【第29話】Cruel fate or Happy ideal ~ second half ~ より
勇者御記【原本】 298.10.11
私たちは戦いに勝利した。この世界を守った。けど、失ったものが多すぎる。体の機能、大切な友達、そして自由...私たちは今頃三人で日常を過ごしていただろうに。
わっしー...今は東郷さんか。私たちより軽度でよかった。
「...反撃、開始だよ。」
友奈は空に君臨する神にそう告げる。そして次の瞬間、一瞬にして天の神との距離を詰めた。
「たあっーー!!!」
ボゴンっ!!!
空中で激しい爆音が鳴り響く。友奈のパンチが繰り出される度に天の神は園子を叩きとばした反射板で防ぐが、どれも一撃で粉々に砕ける。
「やっぱりすごいや...ゆーゆは...。」
安心した園子は思わず気を失いそうになる。が、横たわりそうになったところを誰かが支えてくれた。
「...?......あ...。」
「大丈夫?そのっち。遅くなってごめんね。」
「わっしー...?」
「友奈ちゃん救い出すの、ちょっと時間かかっちゃった。でももう大丈夫。...友奈ちゃんは絶対あいつに勝つ!」
「...!......うん、そうだね...!」
友奈は攻撃の手を緩めない。天の神は少しずつ彼女に圧されている。
「友奈ちゃん...すごく怒ってる。」
「そうだね。今まで自分の体を乗っ取られてたから...。」
「そうだけど、他にも理由があるわ。」
「えっ...?」
「友奈ちゃんは、天の神に体を乗っ取られている間...意識自体はあったらしいの。だからずっと見ていたのよ。...そのっちの苦労を。私たちの頑張りを。」
「...!」
「だからすごい怒ってるのよ、友奈ちゃん。自分の体を使われて、友達をこれでもかってくらい傷つけられたから。」
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「はあっー!!!」
ドンッ! ゴォンっ! ボォンっ!
攻撃同士がぶつかり合う衝撃が、こちらにまで伝わってくる。どちらもとんでもないパワーだ。
「わっしー...お願いがあるの。」
「...何?」
「私を天の神のところまで連れてって!」
「えっ!?そんなの危険すぎるわよ!私も満開使っちゃったし...無茶がすぎるわ!」
「それでもやらなきゃいけないの!...ゆーゆじゃ天の神をやっつけられないかもしれない...。」
「えっ...?」
「天の神は、ゆーゆにやられたときに不思議なことが起きてタイムリープしたと言ってた...。またそれを繰り返せば、あいつを過去に逃がしちゃうかもしれない!そうなればそれこそ終わり!天の神にリベンジ仕返される!」
「...でもそれはそのっちがトドメを刺したら済むことなの?そのっちの体に憑依する可能性があるんじゃ...。」
「確かにそうなるかもしれない。...でも、元はと言えば最初のタイムリーパーはあいつで、タイムリープの発端なんだよ。ゆーゆの体から離れた今なら、私が倒せるはず...!あいつさえやっつけられれば、この世からタイムリープに関するすべての能力が消えると思う!...相手の心を読む力も、ミノさんの幻を見せる力も全部!」
「......。じゃあ銀がやっても大丈夫ってこと?」
「そうだけど、ミノさんは今この場にはいないから...私たちでやるしかない。」
「......。わかった。やってみましょう。でも友奈ちゃんに相談してからね?下手したら二人の戦いに巻き込まれるかもしれないから。」
「うん。ありがとう、わっしー。」
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「はぁ...はぁ...はぁ......。」
(天の神は、全然体力消耗してない...?こんなにやったのに攻撃の精度が落ちない...!)
「はぁ...はぁ...はぁ......くっ...!」
友奈は一度下に降り、園子たちと合流した。
「友奈ちゃん!」
「はぁ...はぁ...結構あいつしぶといよ~。こんなに連撃してるのに全く疲れてる気配がないんだよ。」
「......。ゆーゆ、私の作戦聞いてくれる?」
「...!何か思いついたの?そのちゃん!」
園子は友奈の耳に自らの作戦を囁き、伝えた。
「OKわかった!やってみよ!!」
と、その間も休ませてはくれない。空から矢と雷が混じって落ちてきた。だが...
