芽吹が讃州中学に行く前日 ゴールドタワー
「......。......あれ...?え...?」
楠芽吹はいつの間にか見知らぬ場所に立っていた。それもかなり大きい塔の中にいるようで、周りには自分と同じくらいの年齢であろう少女たちが過ごしていた。全員見たことない制服を着ている。それは自分も同じだった。ちょうど昼休憩の時間らしく、芽吹が手に持っていたのは空のお椀を乗せたおぼんだった。
(なにこれ...?ここはどこ......?見る限り、ここにいる人たち全員知らない。今いるこの建物も全く知らないものだわ。......そうか、園子がまた未来を変えた...?えっと......私は何をしてたんだっけ......。..................!!)
自分の記憶を辿ったその瞬間、
ガシャガシャン!
「...うっ......おえ......っ......!」
芽吹はおぼんを落として、膝と手を置いていきなり嘔吐した。周りにいた同年代の子たちは突然のできことにざわめき、慌てふためく。
(思い出した......!私は.........私...は.........っ!)
「芽吹さん!?何事ですの!!」
そのとき、一人の少女が駆け寄ってきた。彼女は芽吹の背中をさすり、
「...落ち着いて。とりあえず深呼吸ですわ。」
と優しく声をかけてくれた。その後、もう二人そばに駆け寄ってきた。
「...楠、何があったの...?...弥勒、手伝って。」
「了解ですわ!...立てますか、芽吹さん。」
小声ながらも、弥勒と呼んだ少女と共に芽吹に手を貸した。
「わあああっ!!メブが!メブがぁっ~!!どうしようどうしよう!?急に吐いちゃうなんてなんかの病気!?死んじゃイヤだよメブ~~!!」
「加賀城っ!お前黙ってろ!不安になるようなこと言うんじゃねぇっ!」
「ひいっ!!怖い方のシズクちゃん!?ごめんなさい!もう言いません!」
「それからお前も手伝え!」
「はいぃっ!今すぐ!」
弥勒と共に肩を貸していた少女はシズクと呼ばれた。先ほどまで物静かだった彼女が、急に人が変わったかのように声を荒げ、一人騒いでいた加賀城と呼ばれた少女はそれに従う。
----------------
「......はぁ...ありがとう...。もう大丈夫。」
芽吹は休憩室のような場所に運ばれ、水を飲んで落ち着いた。
「楠...最近がんばりすぎてた。」
「そうですわ!体を壊すのも当然...しばらくここで寝てないとまた...。」
「いや...私、今すぐ行かないと...!ここまで運んでくれてありがとう。......えっと...」
芽吹は彼女たちの名前を呼ぼうとしたが当然、芽吹は全員知らない。あの状況で率先的に助けに入り、こんなに心配してくれている。この未来では彼女たちとよっぽど信頼関係が厚いのだろう。芽吹はそう思った。
「行くって...どこに...?」
「メブ~!じっとしてなきゃだめだよ!」
「とりあえず安静にすることが第一ですわ!芽吹さんが無理やりにでも行こうとしたって、わたくしたちが全力で止めるんですから!」
「......。...わかったわよ、そこまで言うなら...。」
ここがどこなのか聞きたかったがそんなことを聞いたら当然怪しまれるだろう。携帯も持っているようだし、直接会いに行けなくても電話で連絡することができそうなのでここは彼女たちの言うとおりにした。
そして芽吹は休憩室のベッドに寝ころび、
「みんな、本当にありがとうね。あなたたちのおかげで、今こうして落ち着いていられるわ。」
と言った。
『......。』
もう一度感謝の言葉を聞いた三人は、なぜか全員ポカーンと口を開けて芽吹の顔をじっと見ていた。
「?.........な、なにかしら...?」
「...芽吹さん、そんな優しそうな顔でしたこと...?もっと険しい顔だったような...。」
「やっぱりぃ?弥勒さんもそう思った?だよねだよね、メブは常に怒ってるみたいな顔だよね!」
「楠...丸くなった...。」
「え、えぇ~......?」
(この未来の私ってそんなイメージなの...?)
そのとき芽吹は過去の自分を思い出した。確かに昔は勇者になるため、自分以外の者を蹴落とし、必死に鍛錬に励んで見事夏凜と共に勇者になった。その時は夏凜の態度が気に入らず、また勇者部員たちのことも気に食わなかった。彼女たちのお役目に対する考えが甘かったから。とても嫌っていたし、最初はキツく当たって厳しくしていた。...しかし今はもうその考えはとっくに捨てている。彼女たちが手を差し伸べてくれたおかげで自分は大きく変わった。...『ここにいるということ』。それが意味しているのはこの未来で芽吹は勇者になれなかったということだ。そうなれば自分の考えも昔のままなのだろうと納得した。...『車輪の下敷きにならないように。』かつて父親から貰った言葉。芽吹はずっとこの言葉を胸に生きてきた。
(......この未来の私は、どんな生活をしてきたんだろう...。友奈たちと出会わなかった私は一体...どうなってたんだ?)
