今回はある意味ヒロアカ組で一番シンフォギア組と引き合わせちゃいけない「彼」が先行登場です。
「いやいや待て待て、でかすぎるだろ……!巨人型ノイズより大きいとかアホか!?」
緑谷出久が、轟音とともに現れた“障害”――0Pヴィランロボットのあまりの巨大さに愕
然としていたころ、別の演習場では、歌満地灯志もまた、0Pロボの巨躯を目にして頭を抱
えていた。
――金の掛け処を絶対に間違えてる!!
本物のヴィランに匹敵する“圧倒的な脅威”を演出するためなのだろうが、歌満地の常識で
は「いくらなんでもやりすぎ」としか思えなかった。割と金に糸目を掛けない義母と違って、
金銭感覚は庶民的なのだ。
「ギガノイズ……、いや、過去のデータにあった“要塞型”以上だぞ……。どんな怪物を想定
して造ったんだよ。
「胸はデカいほど“イイ”だろッッ!!!」
「誰も胸の話なんかしてねぇから!! っつーか
つい不平不満をこぼした歌満地に素っ頓狂な意見をツッコんできたのは、ブドウの房のよ
うな頭をした小柄な少年だ。
何故か、歌満地の隣でへたり込んでいる。
「腰抜けちまったんだよぉ~~~~っ!!助けてくれぇ~~!!」
「分かった、任せろ! ――しかし一切躊躇なく言ったな。君ホントにヒーロー志望か?」
「うるせぇええぇぇ!あんなん出てくるなんてなぁ!予想できるわきゃ無ぇぇだろぉおおお
ぉぉぉおお!!!?」
「それはそうだ、なっ!」
歌満地は泣きじゃくるブドウ少年を素早く小脇に抱えると、『奏血』で強化した脚で後方
へ跳んだ。すると0Pロボとの彼我の距離は、一気に40m超となる。歌満地はそのまま、
二度、三度と跳ねた。
「ここまで離れればいいかな。 そろそろ立てそうかい?」
「……えっ?はぁっ!?ど、どうなってんだよ!あっちゅー間にこんだけ離れてるって!?
お前何なんだよ!!」
「歌満地灯志だ、よろしく」
「あぁうん、オイラは
峰田と名乗った少年を地面に降ろすと、歌満地は進撃を続ける0Pロボに目を向けた。
「……渡我さん、無茶してなきゃいいけど」
――あれを
⇔
「そのためには大技、使うしか無いですね」
ビルとビルの間、その幅をいっぱいにしながら無限軌道にて前進していく0Pロボを、そ
の右前方のビルから偵察しつつ、渡我は首に付けたチョーカーに触れた。
このチョーカーは、『奏血』発動時に発生する特殊な波形を外部から観測されないように
隠すための隠蔽装置だ。但し、歌によって生まれるエネルギーであるフォニックゲインは、
通常の音波と同じ性質をも持つため、この装置は対レーダー・光学機器用の電波とはまた別
に、可聴域外の妨害音波も放射させているのだが、この音波、若干ではあるが『奏血』の放
つ音に干渉して出力を低下させてしまうのだ。
元々はシンフォギア開発の過程で作られた試作品であり、二課のサポートがあれば、本来
は必要のないものなのだが……。今後雄英において授業等で個性を使うたびに、国家機関に
して秘匿組織である二課の手を煩わせるわけにもいかないので、急遽引っ張り出されたとい
う事情がある。そのため、歌満地と渡我に合わせての調整が間に合わず、二人にとって“枷”
と働いてしまっているのだ。
「外せば私でもイケます、多分。……あー、でも残り時間じゃ無理かもですね……灯志くん
がくれた血ももう無いし……」
――でも、灯志くんだったら。
「絶対壊しますよね……」
