「あなたと戦うの、ちょっと楽しみにしてたんだ。」
「後悔すんなよ?...あたしにこれを渡したこと。」
「...本当の未来なら、こんなこともありえなかったから。そうだよねぇ?そのちゃん♪」
「......!」
「あっ、そうだぁ。そのちゃんたちは見てないんだよね?いや...誰も見てないはずだ。......銀ちゃんの最期。」
「......えっ...!?」
「...やっぱり興味ある?私は見てたんだよ。銀ちゃんがひとりで、三体のバーテックスに挑むところ。私は神様だからね。空から様子を観戦してたんだ。」
「三体同時に来たときか?それならあたしら三人で倒したぞ!」
「違う違う。それはそのちゃんがタイムリープして過去を変えたときの歴史。...ああ、もう。過去を変えられるとややこしくなるから嫌だよ。」
友奈はそう言うと、頬に手を添えながら話し始めた。銀は友奈に向けていた剣を下げる。
「我はあのとき...三体同時にバーテックスを送り込んだ。ソナタたちの連携もマシになってきたし、ちょっとした試練程度にな。それにおまけとして我が作り出した十二星座バーテックスの中でも、トップクラスの連携を誇る三体を行かせてやった。...それまでソナタらのお役目はうまくいっていたし、調子に乗っていたからだ。ソナタたちの絆とやらと、我の隷の連携...どちらがまさっているか知らしめるために。」
「...!!」
「......。」
「序盤の結果は想像通りだった。サジタリウスの矢の雨と、その矢をも諸ともしないスコーピオンの毒の尾...そして矢を反射させ、死角を狙うことが可能なキャンサー。ソナタたちは防御に精一杯だったがやがて - - - 二人が脱落した。」
そこでポツリポツリと雨が降り始める。
「だが、それでも、たったひとりになってしまった『勇者』は立ち上がった。この三体に立ち向かった。...正直我は驚いたよ。こんなタフな人間はこの300年間でも類を見なかった。最終的に三ノ輪銀...ソナタは相討ちにまで持ち込んだ。」
すると友奈は両手をバッと大きく広げ、雨が降っていることも構わず、空を仰いで狂喜じみた声で続ける。
「そのとき、我は初めて人間に感動したよ!!まさかあの三体を倒し、神樹を守り抜くことができようとは!!...ソナタを見て少し見直した。いやぁ...本当に驚いたなぁ。......本当に...あそこでソナタが死んでくれてよかった。」
「......。」
「その後まで生きていたら...我にとって脅威になっていたかもしれん。いや......ソナタ、何度か勇者たちを助けていたな?我に刃向かう勇者たちに、ソナタの面影を見た気がする。...どっちにしろ、我が今この姿になってしまっているのは、三ノ輪銀...ソナタのせいでもある。」
「は?何言ってんだお前!あたしはこうして生きてるだろ!」
「だからそれは今の話だろう。...まあ、死んでもなお勇者たちを助けるのは理解できなくもない。あのような死に方をしたら...当然この世に未練が残るに決まっている。」
「...あの時のこと...思い出させないでよ...!」
園子は語気を強めて友奈に言う。
「...。気になるのではないのか?彼女の最期。ソナタたち二人は看取ってやることもできなかったからなぁ。...二人を安全な場所に避難させた後、我の隷に立ち向かった勇者は...体中に傷を負いながらも戦い続けた。ダメージを受けているとは思えないほどの動きで翻弄し...自分の武器である大きな斧を振り続けた。サジタリウスの矢で全身穴だらけにされ...片腕も貫かれた。それでも斧を振り続けた。...だがそのうち、その負荷に耐えられなくなった右腕は千切れ......。あの時のとても痛そうな叫び声は今でも覚えている...樹海中に響いていたな。」
「......!」
「それでも恐ろしいことに、彼女は戦い続けた。三体を無事倒した後、そのまま地面に立ったまま動かなくなった。...立ちっぱなしで死ぬヤツがいるか、と我は思ったなぁ。最初は死んだことにも気づかなかった。武器も持ったままだったし、あまりにも突然すぎたからな。それくらい自然に、ソナタは逝ったのだ。」
「...それがどうした。」
「?」
銀はまるで特に何も思っていない感じで話す。
「その話は別の過去の話だろ?この未来の話じゃない...だってあたしは今こうして、ピンピンしてるからなぁ!」
「つまり...何が言いたい?」
「かの神様であろうお方が、存在しない過去を語るのかってことだよ...!」
「...なっ、なんだとぉっ...!!」
「存在しないってことはだな、もうそのことはお前が勝手に作った作り話にすぎないってことだ!そんな話をされたところで『はい、そーですか』ってなるだけだろ!漫画とかドラマとかでよく言うフィクションと一緒だ!」
「ミノさん...!」
「......だから園子、気にすんな。あいつはお前の気持ちを惑わせたいだけだ。」
「...口を慎めよ人間...!」
「お?怒っちゃったか?」
「人間ごときが...神に説教などするなぁっー!!」
「へっ、セリフが典型的な悪役だな。」
銀は剣を構えると、園子に言った。
「行け園子!過去に戻って、もっかいやり直すんだ!!」
「......!うん、わかった!ありがとうミノさん...!」
園子も勇者システムを起動し、横から回り込むようにして鉄男の元へ急ぐ。しかし、
「......。」
「?...この距離じゃ園子すぐたどり着いちゃうぞ?止めないのか?」
友奈は園子が動き始めても何も動かなかった。
「...ああ、これでいいのだ。我は...ソナタとの戦闘を楽しむ。」
「そうかい...。それなら、こっちの都合もいいっ!!」
友奈と銀は同時に地面を蹴り、両拳と二本の刀が交わる。
ガキーンッ!!
