「はっ!」
「たあっ!」
「おりゃあ!」
今日も園子たちはいつも通り訓練に励んでいた。そこに、
「三人とも、ちょっといいかしら。」
三人は先生に呼ばれ、先生の近くへ集合する。すると彼女は、
「しばらく三人に休暇を与えます。根を詰めすぎてもダメだからね。」
と言った。
「わーい!!休むのは得意です!」
銀が両手をあげて喜ぶ。
「休むと言われても........どうすれば....」
「そんなの簡単だよ、わっしー!」
「え?」
「ふふふ....私たち三人で遊びまくるのさ~!」
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「HEY!わっしー!レッ~ツエンジョォイィ.... KAGAWA ラァァイフゥー!!!」
翌日、園子はリムジンで鷲尾家を訪れていた。このノリで挨拶してきた園子を見て、須美は困惑する。
「絵に描いたような休日てんしょんね....」
「さあ!早速いくよわっしー!乗って乗って~!」
須美はいつも以上にテンションが高すぎる園子を横目にリムジンに乗り込み、園子の隣に座る。
「たんたんふふん♪ほら、わっしーも一緒に~♪」
園子は耳につけていたイヤホンを片方、須美に渡す。
「そんな音楽ひとつで変わるわけ....」
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「たったらた!たっただ!たったらたったた~!」
「いいね~!わっしー!........さぁ、楽しい休日の始まりだよ~!!」
園子はその後、銀も迎えに行き、自分の家へと招いた。そこでは銀にドレスなどを着せて楽しんだ。普段銀がこういう服を着ているのを見ないので、とても新鮮だった。
「やっぱり、ミノさんよく似合ってるよ~!」
「そ、そうかな........ん....?やっぱりって、おいおい、こういう服着たの初めてなんだけど....?」
「あ、いやいや!なんでもないなんでもな~い!ほら、わっしーも着たら~?」
「えっ!?わたし....?私はいいわよ....」
「いや、私も園子に賛成だね!さっきからずっとこんなに私のこと言っておいて、自分だけ何もしないはズルいぞ~!ほら、着せちゃえ~!!」
「いや~!!」
二人は多少無理やり須美に派手なドレスを着せる。
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「お、ほら~....須美似合ってんじゃん!」
「綺麗だよ、わっしー!!」
「そ、そうかしら........」
須美は恥ずかしがって下を見る。
(まさか二人のこんな姿がまた見れるとはね~....この休みの時が一番、楽しかったな~....)
園子はそんなことを考えていると、いつの間にか二人が迫ってきていた。
「なあなあ、あたしたちだけじゃなくても園子も着ろよ~?」
「そうよ~?もともとそのっちの服だけれど着たところ見たことないものね~....」
「!?........あ、ははは....え~今日は別に~....」
『いいから着なさい~!!』
「ひぇ~!!!」
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某日 神樹館小学校
「ねえねえ!須美は夢とかあるのか?!」
「えっ....!?なに、急に....」
「いや~....三人でこうやって黒板に絵を描いてたら、園子の絵見て思いましてね?」
「なるほど........それなら、私は歴史学者さんよ!」
「ほ~....須美らしいや!園子は?」
「私?私はね~....小説家になること!二人もいつか私の描く小説に入れたいな~。アツくて頼れるミノさんと、真面目で時々おもしろいわっしー!」
「お、おもしろい....?」
須美は少し嫌な顔をする。
「ん?つまんないよりはいいじゃん。」
「それはいいのだけれど....なんというか....私も頼ってほしいわ....」
すると、それを聞いた銀が須美の肩に手を置いて言った。
「わたし、そうやっていじける須美の顔、好きだな!」
「え....!!なにそれぇ!!」
須美は赤くなって銀に言い寄る。それを園子は優しく微笑みながらしばらく見ていた。そしてこう言った。
「おおっ~いいよ~!今の二人の感じ~!」
園子は手で四角窓を作り、それを覗いて二人を見る。
「そ、そういう銀は....どうなのよ....!」
「私?小さい頃は正義のヒーローとかに憧れてたけど....えっと....」
「もう叶えちゃったもんね~」
「?........どうしてそこで恥ずかしがるのかしら?」
「言っちゃいなよ~」
「わ、笑うなよ~....?」
銀はいつも見せない表情になる。やがて小さい声で言った。
「お、お嫁........さん....」
「良い夢じゃない!とてもすばらしいと思うわ!」
「そ、そう....かな....」
銀は微笑んだ。