「ちょっとやめてよ!今話してるんだから!」
友奈はそう言って拳を振る。すると、一瞬にして一度に攻撃が消え去った。
「よし、いくよそのちゃん!東郷さんもよろしく!」
「うん、いこう!」
「任せて、友奈ちゃん!!」
友奈は園子を背負い、東郷は狙撃銃を手に進む。
「やあっー!!!」
友奈は再び拳を振る。が......
カッ......!!
『...!!』
今までと光り方が違う。天の神の様子が変わった。
ドゴンっ!!
園子が気がついたときは地面に逆戻りしていた。だが園子はノーダメージ。
(なんで...!?いつ地面に押し返された...?)
「くっ...ぬうぅぅ...!!」
「!!......ゆーゆ!?」
友奈が園子を守ってくれていたからだった。今も尚、現在進行形で園子のことを守ってくれている。何から守ってくれているのかと言うと...
「これ......さっきのビーム...!?」
友奈は両手を上にあげてなんとか耐えていた。だがいまにも押しつぶされそうだ。
「そのちゃん......早くここから...逃げて......!」
「えっ......?そんなことできないよ!このままじゃゆーゆが...!」
「私は......大丈夫...!まだ、全力は出してな............きゃっ!?」
友奈は膝をつく。少しずつ威力が強くなってきているのだ。また天の神は弄んでいる。ちょっとずつ、ちょっとずつ力を強めていって友奈を潰しているのだ。
「あ、ああっ......!!」
友奈は汗をかきながら苦しそうに息を吐く。もう限界が近いらしい。全力を出していないと言うのも、園子に安心して逃げてもらうための嘘だった。当然、園子にはそんな嘘は通用していないが。
(何か...何か...私にできることは...!?このままじゃゆーゆが...!)
「そのちゃん......早......くっ......!......私は...いいからっ......!」
「ダメっ!絶対ダメ!!」
と、その瞬間だった。
「......!てやっーー!!!」
突然、友奈がビームを跳ね返し始める。そしてそのまま右拳で打ち消した。
「はぁ......はぁ......。」
力を出し切り、疲れた友奈は地面に降り立って手をつく。
「ゆーゆ大丈夫!?」
「うんっ...!でも、急にどうしたんだろう...。一瞬だけビームの力が弱まったんだよ。私はその瞬間にパワー解放させて打ち消せたの。」
「弱まった...?」
園子は再び空を見上げる。
「...!あれは...!?」
空から落ちてくる金属のような一つの塊。ドゴンッ!と大きな音を立てて友奈たちのすぐ側にそれは落ちた。
「ふうっ...!大丈夫か二人とも!」
「ミノさん!」 「銀ちゃん!?」
その塊から出てきたのは銀だった。鉄の塊に見えたそれは、銀の満開装備だったのだ。
「よかった...無事だったんだねミノさん!......?...にぼっしーといっつんは...?」
「......。あたしがここに来れたのは二人のおかげだ。二人が必死になってあたしを守ってくれたから...。」
「...!」
「樹は見つからなかったけど、夏凛は大丈夫だった。樹のことは夏凛に任せたから。...きっと大丈夫さ。」
「...そう。」
二人のことは心配だが、今は目の前の敵をどうにかしないといけない。園子は銀に聞いた。
「ミノさんたちが助けてくれたんだよね?...私が全力の攻撃してもあいつには通じなかったんだけど...。」
「...あいつ、完全に友奈と園子にしか目がいってなかったから隙を狙えたんだ。須美の援護もあってな!」
そう言うと、満開装備の影から東郷までもが姿を現した。
「友奈ちゃんもそのっちも、無事でなによりだわ。そして、新しくわかったことがあるの。」
「...わかったこと?」
「ああ、そうなんだ。どーやらあのえっぐいビームを撃っている間、あいつの防御力は各段に減るらしい。」
「どうしてそれがわかったの?」
「私と銀の攻撃があいつに効いたからよ、友奈ちゃん。一瞬だけどちょっと怯んだ気がしたの。」
「そっか...!だからあの時だけビームの強さが弱くなったんだ!ありがとうー!東郷さん!銀ちゃん!」
「これくらいどうってこ...」