その際、周囲に火花が飛び散り、額が触れそうなほど両者顔を近づける。
「ずっとソナタと戦いと思っていた!我の隷を三体とも倒したソナタと!どれほどの実力なのか、この手で確かめたかった!」
ギィィィンッ!!!
剣と拳が弾き合い、その勢いで二人は後退する。
「ふーん、あたしに期待してくれてんだな。」
「そうだ。楽しませてくれよ?」
また同時に二人は動き、剣と拳が激しくぶつかり合う。二人の間合いに入れば一瞬で粉々に消え去ってしまうだろう。それくらいの迫力だった。素早い突き、振り...両者の実力は拮抗している。
「やはりすばらしい...!二年も前線から離れていたとは思えない剣技!三好夏凜と楠芽吹よりもずっと上だ!」
「それはさすがに...誉めすぎだっ!」
銀は剣を二振りした後、友奈の拳の突きを三発、驚異のフィジカルですべて交わし、後ろに大きく跳ぶ。そして...
「これならどうだっ...!」
イネスの壁に着地し、足をバネに模して使い、そのまま勢いよく蹴ってロケットのごとく友奈に突っ込む。
(早い...!)
友奈は横に動いてそれを間一髪で避けるが、
「まだまだっ!」
銀は地面に手を突いて側転からの爆転。今度は街路樹に着地してまた突っ込む。
「!!!」
友奈はまたギリギリでかわす。だが、
「まだだ!お前はいつまで耐えられるかな!?」
今度は電柱、その次は街頭、その次はまたイネスの壁...銀は周りの地形を利用して友奈を翻弄する。むしろ銀は地面に接している時間の方が短かった。周りの側面にばかり着地し、蹴っては攻撃、蹴っては攻撃の繰り返し。
「ぬうっ...!ソナタ...その身のこなし、勇者と言うより忍だな...!やはり圧倒的戦闘センスだ!」
やがて銀は攻撃をやめる。足でブレーキをかけながら勢いを殺し、ようやく地面に立って止まった。
「はぁ...はぁ...さすがにこれだけ激しく動くと結構疲れるもんだな、勇者の姿でも。」
攻撃がやみ、そこで友奈は初めて気づく。自分の体のいたる所に切り傷があることに。
「...!...これほどくらっていたとはな...。すべて避けきれていたと思ったのに...。」
友奈は頬から垂れている血を親指で拭い、ペロッと舐めた。
「...お前......余裕で夏凜たちを倒してきたとか言ってたけど...あれ、嘘だろ?」
「......。なぜそう思う?」
「確かにお前がここに来るのは早かった。...けど動きがさっき観戦してたときと比べて鈍い。相当体力を使ったな...?だいぶ手こずったろ!」
「......。」
「だからあたしの攻撃が、夏凜と芽吹よりも鋭く見えるんだ。そしてなによりも...その脚の傷が証拠だ...!」
銀は友奈の左股を指差す。そこには深めのケガがあった。先ほど銀がつけた傷ではない。...友奈はここに来る前にダメージを負っていた。
「.........見事だ、三ノ輪銀。さすが...我が見込んだだけのことはある。」
「......戦えば誰でもわかるさ、そんなこと...!」
「だが、それ抜きでもソナタは強い。その武器だって...これまでで一回しか使っていないのではないか?」
「あぁ、そうだな。...でもいいのか?神様よ。園子のヤツ、もう着いたみたいだぞ。」
銀は友奈のかなり後ろにある街頭を見ていた。そこに鉄男はくくりつけられており、もう園子が側に立っていた。
「......そのようだな。別に構わない。元からそうするつもりだった。」
「...?」
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銀が友奈と応戦中 園子側
「全然追っかけて来ない...。確かにミノさんの攻撃はすごいけど...無視して追いかけるくらいはできるはず...。もうてっちゃんはすぐ側だよ...?」
さすがに怪しいと思った園子は街頭の少し前で立ち止まり、周囲を見渡した。
(もしかして...なにか罠がある...?それとも...このてっちゃん自体が罠...?)