銀の夢。決して叶うことのなかった一人の少女の儚い夢....。園子は拳を握りしめた。そして、
「....ミノさん。」
園子が不意に口を動かす。
『ん....?』
突然雰囲気が変わった園子を見て、二人が彼女をじっと見る。
「私がその夢、絶対叶えてあげるからね。」
「え....?ふふっ、なんだよそれぇ。私と園子は結婚できないだろ?はっ....!まさか私のこと恋愛感情として....!?」
銀は園子の言葉を冗談として受け取り、笑いながらそう答える。それに対して須美は表情を変えず、まだじっと園子を見ていた。
「....あ....私、もうひとつ夢があった~!」
「え?」
「こ、今度はなに?そのっち....」
「いつまでも、わっしーとミノさんと一緒にいること。大人になっても、おばあちゃんになってもずっと....ずっと....。こうやって話して、笑っていられる関係でいること。それが私のもうひとつの夢だ~!」
『........。』
二人は少し黙ると、やがて口を開いて言った。
「それはそれは....随分と壮大な話だな....。けど、あたしもそうだ!....園子!今日からその夢もあたしの夢!!」
「ふふっ....私も。私も二人とずっと一緒にいたい。私たち三人は、どんなときでもずっと一緒に。........私もそれ、夢にするわ!!」
三人は手を重ね、やがて両手で握り合う。
「『やくそく』だよ、ミノさん....わっしー....」
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楽しい時間はあっという間に過ぎていった。いつもそうだ。つらい時間だけが、長く感じる。....私のあの二年間。私にとっては、あの時間は止まっていた。そう感じた。心も、なにもかもすべて。ピタリと止まっていたのだ。
あれから私たちはいろいろなことをした。休みの期間中ギッシリ、ほぼ毎日遊んだ。プール、ラブレターの出来事、国防体操....本当に充実した日々だった。こんなにも忙しくしている間にも、私は密かに考えていた。楽しすぎて忘れるなんてことはもう、二度としなかった。例の戦いに対する作戦はだいたい完成していた。あの三体を三人で倒す方法を。繰り返す訳にはいかない。あの止まった時間を....自らの命を落とすことよりも苦しいこと。もっとも大切な友達を、もっとも大切な友達の記憶を....失うことだ。
休暇も残りわずかとなっていた。この日、私は迷子になって(いるふりをして)いた。このことを二人に連絡して会いに来てもらうことになった。本来の歴史に沿って進んでいるならば、今日会えるはずなんだ。
「そのっち~!大丈夫~?」
「あ!わっしー!」
先に来たのは須美だった。
「はぁ....はぁ....もう、大丈夫?迷子なんて....」
「えへへ~....ごめ~ん!」
「お~い!二人とも~!」
そこにちょうどやって来たのは銀だった。しかし、銀だけではない。
(やっぱり来た....!)
須美は銀の近くにいる四人を見る。それは、銀の家族だった。
「あ、銀はご家族と買い物していたんだったわね。」
「あはは。結局三人集まっちゃったな。」
「勇者同士は引かれ合うんよ~」
「........銀のご家族に挨拶した方がいいかしら....?」
「いや、いいよ。私も照れくさ....」
「ううん。しよう。」
「えっ!?ちょ、園子ぉ!?」
銀の制止を無視し、園子はズンズンと銀の家族の近くに寄った。そして、
「どうもはじめまして~。ミノさ....銀ちゃんのお友達の乃木園子っていいます~」
「あら、どうも~!」
「乃木家の娘様だね。こちらも、お世話になっています。」
銀の母と父が園子に軽く頭を下げ、挨拶する。
「いえいえ~!こっちがお世話になってばかりです~」
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「あちゃ~!園子のヤツなにやってんだ~!」
「別に悪いことじゃないわ。私も挨拶しとかないと。」
「ちょお!?須美までぇ!?」
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「君は........ミノさんの弟さんの鉄男くんだよね~?ミノさんからたまに君の話聞くんだ~」
「........。」
鉄男は恥ずかしがっているのか、銀の母の後ろに隠れ、出てこようとしない。ただ、園子を上目遣いで見ているだけだった。すると、
「だぁ~!おぎゃ~!」
「あっ....」
ベビーカーの上で寝ていた赤ん坊が泣き出す。
「お~よしよし、いい子だからな~」
そこに銀がやってきてその赤ん坊を抱き上げた。そしてあやしはじめる。その銀の様子を見た園子は、彼女がとても幸せそうな表情をしていて心がほわほわと温かくなった。
「銀のご両親ですね。鷲尾須美と申します。いつも銀にはお世話になっております。」
そこに須美もやってきて銀の両親に丁寧に挨拶を始めた。それを見た園子は....
