初陣から半月近く経過したころ、園子はあることを考えていた。
(もうそろそろだったはず....二回目の戦い。確か、竜巻を起こしてくるバーテックスだった。あの時はミノさんのごり押しで勝ったんだっけ....。そのせいでわっしーもミノさんも結構ケガしてたなぁ....。私があいつを倒したいけど、この頃の武器じゃ相性が悪い。それに、最初はわっしーとミノさんを守らなくちゃいけない。私、今度はどうしたらわっしーたちを傷つけないで済むんだろう....。)
「おーい、園子ー。園子ー?」
「あっ!ご、ごめんミノさん。」
いつの間にか銀が園子の顔をのぞき込むようにして見ていた。そんなことをされていたのに園子は全く気づかなかったのだ。
「ったく、ま~たボッーとしてたなー?」
銀は苦笑しながら園子にそう言った。
「そ、それで何かな....?」
「須美が聞きたいことがあるんだってさ~」
銀はそう言って後ろでもじもじしている須美を園子の前へ持ってくる。
「あ、あの....乃木さん!....神託とかって、きてるのかしら....?」
「え....?」
「ほ、ほら!乃木さん....この前神樹様からの神託で敵がどんなやつかわかったでしょう?対策したいからできれば早めに知りたいと思って....。」
「あっ、そうだね~....」
そうだ。今回は違う。私は敵がどんなやつか知ってるんだ。初めて戦う敵ではないのだ。せめて、せめてこの二人に話しておくだけでもだいぶ変わるはずだ。相手の戦い方を知っているのといないのとでは全然違うはずだ。
「来てるよ。神託。」
「ほ、ほんと....?」
「よっしゃあ!これで次も勝ち確だな!」
二人は食い入るように園子に顔を近づける。
「次の敵はね........」
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「ほ、本当に乃木さんの言った通りの敵ね....!」
「ああ!....それにしても、思った以上の竜巻だ....!」
結局、二人に話したところで状況は変わらなかった。あのときと全く同じ。そもそもこいつ相手には誰でも相性が悪かった。須美の弓は届かず、銀は捨て身の攻撃をしなくてはならない。園子も、他の二人を守るのが精一杯でこちらが攻撃する隙すらない。
「ぅぅ....吹き飛ばされそうだよ~....!」
「くそっ....どうしたら....!」
すると、一番後ろにしがみついていた須美が何も言わずに突然離れる。
「須美っ!?」
銀はそう言って高く飛び上がった須美の方を向いた。
(やっぱり私がやらないとダメなんだ....!)
須美は遙か上空で弓を構える。
(わっしー....無駄だよ。わっしーの弓は届かない....。)
「南無八幡....大菩薩!」
須美が全力で放った弓はあっけなく竜巻に巻き込まれ、敵にすら当たらずに終わった。
「そんな....!わぁっ!!」
須美はそのまま竜巻によって遠くに飛ばされる。
「須美っー!!........くそっ....」
「待ってミノさん!」
「え....?」
「この後ごり押しでいくつもりでしょ?それなら私がやる!」
「いや、私は大丈....」
「いいから!ミノさんは飛ばされたわっしーを助けに行って!」
「........わかった。だけど園子、気をつけろよ。」
銀はまっすぐな眼差しで園子を見て言った。
「....うん。任せて!....それじゃ、いっくよ~!」
園子の合図で二人は一斉に飛んだ。銀はすばやく後ろに飛ばされるように仕向け、須美との距離を一気に詰めて彼女をキャッチした。
「....!!三ノ輪さん....」
「大丈夫か?須美。」
「ありがとう....。それで、あのバーテックスは....」
「園子がやってくれるってさ。....大丈夫。あいつならきっとやれる。あいつを、信じよう!」
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(こいつは、頭上が弱い。頭上なら竜巻の影響が少ないから効率的に攻撃できる。でも、多少のケガを負うことは覚悟しなくちゃいけない。けどそんなこと、今の私にはどうだっていい!....あの二人が傷つくくらいなら私は....)
