数分前 夏凜&銀&樹サイド
「なんだあいつ...!急に移動速度が上がったぞ!」
「あんだけやったのにまだ余力があるわけ...!?」
「焦ってるのかもしれません。夏凜さんたちから大ダメージを受けて、相当な時間ロスをして...早く目的の場所へ行かないとって言う気持ちが高まってるんじゃ...。」
「へぇ...神様もそういうのあるんだな。」
「どっちにしろ私たちで止めるわよ!」
「はい!」 「ああ!」
だがそうは言っても夏凜は満開を使ってしまった。勇者は防人のように空を飛ぶことはできない。
「天の神がどれくらい力を残しているかわからない今、無闇に満開を使うのは危ないかと思います。銀さんは一応、満開を残しておいてください。...ここは私が!」
樹は夏凜と銀を助けるのに満開を使い、今もまだ満開装束を身に纏っている。
「くそっ...なんであんな上にいるのよ...!私も何かしら樹のサポートをしたい...!」
夏凜がそんなことをゴニョゴニョ言っていると、突如上空から無数の雷が落ちてきた。
「!?...いきなり広範囲攻撃!?」
「しかもこれ...私たちを狙ってるわけじゃない!手当たり次第に...!!」
これが樹海に落ちれば現実世界にかなり大きな被害をもたらすだろう。---樹は雷の光が見えた瞬間に動いていた。
「え~~~~~いっ!!!」
空に飛び上がり、手を高くあげてワイヤーを放出。パラシュートが開くように、円状に分かれた。蜘蛛の巣のように樹海の上にできた樹のワイヤーはそのまま雷を受けた。
バチバチっ!バチンっ!!
雷はワイヤーに分散され、散らばる。あまりの高電圧によりワイヤーは樹に届く前に焼け切れた。
「いいぞ樹~!」
銀は拳を上にあげて樹を鼓舞する。
「まだです...!」
すると今度はワイヤーを一点に集め、毛糸のように編んでいく。
「私の武器は...私の思うままに!...私の思い描いた物を作れる!」
樹が作ったのは大きな『拳』だった。
「これ...友奈が満開したときの武器にそっくり...!」
夏凜は樹が作った拳を見てそう呟く。そして樹は夏凜たちが作った天の神にあるヒビを狙って突っ込む。
「はああああああああっ!!!」
作った拳を思い切り振るが、
ドッ......
「...!」
届く前に、簡単に破壊される。その時にできた隙を見逃さなかった天の神は、サジタリウスの矢の雨を樹のみに一点集中させて高速で撃ち込む。
「...樹っ!!」
銀は思わず彼女の名を叫ぶが、
「...はあっ!」
樹はまるであやとりでもやるかのように、すぐさまワイヤーを網目状に編んでサジタリウスの矢をバラバラに切り裂いた。
「樹の糸ってどんだけ鋭いの!?」
「しかもあの判断の早さ...並大抵じゃないぞ!?」
夏凜と銀は驚いてばかり。樹はまだ攻撃の手を緩めなかった。
「まだまだです!...園子さんたちのところには行かせませんっ!」
次に樹は針地獄のような物を空中に出現させ、ゴムのようにしならせて天の神の中心部を狙う。
ゴゴゴゴゴ......