歌満地と“同じ”になりたい渡我にとって、圧倒的で破壊的な0Pロボの威容を前にして
も、「逃げる」という選択肢は頭に無く、「どう立ち向かうか」が重要だった。
「今は動きを止めるくらいしかできないかな……」
それをちょっと残念に思いつつ、屋上から下を覗くと、他の受験生たちが我先にと争うよ
うに、0Pロボから逃げている。
最後方で例のもさもさくんが、まるで犬かきでもするように地を這って少しでも遠ざかろ
うとしている――軽く恐慌状態らしい、上手く身体が動かないのだろう。
渡我は彼らの、ヒーローを志す者らしからぬ行動を見て、カッコ悪い、とは笑わない。た
だ「しょーがないよね」と、諦め観ていた。
歌満地と出会い、彼を通じて個性豊かな面々と知り合ったことで、渡我は「強い」という
ことにも、いくつか種類があることを知った。「強さ」を身に付けるためには努力しなくて
はならないことも、努力とは誰もが容易くできることでは無いことも知った。
元々、好きな相手に近づくために様々な角度から模倣を行っていた渡我だ。努力すること
にかけては人並み以上の能力があった。例え自身が嫌なこと、つらいと思うことであっても
彼女は、“大好きな人のためなら頑張れる”。
自分の恋心、ひいては、人の想いに、そういう「強さ」という側面があることを渡我は学
んだのだ。
まあ、裏を返せば“そうじゃなければやってらんなかった”のが、この2ヶ月の修行の日々
だったのだが。(性根以外は)どこにでもいるうら若き女子高生でしかない渡我が、短期間
で戦闘技能を身に付けたのだから、当然と言えば当然だが、過酷オブ過酷な内容だったのは
ご理解いただけるだろう。
だからこそ、渡我被身子は思う。
“私の”ヒーローに成るのは、ヒーローに成るより難しい――と。
ましてや、私以外なら尚更そうだろう、とも。
「みんながみんな、灯志くんみたいには――……?」
成れない――そう続けようとして、渡我は眼下で例の少年が動きを止めたことに気付く。
振り向いた彼の視線の先には――
⇔
無駄になる。したくなんて無いのに。どうして。どうすればいい。
緑谷の頭の中で、絶望が
を塗り潰していく。常でさえブチ切れてる彼の涙腺は決壊寸前だ――むしろ、ここまでよく
保った方でさえあった。
緑谷は襲い来る0Pのロボ、その二重の脅威からがむしゃらに離れようとする。
しかし。
「いったぁ……」
かすかに聞こえた声に、文字通りに足を掻くことを止めた。
振り向いた先、0Pロボの手前で、誰かが倒れていた。がれきに足を挟まれているらしい
――動くことができないでいる。
それは、説明会が始まる前に、転倒しかけた緑谷を助けた少女だった。
『――転んじゃったら、縁起悪いもんね!』
そう言って笑い、あまつさえ励ましてくれた、優しい女の子。
「――っ!!!」
残り僅かな時間。得点は雀の涙。制御できない力は、確実に己を壊すだろう。
メリットは一切無い。偉大な師から貰った全てが無駄になり、あとに残るものは、ただの
残骸。捨てきれずに必死にしがみついて、ようやく芽吹き出したばかりの夢が、憐れに枯れ
果てる現実が待ち受けているだけだ。
それがどうしたッッッ!!
緑谷は全てを
今、彼の胸にあるのは「
彼を愚かと嗤うか?その感覚は実際正しい。
だが、おお、その背中!駆け出す後ろ姿より、まばゆいばかりに放たれる光を見よ!
あれなる輝きは、真なるヒーローの大前提!すなわち――自己犠牲の精神なり!
