乃木園子は勇者である ~リベンジの章~   作:てんぱまん

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【第43話】All-out war

 

園子以外、全員勇者システムを起動させる。夏凜は一番最初に突っ込んで友奈に挑んだ。

 

「やあっ!!」

 

「あれ、意外。夏凜ちゃん私に剣を振れるんだ~。」

 

「鍛錬だと思って戦えばいいのよ!」

 

「鍛錬?そんな甘いものだと思って戦っちゃダメだよ!やっぱり半端な覚悟だね。...これは殺し合いなんだから。」

 

「...!!」

 

友奈が放つ異様な覇気に、夏凜は思わず退く。

 

「さあ、みんないっぺんにかかってきなよ。」

 

「...!...ふん...舐めてくれるじゃない...!」

 

「私たちだって、こうなった場合のこともちゃんと考えてきてるんですから...!」

 

樹はそう言うと、すぐさま指示を出す。

 

「みなさん!陣形を展開してください!」

 

そうするとそれぞれが動き始め、友奈を取り囲むように立った。

 

「行くわよ夏凜!友奈の姿だからって、びびるんじゃなわよ!」

 

「芽吹こそ!」

 

夏凜と芽吹はそう言い合い、芽吹は銃剣の剣部分を展開させる。それぞれ二刀流...二人で近距離戦に持ち込みにいく。

 

『たああああっーー!!』

 

「ふふっ......ふんっ!」

 

 

ガキン!バキン!ガン!ギン!キンキン!

 

 

拳と剣がぶつかり合い、激しい金属音が音を立てる。

 

 

カンカン!キキキキンッ!!

 

 

(まずは攻撃を当てて......)

 

(満開ゲージを減らす...!)

 

((そして、精霊のご加護を無くす!!))

 

「はあーーっ!!」

 

「やあーーっ!!」

 

「......。」

 

夏凜と芽吹は剣を振るのをやめないが、すべて防がれてしまっている。決して手を抜いているわけではない。この剣を振るスピードも、日々の鍛錬の成果で得たもの。簡単に防げるほど柔なものではない。...いや、不可能なはずなのだ。この斬撃を...二人がかりなら尚更。声を合わせずとも連携が取れているのに。本気になった二人の攻撃をこうも長い時間止められるなどありえない。

 

(なんなのこいつ...!まるで未来を読まれてるみたい...!)

 

(私たちの癖を、完璧に把握している...?)

 

「さすが、どの過去でも鍛錬ばっかりやっていた二人なだけはあるね。......けど、、」

 

友奈がそう言った瞬間、彼女は芽吹と夏凜の剣を見切り、同時に彼女たちの剣を握った。

 

『なっ...!?』

 

二人は声を揃えて驚く。掴まれた方の剣はまるでセメントで固められたかのようにびくともしない。すぐさま二人はもう片方の剣を友奈に振るった。

 

「...遅いよ。私に剣を掴まれて驚いてる時間が無駄。」

 

友奈はそう呟き、二人の剣が友奈に触れる前に二人まとめて回し蹴りをくらわせる。友奈の足は芽吹の腹部に食い込み、そのまま蹴り飛ばして夏凜も巻き添えにしながら遠くへ吹っ飛ばす。その威力は周りから見ても一目瞭然。凄まじいものだった。

 

「うげぇ......っ...!!」

 

「うぐっ......!」

 

 

ヒュッ.......ドーーン!!

 

 

飛ばされた二人は砂浜の周りにあった木に激突する。

 

「芽吹!夏凜!!」

 

風は二人の名前を叫ぶ。

 

「あ......わわわわわ......め、メブぅぅ~~!いやぁ~~~!!」

 

雀はすぐさま二人の元へ駆け寄っていった。

 

「大丈夫!?大丈夫!?二人とも大丈夫!?」

 

「ぐはっ......はぁ...はぁ......大丈夫よ...なんとか...。いっ......。」

 

「芽吹......あんたはもう無理よ...。」

 

「そうだよ!もう立たない方がいいよ!」

 

「いや...私はまだ......!こんな早く戦線離脱なんて...!」

 

「何言ってんのよ...!ちゃんと園子の計画聞いてた?この作戦は犠牲者を出さないことが第一!あとは私たちでやる!......あんた、自分でもわかってるんでしょ...?今の一撃で、あんたの内臓はやられた。立つのも苦しいくせに...!」

 

