。樹は振り返り、親指を突き立てて笑って見せた。
「樹ちゃんすごいね~!対応が大人みたい...!」
「えへへ...ありがとうございます...!これまで勇者部にいて、いろいろと経験しましたから!今はもう部長ですししっかりしなきゃいけませんからね!」
樹は両手でガッツポーズをしながら少し前のめりになって言った。
「......いや、それよりも鉄男くんの方が大人っぽかったですよ...?私よりも年下なのにすごい丁寧な口調でした...。」
(年齢にそぐわない丁寧な口調...か。彼の見た目からは知的さを一切感じなかったがな...。少し気になるがまぁ、それは今どうでもいい。)
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「......失礼します。」
それから時間が経ち、鉄男は樹に連れられて部室へやってきた。
「...久しぶりだね、鉄男くん。......まあ、私たちろくに面と向かって話したこともないけど...。」
「友奈さん...。それで...話ってなんですか...?姉が何かした...とか...」
「......樹ちゃん、悪いけど席外してもらっていい?」
「わかりました。」
部室は鉄男と友奈、二人きりとなった。
「別に銀ちゃんは何もしてないよ。.....あなたに話したいのは私の話。」
「えっ...?」
「...鉄男くん、私はそのちゃんがタイムリープしてるっていうのを知ってる。あなたと手をつなぐことで行き来できるってことも。もちろん本人から聞いてね。...私も芽吹ちゃんと一緒で、そのちゃんの協力者なの。」
「!!......そうだったんですか。確かに、前の未来では部長さんを足止めなさっていましたね。」
「......もうニュースは見た...?」
「.........はい。」
鉄男は悲しそうに下を見た。ニュースというのはもちろん芽吹の事件だ。
「...そのちゃんは今、芽吹ちゃんがどうしてあんな風に殺されなきゃいけなかったのか、原因を突き止めようと捜しているの。」
「そうなんですか...。」
「...私も今それに協力してるんだけど、君も知ってるとおり犯人はまだ捕まってない。...みんなバラバラになって頑張ってるけど、危ないよ。......これはあくまで私の仮説だけど...もし、もし芽吹ちゃんを殺した犯人がタイムリーパーであるそのちゃんの協力者だと知って殺したんだとしたら......。」
「えっ?知る?......それってつまり...園子姉ちゃんの目的を邪魔するためにやったと...?じゃあ......」
「そうだよ。...その犯人もタイムリーパーかも。」
「いやでも......その確率はかなり低いんじゃ...。」
「こんな犯行、これまでの歴史で見たって珍しいことだよ!...私たちに対する煽り...見せしめとしか思えない...!!」
「......!!」
「それにね、私も......」
友奈は制服を少しめくって自分の体に刻まれている『祟り』の烙印を鉄男に見せる。
「わっ!?い、いきなりなにするんですかっ!!」
鉄男はとっさに手で目を隠した。
「いやあの......別に大丈夫だよ。」
「えっ...?あ、ああ.......すみません、早とちりました...。」
鉄男はゆっくりと目を開けると、友奈の姿がギリギリ安全であることに気づき、勘違いしたことを恥じて顔を真っ赤にする。そして再び驚いた。
「!!......な、なんですかこれ...!」
「前にもこういうことがあったんだけどね...実はこれ......」
「まさか...入れ墨......?えっ、中学生で?えっ、こんな純粋そうで優しそうな人が?えっ、嘘でしょ...?」
「違~うっ!!」
思わず友奈は思いっきりツッコんでしまった。
「さ、さすがにそうですよね......それならそれは...?」
「......。...これは天の神の『呪い』の象徴。私今、神様に呪われてるの。」
「ええっー!?の、呪われ......ええっー!?」
「日に日に熱が上がってて、体も重いの...。この未来で、なんでこうなったかはわからなくて...。」
「確かに......神樹様の壁が復活してたんでおかしいなとは思ってたんですけど...。」
「とにかく、この未来はこれまでと違うところがいくつかある。...何かおかしいんだよ。......もしかしたら次は、そのちゃんが狙われるかもしれない...!!」
「えっ...!!」
「そのちゃんが殺されたらもうやり直しはできない!...彼女を守らないと...!」
「......園子姉ちゃんを過去に戻せばいいんですね?」
「......うん。お願いできる?」
「はい、おつかいの後すぐに行きます!」
(いやそこは今すぐ行けよ!)
天の神はまたしても思わず心中でツッコんだ。
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鉄男がその場を後にし、樹にもう帰ってよいと伝え、自らも讃州中学を出た。
(これで準備は整った...。祟りの力が発動するのも、乃木の末裔と合流してからだろう。...彼女が絶望する姿を今一度この目で見たい...!)
そこで天の神はあることをピンと思いつく。
(そうだ......いっそのこと見に行ってしまおう。)
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「ごめ....んな........園子....姉ちゃん........。やっぱ....それ........無理............うだ........。俺が....なく........も....これ........通りに........かんばって....くれ....!芽吹さんや、姉ちゃんたちのために....!..........これが、最後の....タイムリープだ....!」
「いやだぁっ!!!てっちゃんっ!!!」
(まだ息があるのか...。)
友奈は二人の別れの様子をじっと見ていた。鉄男がこちらに気づいたらしく、表情を変える。
(まさか......三ノ輪鉄男がすべて我がやったと見抜くとはな。さては我の知らないところで『祟り』の話を聞いていたな...?)
