乃木園子は勇者である ~リベンジの章~   作:てんぱまん

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【第52話】Human vs. God ~ first half~

 

「......っ!......はぁ...はぁ...!」

 

東郷の満開が解け、三人は地面に着地する。

 

「東郷!大丈夫!?」

 

「はい...!早く行きましょう!」

 

おかげで神樹のかなり近くまで移動できた。ここからは足での移動となる。三人は走り始め、神樹の中心部を目指す。しかし...

 

「...!危ない!」

 

 

ドッゴン!!!

 

 

前方から彼女らを潰す勢いで攻撃がとんでくる。

 

「これって...神樹様に邪魔されてる...!?」

 

「そこまでして友奈ちゃんを渡したくないかっ...!」

 

「しょうがない...ここは避けながらも強行突破で!」

 

神樹は自らの根や茎のようなもので園子たちの行く手を阻んだ。それでも彼女たちは進むのをやめない。だがしかし

 

「...!!これじゃ前に進めない!!」

 

ついに完全に道が塞がれた。この先を通らなければ中心部には辿り着けない。

 

「大丈夫!...道は私が......切り開くっ!」

 

風はそう言うと満開を使い、大剣を巨大化させる。

 

「おりゃああああああああああああっ!!!」

 

 

ズドドーーンッ!!!

 

 

大きく振り下ろされた剣は、塞がれた道を完全に切り開いた。

 

「すごい...!」

 

「はぁっ...はぁっ...!」

 

風の満開は解け、その場に手をつく。

 

「大丈夫ですか!?風先輩!」

 

「はぁっ...はぁっ...あなたたちは早く先に行きなさい...。一刻を...争うんでしょ...?」

 

「......。...ありがとうございます、風先輩。」

 

「絶対成功させるのよ!二人とも!!」

 

「もちろんです!」

 

園子と東郷は再び走り始め、先を急ぐ。そしてついに...

 

「!...行き止まり...?」

 

「いいえ...行き止まりってことは...。」

 

東郷は壁らしきものに手を置く。すると...ヌッと手がめり込んだ。

 

「ほら、ね?」

 

「ほんとだ...!」

 

二人はその奥へと進む。そこの空間は驚くべきものだった。

 

(えっ...!?なにこれ...水!?)

 

(違う...息、できる...?)

 

二人はお互い顔を合わせ、さらに最深部へと移動する。

 

「なにここ...神様の中身ってこんな感じなんだ...。」

 

「あっ...!そのっち!見て!!」

 

東郷は園子の袖を引っ張り、下を指差す。

 

「!......ゆーゆ!」

 

そこには、多くの白蛇に捕らえられている友奈の姿があった。

 

「友奈ちゃん!!」

 

東郷はすぐさま潜り、友奈に手を伸ばす。しかし、

 

 

バチっ!

 

 

「っ!......なにこれ...!!」

 

その手は友奈には届かなかった。どうやら見えない結界のようなものが張られているようだ。

 

 

バチっ!バチっ!

 

 

なんとかして破壊しようと試みるが、びくともしない。

 

「なんでよっ...!せっかくここまで来たのに...。友奈ちゃんを返してっ!!」

 

「落ち着いてわっしー!」

 

「落ち着けないわよ!友奈ちゃん、もう目の前にいるのにっ!!」

 

真下にいる友奈を見つめながら、二人はそんな会話を交わす。そうしていると、

 

「全く...ここは神聖な場だぞ。静かにできんのか。」

 

「!...友奈ちゃん!?」

 

友奈が口を開き、上を見上げて話し始めた。

 

「...やはり......なぜソナタが生きている?東郷美森。そして...これはどういうことなのだ、乃木の末裔。」

 

「......まだ"そこ"にいたんだね、天の神。」

 

「フッ......あの時の我への崇拝も、信仰心も、やはり偽りだったか。我も少しはソナタを信用したというのに、ショックだよ。」

 

「...嘘つき。」

 

園子のその返しに対して友奈はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。そしてまたすぐに口を開く。

 

「...さて...まだ神樹が我を取り込むまで時間がある。聞こうではないか。我に見せたあの出来事すべて...どうやったのか。」

 

「...『能力』を使ったんだよ。タイムリーパーに目覚める、もうひとつの力をね。」

 