「......。」

 

「...だいたい、あんたは精霊のご加護がついてないんだから...。私たちを信じなさい。あとは任せて。あの悪いの神様をやっつけてくるから!」

 

「......。......ええ、ごめんなさい。夏凜の言うとおりにするわ。」

 

その言葉を聞いた夏凜はニコッと笑い、みんなの元へ戻っていった。

 

「夏凜ちゃんがんばって...!私は戦わないけど。......メブ、大丈夫?」

 

「極力動かないようにしとくわ。雀は園子と銀の側にいてあげなさい。...あの二人は、一番守らなくちゃいけないからね。」

 

「え、守る?私が?いや私は守ってもらう立場...。」

 

「いいから園子たちの側についてなさい!そこは後衛だし、戦わずに済むから!ね?」

 

「...ハ、ハイ。」

 

雀はどうにか納得して戻っていった。

 

--------------

 

「やあっ!たあっ!とりゃっ!」

 

夏凜と芽吹がふっ飛ばされた後、風がひとりで友奈の相手をしていた。シズクと夕美子は横で銃を構え、樹はかなり後ろの方でしゃがんで、砂浜に手を置いていた。その隣には東郷が立っている。ブン!ブン!と友奈に向かって大剣を振り回し続ける風。その攻撃を友奈はつまらなそうに避け続ける。

 

「隙が大きすぎますよ、風先輩。その大振りの攻撃が当たるとでも思います?...あくびがでちゃいますよ。」

 

「......さすがに私とあなたじゃ相性が悪いわよね...でも!」

 

「!!」

 

左右両方向から銃弾がとんでくる。友奈はそれを拳ではじいて右左を確認した。

 

「あんまり油断すんなよ、神様!!オレらもいるんだからな!」

 

「わたくしがあなたを仕留めれば、弥勒家再興は間違いなし!...バーテックスの親玉を倒したらきっと、乃木家よりも上に......!!」

 

「もー!びっくりしたよぉー!......この部外者が。量産型に興味はない。」

 

「その急に替わる表裏の人格、なんとかなんねェんか?」

 

「ソナタに言われたくないな。ソナタも二重人格者だろう。」

 

「チッ......。」

 

「ムキッー!量産型だからって舐めるんじゃないですわ!」

 

「事実、ソナタたちが我が領域の調査に来たときも大して注視しなかった。精神力の弱さと、単純な力が足りなかった。敵と呼べるには到底及ばなかったのだよ。...ソナタらなんぞ、虫けら同然だ。」

 

「そこまで言うのであれば、わたくしたちの力見せてさしあげますわ!」

 

「!...挑発に乗っちゃダメよ、弥勒!」

 

風の呼びかけにも答えず、夕美子は弾を三発放つ。だが...

 

 

カキン!キン!キンッ!

 

 

綺麗にすべて弾かれる。

 

「ええっ...!?」

 

「脳を狙うことくらい簡単に予測できるのだよ、量産型。」

 

友奈はそう言うと、虚空に向かってブン!と右拳を振る。そう、ただ空気中でパンチをしただけだ。近くに誰かがいるわけでもない。......しかし次の瞬間だった。

 

 

ボッゴン!!

 

 

「...!!」

 

夕美子の後ろにあった岩が粉々に砕け散った。先ほどの友奈のパンチは衝撃波を放ったのだった。夕美子にはわざと当てず、すぐ後ろの岩を砕いた。

 

「力の差がわかったか?これが勇者の力。我が作ったバーテックスに、対抗できる力だ。...立場をわきまえろ、量産型。」

 

夕美子はおそるおそる後ろを振り返り、粉々になった岩を見るとあっという間に顔が真っ青になった。そしてへなへなと腰の力が抜け、その場で座り込む。

 

「あ...ぁぁ......もう数センチズレてたら...わ、わ、わたくし...!ひぇぇぇ~....!!すびばぜんでちだぁぁ~!!」

 

夕美子は大粒の涙をこぼしながらまるでだだっ子のように泣き始める。

 

「あいつ...もう心が折れたのか...。」

 

シズクはそれを呆れながら見る。

 

「わかればよい。だが...生きては帰さんぞ。」

 

友奈は声を低くしてそう言うと、地面を蹴って腰が抜けた夕美子に急接近。そして拳を振り上げる。

 

「開戦の狼煙となれ。」 

 

 

バシッ!