そんなことを今考えても仕方ない。聞きたくても聞けないのだ。とりあえず今はひとりになって園子に連絡をとることが優先だった。
「みんな、ここにずっといて大丈夫なの?」
「あっ、そうだね。もうすぐ時間。」
「それではまた後で来ますわ、芽吹さん。」
「......絶対...ここから離れちゃダメ。」
「わかったから、ゆっくり休んでるわ。」
三人は休憩室を後にし、芽吹はこの部屋に一人になった。
「......さて。」
芽吹は携帯を取り出すと、園子の携帯番号を打ち込み、電話をかけた。
(今のこの時間帯なら昼休みのはず...。なら......)
芽吹の睨んだ通り、電話は繋がった。
「もしもし、園子。今大丈夫?」
『もしもしメブー!?メブーなの!?』
「そうよ。そっちも驚いてるでしょう?急に私が讃州中学からいなくなって。」
『....よかった....!無事なんだね...!』
「ええ。今いる場所はよくわからないけどとりあえず今私は『防人』というお役目についてるみたい。......それで、なんだけど...私前の未来の記憶を振り返って......思い出したの。」
『......。』
園子は黙って聞いていた。
「......私、不審者たちに殺された。...バラバラにされて...。あまりそのときのことを思い出したくないから詳しくは話せないと思うけど、その前のことなら話せるわ。......友奈に『今祟りに遭っている』という相談を受けたの。」
『......祟り...?』
「...ええ。またなった原因はわからないと言っていた。でも、本当は......こんなこと考えたくないけど...もしかしたら私が殺された原因は......」
『............そっか。無理に言わなくても大丈夫だよ。私はもうわかってるから。』
「......えっ...!?」
『私も前の未来で突き止めたんだ。......黒幕は〈ゆーゆ〉だって。』
「!!!」
『実はメブーの事件の後にも、てっちゃんが交通事故に遭って命を失ったの。...てっちゃんは最期に、命を振り絞って私にヒントをくれた。』
「それで...突き止められたの...?」
『うん。残念だけど間違いないよ。...私はまた過去に戻って、メブーもてっちゃんも死なない未来に変えた。そして今に至るね。』
「...そう...。......ねぇ、園子...私......!」
『......なに?』
「私......すっごい怖かった...!何されるかわからなくて、すごい気持ち悪かった...!今でも鮮明に思い出せてしまうの。...体を切られる感覚と、不気味に笑いながら私の体を切り刻む男たちの顔を......。」
『................うん................そうだったんだね....。』
園子は優しく答えていながらも、その声にはどこか怒りがこもっているようだった。
『でももう大丈夫だよ。...二度とメブーにそんな思いはさせないから。』
「うん...ありがとう...!」
芽吹は涙ぐみながら園子に感謝した。芽吹はふっーと深呼吸して自分を落ち着かせると、涙を拭いて園子に言った。
「............私にも、手伝わせて。」
『えっ?』
「......これから戦うんでしょう?だったらもちろん私も協力する。」
『!...ありがとうメブー。実は私も頼もうと思ってたんだ。』
「......そうなの...?」
『うん!...私、勇者部のみんなにも協力してもらおうと思ってる。全員に私がタイムリーパーであることを伝えて、みんなで計画を実行する。』
「!!......ついに覚悟したのね。」
『そうだよ。やっぱり、私ひとりじゃどうやっても勝ち目なさそうだからね~。......あ、あと先にメブーに話しておくよ。』
「えっ、先に?」
『そう。私が二年間練りに練った計画と、ゆーゆの本当の正体について.........』
-------------------
---------
----
『じゃあまた明日。讃州中学で会おう!』
「ええ。わかったわ。...今日はありがとう。ちょっとまだ驚きすぎて理解しきれてないけど...。」
『こちらこそありがとうね~。...ゆーゆのことについては時間かけてでいいんよ。こればっかしはしょうがないからね~。』
「私も、覚悟を決めるしかないのよね...!それじゃ切るわよ。」
芽吹は電話を切ると、ベッドに寝転がった。なんだかどっと疲れた気がする。園子からすべてを聞いた芽吹はとても複雑な気持ちだった。
(敵は天の神...か。まさか友奈の体が乗っ取られてたなんて。しかもだいぶ昔から...。天の神は人類の宿敵。園子の言う計画が成功すれば私たちの代で決着をつけられる。)
「全く...腹が立ってしょうがないわ!私にこんな記憶を植えつけた挙げ句、今まで私たちを騙してたなんて!」
「あの..........大丈夫ですか...?」
「うわっ!!」
寝転びながら神への愚痴を言っていたところ、いつの間にか小学生くらいの少女がすぐそばに立っていた。彼女は巫女の装束を身にまとい、心配そうに芽吹を見ていた。
「びっくりした......。えっと...いつからそこに......?」
芽吹はゆっくり体を起きあがらせて彼女に聞いた。電話の内容を聞かれていたらまずい。
「先ほどこの部屋に来たばかりです。......お体の調子はいかがですか...?ひどくうなされていたようですけど...。」
「あ、いや...うなされてたわけじゃなくて...。」
芽吹は少し困るような表情をしながら彼女の顔をまじまじと見る。
(ここには巫女もいるの...?かなり幼く見えるけど。......それにしてもこの子.....................)