「...?ソナタの能力は触れた他人について探ることができる力だったはず...。あんな夢を見せるようなことはできないはずだが?」 

 

「神様も甘いね~。考えつかないの?」

 

友奈の眉間にシワが寄る。どうやら少しカチンときたようだ。

 

「......私以外にも、タイムリーパーが現れたんだよ。」

 

「...!?」

 

「私がまた戻れたのも、彼女のおかげ...。私は、ミノさんと一緒にタイムリープしたの!」

 

「両者共々タイムリープ...!?そんなこと......」

 

「本当に奇跡だよね。...まさに神様のイタズラかも。」

 

そんなことを話している間にも、友奈と二人の距離は遠ざかっていく。

 

「そのっち、早くしないと友奈ちゃんが...!!」

 

焦る東郷に園子は人差し指を口に当ててから静かに囁く。

 

「......大丈夫だから。......今、確信できた。」

 

そうすると園子は友奈に絡みつく白蛇たちをチラッと見る。それから友奈に向かって再び話し始めた。

 

「ミノさんに目覚めたもうひとつの『能力』は......"対象一人に対して、幻を見せる力"!」

 

「!?!?......そんな大きな力...たった一回のタイムリープで使いこなせるわけがない!前にも言ったはずだ!もうひとつの能力は、タイムリープを繰り返せば繰り返すほど強くなる...!たった一回で、あそこまでできるはずがないっ!!」

 

「そうだよね~...。私も最初ミノさんの能力をお試しで体験したとき、その正確さにびっくりしたよ。だからたぶん...たくさんの未来を知っていればいるほど能力の練度が上がるんだと思う。それなら辻褄が合うしね。だからミノさんは最初からあんなに使いこなせたんじゃない?」

 

「...!そんなはず...!だいたい、幻に触れられないだろう!我はソナタに何度も触れた!三ノ輪銀が対象一人のみにしか幻を見せられないのだとしたら...そこは矛盾してるのではないか!?」

 

「確かにそう思うよね。だけどあなた...ミノさんと私の相性がどれだけ合ってるか知ってる?」

 

「!!......そんな...まさか......!」

 

「幻の私と本物の私...ところどころ入れ替わってたんだよ。例えば最初にあなたに接触したとき...あれは本物の私。本当に私ひとりであなたに会った。その後トイレで幻の私と入れ替わったの。」

 

「......最後は...?最後も我はソナタに触れたぞ!さらにその時はソナタから目を離さなかった!幻と入れ替わる瞬間なぞなかった!」

 

「あ~、あの時はミノさんにあわせてもらったの。私の動きに合わせて、幻を操ってもらっただけ...。だから私はなんにもないところに向かって演技してたんだよ。」

 

「!?そっ、そのようなことがっ...」

 

「実際、可能だったってことだよ。こうしてちゃんと、気づかれずにいたしね。だからあの時、讃州中学にいた勇者部員は私とミノさんだけ...。他はみんなゴールドタワーに移動してもらって、身の安全を確保した。...ミノさんはずっと屋上に身を隠してたの。本物の私があなたの前に姿を現すときだけ、私に合わせる必要があるから近くにいたけどね。」

 

「......。」

 

「結構大変だったんだよ?このために大赦を総動員させて、学校のみんなに事情話して口裏合わせてもらって...。ほら、毎日生徒が減っていったら周りに怪しまれるじゃない?別に先生や生徒も幻として見せればいいじゃんって思うだろうけどその規模になるとさすがにミノさんも疲れちゃうらしくてさ。だから勇者部の人たちだけ、幻としてあなたに見せた。...人間の死体なんか見たことないからミノさん苦労してたよ。しかも、友達の死体なんてさ...。やるだけで苦しいのに。」

 

「...............。」

 

「でもこれも全部今この時に繋げるため...。私もあなたに土下座して、顔踏まれた甲斐があったよ。」

 

「..............................。ふっ......ふふふ......。」

 

「...?」

 

友奈は俯き、静かに笑う。

 

「...随分と余裕そうだね?私たちが生きていることは誤算じゃないの?」

 

