ドガッ...ドガッ...ドガッ......
(なんだろう...この音...。)
ドガッ...ドガッ...ドガッ......
(私...何してたんだっけ...。あれ、体...動かない...。)
ドガッ...ドガッ...ドガッ......
やがて妙な音に混じって雨の音も聞こえてきた。暗く、曇った空の下。瓦礫の中で園子は目を覚ます。
(そうだ...私、火球を体で受け止めて.........あっ...。)
園子はそこで自分の体の状態に気づく。
(すごい血...。これ自分の?こんなにでてたら、動けないのも当たり前か...。)
園子は爆発の影響で左腕と右足が吹き飛び、欠損していた。それだけではない。脇腹からは血が漏れ、吐血も激しくしたようだ。
(これ、私死ぬなぁ...今は感覚が麻痺してるんだろうね...痛みは感じない。けどわかる......もう私は...手遅れだ。)
ドガッ...ドガッ...ドガッ......
奇妙な音はまだ聞こえてくる。
(!...そうだ...ミノさんは...!?天の神は...どうなった...?)
残っている右目だけをギョロっと動かして奇妙な音のする方を見た。......その方向を見たとき、園子は言葉を失った。
(......!!!!)
ドガッ...ドガッ...ドガッ......
誰かが誰かに馬乗りになってずっと殴り続けている。一定の速度で、やめる気配もなく。奇妙な音の正体は人間を殴る音だった。園子は力を振り絞って無理やり体を動かした。右腕付近に落ちていた槍を拾い、それを杖代わりにして片方だけになった足でプルプル震えながらもやっとのことで立ち上がった。そこで園子はようやく全体像を見ることができる。
(......あ......)
殴っていたのは友奈で、殴られていたのは銀だった。友奈の顔についているのは返り血だろうか、友奈も真っ赤に染まっていた。
「.........あ...あぁ.........あ......!」
園子はゆっくり、一歩ずつ彼女たちに近づく。
「ん...?...。生きていたのか乃木の末裔。そのまま横たわって死を待っていればよかったものを。」
「...ぅ...ぅぅうああああああっ!!!」
園子は左足のみで踏ん張って友奈に槍を振るう。だが友奈は軽く後ろに飛んで避ける。
「あぁ......ミノさん...!」
園子は銀の近くに崩れるようにして座り、彼女の顔を優しく包んで持ち上げた。
「園...子......?ほら、やっぱり生きてた...。」
「み、ミノさん...私......」
銀の顔は大きく腫れ上がり、右腕の骨は折れ、体は雨に濡れて冷え切っていた。
「ごめんな...園子......あたし、勝てなかった...あいつ...アホみたいに強い...強すぎる......。」
「謝るのは私の方だよ...ミノさんがこんなになるまでずっと眠ってたなんて...!」
「......。......園子、あたしのお願い聞いてくれるか...?」
「!......な、なに...?」
「あたし、すっごく悔しい...。自分が無力すぎて...なんにもできなかった...。こんなに友達が、家族が殺されたのに...大切な宝物が奪われたのに......あたしは、なんにも...。」
銀の涙は雨に混ざりながら頬を伝う。
「だから園子、頼む...!!......勇者部の...防人たちの...あたしの家族の...イネスにいた人たちの...300年前、あいつに殺された世界中の人たちと、その時代の勇者の...かたきをとってくれぇっ...!」
「......!!」
「園子なら......きっと............。」
銀はそれから目を閉じ、がくっと首が落ちた。その時にはすでに銀の体温はほとんど感じなくなっていた。
「...別れは済んだか?終わるまでわざわざ待ってやったんだ。...それにしても、そいつは結構粘っていたぞ。根性だとか、気合いだとか、魂だとかなんとか叫んでいたが...結局そんなものはただ『がむしゃら』になっていただけなのだよ。人間は『心』...精神力こそが動く源だ。普段はできることも、自身をなくせばできなくなることがある。逆に気分が高ぶれば、普段はできなかったこともできるときがある。......今のソナタはどうだ?」
「......。」
園子はひどくうなだれ、肩をがくりと落としたまま銀の顔を見ていた。