 

 

その時だった。友奈の拳は夕美子めがけてとんでいったが、彼女の顔ギリギリのところでピタッと止まった。友奈は不思議そうにしながら自分の腕を見る。そこには鎖状になった刃物が腕に巻き付いていた。

 

「弥勒は...やらせねェよ!!」

 

「......ふん...また量産型か。この武器は...意外と万能なようだな。銃としての機能も、剣としての機能も、このように鎖状になる機能もついているのか。」

 

シズクは大物を釣るかのようにして銃剣を引き、友奈はそれに引っ張られる。

 

「オラぁっ!!」

 

そのまま地面に叩きつけるように動かし、銃剣を元のかたちに戻す。友奈は地面に激突し、大きな音を立てて砂埃を巻き起こした。

 

「よし......どうだ!量産型だってこんくらいのことはできんだよ!」

 

砂埃が晴れていき、やがて彼女の姿が現れる。大の字で地面に寝転がっており、そしてムクッと起き上がった。

 

「ふぅ...びっくりしたぁ...。」

 

「......まるで堪えてねェか...。」

 

「そんなにあの子が殺されたくないなら、君から殺してあげるよ。」

 

友奈はそう言ってシズクを睨みつける。だがシズクも負けていなかった。銃剣を二本取りだし、同じように睨みつける。

 

「上等だ。......やれるもんならやってみろ。」

 

両者同時に前に出てそれぞれの武器を振るう。しかし、剣と拳が触れ合った瞬間...

 

 

バキッ!バキン!!

 

 

「なっ...!」

 

拳が触れた瞬間に剣は折れてしまった。続いて連続でパンチを繰り出し、銃の本体も粉々に破壊されてしまう。

 

「武器が...こんないとも簡単に...!!」

 

「やわな武器だなぁ...。万能でも丈夫じゃなきゃ意味ないよ?」

 

やはり防人と勇者では天と地の差がある。友奈は丸腰になったシズクの首を掴み、そのまま体を持ち上げて首を絞める。

 

「あぐっ.........ぐっ.........!」

 

「量産型は雑魚だが、戦いの邪魔だ。」

 

シズクはジタバタ動いて抵抗するが、それは無駄な行動だった。

 

「シズクを放しなさい!」

 

風は大剣を振るって救出を試みるが、

 

「無駄に剣を振ったら、その大きすぎる剣...シズクちゃんに当たっちゃいますよ?...風先輩♪」

 

「...!!卑怯よあんた!!」

 

シズクを盾にしながら、友奈は一気にトドメを刺そうとする。しかし、

 

 

ザシュッ!

 

 

突如、背中に攻撃を食らう。その衝撃でシズクを放してしまい、ふらつきながらもすぐに警戒して構えた。背後にいたのは...

 

「ふぅ...危なかったわね、シズク。大丈夫?」

 

「ゲホッ!ゴホッ!......はぁ...はぁ...助かったぜ三好...。」

 

「夏凜ちゃんか...いつの間に...。おかげで満開ゲージが減っちゃったよ。」

 

友奈は腕の満開ゲージを見ながらそう言う。

 

「私は...もう容赦しないわ!あんたは私たちが倒す!」

 

夏凜は剣を友奈に向ける。

 

「どうやら...あんまり遊んでいられないみたいだね。」

 

「風...前衛は私たちでいくわよ。」

 

「ええ。...弥勒とシズクは後ろからサポートして。」

 

「...ああ。」

 

「が、がんばりますわ...!」

 

両者睨み合い、やがて友奈は手招きしながらこう言った。

 

「......いつでも来なよ。」

 

それを聞いた二人は、まず風が大きく振りかぶり大剣を上から下に振り下ろす。友奈はそれを跳んで避け、逃がすまいと夏凜も跳んで空中で剣を振るう。

 

「その体は友奈のものよ!あんたに扱えるものじゃない!早く返しなさいよ!!」

 

「夏凜ちゃん、そんなことしたら神様の魂はどうするの?還る体がなかったらその魂は永遠とこの世をさまよい続ける。...そんなの嫌でしょ?」

 

 

キィィンッ!!!