「っ!!」
だが、その針は天の神に刺さっていなかった。樹が貫いたのはただの"空"...。さっきまでそこにあったはずの天の神の中心部は嘘だったかのように忽然と消えていた。
「えっ!?どこに行って...!?間違いなくここに...」
「樹!あっち見て!!」
夏凜に言われ、樹は初めて気づく。天の神はすでに、"神樹のすぐ側まで移動していた"。
「な、なんで......。」
樹は天の神と自分との、明らかに間に合わない距離に絶句する。
「もしかして...樹が戦ってたのは天の神が出した分身だったのか...?」
銀は顎に手を当てて考えた。夏凜も同様に銀と同じポーズをとる。
「あいつはわざと分身の位置から攻撃を出して、そこが中心部だと思い込ませた...。今まで、本物の中心部は雲で隠してたんだわ!」
「でもなんで...!!あたしらは一瞬たりとも天の神から目を離さなかったよな!?」
「わからない...。でも、そんなことも可能なんでしょうよ...なんてたって相手は神様なんだから...。」
「まさかあたしと似たようなことができたなんて...。」
一方、樹は遠くにいる天の神をいまだに見つめていた。
「ダメ......ダメ...です...!神樹様のところへ行かせたら......すべての計画が...。園子さんの今までの努力が...また台無しに......。」
樹は拳を強くに握り、再び天の神に向かって飛んでいく。
「......満開の時間も残り少ない...。ここは一気に、大技を決めます!!」
樹はありったけのワイヤーを出せるだけ出し、腕をぐるぐる回してワイヤーの竜巻を作る。
「くっ......ぅぅううっ......!!」
ただし、この技はあまりの強力な圧力と爆風により自分にかなりの負荷がかかる。
「この『糸』の竜巻で......あなたを捕らえるっ!!くらって~~~~!!!」
その『糸』の竜巻を、天の神に向かって飛ばす。しかし
「...!!」
...炎。天の神に大ダメージを与えた後、銀と夏凜が飲み込まれそうになったさっきのあの炎。それと同様の大きさの物が天の神中心部から放出された。
「あっ.........。」
樹のワイヤーはほんの一瞬ですべて焼き切れ、竜巻も嘘のように消え去った。その炎は自分が思っているよりも速いスピードで迫ってきて樹は反応に遅れた。
「ヤバい樹っ!!逃げろー!!」
銀は樹に向かってそう叫ぶが、その時にはもう遅い。樹はすぐに下へ向かったが......上空を覆い尽くすほどの炎の中に消えた。
『......!!!』
その一目見た光景に、銀と夏凜は思わず言葉を失う。
「やだ......うそ...でしょ............?樹っ~~~~!!!」
夏凜は腰が抜け、その場に座り込みながらも彼女の名を叫んだ。
「くそっ.........樹...。」
銀はすぐさま天の神を睨む。そして強く噛みしめ、激しく歯軋りをする。
「あの野郎っ...!!!」
銀は満開を使おうと一歩足を踏み出すが、
「待って銀...!あれ、見て...!」
夏凜は空を指差して口を押さえている。銀は夏凜が指した方向を見る。するとそこには
「!!......樹だ!」
樹が頭から落っこちてきていた。見るからに、どこも怪我を負っていない。だが気絶しているらしく、様子がおかしいのは落ちてきている感じですぐにわかった。
銀はすぐに動き、落ちてきた樹をキャッチ。夏凜のところへ戻って樹に声をかける。
「樹!樹っ!!大丈夫!?」
「.........夏凜...さん...?銀さんも...。」
「よかった...!気がついた!」
「...ったく!心配かけんじゃないわよぉっ!」
夏凜は号泣しながらそう言う。
「......。あの一瞬で、このワイヤーを使って自分の体全体に巻いたのか。それで炎を防いでダメージをできるだけ減らした...。樹天才だな。さすがあたしの後輩なだけある。」
「私の後輩でもあるわよ!」
「...どっちもカッコ良くて尊敬してる先輩ですよ。」
『!!』
「樹ぃ!ほんっとお前ってヤツは!」
銀は樹を抱きしめ、夏凜は顔を赤くする。
「......でも...どうしましょう...。天の神...。」
「......。」
「......もうどうしようもないわ...。私たちはできるだけのことはやった。あとは園子たちに任せるしか...。」
「...ああ。園子の用事が早めに済むのを祈るばかりだな...。念のためあたしたちも神樹様の近くまで移動するか。」
「そうね。...樹、歩ける?」
「ごめんなさい...。私......ちょっと無理そうです...。」
「!...樹...!?」
樹の意識は朦朧としている。このまま樹を連れて行っても、彼女に被害が及んでしまうかもしれない。
「私...樹を置いていけないわ...!」
「ああ。同意見だ!」
銀と夏凜は神樹の方を見ているしかなかった。ただ、二人の神同士が近づいていくのを見ることしか。
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現在 神樹付近 園子サイド
「天の神っ!!!私ならここだよ!!!私のこと殺したいんでしょ!?なら、私を狙いなさいっ!!!私もあなたと同じ気持ちだから...!!今ここでリベンジさせてもらう!!!何度もいろんな未来を見てきた者同士......今度こそケリつけようよ。私とあなた!1体1の真剣勝負!!私はもう負けないよっ!!絶対に止まらない!!死ぬまで戦い続ける!!!」
園子のその叫びで、天の神は反応したかのように赤く光り輝く。そして園子に標準を合わせて追尾型の大型爆弾を発射した。
「満...開...!!」
園子は満開を使用し、その爆弾を細切れに切り刻む。
「あなたと戦うのだって三回目...!あなたの癖くらいだいたい把握した!」
園子はそう言うと、一気に距離をつめようと空を飛ぶ。天の神は矢を飛ばし園子を牽制する。
(この矢...やっぱり...!さっきあの爆弾を防いでわかったけど、全体的に技の威力がケタ違いに上がってる...!この攻撃を防げるのは、満開でやっと...!)