「これくらい当たり前よ!!友奈ちゃんのためならたとえ私は火の中水の中天の神の中っ!!」
「おーい須美、調子に乗るなー。」
銀は東郷の耳を引っ張り、彼女を正気へと戻す。
「だけど問題はここからだ。あたしらが邪魔したからあたしらの位置もバレた。もうさっきのようにはいかない。...どうやってあのビームを撃っている間に中心部に攻撃をして、怯ませるかだ。そしてその怯んだ瞬間に、友奈のパンチを打ち込む!防御力が下がるといっても、あたしらじゃ厳しそうだからな。」
「わかったよ銀ちゃん!トドメは任せといて!元々そのつもりだったし!」
「あの...そのことなんだけど...。」
これまで聞き入っていた園子がようやく口を開く。
「トドメはゆーゆじゃダメだと思うの。私かミノさんしか、あいつを倒せないと思う。」
「あっ、そうか。『タイムリーパーにはタイムリーパーを』だったな。」
「また友奈ちゃんが乗っ取られる可能性があるということね...!!」
「.........だからゆーゆは、私が天の神の中に入れるくらいの傷をつけてほしい。」
『天の神の中に入る!?!?』
一同は声を揃えて驚いた。
「おいおいそれって...どーゆーことだ!?そもそもそんなことできんのかよ!?」
「...わからない。けど直接あいつの魂を消し去らないと、この戦いには終わりが見えないと思うの。たとえ私たちの世代は大丈夫だとしても......その先の未来、いつか...。」
「でも、神様の魂なんて消せるのかしら?...そんなことしたらそのっちだって危ないんじゃ...」
「そうだよそのちゃん!危険すぎるよ!」
「でもっ...!それでもやらなきゃ!じゃないと倒せないんだよ!別の体を見つけるか、生成するかして、何回でも世界を滅ぼしにやってくる!だから...ね...?...............もしも私の身が危ないと判断したなら...その時はミノさん、わっしー、私をお願い。」
「えっ...?」
「『全員一緒に帰る』んだもんね?...頼んだよ。」
「了解。そのっちは必ず守るわ。」
「......わかった。あたしたちに任せとけ、園子。」
銀は笑顔ではなく、神妙な面持ちでそう答えた。
「どうしたのミノさん、顔ちょっと怖いよ?」
「そりゃ......怖くもなるよ...。ここにきて実感沸いてきた...。」
「......。」
園子を見つめる銀の目は潤っていた。園子は思わずそんな目で見つめないで欲しいと思った。自分も覚悟が揺るぎそうになったから。
「...みんな!もう次の攻撃がきそうだわ!」
東郷はそう言って指を上空にさす。
「やるしかないな、アレを!!」
「うんっ!ここは強行突破!激しいぶつかり合いを制するしかないっ!!」
園子と東郷は銀の満開装備に乗り込み、友奈はそのまま飛んで天の神に突っ込んでいく。
ドドドドドドドォォォォオォォォォ.........!!!!!
「来た...!」
「任せてみんな!!......うおおおおおおおおおおおっ!!!!」
友奈は大きく拳を構え、
「勇者ああああああああ~......パ~~~ンチっ!!!!」
ゴゴゴゴゴゴオオオオオオオオオオオオンッ!!!!
『わあっ!?』
天の神のビームと友奈の全力のパンチ。それぞれがぶつかり合った衝撃で、思わず三人はバランスを崩す。
「ほんと、どっちもすごいパワーだな...!ビームの横、通るだけでも溶けてなくなりそうだ...!」
「この世のどの兵器よりもずっと恐ろしいわ...!これが神様の力...。そしてそれに匹敵する友奈ちゃんさすが!!」
「今のうちに中心部を...!......あっ...!?」
だが、もちろん先ほどのようにはいかない。警戒している天の神は、ビームを放ちながらも三人を始末しようと攻撃してくる。
「私が全部撃ち落とす!」
東郷は狙撃銃を手に、こちらに向かってくる攻撃を迎え撃つ。彼女の狙撃、早打ちの性能はピカイチだが、飛んでくる攻撃の数も数だ。すべては撃ち落とせない。
「ごめん銀!ちょっと逃した!」
「へへっ!これくらいお茶の子さいさいよ!」
銀は華麗に、東郷が逃した攻撃を避ける。
「よし...この調子なら...!」
ズゥンッ!!
