乃木園子は勇者である ~リベンジの章~   作:てんぱまん

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神の猛攻編で無傷だったのは雀さんだけです。


人間の反撃編
【第49話】Revengers


 

「.........ん.........ぅん.........あれ.........?」

 

カーテンを通して窓から光が差し込み、小鳥のさえずりともに目を覚ます。とりあえずベッドから起き上がり、そのままボーッとしていた。今自分がどんな状況なのか、どうしてここにいるのか...この少女、乃木園子は考える。

 

「この感じって...え、まさか...。」

 

園子はベッドから出て立ち上がった。...彼女の思った通りだった。『あの時』と一緒...自分の背は縮んでおり、一段と周りの景色が大きく見えた。

 

「うそ......え...私は、確かに...。」

 

自分の記憶に深く刻まれている最新の記憶...。雨の中、自らの命が消えゆく、あの感覚...間違いなく起こった出来事だ。園子はそれから部屋を出てリビングに向かった。召使いたちの顔はやはり若く見え、『あの時』と同じようにイスに座った。

 

「あら、園子。まだ家にいたの?早く朝ご飯食べて行かないと遅刻するわよ~」

 

園子の母がそう言いながら身支度をしている。

 

「......。」

 

「?...無視...?まあ、いつものことね。」

 

園子はそれから朝食を食べ、席を立った。

 

「園子様。制服とランドセルならこちらに。」

 

「うん、わかってる。」

 

慣れた手つきで登校の準備を終えてさっさと家を出た。学校に到着するまでの間、園子は思う。

 

(きっとこれは...走馬灯だ。私は命を失ったから、懐かしい思い出を巡ってるんだね。せめてこの走馬灯くらいは...楽しませてもらわないと。)

 

彼女がそんなことを思っているうちに学校に着いた。いつもほぼ一番乗りで学校に着く。そして自分の教室の前に立ってガラガラっと扉を開けた。『あの時』同じように今日も一番乗り...

 

「園子...!」

 

ではなかった。

 

「え...?み、ミノさん...?」

 

なんとそこにいたのはいつもギリギリに登校していたはずの三ノ輪銀だった。しかも自分の呼び方が『乃木さん』ではなく『園子』だった。

 

「え、えぇ??どういうこと~??」

 

「やっぱり園子も戻ってたか!」

 

「これは...私の記憶が改変されてるのかな...?頭の中で勝手に変わっちゃってる...?まあでもいいや。この方が嬉しい。ミノさんと私がすでに仲良しならその分...」

 

「おーい園子ぉ?何言ってんだ~?」

 

「ミノさん!遊ぼっ!!」

 

「へ!?遊んでる場合じゃないだろう!さては園子、まだ気づいてない...?」

 

「.........。...ぅん?」

 

「もぉ園子っ!しっかりしろぉ!」

 

銀は席を立って園子の近くへ駆け寄り、彼女の頬を優しくつねった。

 

「い、いててて...!......あれ、え、『痛い』!?」

 

「やっぱ気づいてなかったか...。あたしらは別に死んだわけじゃない!タイムリープしてるんだ!」

 

「......。あっ、はっ、えええええええ~!?!?」

 

「しかも今回はお前だけじゃない。なんかあたしも戻ってるんだよ!!」

 

「ミノさんも!?あっ、だから私のことを?」

 

「そういうこと!やっとわかってきた?」

 

「ってことは...私たちが天の神に負けたのは事実で......なんでまたタイムリープしたのかは謎~って感じ?」

 

「そういう感じ。あたしも完全に死んだと思ったからさぁ~...。何が起こったかはさっぱり。園子はなんか思い当たることあるか?」

 

「え?う、う~ん.........あっ!!私、最後にミノさんの手握ったかも~!」

 

「きっとそれだ!理由はわからないけど、あたしが鉄男の代わりにタイムリープのトリガーになって...なぜか両方とも過去に戻ってきたんだ...!」

 

「ということは...ミノさんあの時まだ生きてたんだ!よかったぁ~...本当びっくりしたよ~...。」

 

「そっか。タイムリープが発動したってことはどっちもまだ息があったってことか。」

 

「すごいね~!両方ともタイムリープなんて贅沢~!」

 

「そ、そこ...?」

 

「でもよかった~!私たち生きてるんだね~!」

 