「鉄男くん、ちょっといいかな?」
ある行動を起こした。
園子は鉄男を呼び出し、少し見晴らしの良い場所まで連れていく。鉄男は少し戸惑いつつも、園子について行った。銀たちがいる場所まではそう遠く離れていない。街の風景を二人で見ながら、園子が鉄男に質問をした。
「ねえ、鉄男くん。鉄男くんはお姉ちゃん好き?」
「!!........な、なんだよ、急に....!」
鉄男は急すぎる園子の質問にうろたえる。園子はそんな鉄男を眺めながら、ゆっくり....彼の返答を待った。やがて根負けした鉄男は、こうとだけ呟いた。
「................うん....。」
それを聞き逃さなかった園子は笑顔になり、
「そっかぁ....ふふっ。そうだよね~優しいお姉ちゃんだもんね~」
と言った。
「そ、それで何が言いたいんだよ....!」
この鉄男の言葉を聞いた園子は突然表情を変えて冷たい声でこう言った。
「....鉄男くんはさ、もしもお姉ちゃんが死んじゃうって言ったら....どうする....?」
「え....?」
またしても急すぎる質問に鉄男は困惑する。彼女に対して少しだけ恐怖も感じてきていた。
「お姉ちゃんが........死ぬわけないだろ....!」
「っ....!........もしもの、話だよ~」
「....だったら、俺が姉ちゃんを守る!死なせたりなんかしねぇよ!」
鉄男は大きな声でそう言った。それを聞いた園子は彼の覚悟と姉を思う気持ちを知り、安心した。そして....
「....なら、鉄男くん。お姉ちゃんがピンチの時は君が助けてあげて。私が近くにいれない時もあるから....家族だけしか側にいれない時もあるから....。そのときは鉄男くんが、お姉ちゃんを守ってあげて!!」
園子は鉄男の肩を掴み、そう強く訴えた。彼は彼女の言っていることが理解できなかった。そもそもなんでこんなことを言ってくるのかすら、理解不能だった。それは当然のことであり、真意は彼女しか知らない。だが、彼は彼女の訴えを聞き、こう答えた。
「....あ、ああ!!俺が守ってやるよ!任せな!!」
「ふふっ....これは心強いね~!........よろしく。....頼んだよ!ミノさんを守ってくれる、小さい勇者さん!!」
園子はまたしても表情を180度変えて笑い、鉄男に手を差し出した。それを見た鉄男も手を出し、互いに握手を交わす。
その時であった---
バチッっっ!!
「痛っ....!」
手に電流が走ったかのような感覚。静電気だとか、そういうものとは何か違うおかしな感覚。そして、他にも異変が起こり始めた。
(え....!なに....これ....!?)
突如、目の前が真っ暗闇になったかと思えば、雷のような電流が彼女の視界に映り込む。目を閉じたわけではない。例え閉じていたとしてもこんなおかしな電流のようなものが見えるはずがない。
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(ん........?あれ........私は........)
次に気づいたとき、園子はベッドに寝ていた。だが自分のベッドではない。
(あ....)
周りを見渡すと、どうやらここは病院のようだった。手にも包帯が巻かれている。
(どういう....こと....?私は鉄男くんと話してて....それで....)
状況が全く飲み込めない。その時、
ガラッ
突然病室のドアが開く。そこに入ってきたのは....
(....!!)
鉄男だった。しかし、さっきまで話していた鉄男と印象が少し違う。ほんの少しだが顔がキリッと大人に近づいており、背も一段と高くなっている。
これは、もしかして---
園子は嫌な予感がした。
「目覚めましたか。園子さん。」
鉄男が園子に話しかけてきた。
「えっ!?....というか、なんで鉄男くんがここに....」
「園子さん。突然ですが、今が何年何月何日か、わかりますか?」
「え....えっと....」
「今は神世紀301年、4月8日です。」
「!!!!」
「やはりその反応、過去に戻っていたのですね....。」
「えっ....!?」
(ま、待って待って待って....!状況が全然わからない....。どういうこと....?私、現在に戻って来ちゃったの!?なんで....。それに、鉄男くんはなぜタイムリープのこと知ってるの!?ああもうっ!本当に全っ然わからないよ~!)
園子の顔を見た鉄男は彼女の心を読み取った。
「すみません....。いきなりこんなこと言われてもわかりませんよね。混乱しますよね。....こちらもわかっていることはまだまだ少ないですが、今起きている状況を俺からざっくり説明します!」
(友情編 完 第9話につづく)