園子は船を操り、矢を弾くもかなりの衝撃が加わっているのが身にしみてわかった。
(だけど...それがどうした!!)
園子はスピードを緩めない。天の神の中心部に直接、攻撃をしなければダメージを与えられない。近くまで行かないと話にならないのだ。そこで渾身の一撃を...食らわせる。
「どうしたの!!そんなもん!?この世をすべて支配できる力って言うのは!!」
もうすぐ射程圏内...園子は一点に力を集中させる。
(なるべく当てる面積は少なく......一突きで、あいつの核を貫く...!)
「やああああああああああっ!!」
ギィィィィィィィンっ!!!!
鈍い金属音が樹海全体に響き渡り、その一瞬だけ辺りは沈黙に包まれる。
「よしっ...!どうだ神さ...............えっ?」
綺麗に攻撃が決まり、歓喜したのもつかの間...園子は絶望した。
「なにこれ......傷ひとつ...ない...?」
園子が食らわせたその一突きは、貫くどころか刺さってすらいなかった。まるでダイヤモンドにつまようじを刺しているような感覚...それくらいレベルの差があった。
「いや......今の...私の全力だよ...?」
そう呟いたとき、園子はゾッとした。今彼女は天の神とくっついているほどの近さで、無防備でいる。たった一人の暗闇の中、大群の狼にでも囲まれているような感覚に陥った。
(これ......ヤバい......!)
ドッ............
その時、自分がどうなったかわからなかった。気づいたときには地面に打ちつけられており、激しいめまいと吐き気に襲われた。満開によって精霊バリアが消えた園子は常識では考えられない速度で落下したことにより、異常なほどの衝撃を受けたのだ。
「かはっ...!」
その最悪な気分に包まれたとき、園子は死んだと思った。だってそんな感覚、今まで生きてきて味わったことがなかったのだから。園子の周りはクレーターのようなものができあがっており、それは園子が落下してできたものだと言うことに気づいたのはそれから少し経ってからだった。
(視界がグワングワンしてる...。高熱が出たときみたいにすごい気持ち悪い...。一体私は...何をされたの...?満開もいつの間にか解けてる...。こんな一瞬で...?自分が思ってるよりも多くエネルギーを使ってたのかな...。)
園子はただ、跳ね返されただけだった。園子から攻撃を受け、いつまでも離れない彼女を天の神は地面に跳ね返しただけ...。
「......。......うっ...うえっ......おえぇえぇっ.........!」
起き上がろうとしたのと同時に園子は吐いた。嘔吐物と血が混ざったものが彼女の口から吐き出される。
(なんだこれ.........内臓がイカれた...?)
腹を押さえながら、槍を杖代わりにしてゆっくり立ち上がる。
(それがなんだ...!立ち上がれて良かった...。私はまだ戦える!)