『!?』
刹那、ビームの威力が上がった。それにより直撃していないにも関わらず、三人は風圧でぶっ飛ばされる。
「...っ!みんな掴まれ!」
銀が手を伸ばし、東郷の手を取る。東郷も同じように手を伸ばして園子の手を掴んだ。
「危ない...!せっかくここまで来たのにまた地面に戻されるところだった。」
「あのビーム...。まだ全力じゃなかった...!?」
「友奈ちゃんは......友奈ちゃんは!?!?友奈ちゃあああんっ!!」
東郷は焦り、友奈の名を叫ぶ。
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「ううっ............くっ.....うわっ.........!」
友奈は少しずつ押し返されていた。あれほど威力が高くなったのにそれでもまだ耐えている。
「私が......私が押されたら............みんなの努力が...無駄になるっ......!東郷さんたちが......たどり着くまでは.........私...どうしても耐えなきゃ.........絶対...!」
そうは言っても限界は近かった。友奈は命を削る覚悟で力を振り絞る。
「ぬっ......うぅっ.........わあああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」
自身の力を最大限に解放させ、大満開のすべての力を放出する。
(押し返すんだ...!天の神二人分がなんだ!こっちはたくさんの人たちと神様の、、、)
「みんなの力が集まってるんだあああああああっ!!!」
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友奈の懇親の叫びは樹海に響き渡り、園子たちの元にも届いた。
「友奈ちゃん...がんばってくれてるわ...!」
「ああ...!そのおかげでもうすぐだ!」
シュン.........
『え......?』
一瞬。ほんの一瞬。見えなかった。目で捉えられなかった。それほど早い『矢』が、三人の胸を貫いていた。
「えっ...?なに、これ......。」
あまりの突然の出来事で三人とも頭が真っ白になる。そしてそのまま地面へ落ちていく.........と思いきや。
ブゥン......
三人はおろか、満開装備も含めて霧の中に消えるかのようにかすみながら姿を消した。
「かかったな!そっちはあたしの幻だっ!!」
銀は得意気にそう言う。本物はさらに天の神に接近していたのだ。そして---
「くらええええっ!!!」
ザシュッ!!
銀の満開装備による爪の一撃が決まる。
「見たか天の神っ!!」
「神樹館勇者組が全員集まれば...!」
「たとえ相手が神様であろうと~!」
『関係ないっ!!!』
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「...!」
ビームの威力が明らかに弱くなる。その時を、友奈は待っていましたと言わんばかりに力を出し切った。
「......うおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉおおおぉぉぉぉぉおおおぉぉぉっ!!!!!!」
彼女の拳にブーストがかかる。先程まで押されていたのが嘘だったかのように、天の神のビームを一気に突き返していく。
それからついに。
ドォンっ!!!
友奈の拳は見事、天の神の中心に命中した。
バギっ!バキッ!
彼女の命を懸けた一撃は、天の神の予測を遥かに上回る力だった。あれほど頑丈だった中心部を砕き、バラバラと肉体の一部が落ちていく。このまま押し切れば粉々に砕け、体は消えてなくなるだろう。だがそれではダメだ。彼女がトドメを刺してはいけない。
「園子!これを使え!」
そう言われて銀から受け取ったのは、彼女の武器である大きな『斧』だった。園子は、それを一本託された。
「園子の武器、壊れちゃったんだろ?だったらあたしの武器で天の神を倒しちゃえ!」
「......!...わかった、ありがとうミノさん!」
銀の満開が解けていく。もう時間切れのようだ。徐々に三人とも降下してきている。
「そのちゃん!今っ!!!」
友奈からの合図がきた。それを聞いた園子は、合図の瞬間とほぼ同時にそこから跳躍する。
「そのっちぃ~~!!」
「いけえっ!園子ー!!」
友奈が広げた天の神のヒビに、園子は槍を思い切りザクッと刺した。
「やあああああああああああっ!!!」
『いっけえええええええっ!!!』
そして、そのまま押し込む。
ズズズズズ......
と、園子はその勢いのまま天の神の中へと吸い込まれるようにして入った。
「!?そのちゃ...」
友奈は左手を伸ばし、彼女の手を掴もうとする。だが。
ゴゴ.........ズゴゴゴゴゴゴオオオオオォォォオオォォオンっ!!!!!