 

 

辺りに響きわたるほどの金属音が鳴り響く。剣と拳が強くぶつかり合い、その衝撃で両者共々後ろに下がる。

 

「知ったこっちゃないわよそんなこと!!私たち人間にとって...あんたは敵!300年前にたくさんの人たちの命を奪い、友奈を祟りで苦しめて今は体を乗っ取ってる...そして何度も園子を諦めさせようとして周りの人間を殺した...。そんなヤツ、救うわけないでしょ!!」

 

「全く...夏凜ちゃんはひどいね。」

 

「どの口が言ってんのよ!!」

 

夏凜は再び地面を蹴り、友奈に立ち向かう。

 

 

キンキン!キキキキンッ!!

 

 

「もう夏凜ちゃんには飽きたよ。そろそろ終わらせよう。」

 

「そうね。私も飽きてきたわ!」

 

「...!」

 

「今よ風!」

 

夏凜は突如しゃがみこむと、その後ろから大剣を振りかぶった風が姿を現せる。

 

「くらえっ!!」

 

「くっ...!」

 

友奈も同様にしゃがんでかわすが、ちょうどしゃがんだ目線の位置に夏凜の顔があった。

 

「やっぱりしゃがんで避けるわよね。...たあっ!!」

 

夏凜は剣で突き、友奈はすぐさま腕を交差させて防ぐ。

 

「これでがら空きよ、風!はずすんじゃないわよ!!」

 

「もちろんよ!!」

 

「!!......しまった...!」

 

両腕を夏凜の攻撃の防御に使った友奈は、風の次なる攻撃を避けることは不可能だった。

 

「今度こそくらいなさい!私の女子力!!」

 

振り上げられた大剣は薪を割るようにして攻撃をくらわせる。ようやく風の強烈な一撃がヒットしたのだ。

 

「うぐっ......」

 

勇者バリアがあるといっても、さすがにこれは堪えたようで友奈は少しふらつく。

 

「今ので結構削れたわ!ナイス風!」

 

「夏凜も!ナイスファインプレーだったわ!」

 

二人は笑顔でハイタッチを交わす。

 

「お二人ともお気をつけて!......なんだか様子がおかしいですわ...。」

 

『...!』

 

「人間のくせに...人間のくせに......神にここまでのことをしておいて許されると思っているのか...?」

 

「ヤバい...ついに怒っちゃった...!?」

 

風と夏凜は身構え、いつ攻撃が来ても防げるように体勢をつくる。

 

「ふっ..................ふふふ......あははははははは!」

 

『!?』

 

「ふははははははは!あっーはっはっはっはっはっはっ!!!きゃはははははははは!!!」

 

友奈は顔を両手で抑えながら突然笑い始めた。その姿はまさに狂喜。ここにいる全員が困惑しながら友奈をじっと見ていた。

 

「なーんてね!ほんとにほんっとうにおもしろいよみんな!!ガチになって私を倒そうとしてるのが伝わってくる!よく考えたんだねみんな。......そうだよ、それくらい抵抗してくれなきゃおもしろくない。もっともっと戦おう!!」

 

『......。』

 

一同は呆然とし、その場で立ち尽くす。

 

「この状況になってもあの余裕か...。どこまでイカレてるのかしら...。」

 

「こっちが優勢のはずなのにおかしいわねぇ。」

 

目の前の人間の形をした悪魔を前にして夏凜と風は震え上がる。だがそれは諦めたわけではない。まだ勝てる自信が、二人にはある。

 

「とりゃあっーーー!!」

 

次は友奈から仕掛けてきて夏凜と風に拳を振るう。

 

 

バキン!ボキン!

 

 

「はあ!?」

 

友奈の一振りパンチで夏凜の剣が折れる。

 

「こいつ...まだ力隠してるわ!」

 

夕美子とシズクの援護のおかけまでダメージは負わずに済んだ。夏凜はすぐさま剣を取り出して構える。

すると今度は風に近づき、大剣を掴んで無理やり武器をぶんどった。

 

「えっ...!」

 

「ちょっと借ります風先輩。...これ、一回使ってみたかったんです~!」

 

友奈はそう言い、ブンブンと大剣を振り回す。

 

「さて、これを全力で振り下ろしたら人間はどうなっちゃうのかな!!」

 

「...!!」

 

風は必死になって横に跳んでかわす。避けられて地面に刺さった大剣は砂浜であるにも関わらず、地割れを起こした。

 

 

ズズズズズ......ゴゴーーン......!!!