「.........かわいい。」
「はい?」
「あっ、あっ、なんでもないなんでもない!!」
(思わず口に出てた!?)
芽吹は顔を赤くする。すると少女は芽吹にそっと近づき、ベッドに腰掛けて芽吹の横に座った。
「私......みなさんから芽吹先輩が倒れたと聞いてとても心配でした...!芽吹先輩に何かあったと思うと私...。」
「!......そんなに私のことを...。」
「当たり前です!私にとって芽吹さんは、とってもとっても大切な方ですから!」
目の前の少女は宝石のような純粋の目で芽吹を見つめ、彼女の手を握って言った。
「ご無事そうでなによりです...!本当によかった...安心しました!!」
芽吹はまた顔を赤くする。そして
(...防人も悪くないわね。)
と思った。
ガチャリ
「!...やっぱりぃ~!あややここにいた~!ってあれ...?」
そこへ駆け込んで入ってきたのはさっき芽吹をここまで運んできてくれた一人の、加賀城雀だった。二人が手を取り合っている姿を見た雀は、
「.........これはこれはお邪魔しました~...。」
と言ってドアを閉めてしまった。
「ちょっと待って!そんなんじゃないから!入ってきていいから!」
すぐに芽吹がそう言って雀を止める。そうするとまたドアが開いて入ってきた。
「あらあら、本当ですか?なら......弥勒さ~ん!しずくちゃ~ん!亜弥ちゃんやっぱりここにいたよ~!!」
雀が扉の外に向かってそう叫ぶと、すぐに弥勒夕美子と山伏しずくがやってきた。どうやらこの少女の名前は『亜弥』と言うらしい。
「もう、急にいなくなったからびっくりしましたわ。」
「勝手にいなくなっちゃ...ダメ。」
「......みなさん、ごめんなさい...。芽吹さんのことがどうしても心配で...。」
「そんな!抜け出してまで...?そこまで私のことを...!.........亜弥ちゃんッ!」
『!?!?』
そのとき、芽吹は亜弥に抱きついた。
「こんなにいい子、私にはもったいないわ!」
芽吹は亜弥のことを妹のように扱っていた。出会ってたった数分でそれくらい彼女のことをかわいがっているのだ。
その状況を見た三人はあんぐりと口を開けて唖然とした。
「......。これは夢...?いやきっと夢に違いありませんわ!芽吹さんがこんなこと、ましてや人前でするはずありませんもの!!」
「メブどうしちゃったの...?いつもはこんなにわかりやすくあややにデレデレしないのに...。」
「...楠じゃないみたい。」
抱きつかれた亜弥も芽吹の突然の行動に困惑していた。
「あ、あの...芽吹先輩...!?」
「...!......あっ、ごめんなさい...感極まっちゃって...。」
芽吹はすぐに離れると、この場にいる全員に向かって言った。
「.........時間がとれるときでいい。またここに来てくれない?」
雀たちは顔を見合わせ、
「...別にいいけど...。」
と呟いた。
-------------------------------------------
この日の夕方、彼女たちはまた芽吹のいる部屋に入った。
「......亜弥ちゃんは?」
「あややはまだ巫女のお役目があるみたい。すぐ来るとは言ってたけど。」
「......そう。...いや、巫女の彼女は知る必要ないかもしれないわね。危険な目に遭うかもしれないし...。」
「えっ、危険?」
『危険』という言葉に真っ先に反応したのは雀だった。
「一体なんですの?こう改まって話だなんて...。」
----------------------
----------
----
「..................ざっとこんなもんかしら。」
芽吹がすべてを話し終わったとき、三人は全員ポカンとして空虚を見ていた。
「......。」
「いやいやいやいや!!『ざっとこんなもんかしら。』じゃないですわ~!!」
「いくらなんでも非現実的すぎだよ!!しかもえっ、さっきまで私たちのこと知らなかったってことでしょ!?メブにとっては今日初めて会ったってことでしょ~!?」
「ええ、そうよ。」
『ええっー!!?』
雀と夕美子はとにかく騒ぎまくっていた。
「初対面であそこまで自然に話してたなんて...さすが芽吹さんですわ...。確かにちょっとおかしかったところもありましたけれど。」