「ああ、確かに。あのまま終わらなくてよかった。」

 

銀のその一言で、園子は黙ってしまった。少し沈黙が流れる。

 

「.........終わらなくてよかったけど...私、どうしたら...」

 

「......。」

 

「...やれそうなことは全部尽くした。最善だと思う策は使い切ったのに...ダメだった。」

 

「あたしらが束になっても勝てないなんて...。...あたしはこんなこと普段言わないし言いたくないけどさ.........正直絶望したよ。特に、1対1で戦ってるときは。...全く勝てる気がしなかった。」

 

「本当に...なんでもありだったね。私もさ?ミノさんが死んじゃったと思った後からの記憶ないんだけど...結構頑張ってたみたいなの。私は最後にトドメを刺されたけど、最後に見たゆーゆの体の状態は...とても生きてはいられないほどボロボロだった。」

 

「そんなに追いつめてたのか、園子...!」

 

「もちろん、勇者部のみんなやミノさんががんばってくれたおかげ。でも、私はその時思ったの。......彼女は間違いなく致命傷を負っていて、体力も底をついていたはずなのに...ゆーゆの体には変化がなかった。」

 

「?......変化?」

 

「うん。そこまでダメージを負っていれば、天の神はゆーゆの体から追い出されそうな気がしない?あいつと同じタイムリーパーの私がそこまでやったのに。なんにも変わらなかったの。だから私はもしかしたら...って思って。」

 

「...何が?」

 

「もしかしたら......同じタイムリーパーの私が何かしても、なんにも効果がないのも...。」

 

「ええっ...!?そ、それじゃあ......いくらがんばったところで、天の神は倒せないじゃないか!」

 

「......。」

 

方法は、友奈を殺すことしかないのか。だが二人にはそんな考えなど頭の片隅にも思い浮かばなかった。

 

「............目には目を。歯には歯を。」

 

「...なんだ急に?」

 

「私はこれが一番有力なんじゃないかと思ってやったの。天の神が私の命を奪おうとしてたのもあるけど。タイムリーパーは同じタイムリーパーじゃないと倒せない...。...でもね、今考えてみればもうひとつあるかも。」

 

「もうひとつ?タイムリーパー以外の共通点ってこと?ぱっとは思いつかないなぁ。......けど...あったとしてもそれも失敗しちゃうかもしれないんじゃ...。」

 

「そうかもね...。だけどこれがダメだったら本当に他に何もないよ。力ずくじゃどうにもならなかったわけだし。」

 

「......。そっかぁ...じゃあまた『賭け』ってこと?」

 

「...。」

 

「あたしは園子に乗るよ。今までだって、それで大丈夫だった。...方法はそれしかないんだろ?ここまできたら、何が何でもあいつに勝つ!」

 

「そうだね...勝とう!」

 

朝の時間ではここまで話して終わった。この後すぐに、園子たちが初陣を迎えた戦いが来るのを二人はすっかり忘れていたが、今の二人はすでに歴戦の猛者。友奈に憑依した天の神の強さに比べれば、十二星座バーテックスのうちの一体など敵ではなかった。

 

「え....??え.....えぇ......え、え、えぇええぇぇえええ!?!?」

 

「やったな園子!」

 

「やったねミノさん!」

 

園子と銀はハイタッチして喜ぶ。一方須美はひとり、困惑していた。

 

「瞬殺...。ふ、二人とも強すぎる...!!なんなのあの華麗な動きは!?私なんにもしてないわよ!?それにいつそんなに仲良くなってたの!?昨日までそんな感じじゃ...。」

 

「あ、あぁ...えっとぉ~......。じゃあ須美も仲良くなろうぜ!よろしく!」

 

「よろしくだぜい!わっしー!」

 

「ええっ!?」

 

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数ヶ月後 大赦本部 安芸の部屋

 

「......。」

 

「だいたい飲み込めました?安芸先生。」

 

「本当、驚きだわ...。新装備の話も大赦の考えも全部ぴたりと当たってる...。タイムリーパーだと言うのも、認めざるを得ないわね。」

 

「ミノさんもです~。」

 

「...それを私に話して...どうするつもり?私が大赦職員だということを知っているのなら、そんな重要なことわざわざ言うとは思えない。上に報告するかもしれないわよ?」

 

「安芸先生はそんなことしませんよ。」

 