「ま、確かに驚いたが...昨日も言ったはずだ。『もう我を止められる者はいない』と。それにすでにこの段階に入った。パニックになる理由がどこにある?......ソナタこそ余裕そうではないか。」

 

「そりゃあそうだよ。ここまで全部、"作戦は上手くいってる"んだから。」 

 

「......ほう?」

 

「じゃあまず言っておくけど、あなたの作戦の一つは今...ミノさんたちによって止められてる。」

 

「...!」

 

「もうひとりのあなたは、ミノさんたちと交戦中だよ。だから、神樹様のすぐ上にはまだ来てない。」

 

「......なぜソナタがそれを...?」

 

「もちろん、あなたもご存知のもうひとつの『能力』のおかげだよ。私は前の未来のときからあなたの計画、すべてを知っていた。あなたに跨がったとき、すでに。」

 

「なっ...。だからと言って、この状況がひっくり返るとは思えない!神樹はすでに我を受け入れている!人間のソナタたちに、今から何ができる!?」

 

「最初の世界でだって......そう言って人間を見くびったからあなたは負けたんじゃない...!」

 

「いや、我は人間の底力を何度か見てきた...。もう見くびってなどいないっ...!......ほら見ろ!始まったぞ...融合が!!」

 

友奈の体が光り始める。ついに神樹が友奈を取り込む作業に入るのだ。だが、、

 

「!......なに...これ...!?」

 

その真下に広がる状況に、東郷は思わず目を丸くする。

 

「始まったのは融合じゃないんよ~。」

 

園子は余裕の笑みを天の神に見せる。不審に思った『彼』はそこでようやく自らが置かれた状況に気づく---

 

「はっ!?!?」

 

「やっと気づいた?自分の状態に...。」

 

「こっ、これはっ!?どういうことなのだぁっ!!!」

 

 

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その頃  天の神 vs. 三ノ輪銀&三好夏凜

 

「夏凜!いけるか!?」

 

「ええ!いつでもっ!」

 

降りしきる矢の豪雨の中、二人は上空の天の神を睨む。園子の武器のように、銀は盾を張れない。このままこうしていても二人はさらに傷ついていくばかりだ。

 

「あたしがタイミング見計らって合図出すから、それと同時に一気に突っ込め!」

 

「わかった!」

 

銀は目を細め、一瞬の隙を窺う。そして...

 

「......今だっ!」

 

夏凜は銀の合図にすぐ反応し、最高速度で突っ込む。

 

 

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数分前  防人隊

 

「千景砲発射準備!」

 

対天の神のため、防人は防人で準備を始めていた。

 

「数日前にも一度説明したが、再度確認する!...夏凜が天の神に突っ込むのと同時にこの千景砲を放つ!だが放つには祈りが必要だ!...完了するまで、私たちで巫女と神官を守り抜く必要がある!」

 

『はい!』

 

「それぞれ定位置につけ!バーテックス共には、指一本触れさせるなっ!!なんとしてもこれを成功させ、勇者のサポートをする!!......私たちの力だって一つに集めれば通用するということを、天の神に知らしめてやろうっ!!」

 

『はいっ!!』

 

芽吹の呼びかけに隊員たちは力強く応える。彼女らはあたりに散らばり、その中心で千景砲の祈りを行い、千景砲のチャージをする巫女と神官。そんな中、星屑たちは容赦なく襲いかかってくる。

 

「ひいぃやああっ!!めっちゃくるっ!すごいくるううううう~~!!」

 

雀たちはバリアを展開させ、その中心にある祈りの場をバーテックスから守る。

 

「みんな!できるだけ接近戦は避けて、銃撃で倒すのよ!どうしてもの時だけ、剣を使う!」

 

と、言ったそばから前に飛び出して近接用の剣で星屑を切り裂く人物が一人。 

 

「!......ちょっとシズク!」

 

「悪いな楠!オレはこっちの方がやりやすいからなっ!」

 

そう言いながらまた一体葬る。シズクの動きは安定していた。

 

「あんまり無理しないでよね!」

 

「ふんっ、人のこと心配してる場合か?お前もお前でちゃんと戦えよ!」

 

「当たり前よ!」

 

「じゃ、勝負するか?楠。どっちがバーテックスを多く倒せるか!」

 

「いいわね。受けて立とうじゃない!」

 