(返答する気力はもうないか...。)
ようやく終わった、と天の神は安堵する。すると園子は銀を優しく地面に置いてふらつきながらも再び槍を杖代わりにして立ち上がった。
「全く、本当に手を煩わせてくれたな。さすがの我でも骨が折れる。だが、戦闘に関してはかなり楽しめたぞ。ところどころ言葉で突っかかってくるのが気に障ったがな。......安心しろ乃木の末裔。ソナタもすぐにあの世へ送ってやる。タイムリーパーは二人もいらん。」
友奈は余裕の表情で話を続ける。それが聞こえてるのか聞こえていないのか、園子はずっと下を見ていた。
「どうしてこうも...乃木の一族というのはしつこいのだ。300年前も今も、力の差がこれだけあるというのに。それを心の中では理解しているはずにもかかわらず、ねちっこく我に向かってくる。......実に愚かで醜い行........................えっ」
友奈は突然話すのをやめる。友奈がまばたきをした一瞬...銀の側に立っていたはずの園子の姿がなかったからだ。
「消えた...!?」
たった一回のまばたきで、この一瞬の間で彼女の視界から消えたのは、天の神でもゾクッとした。大怪我を負い、片足はなくなっているのにそんなに早く動けるはずがないからだ。友奈は周囲を見渡す。てっきりまた奇襲をしかけるために隠れたのかと思ったが、違った。園子の姿は意外にも、すぐに見つかった。
「なっ...!?」
友奈は目線のみを下に向ける。首はろくに動かせなかったからだ。ならそれはなぜか - - -
園子は友奈の懐に入り、槍先を友奈の首もとにつきつけていたからだ。
(いつ...こんな近くに...!?不測の事態を考え、警戒は怠っていなかったのに...!!)
園子はそのまま躊躇なく槍を振るう。友奈は咄嗟に爆転して、それをかわした。
「はぁ...はぁ...なんなのだ...その動き...!さっきまでそんなに素早くなかったではないか!!」
「......。」
園子は何も答えず、低く体勢をとる。それを見た友奈もファイティングポーズをとる。決して警戒は怠らない。
(だが避け切れただけ幸運...あれをもろに食らっていたら今頃我は...。)
「危なかった...。しかし、ただでさえそのダメージと部位欠損...。ソナタはここまで片目が失明した状態で必死に戦っていたはずなのに...今は片腕、片足までもがないのだぞ...!?ありえんっ!ありえんっ!!」
と、天の神はさっきの一瞬の出来事を理解できずに焦る。......しかしその時だった。
ブシャァァァッッッ!!!
「!!!!????」
友奈の喉仏あたりから、鮮血が噴水のごとく吹き出した。彼女の絹のような滑らかな肌に、横に一直線の綺麗な切り口がパックリと刻まれる。
「ぎ、斬ら"れ"...で......い"っ......!?」
勢いよく吹き出た血は周りに飛び散り、一瞬友奈の目の光が消えかけてフラッとよろけた。しかし倒れる寸前でなんとか足を踏み出して耐え、深く刻まれた傷口をまだ蓄えてあった生命力で癒やし、塞ぐ。
「はぁっ...!?はぁっ...!?はぁっ...!?」
(斬られていた!?しかしなぜこんな時間差で吹き出した!!......一体...一体あいつは...!?)
「ご、ごのや"ろ"ヴぅぅぅぅ.........!!!許さぬ......許ざぬ"ぞォォォォォォォ~~......!!!」
友奈は強く園子を睨みつけ、傷口が完治したのを確認したのとほぼ同時に攻撃の体勢に入る。
(くそっ!今ので生命力をすべて使い切った!これからはもう、ダメージは受けられん!次からは治せん!......このままバーテックスの力を使い続ければ後に大きな代償が来るが...やむを得ない!!なんとしてでも一瞬で、できるだけ早く、片を付ける!!)
「何が起こったかわからんが調子に乗るなよ!!いくら少し動きがよくなったとしても、このジェミニの速さにはついてこれまい!!!」
友奈は園子の周囲を目に見えないほどのスピードで動き回り、背後から彼女の頭部を狙って拳を振るう。だが、
シュッ...
「なにっ...!?」
友奈のパンチがどこから来るのかわかっていたかのように、園子はそっと首を傾けて避けた。
(そんな...!?こんないとも簡単に...!?バカな...目視は不可能なのはもちろん、気配も消していたはずなのに...!)