「命だろうとなんだろうと捧げる!」
園子は高く飛び上がり、バーテックスの遙か上へと飛ばされる。そして、槍を下に向け、空気抵抗を最小限に減らし、初陣と同様に自分ごと突っ込んだ。
「一撃で終わらせるよ~!!くらえっ~~!!!」
隕石のごとく落ちてきた園子はその一撃でバーテックスを見事破壊した。とんでもない威力だった。
「うぐっ....!」
そのため、遙か上空から落ちてきた衝撃はかなり強く、園子は受け身をうまくとる余裕もなく、地面に転がった。
「はぁ....はぁ....やっ...た....」
ひとりで倒せた。そして須美と銀は無傷。二人を守り抜けたのだ。園子はそれが嬉しくて優しく微笑んだ。全身が痛い。体がだんだん麻痺してきて動かなくなってくる。自分の血が地面に広がる。
すると、こちらに向かって走ってくる須美と銀の姿が見えた。
「園子っー!!大丈夫かっー!!」
「の、乃木さん....!ひどいケガだわ....早く病院に運ばなきゃ....」
「樹海化が解除されるまであと何分くらいだ?」
「わからない....でもあともう少しだと思うわ。」
「くそっ....。それにしても園子、お前無茶しすぎだぞ....!ひとりでここまでしなくていいのに....!」
「そ、そうよ....私たちだって、いるんだから....!」
二人がこんなに自分のことを心配してくれている。園子は二人に対し、悪いことをしたなぁ、と思った。ただひとりだけで背負い込むのもダメなのだ。園子はそれをわかっていたはずなのにすっかり忘れていた。信用してもいい友達がここにはいるのに。
(ごめん....ね....わっしー....ミノさん....)
自分では声に出したつもりだが実際には出ていなかった。二人には聞こえていなかった。立つどころか、話すことすらもできなかったのだ。
(あ、あれ....?)
やがて二人の姿が霞んできた。意識が遠のいていく。
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「ぅ....ぅぅん....」
「!!乃木さん!気づいた!?」
「よかった....本当によかったよ....」
園子が気づいたときには病院のベッドで寝っ転がっていた。ベッドの両脇には銀と須美が自分の顔を覗き込んでいて、園子が目を開けるのを確認すると銀が飛びついてきた。
「いいか、園子!あたしは今すっごい怒ってる!お前がひとりであんな危険なことしたからだ!これからは二度とあんなことするなよ!私たちもいるんだからな!!ひとりで頑張ろうとすんな!!」
銀は熱く、園子に訴えかけた。
「本当、ごめんね....私、二人に傷ついてほしくなくて....。」
「乃木さん、勇者にケガはつきものよ。ある程度なら私たちだって耐えられる。いや、耐えなきゃいけないんだから。逆に無傷でお役目を終えるなんて不可能に近いわ。」
「わっしー....」
するとそこに、担任が入ってくる。
「!....乃木さん。よかった、目が覚めたのね。全く、ごり押しにも程があるでしょ。こんなの、いくつ命があっても....」
「あっ、先生大丈夫です。園子には私たちでいっぱい言い聞かせておいたんで!」
銀は担任にそう言って無理やり止めさせた。おそらく、話が長くなると思って止めたのであろう。
「あら、そう。........じゃあ、ちょっと話いいかしら?三人とも。」
『はい。』
担任は改まって三人の前に立つと、
「この三人のリーダーを決めたいと思います。」
「リーダーっすか?それならあたし以外なら誰でもいいっすよ!」
「リーダーは、乃木さんにお願いするわ。」
「えっ....?」
須美が一瞬、困惑してそう言った。担任の言葉に、園子は特に驚かなかった。それはもうわかっていたからだ。
「わかりました~私やりま~す!」
「任せたぞ!園子!」
「........そうね。私も、賛成よ。」
さっきまで様子が変だった須美もすぐに元に戻り、その意見に賛成した。
「よし、なら決定ね。神託によると次の侵攻までにしばらく時間があるそうだわ。そこで、乃木さんのケガが治ってから合宿を行います。」
『合宿?』
三人は声を合わせてそう聞いた。
(第六話に続く)