『きゃあっ!?』
天の神の体が完全に破壊しきられたことにより、大爆発が発生する。その爆風により、三人は一瞬にして上空から吹っ飛ばされた。まるで竜巻の中に巻き込まれたかと錯覚するほどの衝撃だった。...最初の未来で天の神を倒したときにはこんな爆発は起きなかったのに。
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(はあっ...!?はあっ...!?な、なんなのだ...この感覚...?震えが止まらない...寒気が収まらない...!こ、こ、これは......この感じは体が...?...いや、魂も消えてきている...!そんなバカな...!?神であるこの我が消えるはずがないっ!!!神において死など......存在するはずがぁっ...!)
「...決着は着いたんだよ。」
(...!)
辺り一面真っ白、まっさらな空間。その白はどこまでも続いており、無限に広がっていた。......この場所は、天の神の精神の中。
(な、なぜソナタがここに...!一体どうやった!?)
「さあ、私もわからないよ。あなたを無我夢中になって倒そうとしてたらいつの間にかここにいた。...でも、ここに来れたってことは成功したんだ。」
園子の目の前に見えているのは神樹の中で見た、もやのかかった"魂"らしい姿ではなく、人型のような姿だった。だが、その体は下半身から崩れ、消えてきている。
「私たちはあなたを倒した。...あなたの負けだよ!」
(そ、そんな.........我が、負け......?............あ...)
もうすでに体の半分が消えかけている。それでようやく実感が湧いてきたのか、天の神はだらんと肩を落として話し始めた。
(我は......死ぬのか...。消えてしまうのか...。)
「人間に味方してくれている神様だっているの。あなたは多くの神様を敵にした。...それのツケが回ってきたんだよ。」
(どうしてだ...。)
「えっ...?」
(どうしてこうも、悪くない気分なのだ...!ここまで完璧な力を手に入れておきながら、人間に負けたのに......なぜこんなにも清々しい気分でいれる...。)
「......。...あなた、前の未来でにぼっしーたちを全員殺して来たって言ってたけど...あれは嘘なんじゃない?」
(え...?)
「厳密には半殺し状態にしただけ。完全なトドメまでは刺していない。...違うかな?」
(な、なぜそんなことを聞く...!)
「...私とミノさんがタイムリープできたのはまだあの時には二人とも息があったから。あなたはミノさんを殺してなかった。......あなたの中に、『心』が芽生えてしまったから。」
(...!!!)
「みんなのことだって最後のトドメを刺さなかったんだってね?フーミン先輩たち、全員声を揃えてそう言ってたよ。...用意周到のあなたならきちんとそういうのはしておきそうなのに。」
(.........。そうか、そんなことを。...『皆殺し』すると言っておいて我は何をしているのだろうな。)
彼はさらにうなだれる。
(......あの時、最初に東郷を殺めたとき......何かおかしな気分だった...。それまで全くなんともなくて、楽しんでいたはずなのに。その後、多くの勇者たちを相手にして...。我は自然と自分が本気を出せていないことに気づいた。......自分でも信じられなかった。人間の体で長い時間過ごしたことにより、自分の中に『心』が生まれていたなんて...。)
「あなたは早くその芽生えた『心』を捨てたかったんだね。...その存在が邪魔で、辛かったから。」
(......。)
天の神の魂は右半身が消え、左側も消滅が進んでいく。
(『心』が芽生えても尚、まだわからないことがある。まあいつもの質問なのだが...最期に、それだけ尋ねてもよいか?)
「......うん。」
(...なぜソナタたちは諦めない?あれほど力の差を見せつけたのに、ソナタはもちろん周りの奴らも懲りずに我に向かってくる。あの精神力はなんなのだ?...思えば300年前から気になっていた。300年前も、今の時代よりずっと非力だったにも関わらず何度も向かってきた。......あの力はどこから湧いてくるのだ?)