すると園子は残った片手だけで槍を、マジシャンがステッキを回すように華麗に回転させて槍の持ち手部分で友奈をゴン!と殴った。
「うごっ...!」
友奈は頭を押さえながら下がった。攻撃を仕掛けたつもりが逆にくらわされた。
「ぐっ...!ではこれならどうだ!?」
続いて友奈は電撃を放ち、その直後に
「ばんばんばんばん!!」
矢も放って攻撃の嵐を浴びせる。そして自らは地面に潜った。
「......。」
園子はまたスッと槍を回転させただけで向かってきた電撃が散らばり、矢をも弾いた。
バシャッ...
「おりゃあっ!!!」
攻撃を弾いたと同時に友奈は地面から飛び出て園子の隙を狙う。しかし、
(...!?)
さっきまで園子は確かに槍を手に持っていたはずなのに、今は口に咥えていた。
(いつ持ち替え......。)
グッ...!
園子は友奈が出てくる場所がわかっていたかのように、攻撃される前に友奈の顔を右手でガシッと強く掴む。
「う、うわあっ...!!」
このまま握り潰されるのではないかと思うほどの握力。友奈はこの状態で体を持ち上げられ、空中でジタバタと足掻く。やがて地面に投げ飛ばされ、受け身もろくに取れずに無様に転がった。
ズザザザ......
「うぅぅ......なぜだぁ...!神である我が、こんな人間ひとりぽっちに...。」
園子は転がった友奈を、ゴミでも見るかのような冷たい目つきで睨みつける。その目を見た友奈は思わず背筋が凍り、ゾクッと体を震わせる。そしてすぐさま園子から遠ざかるために地面を蹴った。
(や、ヤバい...!このままでは殺られる...!距離を、距離を取らなくては...!なんなのだ、あの目の奥から感じる邪悪な気配は...!とんでもない覇気だ...我が下がるなんてそんな...............はっ!?!!)
園子から遠ざかっていたはずなのに、友奈の逃げていた方向には、なぜか園子が立っていた。
(なんだとおっ!?!?そんなわけ......)
友奈は逃亡の際もジェミニの力を使っていた。追いつかれることはもちろん、追い抜かれることなどあり得る訳がなかった。園子はスッと槍をひと突き。天の神は防御しきれずに右肩に槍が刺さる。
「うがあっ!!!」
友奈は肩を押さえて一歩下がる。体力切れで猫背になり、大量に汗を掻きながら園子を見た。
(冗談だろう...?あんなに力の差があったのだぞ...。いくら勇者の力があろうとも、この速さで動くことは不可能だろう...!)
「はぁ...はぁ...何者なんだソナタは...!」
「......。」
「さっきから黙ってないでなんとか答えろ!!!」
園子の起こす行動は、口を開くことではなく、天の神に対して槍を振ることだけだった。
(こいつは......そうか...。今正気を保てていない...!ある一つの感情のみで動いているのだ、乃木園子は!!)
友奈は心を落ち着かせることに集中し、園子の振りひとつひとつをしっかり見て避け続ける。
(今、こいつから感じるのは...我に対する明確な『殺意』!それだけだ...!!)
ヒュッゥン...!
「!?」
そしてまた園子は風に溶け込み、信じられない速さで動き始めた。
「ぬ......ぬおおおおっ...!!」
天の神は少しずつダメージを負っていく。それから園子の顔を間近で見て、『彼』はさらに恐怖した。その顔を見たときには、もう落ち着くことなどできなくなっていた。
(こいつこそ...こいつこそが『悪魔』じゃないか...!.........いやこれは...『悪魔』というよりも...。)
(『死神』だ...!!)
園子の目の奥から感じるのは果てしない殺気のみ。それ以外のものは全く感じ取れなかった。『天の神を殺す』...その目的と、ギリギリまでに追いつめられた心と体が園子の身体能力を飛躍的に向上させた。常識では考えられない、限界を大幅に超えた力が一時的に身についていたのだ。殺意のみで動くその体は当然、負担は大きいどころでは済まなかった。ましてやただでさえこの重傷。園子の頭と心の中は本当に無になっていたのだ。
「............我は何をやっているのだ...。何を押されている...何を人間に怖がっている...!相手が死神だろうが我は神の中でも上位の力を持つ神...!」
友奈はグッと拳を握り、負けじと園子を睨みつける。
「我が...我が最強なんだァァァァァ!!!」
ザク
「!!...............あっ...。」
友奈は諦めずに立ち向かったが、正面から斬撃をくらった。その光景はなんとも呆気なかった。
ドサッ...
