乃木園子は勇者である ~リベンジの章~   作:てんぱまん

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【第7話】Research

 

「ここが三ノ輪さんの家....結構大きいわね。」

 

「それで~?家に入るわけにはいかないし、どうするの~?........ピンポンダッシュとか?」

 

「そ、そんな物騒なことしないわ!........こういうときはね....」

 

そう言って須美は持ってきたバッグの中を漁る。園子はそれをわかりきっているかのような顔で見つめた。

 

「これを使うのよ!」

 

「おお!それは何?」

 

本当は知っているが、ここはとぼけて聞く。

 

「ふふふ....これはね....こう使うの!」

 

須美は取り出したものをカチャカチャいじり始めると、棒が縦に延び、それを覗き込んだ。

 

「ほら、これで中がよく見えるわ!」

 

「すご~い!!........けど、そっちの方が物騒じゃ....」

 

「謎を解くためよ!しょうがないわ....!」

 

そのまま二人は三ノ輪家の観察を続けた。すると、銀が縁側にやってくる。その腕には産まれたばかりの銀の弟が抱かれていた。

 

 

 

「おーよしよし、いい子だぞ~」

 

 

 

「ミノさん、家のお手伝いしてるのかな?」

 

「大赦の中でも権力を持っているとはいえ、裕福なわけではないのね。」

 

 

 

「よしよし、偉いぞマイブラザ♪....お前は将来あたしの舎弟としてこき使ってやるからな!」

 

 

 

「見てて癒されるね~」

 

「言っていることはちっとも癒されないけどね....。........あっ、動き始めたわ!」

 

須美たちは銀の動きに合わせて隠れる。銀は家を出てどこかへ向かって歩いていった。

 

「どこへ行くのかしら....」

 

「買い物かな~?」

 

「とりあえず追いかけるわよ!」

 

二人はこの一日、銀を尾行してわかった。道を聞かれたり、ケンカを仲裁したり、困ってる人の人助けをしたりなど道中で様々なことをしていた。

 

「それにしてもすごいわね....」

 

「トラブル体質ってやつ~?」

 

やっとショッピングモールに着いた銀はまたトラブルに巻き込まれていた。そして須美たちはそれをとうとう見ていられなくなり、一緒にそれを手伝った。

 

 

 

---

 

 

 

「ははは!じゃあ私、家にいた頃から見られてたわけ?」

 

「三ノ輪さんが今まで遅れてきた理由、ちゃんとわかった気がする。....ごめんなさい。」

 

「もう、須美。謝らなくていいって!あたし昔からさ、こういうのに巻き込まれやすくって。本当、ツイてないよなぁ~」

 

「銀もずっと大変な思いをしていたのね。....?....乃木さん....?どうかした....?」

 

須美は園子の様子がおかしいことに気づいた。小刻みに震え、別に暑くもないのに汗を掻いている。

 

「大丈夫か園子。風邪か?具合悪いのか....!?」

 

銀も明らかに変な園子を見て彼女を心配する。園子が考えていたことは一つ。

 

(今日だ....。この日だ....。完全に忘れてた。楽しさに打ちひしがれて、今日侵攻が来ることを完璧に忘れてた。あの時、私たちは勝った。でも、みんな傷を負った。もう二人は傷つけさせないって決めたのに....。どうしよう、なにも作成考えてない....。どうしたら二人を守って....)

 

「園子?....園子!しっかりしろ!」

 

「....はっ!」

 

「乃木さん....大丈夫....?様子が変よ....?」

 

銀と須美が園子の顔を覗き込む。すると園子は一言だけ小さく、こう言った。

 

「来る....っ!」

 

『え....?』

 

園子がそう言った瞬間に三人の端末が鳴り響く。樹海化警報だ。

 

「!!....乃木さん、まさか神託が来てたの....!?」

 

「なるほど。だからさっきから様子がおかしかったってわけだ。大丈夫!私たちなら勝てる!........でもまあ、唯一嫌なことと言ったら、せっかくの休みが台無しになったことだけどな~。」

 

「ごめん二人とも....」

 

園子は申しわけなさそうに二人に頭を下げる。

 

「大袈裟だよ園子っ!ほら、樹海化始まるぞ。さっさと変身変身!」

 

「あ....う、うん!」

 

「よし、行きましょう!」

 

(今度こそ....乃木さんと三ノ輪さんの力を借りないで私ががんばらないと!)

 

---

 

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-

 

「くっ....!」

 

(あいつだ。あの大きな足。あの足で地震を起こし、ドリルでミノさんを傷つけた。それをさせないためにはどうすれば....どうすれば....!)