 

 

「うわぁっ...すごい威力...!」

 

大地が揺れ、全員が全員バランスを崩す。

 

「おおっ♪やっぱりすごい力!」

 

「いつまで遊んでるつもりよ、天の神!」

 

その隙に夏凜が友奈をふっ飛ばし、

 

「シズク!夕美子!今!!」

 

「了解ですわ!」

 

「任せとけ!」

 

夏凜の合図でまた銃剣を鎖状にしてそれを友奈の胴体に巻きつける。そして、

 

『とりゃあああああああっ!!!』

 

まるで背負い投げをするかのような動きで思いきり引っ張り、地面に叩きつけた。

 

「二人ともナイスだわ...!よし、あそこまであともうちょっと...。あっ...」

 

友奈はすぐに立ち上がり、絡みついている銃剣をチョップで断ち切る。

 

「何回同じこと続ける気?」

 

「シズク!夕美子!下がって!!」

 

夏凜は攻める姿勢をやめず、絶えず友奈に挑む。

 

「夏凜ちゃんと戦うのはもう飽きたって。」

 

友奈はそう呟き、彼女の剣裁きを簡単に振り払ってしまった。

 

「なっ...!?」

 

夏凜に大きな隙ができてしまう。友奈はもうすでに拳を振り上げており、絶対絶命だ。だがそこに、

 

「やあっーー!!」

 

 

キンッ!

 

 

「うっ...!?......なんでっ...!?さっき確かに内臓を...!」

 

芽吹がかけつけて友奈を横に飛ばした。

 

「芽吹...!あんた...!」

 

「大丈夫夏凜?」

 

「そ、それはこっちのセリフよ!動いて大丈夫なの...?」

 

「ええ。どうやら当たりどころがよかったみたいで、ちょっと傷つけただけらしいわ。......ほら、そんなことよりもあれ見なさい。」

 

芽吹はそう言い、友奈の立っているところを指差す。

 

「目標のところへ移動させることができたわ!」

 

それを確認した風はすぐに叫んだ。

 

「樹!!今っ!!!」

 

樹はその合図を聞き、待っていましたと言わんばかりに...

 

「え~~~いっ!!!」

 

と言って、地面に置いていた手を思い切り振り上げた。するとなんということだろう。友奈の周りの地面から砂埃を上げながら樹のワイヤーが数本、取り囲むように姿を現した。

 

「何っ...!?」

 

「私が今まで戦わなかったのは、この罠を仕掛けていたからです!この柔らかい砂浜の特徴を利用して...糸を地面に張り巡らせ、あなたを捉える罠を!」

 

樹は地面の中に少しずつワイヤーを伸ばしていたのだ。これもすべて園子の考えた作戦。ここで友奈自身に彼女の正体を明かした理由も、この考えがあってのことだった。罠を張るポイントをあらかじめ決め、友奈をそこに誘導するようにして全員戦っていたのだ。彼女を捉え、一気に精霊のご加護を消すために。

作戦通り友奈は罠にかかり、樹のワイヤーに縛られて身動きが取れなくなる。

 

「うぐっ...くっ......クソっ...!」

 

「よし!ナイス樹っー!」

 

風は両手をあげて喜ぶ。だが安心して喜んでもいられない。

 

「夏凜さん!芽吹さん!今です!」

 

樹はすぐさま指示を出す。夏凜と芽吹は友奈に向かって走り出し、高く跳んで剣を構える。

 

(この一撃にすべてをこめて...!)

 

(私の全力を...これに全部!!)

 

『やああああああっーーーー!!!!』

 

二人は遠心力を用い、回転しながら友奈に渾身の一撃をくらわせる。同時にくらわせたその攻撃は、精霊バリアとぶつかり合って激しい火花をあげる。

 

 

 

ギギギギギギギギギギギギギギギギッ!!!ガキンッ!!!!!

 

 

「ぬぅ...!!」

 

『ふぅんっ!!!』

 

そのまま最後まで切りぬける。

 

「はぁ...はぁ......どうだっー!!」

 

「くっ...!」

 

友奈は悔しそうに自分の満開ゲージを見る。もう半分は減っていた。

 

「次に東郷さん!お願いします!」

 

続いて隣で銃をじっと構えている東郷に、樹は指示を出す。だが...