友奈は膝をつき、そして仰向けに倒れた。
「..........あ...がっ...!」
天の神は無様に人間の前に横たわっていた。やがて園子は槍を振り上げ、友奈の首に狙いを定める。確実に一撃で仕留めるためだ。そして園子が槍を振り下げようとしたとき...
ビュンっ!!
背後から星屑が噛みついてきた。
「...!」
いつ出現したのか、園子はわからなかった。突如現れた『ヤツ』に対応するために槍を振る方向を星屑に変える。
星屑はすぐ消滅した。だが......
「.....やはり、な。」
「......。」
力尽きて倒れていたはずの友奈が立ち上がっており、園子の後ろからナイフが突き刺さるような鋭い視線を向けていた。
「我がこっそり、星屑を生み出していたことにソナタは気づいていないと思ったぞ。ソナタは我に熱中しすぎた。我に対する殺意が高すぎたために、周りが見えていなかったのだ。だから我はそこをついた。そしてそのおかげで、こうして隙を作ることができた。」
友奈は拳を振り上げ、今出せる最大の力で殴りつける。園子は槍を傘状に変化させ、盾代わりにしてそれを防いだ。しかし天の神はその行動すらも読めていた。
「さすがのソナタでも避け切れず、防御すると思ったぞ!我の全力でもその武器は一発では壊せない...。......だが、」
友奈は一撃、一撃とパンチの数を増やしていき...最終的には嵐のような勢いでラッシュを浴びせていた。
「一発でダメなら十発。十発でもダメなら百発!百でもダメなら千!!それでもダメならそれ以上だ!!!その武器が壊れるまで、拳を振るい続ければよい!.........うらあああああああああああああああああっっっ!!!!!」
天の神もとっくに限界を超えていた。このラッシュが最後の最後に振り絞った力だった。一撃一撃が重いそのパンチは、そのうち傘にヒビを入れ、そしてついには......
バキンッ.........!!!
粉々に砕けた。武器にトドメを刺した友奈の右腕はそのまま止まらずに...
グシャっァ...!
「かっ......!?」
「はぁっ...はぁっ......はっ......はっ......。ふふふ...ふははははははははは!!」
友奈の腕は園子の胴を貫通し、彼女の背中から友奈の拳が真っ赤に塗りつぶされて突き抜けていた。
「あっ...!?あぐっ...!?ああっ......!?」
園子はようやくここで我に戻ったようで、何が起こったかわからぬまま下を向いた。友奈の腕が自分の腹を貫いていて、そこから大量の血液が溢れ出ている。
「ふぐっ...!げほおっ...!!」
そして口からも血が溢れ出てきた。
「はっ、ははっ...はははは......勝った...勝ったぁ...。やはり我が最強!!人間ごときが勝てるわけないのだァァーー!!!がっーははははははははははっ!!!」
友奈は高笑いし、グジャグシャと生々しい音を立てながら自分の腕を園子の腹部から抜いた。
「あぁっ.........」
それによりさらに血が溢れ、園子は腕を抜かれた反動で後ろに五歩くらい下がって倒れた。戦いのうちに移動していたのか、彼女はちょうど銀の隣に倒れていた。
「はぁっ...はぁっ......うっ、内臓が手にこびりついているではないか...。汚い汚い。」
友奈はそう言って腕に付着した大腸の一部らしきものを左手でつまんでポイと捨てた。
(あ...れ...?.......私...負け...ちゃった...?)
園子はいまいちこの状況を理解できぬまま、ゆっくり首を傾けて銀の顔を見た。
(ごめん...ミノさん...。私、約束守れなかったみたい...。)
一方、友奈はさっき斬撃を受けた部分を手で押さえながら苦しそうな表情を見せる。
(正直賭けだった...。あの攻撃を受けても動けるか、この少女の体の頑丈さに賭けた...。結果、その賭けは正解だった。『結城友奈』...やはり周りの人間とは一味違う。)
「乃木の末裔よ...今の気持ちはどうだ?これでソナタの一族は我に二度負けた。惜しかったがもう少しだったな。それにしてもあの時代から随分進歩したものだ。乃木園子...ソナタは初代とは性格がまるで逆だ。ソナタの先祖は、現勇者にも劣らないほど面倒くさかった。ソナタたちのように最後まで決して諦めなかったんだ。『報いを、報いを』...と言いながら...バーテックス、それからそれらを作り出した我に対して強い敵意を...『殺意』を持って何度も向かってきた。仲間をいくら殺されようが、勇者が自分ひとりになろうが、結界の外が火の海になろうが...彼女は戦意を失うことはなかった。...結果的に巫女数人を生贄にさせ、初代は寿命で死んだのだが...............あの時からの積み重ねがあり、今この時代の勇者に繋げられたのだ。...もしソナタと生まれる時代が逆だったら、違った未来があったかもな。」
(えっ...?)