「.........うっ...はぁ...はぁ...。」
体の中から襲い来る吐き気を、無理矢理抑えて空を睨む。
(私以外に...誰があいつを倒すんだ...!!)
「...さあ、続けようよ神様...!」
その言葉に挑発されたかとでも言うように、またサジタリウスの矢が園子を襲う。だがそれはさっきとはちょっと違った。
(!...なにこの広範囲...。町一個分はある...!)
明らかに園子一人相手にすることではない。こんなものが直撃すれば、町丸々一個崩壊は確定だ。しかしもちろん、こんな広範囲のものをひとりで防げるわけがない。いや...勇者全員揃っていたとしても無理すぎる。もうこの時点で手の施しようがない。
「...っ!」
園子はとりあえず自分の身だけを守ることに専念した。周囲の矢はすでに樹海に着弾し、激しく爆発する。この矢一つでミサイル一個分以上の破壊力はあった。
こちらに向かってきた矢を、彼女はギリギリでかわすも...
ボッカーン!
「...きゃあっ!!」
激しい爆風により、園子の小さい体は風の強い日のビニール袋のように軽く吹き飛ばされる。
ザザザザ...!
吹き飛んだ園子は樹海に転がり、肘と膝を擦りむく。倒れている暇はない。すぐにまた矢の雨が降ってくる。まさにそれは、局地的豪雨だった。
(こんなの......どうすれば...!樹海がどんどん......壊れていく...!!)
「......はっ...!」
そしてついに避けられない一撃が飛んでくる。この矢の破壊力から当然、通常のサジタリウスの矢の雨を防げる槍の傘では無理がある。
(弾くしかない...!)
「うおおおおおおおっ~!!!」
そこで園子は思い切り槍を振った。
ガギィィィィィィンっ!!!
(すごい...力......!)
ドガガガガガーン!!!
「きゃああああ~!!」
園子はうち負けた。勇者の全力でも歯が立たないほどの威力だったのだ。手にしていた槍は彼女から離れてぶっ飛ばされ、彼女はまた爆風で飛ばされて転がる。
「うっ......ぅぅぅ~......」
園子は悔しかった。地面を叩き、自分の無力さとまた作戦が失敗したことを恨んだ。そして再び矢が彼女に落ちてくる。槍はさっき飛ばされてどこかに行ってしまった。彼女自身もこの場に飛ばされてすぐだったので避ける時間もない。
ガン!!
思わず目を閉じるが、大きな金属音が聞こえてきたのですぐさま開けた。するとそこには...
「...フーミン先輩!?」
風が自らの武器を用いて盾になってくれていたのだ。まさかあの威力の矢を止めるとは。風がここまで来てくれたことも合わせてとても驚いた。
「大丈夫乃木?......これくらい、私の女子力にかかればね...!」
風は大剣を野球のバッドのように見立て、その矢を少しずつ押し返していく。そしてついに
「......どうってことないのよっー!!」
大剣を振り切り、矢をぶっ飛ばした。
「ほら見なさい!超特大ホームランよ!」
「すごい...!さすがですフーミン先輩~!」
だが安心したのもつかの間、矢の集中豪雨は止まない。
「乃木!一体これはどうなってるの!?...あいつったら急に暴れて...。」
「二つ存在していた天の神が...一つになったんです。」
「えっ...!?それってつまり...作戦失敗...?」
「......。」
園子は唇を噛み締め、悔しそうな表情をする。そんな彼女の顔を見た風は彼女の気持ちを考えて話を切り替えた。
「...とりあえず、乃木は早く槍を拾ってきなさい。今はこの矢を何とかしないといけないからね。このままじゃ樹海全体がめちゃくちゃになる。どうせあいつ、また本気出してないんじゃないの?」
「...たぶんそうです。でもこの範囲の攻撃...どうしたら...。」
矢を避けながらも、園子は器用に槍を拾う。
「この範囲全部はキツいわよね。ただでさえ今、避けるのもやっとなのに。」
と、話していたとき。突如、豪雨がピタリと止んだ。
「えっ!?何...?なんで急に止まって...」
「フーミン先輩...!きっとまた何かきます!」
二人は立ち止まり、武器を構えて空を見る。そして園子の思った通り、天の神は次の攻撃へと入った。
ゴロゴロ......ゴロゴロゴロゴロ...