 

園子は胸の前で拳を握った。その手は震えている。その震える手を隣にいた銀が両手で握った。

 

「大丈夫だ園子。落ち着け。そんなに怯えなくたって大丈夫!前、言ったろ?........あたしたちを、信じろって。」

 

「....!!!」

 

「あたしたちは大丈夫だから!絶対に。」

 

園子はそれを聞いてうつむいた。

 

「大丈夫じゃないから........怖いのに........」

 

「えっ....?」

 

「いや、なんでもない!....そうだね。ミノさんたちがいるよね!頑張ろう。戦おう!」

 

「おう!そうだ園子!」

 

思わず心の声が漏れてしまった。意外とタイムリープというのはキツいものだ。自分しかこれから起こる未来を知らない。相談できる相手もいない。精神的にかなりくるものだった。その未来を変えなくてはならないのに。

 

園子はさっきの言葉が銀に聞こえていなくてよかったと思った。園子はとりあえず戦う覚悟を決めた。『大丈夫だ。この戦いで二人は死ぬことはない』と自分に言い聞かせて。

 

「いい?二人とも。こいつはあの足で地震を起こして....」

 

園子が話し終わる前に早くも、バーテックスは地震を起こしてきた。

 

(くっ....!早い....!)

 

「見ろ!あんな高いところにいるぞ!」

 

「私に任せて!」

 

須美はそう言って弓を構え、そして放つ。が....

 

「!?高すぎて弓が届かない....!?どうすれば....」

 

その瞬間、あの巨大のドリルが銀目掛けて上から超速で落ちてきた。

 

「わっ....!?」

 

銀は斧を使ってそれを防ごうとする。が、園子がその銀を突き飛ばした。

 

「....園子っ!?」

 

銀は驚き、後ろを振り返る。ドリルはそのまま園子に直撃した。その衝撃で銀は後ろに吹き飛ばされる。

 

「うっ....園子....?園子っーー!!」

 

「う、嘘でしょ....乃木さん!!」

 

二人は彼女の名を呼ぶ。しかし、高速回転するドリルは樹海に当たっていなかった。

 

 

 

ギギギギギギギッ!!

 

 

 

金属がこすれあわさるような、工場にいるかのような音が聞こえてくる。

 

「わ、私は....大丈夫....!」

 

「園子....!」

 

園子は武器を傘状にしてバーテックスの攻撃を防いでいた。が、今にも押しつぶされそうだ。足がプルプル震え、園子の武器も壊れそうだった。ドリルでバラバラにされるのも時間の問題。

 

「あ、あと........一分は持つから....その間に....!」

 

「わかった!すぐに倒すからな園子!」

 

銀はそう言うと須美のところへ駆け寄っていった。園子は内心焦っていた。正史では園子の機転でこいつを倒したのだ。その園子が戦えない今、彼女たちはどうするのか。とても不安だったが、園子は彼女らを信じた。須美と銀ならきっとこの状況も打破できる、と。

 

「ど、どうしましょう....弓も届かない、乃木さんはあんな状況....早くなんとかしなくちゃ....!」

 

「須美っ!あたしに作戦がある。」

 

「えっ....!」

 

「けどな、チャンスは一回だけだ。失敗したら取り返しがつかない....」

 

銀はそうやって俯くが、

 

「........わかった。銀の作戦に乗るわ。迷ってる時間なんてない。今はそれに賭ける!」

 

須美はバーテックスを睨みながら強くそう言った。

 

「須美....!....了解。あたしの作戦はまず、同時に二人でジャンプする。その時、私が斧で土台を作るからその上を思いっきり蹴飛ばしてさらにジャンプしてくれ。いわゆる....二段ジャンプ作戦だ!」

 

「なるほど....空中でもう一回跳べるってことね....!そうすればバーテックスに矢が届くかも....!でもそしたら銀は....」

 

「大丈夫!土台にされるからってケガしないさ!着地もちゃんとするし!........須美の矢があたったらあいつ、多少怯んであそこから降りてくると思う。そしたらあのドリルもなくなって園子を助けられる....。」

 

「それならその隙をついて攻撃もできるわね....!」

 

「そうだ!それなら勝てる!早速やるぞ!」

 

「ええ!」

 

二人は覚悟を決め、武器を構える。須美は弓に矢をセットし、

 

「いくぞ!....せーのっ....!」

 

銀の掛け声に合わせ、二人はほぼ同時にジャンプした。空中でバランスを取りながらも、最高点にまで達すると銀が斧の側面をバーテックスの方へ傾けて角度を合わせた。

 

「よし、今だ須美っ!!ジャーーーンプ!!」

 

「えーーいっ!!」

 

二人はうまく呼吸を合わせ、須美は最高のタイミングで高く跳んだ。

 

「南無八幡大菩薩!!」

 

須美の放った矢は見事、バーテックスにまで達し....

 

 

 

バゴーンッ!