「......。」
「よくしずくちゃんはそんなに落ち着いていられるね!?ね!?」
しずくだけは話の最中ずっと黙っていた。
「樹海化したら時間止まるし...壁の外は火の海だから...この世界はもともと非現実的なことばかり。」
「そうかもしれないけどさぁ、、だからって...タイムリープだよ!?」
「確かに...しずくさんの言う通りですわね。タイムリープくらい有り得るかも...。」
「なんで弥勒さんまで納得しちゃってんのさ!?みんな価値観バグってるよぉ!!」
「で、これからが本題なんだけど。」
「こ、これからぁ!?待って待ってメブぅ~!今の前置きなの!?到底ついていけないよ!こっちの気持ちも分かってよぉ~!!」
「そうしたいけれど、ごめんなさいね。時間がないのよ。頑張って理解して。」
「が、頑張ってって......あぁ...ダメだこりゃ...。」
雀はそう言うとヘナヘナと腰の力が抜けて床に転がってしまった。
「あら、雀さんがダウンしてしまいましたわ。」
「加賀城は気にしなくていい。楠、続けて。」
「う、うん...。いつもこんな感じなの?」
「これが平常運転。雀さんはこういう人ですわ。」
夕美子はため息を混ぜながらそう言った。
「あ、そう...。じゃあ続けるわ。...一言で言っちゃえば、私に協力して欲しいの。これは戦力...人手が必要でね。」
「芽吹さんの頼みならなんでも受け入れますわよ!」
「私も...。」
「......でも、これはとても危険だわ。もしかしたら命に関わる...。さっき話した園子の作戦が失敗したらの話だけどね。」
「ある勇者の体を乗っ取った天の神と、戦うっていう作戦...?」
「そうそれ。...『ヤツ』と戦えるのはほんの一握りしかいない。...神樹様から選ばれた五人の勇者と、私たち防人のみ。」
「でも天の神と戦うのは最悪の場合、ですわよね?」
「ええ。その前の作戦が失敗したらのね。...でも、園子が言うにその作戦は成功率がかなり低いらしいの。実際、私もそう思うし...。だから......」
「なるほど...覚悟は重々承知で天の神と向かい合え、と...。そして勇者ほどの力を持たない防人の私たちは、命を落とす確率が高い、というわけですわね?」
「!!...そう、そうなのよ!」
「......弥勒も弥勒じゃないみたい...。こんなに冴えてるなんて、天地がひっくりかえるほどおかしい。」
「失礼ですわね!しかもなんなんですのそのたとえは!」
「......三人には、決断して欲しい。...本当にいきなりのことで申し訳ないけど、すぐに決めて欲しいの。...明日には私、讃州中学に行かないといけないし。」
芽吹が決断をせかすも、三人は黙ったままだった。
(当然そうよね...命に関わるって言うなら...。)
芽吹はそう思って諦めかけたとき、
「私は...楠について行く。」
「......えっ?」
唐突にしずくがそう呟いた。
「本当に?」
「うん。...私は決断したから。それに............しずくのことはオレが守ってやっからよ!だから安心しろ、楠!」
しずくの人格が180度変わるごとに芽吹は少々戸惑いながらも喜びの笑みを見せた。
「......わたくしも......わたくしもご一緒させていただきますわ!」
「!...弥勒さんも、ですか!?」
「ええ!要するにわたくしたちのすべきことは天の神の討伐。...それを成すことができれば、弥勒家再興は間違いなしに決まってますわ!」
芽吹は『弥勒家再興』の言葉に疑問を持ちつつもあまり気にしないで受け入れた。きっとこれもいつも通りのことなのだろうと思うことにした。
「えぇ...?みんな行っちゃうの...?」
一方、雀は倒れ込んだまま頭を抱えていた。
「みんな死ぬかもしれないんだよ!?いくら乃木園子?さんがタイムリープして未来を元に戻してくれたって、私たちから死んじゃった時の記憶は消えないんでしょ?......今日のメブみたいに...。」
『......。』
雀の言葉に、一同は何も返すことはできなかった。
「怖くないの!?作戦が失敗するかもしれない!みんな死んじゃうかもしれない!私は嫌だよ...。もちろん自分が死ぬのも嫌だけど、メブも弥勒さんもしずくちゃんも...みんな死んじゃうのは嫌だよ...!」
「雀...なんであなたはそんなマイナスに......」
