翌日。三人は担任によってクラスメートにこう紹介された。
「この三人には特別なお役目があります。だから昨日のようにいきなりいなくなってしまう時がありますが、そのときは慌てたり騒いだりせず、落ち着いて心の中で三人を応援してください。」
須美はちらっと横の二人を見る。そうすると二人はニコッと笑って須美の方を見返した。
時間は過ぎ、放課後。
(誘おう....誘うんだ....!)
須美は勇気を振り絞ってイスから立つ。そして座っている銀と園子に向かって言った。
「あ、あの........よければその....これから祝勝会なんて....どうかしら....?」
須美の提案に二人は笑顔を見せ、
「おっ、いいねぇ!」
「うん!行こう行こう!」
と、答えた。
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「本日はお日柄もよく....このような日を迎えられたことを大変嬉しく....」
「おうおう、堅苦しいぞ~」
「もっと、リラックスリラックスだよ~わっしー!」
「あ、えっと.....」
「ほら、乾杯~!」
須美の話を遮り、銀がそう言ってドリンクを持ち上げる。
「ありがとうね~わっしー」
「え....?」
「私も誘おうと思ってたんだけどね、なかなか言い出せなくて~。わっしーから言ってくれたとき嬉しかったんだ~!」
「うん!鷲尾さんから誘ってきたことなんて初めてじゃない?」
「そうなんだよ~!」
「合同訓練もなしにあたしたち、結構....っていうか完璧にできなかった!?ケガ一つしてないし!!初陣とは思えないほど!!」
「え、あぁ~....私にし、神託がきてたからね~。その作戦がたまたま成功しただけなんよ~」
園子は咄嗟にそう言う。すると須美は園子の顔をじっと見つめたと思ったら、やっとイスに座った。
「そ、それでね~私たちの初陣についてガンガン語りたかったんだよ~!完璧にできたからこそ尚更~!」
園子は怪しまれないよう、なんとかして話を戻す。
「........実は、私もそうなのよ。」
やっと須美が口を開く。
「それでね........私、二人のこと信用してなかった。」
「え....?」 「........。」
銀は困惑の声を漏らす。
「違うの。私ね、人を頼るのが苦手で....それで....乃木さんの言うことも最初は疑心暗鬼になってた。けど、三ノ輪さんの『信じよう』って言葉のおかけで、今回....私はうまくできたんだと思う。本当に、二人がいなかったら勝てなかったわ。ありがとう。」
須美の言葉を聞いた銀は笑顔が戻る。
「それで........なんだけど....二人とも....これから仲良くしてくれませんか....!?」
「え....?」 「あ....。」
二人はフッと微笑する。
「何言ってんだよ、私たちもう仲良しじゃん!」
「うん!これからよろしくね~わっしー!」
「!!....二人とも!........それからえっと....さっきから気になってたんだけど乃木さんがいつの間にか呼んでる『わっしー』ってのは何....?」
「あだ名だよ~。嫌かな~?」
「い、いや........別にいいわ。」
須美は少し顔を赤らめ、園子とは目を合わさずにそう答える。
すると銀が須美に向かって、
「でもさ........三ノ輪さんってのはよそよそしいな~。あたしのことは銀って呼んでよ!」
と、笑いかけて言った。
「あっ、ミノさんだけずるい~!私も私も~!」
園子も便乗し、須美の顔をじっと見る。
「えっ....う、う~ん....えっと....」
「ははは!ま、いっか!....よし!それじゃ一段落ついたところで!ジェラートタイムといきますか!」
銀はそう言って元気よく立ち上がる。
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「あむっ!う~ん....おいしい~!」
園子は頬に手を当てて幸せそうな表情をする。そして銀にこう聞く。
「ミノさんは何にしたの~?」
「あたしはしょうゆ豆ジェラートっ!」
銀は得意げにそう言った。
「あ~!ミノさんそれ大好物だもんね~!」
「えっ....?あたしがこれ好きなこと知ってたっけ....?」
辺りに微妙な空気が流れる。
「はっ!!い、いやいやいやいや!!大好物なんだね~って言ったんよ~!」
「あっ、そう?」
「うん、そう~!」
(危ない危ない....またやっちゃったよ~....。楽しすぎて興奮するとついボロがこぼれちゃうね~....)
「........。」
またしても須美はじっと園子の方を見た。そしてパクッと一口、ジェラートを食す。
「んっ!?美味だわ....!味の調和が絶妙ですばらしい....!」
それを聞いた園子は、
「あ~ん!」
と言って須美の前に顔を出す。
「な、なに....?」
「そんなにおいしいなら、あ~んっ!」
「えっ!........こういうの初めてなんだけど........あ、あ~ん....」
須美は慣れない動作をして園子の口の中に自分のジェラートを入れる。
「うんっ~!おいし~!初めての共同作業だね~!」
「はっ!!!」
須美は顔面を真っ赤にさせた。
「言葉の意味がおかしいぞ~」
銀がすかさず園子に対してツッコミを入れる。
「ははは、友達と一回こんなことをしてみたかったんよ~。わっしーは~?」
「えっ!?わ、わたしは....あぅ........ぅ....」
須美は戸惑い、言葉を詰まらせる。
『はははははは!!』
それを見た銀と園子は楽しそうに笑った。そのとき、須美は笑われたのにも関わらず、なぜか不思議と不快にならなかった。それどころか逆にどこか心地よい感覚を覚えた。
初めてできた友達。初めての経験。たくさん会話した一日。友達っていうのは、こうやってできるものなんだ。なんだかとても心が暖かい。一緒にいるだけで楽しい。友達ができるっていうのも、悪くない。
(第五話に続く)