 

「駄目......。」

 

「え...?」

 

「やっぱり私...友奈ちゃんを撃つなんてことできない...!」

 

東郷の持つ銃は小刻みに震えていた。それを見た友奈はニッコリと笑い、

 

「......やっぱり、私の味方は東郷さんだけだよ。」

 

「...!...友奈ちゃん...!」

 

「やっぱり東郷にはキツいか...!芽吹!もう一回私たちで......」

 

 

ドサッ

 

 

「?...芽吹...?」

 

「ゲホッ...ゴハッ......!」

 

「芽吹!!」

 

芽吹は手を地面につき、血を吐いていた。カシャカシャと音を立てながら手に持っていた銃剣が転がり、咳をするたびに吐血している。

 

「ごほっ......はぁ......ごほっ...がはっ...!」

 

「芽吹...やっぱりあんた...!」

 

「やはりな...。」

 

いつの間にか友奈は目を細めてこちらを見ていた。

 

「変だと思った。間違いなく内臓をズタズタに破壊してやったのに立ち向かって来れるなど...。信じられなかった。その状態で立つことさえも難しいはずだが...相当無理をしたな、楠芽吹。」

 

「何してんのよあんた...!わかってたんでしょ?自分でも、戦えない状態なのは!休んでなさいって...言ったじゃない!」

 

「はぁ...はぁ......夏凜一人じゃ...やっぱり心配だからね...。げほっ...あがっ......。」

 

「......!」

 

「はぁ...ふぅ...実際、あなた一人じゃ危なかったじゃない。...ほら、私がいなかったらあそこまで満開ゲージを減らせていないわよ?」

 

「そんなの...そんなの私ひとりだって......できたもん!」

 

「はぁ...はぁ......本当、あなたは強がりなところだけは...変わらないわね...。............ゲホッ...ごはあっ...!!」

 

芽吹は突然先ほどまでよりも多い血の量を吐き出し、倒れてしまった。

 

「...!!......芽吹...!」

 

「全く...ソナタの言うとおり、あのままじっとしておけばなぁ。あんなに動いたのだ。傷口が広がってそうなるのは当然。早く病院に連れて行かないと......だな。」

 

「くぅっ...!!」

 

夏凜は歯をギリギリと噛み締め、友奈を強く睨む。

 

「おおっ、こわいこわい。人間のおなごは可愛らしく振る舞うのが正しいのだろう?そんな顔をするな。」

 

「それ以上...友奈の声で喋るな......。」

 

「......おお?」

 

剣を取り出し、ゆっくりと友奈の方へ歩いていく。

 

「ズタズタに切り刻んでやる...。私の目の前から消えるまで......小さく小さく...ボロボロのグチャグチャに......切り裂いてやる...!!」

 

「夏凜...!ちょっと落ち着きなさい!」

 

風は夏凜にそう呼びかけるが彼女にはまるで聞こえていない。

 

「ま、私もこのままの状態はピンチだし...ここはこの手を使わせてもらうよ。」

 

友奈はそう言い、さっきのようにパチンと指を鳴らす。

 

 

バシャバシャバシャーン!!

 

 

『.........え...?』

 

次の瞬間、海から現れたのは大量の星屑だった。最初の時は一体だったのに、今度は数十匹はいる。

 

「なによ...!こんなに大量のバーテックスを、一度に出せるわけ...!?」

 

「これは...結構ヤバそうじゃねェか...!!」

 

「ひゃああああああ~~~!!なんですのこの数は~!!」

 

全員海の方向を向いて構える。

 

「.....やれ。」

 

友奈の合図で一斉に襲いかかってきた。...だがその大群は風たちをスルーして奥へ進んで行く。

 

「え...!?」

 

「チッ...どういうことだよ...!?」

 

「ほっ...よかったですわぁぁ~......。」

 

「さて、安心してる場合かね?早くしないと......星屑たちが町にたどり着いてしまうぞ。」

 

『!!!』

 

「ふっ...ソナタたちっき言っていたなぁ?なぜ結界内にバーテックスがいるのに樹海化が起こらないのか。...これまで我は散々試してきて発見したのだ。神樹は結界の外からバーテックスが入ってきたとき、すぐに感知して樹海化を発生することができるが......結界内でバーテックスが生み出された場合は、感知が遅れるのだ。もちろんそうだろうなぁ。自分の内側に外敵が発生するなど通常ではありえない事象だからなぁ。困惑もするに決まっているだろう。...今まで調べてきた結果から考えて...だいたい数十秒は結界内で活動可能だ。それ以上居座ると樹海化が発生してしまう。」

 