「だってそうじゃん!!相手は神様なんだよ!?普通に考えて勝てるわけないじゃん!!」
「加賀城、そんなのなァ...オレら百も承知なんだよ。わかってて戦いに行くって言ってんだ。覚悟決めてんだ。今までだってそうだったろ?防人として、オレら全員壁の外に出て、命がけでバーテックスと戦った。違うか?」
「そうだよ...!今までが怖かったから言ってるんだよ...!弥勒さんだって危なかったときあったし......。」
雀はずっとしどろもどろにしながら芽吹たちを必死になって説得していた。
「つまり雀は...私たちが園子に協力すること自体反対するってことね?」
「う、うん...!」
「......。...申し訳ないけど、それはできない。もう決めたことだし、元々死ぬ覚悟はできてるから。」
「!!......そんな...!しずくちゃんは?弥勒さんは?」
『......。』
二人も黙ったままだった。
「そんな...本当に本当にみんな行っちゃうの...?このたった一瞬で覚悟できちゃったの...?」
「......あなたは別に、無理しなくていいのよ。」
芽吹は優しく雀に声をかける。
「...残るのも嫌だよ...。おいて行かれるみたいで...。」
「はぁ......じゃあどうしてェんだ?はっきり言え!」
シズクは雀の肩を掴み、無理やり三人の方に顔を向けさせた。
「うわ、えっと...だから......その...私も連れてって!ひとりぼっちも怖いんだよぉ!!」
「ええっ!?」
芽吹は声を上げて驚いた。最も死に対する恐怖があった雀が、急に行くことを決めるとは。
「いや、その...なんというか......怖いんじゃないの?」
「怖いよ!!」
「じゃあ...なんで協力してくれるの?」
「おいてかれるのも嫌だから!!」
「判断基準がよくわからないわ...。」
「雀さんはそういう人ですわ。...さて、これで決まりましたわね。」
すると弥勒たちは全員芽吹の顔を見た。
「わたくしたちは、芽吹さんの味方ですわ。」
「...私たちにできることなら...がんばる。」
「きょ、協力してあげるんだから、私のことしっかり守ってよねぇ!?メブぅ!!」
「みんな...!ありがとう...!!」
---
-------
---------------
翌日 早朝
「三人とも、朝早くから手伝ってくれてありがとう。」
芽吹は雀たちに協力してもらい、こっそりゴールドタワーを抜け出していた。
「昨日のあの後、あややには適当にはぐらかしておいたから大丈夫!ちゃんと秘密にしておくから!」
「それもありがとう。本当、あなたたちにはお世話になってばっかりだわ。」
「いえいえ、普段芽吹さんにやってもらってることと比べたら全然!おやすいご用ですわ!」
「まだ...始まったばかり...。」
「そうね...。勝負はこれからだから。じゃあそろそろ行くわ。後のこと、よろしく頼むわ。」
「うん。...神官たちにはうまく言ってごまかしておく。」
「いってらっしゃいませ、芽吹さん!」
こうして芽吹はゴールドタワーを後にし、遠く離れた讃州中学まで向かった。待ち合わせ時刻は夕方あたりだったが、ゴールドタワーの生活の都合上、うまく抜け出せるのは朝しかなかった。それまで芽吹は適当に暇つぶしをした(主にプラモデル鑑賞)。
そして帰ってきたのは夜。ゴールドタワー内部にいるしずくと連絡を取り合い、うまく戻ることができた。
「...楠、どうだった?」
「みんな変わりなかったし、全員作戦に乗ってくれることになった。今日話したこと、後でみんなにも話すわ。それと......今度あなたたちにも紹介したい。」
「...えっ?」
「讃州中学勇者部の勇者たちを。きっとすぐ仲良くなれるわ。」
「!......うん、私も...会いたい...!」
その後、また全員で集まって芽吹は今日のできごとを話した。そして次は防人たちと勇者たち...顔合わせをするということに決めた。
(第42話に続く)
作者は『楠芽吹は勇者である』を未読です。ですので今回の話の中で原作との矛盾点があるかもしれません。もしそのような間違いを発見されましたら、教えていただけると嬉しいです。訂正できる範囲内であればすぐに訂正させていただきます。
昔と今どっちがおもしろいですか?
-
昔
-
今
-
昔も今も変わらず同じ