少年少女のアカデミアには血が流れている   作:gamama

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口調怪しいのは許してクレメンス。


プロローグ

 初まりは、小さなスズメさんでした。 

 スズメさんはケガをしていて、ボロボロで、痛そうで、血もいっぱい出てて。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ――――どうして、こんなことを思い出しているんだろう。

 

 

 お父さんとお母さんは、「やめなさい」「どうしてそんなことをするの」って怒鳴った。

普通じゃない、って。笑い方もおかしいって怒った。普通にしなさい、って。

 

 それから私はずっと我慢してる。我慢して、お父さんとお母さんの言う『普通』な生き方を

している。普通の笑顔もいっぱい練習した。今じゃあ誰もが私を普通の女の子だって言うの。

笑っちゃいますよね。

 ……でも本当は時々我慢できなくなってるのです。この前も、カァイイ猫さんがいたので思

わず刺しちゃいました。久しぶりにチウチウできたので、また我慢できます。

 

 

 ――――態々思い出すような事でもないことまで流れてくる。

 

 

 ウソです。今のは、ちょっとだけ。

 また、じゃなくて。まだ、です。近頃、我慢するのが難しくなってきてるのです。

 

 実は最近、気になる男の子ができたのです。と言っても、何かこう、ドキドキするような

イベントがあったわけじゃあないんですけど。遠くから見てて、「なんかイイなぁ」って思った

だけで、まだお話ししたこともほとんど無いです。彼、人気者だから声をかけづらいのです。

 

 だからまずは彼のことを知る。好きな食べ物とか音楽とか服とか。そういうのを、全部。

彼の好きを知って、同じ物を食べたり聴いたり、身に着けちゃったりして、そして…………

 

 

 ――――あ゛、解りました。理解かっちゃいました。

 

 

 彼のこと調べてたら、隣町によく遊びに行ってるって知ったので早速行ってみたのです。

 彼が良く利用してるカフェに行って、彼が良く注文してるケーキとクリームソーダの組み合わ

せを頼んで待っていたら、何だか外が騒がしくなってきました。

 ヒーローとヴィランが戦ってるので避難してください、と言われました。最悪。水をかけられ

た気分ですけど、こういう時は逃げるか野次馬るのが『普通』ですからしょうがないのです。

 

 あぁ、そうでした。そうやって

 しぶしぶ 避難してた  ら

 ド カ ン   て なっ  て

 上  か ら   が     れ    き     が

 

 

 ――――これ走馬灯ってやつですね。うわー初めて見ました(棒)。

 

 

「やああ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」

 

 

 

   ■

 

 

【ならぬ、宿主。徒労である。この距離では間に合わぬ。……オイやめよ。停止せよ馬鹿者!】

 

 

   ■

 

 

 

 降り注ぐ、ビルの大小の破片。人一人を平面にして余りある、質量の雨。

 

 誰もが、その光景を見ていた誰もが、「助からない」と思った。

 悲鳴を上げ、華奢な腕で自分の頭を庇うしかできない、あの少女はもう助からない。きっと今に

瓦礫に押し潰されて、熟れ落ちたトマトよりもひどいことになる、と。

 誰もが叫び、焦り、祈り……けれど、諦めていた。諦めて見ているだけだった。

 

 

 只一人を除いては。

 

 

 

 

 

 

「だとしてもぉおおおおおッッッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 咆哮。

 そして少女は助かった――代わりに、愚者の血が華と咲いた。

 

 

 

   ■

    

 

【……はぁ。久々に派手にやったな。もはや辟易ともせぬぞ】

 

 

   ■ 

 

 

 

「………………………………………………………………………………………えっ」

 

 今、何が起きたの?

 私、生きてるんですか?ナンデ?