園子はその問いを聞くと、ふぅ、と息を吐いてから答えた。
「...それが未だわからないってことはまだ完全な『心』を持てていないね、あなたは。」
(......。なるほど。やはり我には理解できんか。)
その時、天の神がフッと笑った気がした。
(......それにしても、今ならソナタがあの乃木若葉の子孫だということを実感できる。今のソナタの顔はまさに、彼女そっくりだ。300年ぶりに再会した気分だぞ。)
もう彼の体はほとんどない。彼は魂が完全に消える前に、園子に伝えた。
(ソナタたちなら、この世界の未来を作れるか。...すべての生物が共存し、同族同士の争いのない平和な世界にできるか。)
「う~ん...前にも似たようなこと言ったと思うけど、正直完璧になくすってのは無理かな~。......だってそれが、人間っていう生き物だから。」
(ふんッ.........相変わらず正直だな。)
そして彼はパチンと指を鳴らす。
(...どっちにしろ我は消える。せめて、ソナタたちへの期待の意味を込めてサービスしてやろう。)
そう言い残して"魂"は完全に消え去った。今、ここに長い戦いの終止符がようやく打たれたのだ。
「...............はぁ~...。」
園子は疲れたとでも言うように大きく息を吐いてその場に座り込んだ。
「やっと...終わった......!」
やがて園子は、そのまま周りの白に呑まれる。目の前が目一杯の光で覆い尽くされた。
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「...............あ、あれ...?そのちゃんは...!?」
樹海のド真ん中で、寝転がっていた友奈は遅刻した朝のときのようにバッと起き上がる。
「え...あんなにボロボロだった樹海が綺麗になってる...?東郷さんたちも、天の神も、何にも見当たらない...。.........あ、ここってもしかして...。」
「友奈ちゃん。」
「...!」
背後から、そう話しかけられる。自分とそっくりの声。...そしてその姿。
「やっぱり...高嶋ちゃん...!」
『高嶋』と呼ばれた彼女は、友奈に微笑んでこう告げた。
「やっと、終わったよ。」
「!!...じゃあ私たちは天の神を...!」
「うん、そう。倒した。......本当に長かったね。」
「.........うんっ...!」
友奈は涙を流しながら、大きくうなずいてそう答える。
「でも、高嶋ちゃんがいてくれたおかげで私、なんとかなった。..."アイツ"に体を乗っ取られている間、あなたが話し相手になってくれたから...!私の心は折れなかった。本当にありがとう高嶋ちゃん...!!」
「ううん。全然そんなことないよ。...だって、頑張ったのは友奈ちゃんじゃない!」
「......高嶋ちゃんは、これからどうなっちゃうの...?」
「私はね、もう消えちゃう。神樹様、かなり無理して頑張ったから。寿命を迎えて消えちゃうの。」
「え......!」
「だからね、私は友奈ちゃんにお別れを言いにきたの。」
「私、もっと高嶋ちゃんと話したい!!」
「......うん、私もそうだよ。でももう時間はない...。」
高嶋は友奈に言葉を贈る。
「もうあなたは大丈夫。みんながいてくれる。...いつかまた会えたらその時はまた、ね!」
「高嶋ちゃ.........あ...。」
友奈が彼女の名前を呼びきる前に、姿を消してしまった。最後に見た彼女の顔は、これ以上ないほどの幸せな表情をしていた。
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「...............。」
讃州中学屋上。勇者部員たちは円を描いて仰向けになっていた。
「......戻って...きた...?」
樹海をあれほどめちゃめちゃにされたのに、現実世界はなんともなっていない。天の神の言っていたサービスとは、このことだった。
「...............ぅ...うぅ......!」
園子は嬉しさのあまり、自然と涙がこぼれ落ちてきた。そんな彼女の顔を、東郷と銀がニコニコしながら見守っていた。
神世紀301年5月15日。歴史的変化が訪れる。神樹、バーテックス共々消滅。結界は消え、外は本来の姿を表す。戦いに参加した勇者は総勢7名。プラス防人隊約30名。死亡者行方不明者ゼロ。...人類史300年以上に渡るバーテックスとの戦いに、決着。
(最終話に続く)
ようやく天の神との戦いに決着がつき、園子の長い戦いは幕を閉じました。その後、大きく変わった世界で彼女たちはどう生きていくのか。これからどうしていくのか。泣いても笑っても次回が最終話です。
とうとうこの時がやってきました...!最後までこの作品をよろしくお願いします。
今まで見てきた未来で一番驚いた未来はどれでしたか?
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銀が自殺した未来
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風が暴走した未来
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芽吹と鉄男が死亡した未来
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友奈に勇者・防人が全滅させられた未来