しかし特に気になるような物はない。園子は一度友奈と銀の方を見る。二人の戦闘は一段落済んだのか、睨み合って何やら会話しているようだった。こちらにまるで意識がなかったので、鉄男に近づいた。
「てっちゃん大丈夫!?今ほどいてあげるからね!」
園子はそう言いながら腕を後ろに回され、紐でくくりつけられている彼を助けるためほどこうとする。
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その頃 友奈&銀側
「どういうことだ...?『そうするつもりだった』って......。」
「そのままの意味さ。......ほら、そろそろ聞こえてくるはずた。」
「み、ミノさん......ミノさんっ!!!」
「!?......どうした園子!!」
「てっちゃんが...てっちゃんの手が.........っ」
「?...鉄男の手がどうした!!」
「............な、ないの......。」
「......は...?」
「ないの...。...両腕とも...手首から下が......切断されててないんだよ...っ!!!」
「!!!!.........な、なんだよそれ...。」
「フフフ......あっーはははははははははっ!はははははははははっ!きゃはははははははははははは!!!」
園子のその報告を聞いた途端、友奈は突然狂ったように笑い始める。小ぶりだった雨がさらに強くなり、嵐のようになった天候が三人をビショビショに濡らす。友奈は両手で顔を抑え、よろめくようにしながらずっと爆笑している。笑いすぎて平衡感覚が保てていないのだ。
「その反応!それを見たかったぁっ...!!ほんと、良い反応するねぇキミたち!一気に絶望したろう!?血の気が引いたろう!?これでもう過去に戻れない!仲間もほとんど失った!キミたちは詰んだんだよっ!!アハハハハハハハッ!!ヒャハハハハハハハハッ!!ヒハハハハハハハハハッ!!」
そう言うとクルクル回り始め、大雨の中イカれ狂った舞をする。雨を飲んでいると思うほど天を仰ぎ、笑い続ける。その姿はまさに『狂気』であった。
「三ノ輪鉄男の手ならここにある!」
友奈はそう言うと、どこからか人間の両手が出てきた。園子と銀はそれを見た瞬間、顔面蒼白になった。友奈はそれを銀の前に投げ捨て、
「そのスマホについていた血は、三好夏凜のではない!三ノ輪鉄男の血だ!同じところに入れてたからなぁ、血が着いてしまったんだよぉっ...!あははははははははっ!」
「.........。」
銀はそれから凛々しい顔になった。それはなんとも言えない表情。いろいろな感情が混ざっているようで混ざっていないようにも見える。園子でも彼女の心情を読み取ることはできなかった。やがて雨によって濡れた前髪が彼女の顔を覆い隠す。
「あっ、そうそう!ソナタの家族だけどな、三ノ輪鉄男以外は全員バーテックスの口の中だ!一口で食い終わってしまったがおいしそうに食べていたぞぉ...。よかったなぁ!これでソナタの家族も神の一部だ!もっとも、その家族は聞きたくもないような悲鳴をあげながら食べられていたがな!!あれは傑作だった!!ははははははははははっ!!」
すると次には、前髪の僅かな隙間から友奈を睨む目がチラッと見える。その瞬間銀は剣を強く握り、地面を蹴った。
「...よし来るか。来い!」
友奈はファイティングポーズを取り、真正面から突っ込んでくる銀を迎い撃とうとする。
グサッ
「うっ......あ......?」
だがその時、背中から鈍い音が鳴った。直にそこからじわじわと痛みが広がり、だんだん力が抜けていく。
「なっ......ソナタ......!!」
友奈は背中から刺されていた。腎臓辺りを一突き。もちろん正面から向かってきた銀では不可能だ。......その一突きは園子によるものだった。彼女の槍が刺さっていた。友奈は吐血し、視界が徐々に霞んでいく。
「......ぐうっ...よくもぉ...!!」
園子は槍を抜き、そのまま倒れた友奈に馬乗りになる。
「ソナタ...その行動が何を意味するのかわかっているのか...?これは結城友奈の体...!そのまま我を殺せばこの女の命もなくなる...!それでよいのか...!?」
その質問に園子は答えなかった。無視したのだ。銀と同様に、園子も怒りの頂点に達していた。冷静な判断などろくにできない状態。そして園子は槍を大きく持ち上げ、刃先を友奈に向けて告げる。
「.........死んで。」
(第47話に続く)
天の神憑依の友奈は僕が思う最高のサイコパスになるように書いています。
次回もお楽しみください。