「この音って...雷...!?」
「フーミン先輩かがんで!!」
ピシャン!!!
一瞬辺りが光り輝き、何本か雷が樹海に落ちる様子が見えた。
「うわっ...!」
二人は頭を抱えてしゃがみこむ。風たちの近くにも落ちたらしく、轟音と光の眩しさが彼女たちを襲った。
「いやあっ!?やっぱり雷!?」
「近い...もうちょっと先に進んでたら危なかった...。」
天の神は他にも何ヶ所かに渡って雷を落とし続けている。
「手当たり次第に落としてる感じね...。樹海を壊すのが目的...?」
「いや...これはたぶん......」
と、また彼女たちの近くに雷が落ちる。
「やあもう!!やめて~!!」
「フーミン先輩!高いところは危ないです!下、行きましょう!」
園子と風は樹海の隙間に入り込んで天の神からも見えない位置に身を隠した。
「見た感じ雷もかなりの威力がありそうね...。」
「天の神はたぶん、今の自分の力を試してるんだと思います。」
「はあ?試し?これが?」
「はい。...明らかに私たちを狙おうという気はない...。かといって一瞬で樹海を消そうともしない。おそらく強くなりすぎた自分の力を制御する練習をしているんです。」
「でもあんた狙われてたんじゃないの?さっきのだって...」
「確かに最初はそうでした。でも、あれはたぶんたまたまです。」
「そう...たまたまねぇ。」
「だけど、これはチャンスです。」
「え?チャンス?」
「はい!こうやって試しているということは、まだ完全に自由自在に自分の力を使えてるわけじゃないと思うんです。...だから今この時こそが勝つチャンス!」
「なるほどねぇ...。でも、試しているという割にはとんでもない力だったけど...私たちだけで勝てるの?満開ももう使っちゃったわよ?」
「あ、私もです...。」
「そもそもあいつ、たっかいところにいるから届かないのよね~...いくら全力でジャンプしても全然。」
今こう話している間にも、樹海はどんどん壊されていく。
「とにかく今できることは...注意をこちらに引きつけさせることでしょうか。」
「狙いをこっちにして、樹海全体のダメージを減らすってこと?でもそしたら私ら絶対避けられないわよね?避けたら樹海に当たるわけだし...。さっきみたいに跳ね返し続ける?」
「そうするしかありません...!私たちが樹海の盾になるんです!その間に私があいつを倒す算段を何とかして...」
と、アツく語っていると風が園子の肩にポンと手を置いて静かに言った。
「...焦るのはわかるけど、一旦落ち着きなさい。冷静になるのよ。」
「...!私は冷静ですよ。樹海を守ってあいつを倒すために...」
「全然冷静じゃないわ!そんな作戦じゃ、私らどちらもダメになる...!乃木も味わったんでしょ?あいつの攻撃の恐ろしさ!」
「......。」
「私だって何回もさっきのようにはできない...!それに私たちに攻撃を集中させ続けたらもっとヤバいに決まってるわよ...!!」
「じゃあ...どうしたら...」
園子は膝と手を地面につき、涙を落とす。
「また...またダメなんですか...?これ、最後の最後だったんですよ...?もし勝てたとしても、この樹海のダメージじゃ...。」
そんな園子を、風は立ったまま見つめる。そして腕を組んで園子に告げた。
「なに諦めようとしてんのよ!乃木らしくない!まだ負けたって決まったわけじゃないでしょ!?」
「...。」
「まだみんな生きてるんだから!勝機はいくらでもある!...戦い続ける限りはまだ負けてないのよ!」
「フーミン先輩...!」
「......ど?今のかっこよかった?」
「はい!!すごく勇気貰いました~!ありがとうございます、フーミン先輩!」
「......うん、それでいいのよ乃木は。」
それから少し経過。外は雷からまた矢の豪雨へと戻っていた。そして風と園子は二人で固まってそこから飛び出た。
(なるべく二人で行動する...!ひとりじゃダメでも二人なら...)