今から追っても全て倒せる確率は五分五分といったところか。風たちはそれでも追おうとする。が、

 

「.....たあっ!!」

 

バーテックスの行く手を阻むようにしてネットのようなものが横一面に立ちふさがり、星屑はそれに絡まって捕まった。

 

「これは...樹の...!?」

 

「ごめんなさいみなさん...友奈さんの拘束を解いてしまいました...。でも、こうするかないと思ったんです...!」

 

星屑を止めたのは樹のワイヤーだった。友奈を捕らえていたワイヤーを解き、すぐさま網状に展開させて横に伸ばしたのだ。

 

「...正しい判断なんよ、いっつん。」

 

園子は小さくそう呟く。

 

「まとめて......ええ~~~いっ!!!」

 

樹は手を思い切り振って腕を交差させる。そうすると、ネットに引っかかっていた星屑たちは一斉にバラバラになる。これで三分の一以上は減っただろう。

 

「ふ~ん、樹ちゃんやってくれるじゃん。...でも、まだいるよ?」

 

「このくらいの数なら...私たちであっという間に倒せます!」

 

樹はそう言って海の近くで倒れている芽吹をワイヤーに絡めて自らの側に持ってくる。

 

「芽吹さんだって死なせません!」

 

「精霊のご加護がない量産型を...守りながら戦えるかな?」

 

すでに周りは星屑との戦闘を開始している。樹は一度友奈を強く見るが、次から次に向かってくる星屑との戦闘を余儀なくされる。

そうなったおかげで、園子たちと友奈の間に一本の直線的な道が開かれる。

 

「ようやく...だね。......乃木の末裔よ。」

 

園子はさりげなく一歩前へ出る。

 

「やっぱり私と戦ってたときは本気出してなかったんだね。動きがまるで違う。...私だったら、にぼっしーとメブーの攻撃を同時に受け流し続けるなんて到底できないもの。」

 

「さあ、どうだろうな。まだ本領発揮していないかもしれぬぞ?」

 

友奈は自らが作り出した一本道を歩み始める。

 

「どどどどどどどどうしよう!?こっち来ちゃった!来ちゃったよぉ!?あんな強いヤツ私たちだけでどうしろってんのさ!!」

 

「落ち着け雀。...戦う手段がない私たちには、どうすることもできないよ...。」

 

銀は残念そうにしながらそう言う。一方園子は勇者システムを起動させて二人の前に立つ。

 

「私だけで戦う。...なんとしてでも二人には手出しさせないから。全力を尽くす。」

 

「そんなぁっ!?園子ちゃんひとりで戦うつもり!?無茶だよ!!ここは一旦逃げてみんながバーテックス倒すのを待った方が...」

 

「戦う場所を変えることはできない。誰かにバレちゃうかもだし、無理だよ。」

 

「じゃあ.........園子ちゃんひとりでなんとかして耐えなくちゃいけないの...?」

 

「......うん。」

 

雀の盾も勇者の力を持つ天の神が全力で殴れば簡単に破壊されてしまうだろう。銀はそもそも、夏凜に勇者システムを継承してしまったため変身すらできない。ろくに戦えるのはやはり園子だけだ。園子も友奈同様に歩み始めようとする。が、

 

 

パシっ

 

 

「...!」

 

歩き始めた園子の腕を、いきなり銀が掴んで止めた。そして彼女は静かに言った。

 

「......気をつけろよ、園子。」

 

「......!...うん!大丈夫...!」

 

伝えたかったことを伝えられた銀は名残惜しそうにして園子の腕をゆっくり離す。銀はとても不安だった。

 

「ここまでも作戦通りか?乃木の末裔。」

 

「う~ん...ちょっと狂ってる部分もあるけどまだ問題ないよ。」

 

「ほう?ではまだ勝機があると?」

 

「さあ?...わからないね。あなたの底が見えない限り。」

 

友奈と園子は一定の距離まで近づくと、互いに睨み合って立ち止まる。彼女たちの周りではバーテックスと人間との戦いが繰り広げられている。倒しきるのにまだ少し時間が必要のようだ。

やがて友奈と園子はほぼ同時のタイミングで地面を蹴り、それぞれの武器を交わらせ、交わる度に激しい金属音と火花を散らす。

 

「今こそ決着をつけよう!300年越しの直接対決といこうではないか!!」

 

「悪いけど、勝つのは私たち人間だよ!!」

 

(第44話に続く)

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