「黒幕は..................友奈...さんだ......!」
鉄男がそれを言い切った時には、園子はもうすでに過去へ戻ってしまっていた。
「くっ.........そっ.........!なんで...あなたが.........!」
「君は知る必要ないよ、三ノ輪鉄男くん。......そのまま苦しみながら息絶えるといいよ。」
友奈が話し終わる前に、鉄男は静かに目を閉じていた。
(さて......また未来が変わる。)
友奈はくるっと方向を変え、事故現場を去った。
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現在
「はぁ......!はぁ......!はぁっ......!」
「......全て見てきたか?」
「.........くっ...!」
またしても手に力が入る。そして先ほどのよう再びに牛鬼に弾かれた。
「......やっぱり許せない!!あなたに...人の心はないわけ!?」
「当たり前だ。我は人間ではない。」
淡々と答える目の前の友奈に、園子は無性に腹が立ってきた。
「......そろそろか。」
「...?」
友奈は静かにそう呟くと、勇者システムを解き、変身を解除した。どうやら園子が彼女の動きを封じる前に、あらかじめ手にスマホを持っていたらしい。はじめからこうなることは予測済みだったということだ。
「!?...どういうつもり!?」
「...耳を澄ませてみろ。もうじき聞こえてくるはずだぞ?波の音に混じって...。」
友奈がそう言ったとき、キャンプ場の方から誰かの声が聞こえてきた。こっちに向かってきているようだ。
「園子~?友奈~?」
(!!......もしかして、みんな!?)
「...もうこんな時間だ。心配して迎えに来たということだろう。」
やがて風たちの影が見え、こちらに近づいてくる。...その時だった。
「みんなっー!!助けてっーー!!!」
「!?」
友奈が突然、大声でそう叫んだのだ。
「友奈ちゃんの声ッ!どうしたの友奈ちゃんッ!!!」
いち早く東郷が気づき、全員を引き連れてやってきた。
「ちょっと...どういうつも......」
園子が友奈の意図を聞き出そうとするが、そんなことは無視して彼女は続ける。
「あっ!みんなよかった!!助けてっ!!...そのちゃんが急に襲ってきたの!!!いきなり勇者システムを使って、私に馬乗りに......!」
「なっ......!」
確かに今、友奈は完全に動けないように体を固定され、武器を用いて首を抑えられている。どう考えても普通の状況ではない。
「えっ.......!嘘でしょ......!」
夏凜が口元を隠し、絶句する。一同も同じように驚き、動きが止まった。
「みんな違う!!!これは......!」
「そのっち...!......友奈ちゃんから離れて!!」
「...え......」
東郷は園子に向かって叫ぶ。
「わっしー!違うんだってば!今ゆーゆを離せばみんなが......!」
「どうしたんですか...園子さん......。」
「...園子、すんげえ怖い顔してるぞ...。」
樹と銀に軽蔑されるかのような目で見られている。
(えっ...?今の私が...怖い顔...?)
どうやら天の神に対する怒りで、顔がそのまんまになっているらしい。一気にいろいろなことを知って、感情がごちゃまぜになり、表情をうまくコントロールできていないようだった。
「......園子、何があったか知らないけど...とりあえず友奈から離れなさい。......今のあなた、悪いけど私たちから見たら一方的に友奈を襲っているかのようにしか見えないわ。」
「そんな......。...うぅっ.........ごめんな...さい...。」
園子は友奈から離れ、友奈は怯えるようにして東郷の元へ走り、彼女に抱きついた。
「うぇ~ん!怖かったよ...東郷さ~ん!」
「もう大丈夫よ...友奈ちゃん...!」
六人は一定の距離から冷ややかな目で園子を見つめる。
「...なんでよ...どうしてこうなるの...?」
「......あなたがこんなことするなんて、正直信じ難いわ...。」
夏凜は静かにそう言った。
「......だから、ちが...。」
「園子、今ここで話しても仕方がない。友奈も相当怯えているし、あなたは大赦へ行きなさい。」
「え......?どうして...。」
「あなたのスマホ、見てみなさい。」
「!!」
受信箱に大赦からのメッセージが入っていた。その内容は、勝手に壁内で勇者システムを起動したことについて話があるという内容だった。
「えっ...!?こんなの今まで...」
「...大赦は勇者システムの管理をしてる。いつどこで変身したか、すべて記録されてるのよ。そしてこの通知はみんなにきてて、私たちは乃木と友奈をずっと捜してたってわけ。」
「......私は...そのちゃんに襲われたから仕方なく...。でもそのちゃん強くて...変身がとけたの...。」
「おかしいよ......こんなの......!」
「あなたが潔白の身であると言うのなら、大赦に行って証明してきなさい!」
「.........。」
ここまで怯えている友奈はなかなか見ないからか、完全に園子が敵扱いされている。
(これもすべて計画のうちだって言うの?天の神...!)
園子はみんなに連れられ、大赦に行くことに決めた。東郷と友奈はなぜかその場に残り、心のケアに徹することにするようだ。
すれ違いざまに園子は友奈をギロっと睨んだ。それを見た友奈はまた怯え、東郷にくっつく。
(......わっしーに手を出したら、許さないんだからね...。すぐに戻ってくるから、そのときは今度こそ容赦しないよ。)
そう決心しながら、園子は海岸を去る。
(ふふっ...この状況からどう足掻く?乃木の末裔よ。......所詮ソナタら人間は、我の手の中で転がされているんだよ。)
(第40話に続く)
いろいろ詰め込みすぎた結果、二話に分けてもこれほど長くなってしまいました...(過去最長回)。今回の話はこれまで張ってきた伏線回収に手間をかけたため、執筆にかなりの時間を要しました。
まんまと天の神にはめられた園子はどうするのか...。あの天才園子様がこれで終わるわけがない!次回もお楽しみに!