度々くるどうしても避けられない矢。それが来た場合は---
『二人なら跳ね返せる!!』
園子は槍を、風は大剣を握り、先ほどのようにバッドを振る感覚で矢を迎え撃つ。
『おりゃああああああっ!!!』
キィィィィンっ!!!
見事、跳ね返すことに成功。二人はハイタッチをする。
「やっぱり思った通り!さっきよりもずっと楽だわ!」
「はい!これなら長い時間耐えられる!」
一本の矢が跳ね返されて違和感を感じたのか、天の神が赤く光って園子たちに追撃を与える。
「どうやら気づいたみたいね!」
「いきましょうフーミン先輩!」
『え~~~いっ!!!』
見事、その追撃をも跳ね返す。
「いい感じ!『野球作戦』!」
「よし、この調子でわっしーたちと合流できたらいいけど...」
東郷と友奈はまだ神樹の中なのか。園子はそれが気になっていた。だがしかし、
ジバババババ...!!
「えっ...?」
突然二人の髪の毛が逆立ち始めた。
「な、なにこれ?...もしかして私の中に眠る力が目覚めたりとか...!」
「いや、この感じは静電気...?」
(まさか!)
園子は空を見上げる。少し、空が光って見えた。
(やっぱり雷だ!雷で私たちを狙う気だ!雷なら、跳ね返しようがないから!)
「フーミン先輩気をつけて!雷が......」
「乃木危ないっ!!」
「え...?」
トン...
園子が風の方を見たとき、なぜか横から雷が迫ってきていた。雷の光に照らされて風が光り輝いて見えた。園子はそのまま風に庇われて遠くに飛ばされる。
ズザザザザ......
園子は再び地面に転がった。
「フーミン...先輩...?」
あまりの高電圧により、周りは静電気を纏っていた。それがその場にいるだけでわかった。彼女の長く、サラサラで綺麗な髪も今までに見たことないくらい逆立っていた。
そして空には一つ、キャンサーの反射板があった。
(あの反射板...雷も反射できるの...?)
だがそんな考えは一瞬で吹き飛んだ。目の前で風が倒れている。
「え.........フーミン先......」
ドッゴン!!
その手は風に届かなかった。二人の間に矢が落ち、二人を引き離したのだ。
「ぐっ......!」
土煙を払い、空を睨む。
(天の神め...!近くに行かせてもくれないのか!でも、大丈夫ですよね?フーミン先輩なら!)
園子は風を信じて立ち上がる。また槍を握る。歯を食いしばる。息は荒く、すでに戦う気力などゼロに等しかったがそれでも彼女は立ち上がった。...なぜなら彼女は、勇者なのだから。
「うおおおぉぉぉぉおおおぉぉぉぉおおおっ~!!!」
雄叫びをあげながら、彼女は高く飛んだ。そして進み続ける。彼女の望む世界を創るため、彼女は命をかける。
ピカッ
再び天の神は光り、それと同時に反射板が園子の行く手を阻む。横一列に綺麗にならんだそれは、まるでレンガの壁ができたのかと思うほど正確に作られた。
ガギンっ!
(...っ!硬っ!!)
バシっ
反射板に叩かれて地面に逆戻り。その際、園子は足を軽くひねってしまった。
「痛っ...。足が...。だけど片足だけならまだ大丈夫!」
と言ってすぐに立ち上がるが...
シュンッッッ...!!
(え...?)
ほんの一瞬。人間の目で捉えられるギリギリの速さで空に一筋の線が見えた。と、その直後...さっきの線に沿って横一直線にビームが発射された。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォ!!!
