いそうでいなかった競走馬の名前だとか、数年ぶりにリハビリで小説書きたくなったとか
色んな思いが溢れて書きました
尚中の人は競馬知識ゼロのゲームとJRAの本気CMだけ見てた人なのでコースの説明とか色々おかしいですがそこは突っ込まんといてください
日本の中山レース場
その待合室で一人のウマ娘は自身の勝負服を身に纏い、扉の前で座り込んでいた
根元のみ黒のが残る白髪のショートカットにオレンジの猫科を思わせるような鋭い眼光は
自身の下半身、いや二本の足に向けられていた
「……」
ふと触れる足は武者震いかあるいは恐怖が故か
一向に震えが収まらない
「大丈夫…きっと大丈夫……大丈夫……。」
言い聞かせるように呟き、足の震えを隠すように数度大げさに貧乏ゆすりをする
しかし落ち着こうと思えば思うほどその声すら震え
ウマ娘の少女は唇を噛み締める
(何を怖がってる…、これが私の選んだ道でしょ…)
震えておぼつかない手で近くのペットボトルを握り締め、中の水を飲み干してゴミ箱へ投げ捨てる
付け根のみ黒い少女の白髪がその動作でふわりと揺れた
(これで何本目…?何をそんなにイラついてるの?…何を焦ってる?)
自らの行動に自分自身疑問符を浮かべる
しかしその気持ちを押さえることは出来なかった
「__次、出番です」
「…わかりました」
不意に待合室の戸がノックされ、扉の向こうから業務的で単調な連絡のみが入り
ついに出番かとそのウマ娘は重い腰を上げた
◆
『来たぞーッ!』
少女が会場へ入るとそれだけで観客は歓声を上げ
その歓声に対して少女は勝負服の外套を手で翻し、軽く手を振るのみで答える
「さぁやって参りました有馬記念、天候に恵まれ非常にレース日和となっています」
軽く息を吐いて少女は実況者の声に耳を傾ける
辺りには自分と同じこのレースを走るウマ娘が15名
そしてその15名は自身に殺意にも似た眼光を向けて佇んでいた
「一番人気、1枠1番『走路の魔神』イオタファントムが入場しました」
実況に名前を呼ばれた少女、イオタファントムはその場で駆け足ぎみにゲートへ移ると反転して観客席へペコリと頭を下げる
上がっていた歓声はその行為で怒号のように大きな物となった
「連勝記録が掛かっていますイオタファントム
本日も自慢の脚力で無敗神話を守れるか、それとも破られてしまうのか」
刹那実況の言葉にイオタファントムは顔をしかめる
彼女は知っていた、観客のほとんどは自分の勝つところを見に来ているわけではない
むしろ…
(…私が誰かに負けるところ、誰かが私に勝つところを見たいって顔してるわね)
レースに参加する他のウマ娘達に似た血走ったような目を向ける大多数の観客へ
震える身体を必死に隠してイオタファントムはその口元に不適な笑みを浮かべる
「__上等じゃない、目にモン見せてやるわよ」