芽吹は銃で、シズクは剣で星屑を次々と倒していく。

 

「ちょっと二人とも!これは遊びじゃございませんことよ!」

 

「そんなのわかってる弥勒!こうした方がより倒せンだろ?一匹も逃したくねェからな!!」

 

「なるほど......ならわたくしも参加させていただきますわ!弥勒家再興の礎として......この弥勒夕美子こそが一番たくさんのバーテックスを...」

 

するとその言葉に反応したかのように、大量の星屑が夕美子に向かって押し寄せてきた。

 

「えっ、わっ、ぎゃあああああ~!!いきなりその数は聞いていませんわ~!」

 

「弥勒さんがんばってる...。みんなすごいなぁ...あんな数のバーテックスと戦って...。私はここにいるだけでも怖いのにぃ...。亜弥ちゃんたちは大丈夫かなぁ...。」

 

雀はそう言って背後にある光に包まれた空間を見つめる。そこは外側から中を見ることができない。防人たちは千景砲が放たれるまで戦い続けなければならない。だがまだ様子を見るに、まだまだ戦わなければならないようだった。

 

---

 

---

 

---

 

「はぁ...はぁ...。ふぅ...なぁ、楠。なんか様子が変じゃねェか?」

 

「えっ?」

 

「ほら、千景砲。全然溜まってる気配がねェ。」

 

「......確かに。」

 

最初は順調にチャージされていた千景砲も、今は止それがまっているように見える。

 

「ちょっと見てくるわ。ここお願い!」

 

「おう、任せとけ。」

 

その場はシズクに任せ、芽吹は中心部分に戻った。

 

「あっ、メブー!!どうしたの?...もしかしてもう終わった?終わったよね?お願い終わったって言って!」

 

「まだよ。少し気になったことがあって...。」

 

芽吹はそう軽く受け流して光の中に入っていく。

 

「ええっ、ちょっとメブぅ~!」

 

------------

 

「...!......これは...!」

 

何人か巫女および神官が姿を消している。

 

「一体何が...!?」

 

芽吹は歩を進め、さらに中心へ向かう。するとその間に一人、また一人と消滅し、人が減っていく。

 

「!?...何これ...。もしや...現実世界に戻されてる...!?千景砲に必要な祈りは、私たちの想定以上に大きな不可がかかるってこと...?だからこんな現象が...?」

 

(だとしたらすごくマズいかも...。外にいる防人たちが戻されるのも時間の問題...。そうなったら夏凜は......)

 

そんなことを考えているうちに、芽吹は祈りの間の中心へ辿り着く。そこには国土亜弥が手を合わせ、目を閉じて立っていた。

 

「亜弥ちゃん...!」

 

「芽吹先輩...?」

 

「これは...何が起こってるの...?」

 

「他の方々は全員現実世界へ戻されてしまったようです。...ここにいる方々も残りわずか...千景砲を使った勇者様援護の計画は失敗してしまったのです。」

 

「は...?し、失敗...?いや、まだ...!もう一度祈りを捧げれば...!」

 

「......。」

 

「亜弥ちゃん!!他のみんなも!しっかりして!!私たちがやらなきゃダメなのよ!......私は何回も、いろんな未来を見てきた...。つい最近話したでしょう?......この未来は、最後の希望なのよ...!園子が、銀が...みんなが!全員で繋いだ最後のチャンスなの!!だから...たとえそれが神様に逆らうようなことでも、やりきらなきゃいけない!生きるんだよ、亜弥ちゃん!!」

 

「...!」

 

「......みんなもわかった...?もう一度祈りを...!」

 

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---

 

「ああっ、メブ~!!」

 

中心部から戻ってきた芽吹に、雀が声をかける。

 

「...もうひと踏ん張りよ、みんな。」

 

芽吹は自分が守っていた位置に戻り、再びバーテックス掃討のお役目についた。

 

「上手くやったみてェだな、楠。」

 

「...まあね。」

 

「ほら、もう溜まるぞ。」

 

「!!......そうみたいね...!みんな本当にがんばってくれたわ。あとはこれを、同時に撃ち込むだけ...。」

 

芽吹はそう言って天を仰ぐ。

 

(第53話に続く)

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