とてつもない轟音を響かせながらそれは進み、樹海の表面を削った。その際、あまりの迫力と現実とは思えない情景に園子の思考は完全に停止した。ただ、そのビームを見上げていただけだった。
彼女はそのビームと似たようなものを、一度見たことがあった。あの時...友奈と天の神との一騎打ちのとき。このビームになんとか打ち勝ち、友奈は勝利を収めることができた。あれがここまでパワーアップしている。地面に直撃したら間違いなく...樹海はおろか世界ごと消えてなくなるだろう。
「............あ......。」
園子が正気を取り戻したのはそのビームが収まったときだった。
(なんでいきなりあの方向を...?)
「はっ...!もしかしてあっちは...ミノさんたちが...!?」
嫌な考えが頭をよぎる。銀一行を見つけた天の神が、三人を狙って今のを撃ったとしたら...
「.........。」
再び槍をギュッと握る。そして再び矢が振ってくる。さっきとおんなじ。天の神はこれしか繰り返さない。...相手が勇者一人ならば、これで十分だからだ。
園子は数発避けるも、かわせない矢が必ずやってくる。一人では跳ね返せない。ましてやもう彼女の体力は底をついている。
キンッ!!
(えっ...。)
これまで蓄積されてきたダメージが、今になって限界を迎えた。...園子の武器である槍が、"折れたのだ"。
折れた槍はブンブンブン!と音を立てながら回転し、弧を描くように空中に飛んでいった。そして"ガキン!"と地面に突き刺さった。園子の手は槍が折れたときの衝撃でジンジンと手が痺れた。さらにさっき挫いた足の痛みがやってくる。それによって彼女はバランスを崩し、その場でこけた。
「あぁ......。」
彼女は今までで一番絶望していた。周りには誰もおらず、ここまで何も手が出せなかった敵は初めてだった。もうタイムリープもできない。空からはまた、無数のサジタリウスの矢が振ってくる。身を守る武器ももうない。体力もなく、立つ気力もゼロ。痺れる手を見た後、星が振ってきているかのような空を見上げた。彼女にはもう、それが綺麗にすら見えた。
「がんばった方だよね私...。ごめん、みんな...。」
死を迎える瞬間とは、こういうものなのだと直感した。園子は女の子座りで矢という星を見、ゆっくりとまぶたを閉じた---
シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ....................................
(...?)
さっきまで鳴り響いていたはずの矢が降る音と、地面に着弾して爆発する音が突然消えた。いきなり襲い来る沈黙。そこで園子はまだ自分が死んでないことに気づく。走馬灯を見ているわけでもない。園子はゆっくりと、目を開けた。
「......!!!」
あまりに驚きすぎて声が出なかった。それから同時に目を見開いた。彼女の目の前にあるのは、右拳を上げた一人の少女の姿。彼女の姿はとても神々しく、同じ人間のようには見えなかった。言うとするならば、彼女こそが『神』。そしてようやく、園子はその少女の名を呟いた。
「ゆーゆ......!」
園子を守ったのは『結城友奈』だった。彼女の姿は通常の勇者装束ではなく、満開装束でもない。これこそ、奇跡によって誕生した彼女独自の進化。その力は通常の天の神をも凌ぐ。...この形態を名付けるとするならば、『大満開』。
「お待たせ、そのちゃん。」
友奈は背中でそう語り、拳をゆっくり下げた。辺りは一面花畑に変化しており、それはどこまでも続いていた。園子は自分が天国にでもいるかのような気分になった。花びらが舞い、それらが二人を包み込む。
「ありがとう。そのちゃんたちはここまでよく戦ってくれた。耐えてくれた。...あとは任せて。」
ボロボロの園子は思わず涙が溢れそうになる。そして...友奈は深呼吸をして"ヤツ"を睨みつける。
「...反撃、開始だよ。」
(第55話に続く)
ようやく大満開友奈の登場です!いや~やっと素の友奈が書けました!今までずっと憑依されてた友奈でしたからね~。ついに書けて嬉しいです!(やっぱりかっこいいな大満開友奈は)
3月中には完結予定です。次回もまた...お楽しみに!
今まで見てきた未来で一番驚いた未来はどれでしたか?
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銀が自殺した未来
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風が暴走した未来
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芽吹と鉄男が死亡した未来
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友奈に勇者・防人が全滅させられた未来