 

 ……いつのまにか尻もち着いちゃってます。ちょっと痛いです。

 さっきまで立っていた位置から後ろに、ちょっと離れてますね、今、私。

 何だろう、何かが……ぶつかってきて……違う、突き飛ばされたんだ。

 前から、風、風?が吹いてきて、後ろに押された。トンっ、て感じ。あんまり痛くは無かった

ですね。むしろ優しかった感じがします。

 でも今日は特別風が強い日じゃないです。変ですね。……誰かの個性? 誰かが助けてくれた

のかな。誰だろう、何処にいるんでしょうか。

 

「ぁ……………」

 

 右を見る。ひび割れたガラスに私だけ映ってる。いない。

 

 左を見る。向こう側の歩道に人がちらほら。みんな顔が青い。違う。

 

「わぁ……、いっぱい……」

 

 後ろ……は、見えない。パス。

 

「血が…………いっぱいです…………」

 

 前を、()()()()見る。視線を少し落とす。瓦礫の山。その下から赤い液体がたくさん

流れ出ている。どんどん広がって、私の足元まで来る。

 

 

 あぁ、其処にいるんですね。私を助けてくれた誰かは――――

 

 

 

     ギチリ、ギチン

 

 

 

 嫌な音がして、上を見る。

 

 

 

   ■

 

 

【……チッ。 覚醒せよ、この馬鹿者!未だ終幕では無い!】

 

 

   ■

 

 

 

 手を後ろに付いたまま、座り込んで動かない少女の頭上。半端にぶら下がっていたネオンの看板

がついに千切れ落ちた。少女は立ち上がろうとするが、脚に力が入らないのか、また尻もちをつい

てしまった。

 野次馬たちもまた必死に叫ぶ。逃げろ、と。先の一瞬に、何が起こったか、殆どの者は捉えるこ

とができていなかったが、瓦礫の下から流れ出す血を見て状況は理解している。だからこそ、再び

少女を襲う不幸に、こんなのあんまりだと嘆かずにはいられない。でもやっぱり彼らに出来ること

は無いので叫ぶしか無い。

 

 迫り来る“死”と同じ速度で、少女の心に諦めが押し寄せる。

 

 

 

 

「………………だと……しても」

 

 

 

 それを振り切るように、少女は前へと視線を戻した――その声に、戻された。

 

 

 

「だと、してもぉおおッッ!!」

 

 

 

 

 再び響き渡った咆哮と共に、花果山が如き枷をブチ抜いた赤い影は、勢いそのままに落ち来たる

鉄塊を殴り飛ばし、やや覆い被さるようになる形で、少女の前に立った。

 

 服も、肌も、およそ真っ赤に染まっていないところなどない、ボロボロで見るも無残な姿の持ち

主は、少女と年端も変わらないだろう少年だった。

 

 少年の身体から滴り落ちる血が少女にかかるも、少女は瞬きすらせずに少年を見つめ続ける。

 

 

「……どうして。なんで、そこまで……」

「…………そう、したかった」

「!」

 

 

 返事が返ってくるとは思ってなかったのか、少女は驚く。

 

 

「これは……俺が、俺の、好きにしただけ、だから……」

「…………」

「……だから、大丈ぶっ」

 

 

 そう言いつつ、少年は崩れ落ちた。ちっとも大丈夫じゃなかった。

 

 

「……いいんですか?それで……死んじゃっても、いいんですか?」

「よくは……無いよ。でも、これが……俺だから。……最後まで、諦めない」

 

 

 ――だから君も、生きるのを諦めるな。

 

 

 そう言って少年は今度こそ気を失った。少女の腕の中に倒れ込みながら。

 

 少女は咄嗟に支えようとしたが、彼女もまた疲弊していた。そのまま二人、アスファルトに横た

わり、少女の上に少年が乗っている形になる。3度目の正直だ。

 自身が血に塗れることもいとわず、少女は少年の冷たくなっていく身体を軽く抱きすくめた。遠

くに聞こえる救急車のサイレンの音と……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を途切れさせ

ながら、少女の意識もまた眠りに落ちて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 故に、気付くことは無かった。少年の出血が既に止まりかけていることに。地べたをしとどに濡

らしていた血溜まりが早々と消えていくことに。

 

 

【遺憾である。この我に尻を拭わせるとは。まったく不敬であるぞ、未熟なりし我が宿主よ】

 

 

その血肉に宿る者も、何も。

 

 

 

   ■

 

 

 

 ――少女の歌には、血が流れている。

 

 

 ――少年の血には、歌が流れている。

 

 

 

 この出会いは、少女にとっての原点(オリジン)。少年にとっての再起(ライジング)

 そして、神様も知らないヒカリで紡がれる新しい物語(ヒーローアカデミア)だ。

 

 






気まぐれに書いたのでエタっても許してヒヤシンス。
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