 

 

 

と、轟音を鳴らしてバーテックスに穴が開いた。

 

「やった!成功!」

 

銀の予想通り、バーテックスは怯んで下に落ちてくる。

 

 

 

---

 

 

 

「やっぱり........すごいや、二人とも。」

 

園子はドリルの圧力から解放され、プルプル震えている両腕を下にさげて呟いた。

 

「はぁ....はぁ....それにしても結構ギリギリだったね~....私の武器、ひび入っちゃってるし~。もう........戦う体力もないや....。このまま任せても大丈夫そうだね~」

 

 

 

---

 

 

 

「やったな須美!作戦大成功だ!!」

 

「え、ええ!三ノ輪さんすごいわ!」

 

「おっと........まだ喜んじゃいけないな。それじゃ、トドメといきますか!」

 

銀はそう言って高く飛び上がり、須美が先ほどバーテックスの体に開けた穴に入った。

 

「よくも園子にひどいことしてくれたな!!お前は私が、バラバラにしてやるっーー!!」

 

銀はバーテックスの中で暴れまわる。まるでそれは銀自身が台風の目となり、竜巻を起こしているようだった。

 

 

 

ガッガッガッガッガッガッガッガッ!!

 

 

 

バーテックスの体は小さく切り刻まれ、無事倒すことに成功した。

 

「よっと!どんなもんだい!」

 

「さすがだわ....三ノ輪さん....!」

 

「おうよ!それより、園子は大丈夫か?」

 

「私は大丈夫だよ~!体はヘトヘトだけどおかげでケガもしてないよ~!」

 

園子は槍を杖代わりにし、フラフラしながら二人に歩み寄る。

 

「園子!........よかったぁ....」

 

「乃木さん....無事でなによりだわ....!」

 

また、須美と銀も園子の元へ駆け寄り、園子を支える。そして、

 

「あっ....」

 

「始まったな。鎮火の儀。」

 

「なんとか勝てて良かったんよ~」

 

---

 

--

 

-

 

樹海化が解け、三人は大橋の近くで大の字で寝ていた。戦いに疲れた勇者たちは芝生の上で転がる。

 

「わっしーもミノさんもケガはない~?」

 

「あ、まあ....こんなのケガのうちに入らないさ!」

 

「えっ....?」

 

「ほら、ドリルの衝撃でふっとばされたとき........ちょっと手擦りむいちゃって。でも全然痛くないぞ!気にすんな!」

 

銀はそう言って手のひらを園子に見せる。

 

「........わっしーは~?」

 

「........。」

 

「?....わっしー?」

 

「....ぅぅ........」

 

「須美!?」

 

須美は泣いていた。ボロボロ涙を流し、手で目をずっとこすっている。

 

「どこか痛むのか!?」 「だ、大丈夫~?」

 

二人は須美を心配し、起き上がって彼女の顔を覗き込む。すると須美は、

 

「怖かった....」

 

とだけ言った。

 

『えっ?』

 

「そのっちがバーテックスに襲われてるとき....あのまま押しつぶされてしまったらって....私が矢を外したらって....それを考えてしまって怖かった....。よかった。無事でよかった....!勝ててよかった....!」

 

「....わっしー。ありがとね。そこまで考えてくれてたなんて。随分緊張したんだろうね。............ん?わっしー今なんて言った!?」

 

園子は優しい口調から一転、急に須美に詰め寄って聞く。

 

「え....?」

 

「今、私のこと『そのっち』って言ったよね!?それもごく自然に!!」

 

「あ....本当だ....!」

 

須美も自分では意識がないかのような反応をした。それを見た銀は、

 

「あたしもあたしも!!『銀』って呼んでよ!!」

 

「ぎ、銀....」

 

「うほっー!!やっと....やっとだー!」

 

銀は嬉しそうに両腕を上げ、喜ぶ。

 

「私ももう一回言って!」

 

「そ、そのっち....」

 

「う~ん....いいね~!!」

 

園子も同じように感動する。実に、東郷....須美からそのっちと呼ばれるのは久しぶりの感覚だった。須美、銀、園子....三人はそのまま夕方になるまで大橋ではしゃいでいた。お役目を通じてようやく縮まった三人の仲。この日、園子はようやく楽しかった理想の『あの時』に戻ったと感じた。

 

もうすぐ春が終わり、夏がやってくる。タイムリープしてから約3ヶ月が経過しようとしていた。夏に入ればようやく本命のあの戦いがやってくる。

 

次のバーテックスの侵攻。

 

園子はその結果を変えるために今までやってきた。これを逃せば二度とチャンスは巡ってくるはずがない。もう時間がない。それまでになんとか作戦を立て、全員生きて戻らねばならない。

 

神に選ばれるのはいつだって、無垢な少女たちである。そしてその多くの場合、その結末は........

 

しかし今なら変えられる。なにも知らなかった『あの時』の自分ではない。今はすべてを知っている。バーテックスの秘密、勇者システムの秘密、大赦のこと、そして壁の外........。

 

---

 

「すっかり暗くなっちゃったなー」

 

「もう帰らなくちゃいけないわね。」

 

「よし、みんな!帰ろう~!」

 

三人はそう言って一斉に起き上がった。

 

「それじゃあそのっち、銀。また明日学校でね。」

 

「うん!じゃあね~ミノさん、わっしー!」

 

「ああ!....またね!」

 

(第8話に続く)

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