「...今の勇者システムの性能なら、初代はさらに猛威をふるっていただろう。初代の強さは我もよく知っている。小さい頃から身につけてきたという彼女のあの剣技ならば、三好夏凜や楠芽吹など足元にも及ばないだろう。三ノ輪銀だって敵わないはずだ。それほどの技術と実力があった。そして才能もあった。」
(そんなに強かったんだ......私のご先祖様...。)
「ま、ソナタもよくやった方だ。我にここまで深手を負わせるとは。だが決着はついた。...人間は神に勝てない。これでようやく証明できた。」
園子は薄れていく意識の中、残った片方の手で隣の銀の手を握った。その手はもう温もりを感じず、冷え切っていた。自分の体も冷えていくのが身にしみてわかる。寒い。眠い。体中の感覚が...消えていく。...これが死か。園子自身、それがはっきりとわかった。
「もうソナタも眠りたいだろう...。最後に言っておこう。これはしょうがなかった。神に反抗するのが悪いんだ。人間をすべて殲滅するのは、既に決定してしまったこと...。いずれこうなるのは仕方なかったんだ。」
園子が最期に見た友奈の顔は、どこか悲しげな表情を浮かべていた。雨と混じっているせいでよくわからなかったが、涙を流しているようにも見えた。
「...さらばだ、勇敢なる少女たちよ。」
友奈はそう言い残して背を向き、その場から遠ざかっていった。
(.........。)
園子はギュッと銀の手を握ったまま、やがて目の光が消えた。
パチン
友奈は指を鳴らし、星屑を二体ほど召還する。そして、
「...そいつらを食え。血の一滴も残すな。」
と命令した。星屑は獲物にかぶりつく野獣のように、銀と園子の亡骸に食らいつき......ムゴい音を立てながらも完食した。その間、友奈は一度たりとも後ろを振り向かなかった。食べ残しがないかなども一切確認しようとはしなかった。
パチン
もう一度指を鳴らして星屑を消す。しかし友奈はそこでバタっと倒れ、膝と手を地面についた。
(もう...我の体も限界なのか...?)
天の神は自分の体の大きな傷を押さえ、手についた血を見る。
(この血をどうにかして止めなくては...我は死ぬ...。止めなくてはいけないのに...体が言うことを聞かない...。)
「はぁ...はぁ...はぁ......。」
(くそっ...せっかく、せっかく勝ったというのに...。我はこれから、するべきことが...!計画を実行しなくては...!我は、この世界にいる人間たちをすべて......!!)
天の神は自分の体を奮い立たせ、力が思うように入らない足で、何とかして立とうと努力する。
「なぜだ...どうしてだ...さっきまで普通に立って喋っていたではないか...!今になってどうしてこんな...!こん...な.........。」
そしてその時天の神は、以前に自分で言った言葉を思い出した。
「そう...か......。人間の体をのっとったから...。『心』が...あるから...か...。」
それがわかった瞬間、天の神は不思議とスッと立つことができた。相変わらず体の負担は大きいが、先ほどと比べれば楽な方だ。
それから天の神は思った。
(全く...人間の体なんか奪うんじゃなかった...。)
彼女はなぜか、銀と園子をたいらげた星屑から生命力を得ようとはしなかった。
勝負に勝って試合に負けたと言うのはこれを言うのだと、彼女の中だけで勝手に解釈していた。
(第49話に続く 神の猛攻編 完)
この作品の連載が始まり、現在に至るまで様々な出来事がございました。原作の『結城友奈は勇者である』の大満開の章が放送され、完結。一部ネタやストーリー内容を参考にさせていただいている『東京卍リベンジャーズ』が完結。なんと連載中にどちらの作品も完結してしまいました。
ということで、この『乃木園子は勇者である ~リベンジの章~』もついに次回から最終章に突入します!残り話数も数話程度。最後まで読んでいただけましたら嬉しいです!