「......!」

 

「それをされたところで大赦に何かできるとも思えないし。」

 

「......。」

 

「ふふっ。...安芸先生にも苦しい思いはさせたくないですから。」

 

「え...?」

 

「ねぇ、安芸先生......勇者システムの『複製』ってできないんですか?」

 

「複製?」

 

「ミノさんの勇者システム、もうひとつ作ってほしいんです。お願い...できませんか...?」

 

「......。...聞いてあげたいところだけど、勇者システムを作るのだって簡単じゃないのよ。そう何台も作れたら、もっと勇者を増やせるし。ましてや複製なんて...試したこともない。」

 

「......。...そうですか......。」

 

園子は落胆し、肩を落とす。

 

「......けど、なんとかやってみるわ。」

 

「...えっ?」

 

「ダメならダメでまた伝えるけど、一応ね。...いつまでに欲しいの?」

 

「......完成は今すぐじゃなくていいんです。二年後までに完成できれば。」

 

「えっ、そんな先?」

 

「はい。それならまだ可能性はありますか?」

 

「...時間がそれだけあれば、もしかしたらなんとかなるかも...。」

 

「本当ですか!?よかったです~!」

 

園子は両手を合わせて喜んだ。

 

「...だけど勇者システムの複製だなんて、何をするつもりなの?しかもあなたのじゃなくて三ノ輪さんのを...。あなたの目的は一体...?」

 

「...未来に繋げるためです。」

 

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二年後 12月 夜 大橋付近

 

「もうすぐ...だな。」

 

「もうすぐって言っても、まだ5ヶ月くらいあるけどね~。」

 

「5ヶ月はすぐだろ!今まで過ごしてきた時間に比べれば!」

 

「まあ、確かに...。」

 

銀と園子がタイムリープをして、早くも三年の月日が流れようとしていた。すでに新たな作戦の準備は完成間近だ。

 

「...ちょっと髪切った方が動きやすいかな?」

 

銀はそう言って小学生の時よりもだいぶ伸びた髪の毛を触る。今の彼女の髪型は旋毛あたりでポニーテールにして大橋の戦いの前に園子から貰ったリボンでしばっている。

 

「私はそのままでもいいと思うけどな~。かわいいし~。」

 

「今はかわいさよりも戦いやすさだろ?」

 

「まだ5ヶ月あるんだし、今切ってもまた伸びちゃうよ~。その相談はまた先に。」

 

「...それもそうか。」

 

銀は歩道の手すりに寄りかかって海をじっと見つめる。冬の肌寒い夜風が、二人に吹き付ける。

 

「......なぁ、園子。」

 

「?...なに?」

 

「あたし、さ...やっと園子の気持ちを理解できた気がする。あたしもタイムリーパーになって...この立場の大変さを知ったよ。」

 

「......うん。」

 

「だからさ、園子。お前はもうこれで今度こそひとりじゃない。心の底から園子の気持ちがわかった。今のあたしの思いは、園子...お前と一緒だ。」

 

「ミノさん...。」

 

「これはきっと300年前からの因縁なんだ。天の神は、この世のほとんどの人の命と土地を奪った。...別の世界であたしたちのことも殺して......。あたしは絶対に許せない...!!」

 

銀は拳を強く握って海の向こうに広がっているはずの地平線を睨む。今は神樹の壁が立ちふさがり、先は見えないが。

 

「『あいつを倒して元あった世界に戻す』その一心だけだ。」

 

「...!!」

 

「もうお前だけのリベンジじゃない。...あたしも負けた。それにみんなも。全員あいつに打ちのめされた。だからこれは......あたしたちみんなのリベンジだ!!」

 

銀は園子の方に振り返ってそう強く訴えた。その銀に応えるように、園子も大きく首を縦に振った。あとは戦いの日を待つだけ---。彼女たちのリベンジを果たす、その時を...。

 

(第50話に続く)




尺の都合で割愛させていただきましたが須美は初陣から数日後に二人からタイムリーパーであることを打ち明けられています。現時点、銀と園子がタイムリーパーであることを知っているのは須美と安芸先生のみです。勇者部、防人組はまだ知りません。二年後の12月というのは神世紀300年12月のことを指します。時系列で言えばゆゆゆのストーリーは終わり、全員散華からは解放されています。
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