ワン・フォー・オールを両脚に発動させた緑谷は、周囲を覆う土煙を引き裂きながら跳躍
し、0P仮想ヴィランの頭部まで瞬きの間に飛び上がった。右腕にも力が集中していき、身
に纏うジャージの袖は散り散りになる。右腕の全体に赤く脈動する光が迸り、加速度的に光
量を増していく。
ワン・フォー・オールを継承した日、オールマイトから贈られたアドバイスが、緑谷の脳
裏に呼び起こされる。
『――いいかい少年?ワン・フォー・オールを使う時は、ケツの穴グッ!と引き締めて、』
(『心の中で、こう叫べ!』)
「
大きく振りかぶって放たれた緑谷の右拳は、仮想ヴィランの頭部に真っ向から直撃し――
その巨体を傾けながら
「うっそぉ……」
その場で、その光景を目にした誰もが、度肝を抜かれていた。緑谷が助けた少女も、眼鏡
の少年も、他の受験生たちも。
そして、渡我被身子もまた、唖然としていた。緑谷が0Pロボを一撃で倒したこと――だ
けが理由ではない。
――さっきまで、あんなに怯えてたのに。逃げようとしてたのに。
――女の子が取り残されてるって分かったら、あっという間に……。
ハッとして緑谷を見れば、彼は今まさに重力に引っ張り戻されようとしていた。
目敏い渡我は気付く――彼の右腕が、真っ赤に変色していることに。そして……。
「……! あれ脚、両方ともプラプラしてません!?」
あれでは着地など出来ない――そう判断した渡我は、即座に落下する緑谷に向かって駆け
出し、ビルの屋上から飛び出すと同時に『変身』を発動させた。
一方緑谷は、痛みをこらえつつ、己の不甲斐なさに涙しつつ、地表に帰還するにはどうす
ればいいかを必死に考えていた。このままでは死ぬから、必死に。まさに洒落にもならない
状況だ。
(考えろ!どうしようどうしよう!? ……デトロイト・スマッシュ!あの技を地面に向け
て撃てば、その風圧で!でも残ってるのは左だけだ!今ここで壊したら――)
当然不合格になることは決定的だ。この土壇場で、ワン・フォー・オールを、現時点での
限界を超えた出力で――その上で身体を壊さずに発動させるしか道はない。
尚且つ、少しでも発動のタイミングを間違えれば地面さんに熱烈なキスをして死だ。
命を懸けた、
緑谷は叫んだ。覚悟が定まったのか、そうで無いのか判らないが、ただひたすらに叫び、
そうしながらも、残された左腕を引き絞った。
「ああぁぁああああぁぁあっぁああ 「君っ!」 あぁぁ、ああえぇ!?」
そこに、もう一本、左の腕が差し伸べられた。――歌満地、に変身した渡我だ。
「手ぇっ!伸ばしてください!」
「あっ、えっなん、何!?」
「いーから早くっ!!」
「……っっくぅう!」
緑谷は一瞬逡巡し、歌満地(渡我)に左手を伸ばす。それを同じく左手で掴み取った歌満
地(渡我)は、右の手首にある2本の平行線――片方の線がもう片方よりも三回りほど太く
なっている――から勢いよく赤い液体を噴き出させた。
噴き出した液体、即ち血液は5本の糸となり、縒り合わさり混じり合って縄となった。血
の縄は急速に伸び、その先端を大きく鏃のように変形させると、勢いそのまま、ビルの壁面
に突き刺さった。
「
「……!血の、ワイヤーフック……!?」
「このまま降ります!」
大きくスイングを繰り返しながら、歌満地(渡我)は血のロープを伸ばし続けることで、
緑谷と共に徐々に下降していく。
「ねぇ!すごいですねあなた!すごいねぇ!」
「え、あの、えっ?」
「渡我です!あなたお名前は?」
「み、緑谷……緑谷出久……だけど」
「出久くんかぁ!ごめんね出久くん!泣き虫で怖がりのオタクくんかと思ってました!ごめ
んなさい見直しました!そんなにボロボロになれるなんてステキだね!」
「ヒドイ!!??そしてボロボロが素敵って何?!ほめてるの!?」
「ほめてません!でも好きです!強いです!」
――何なんだこの人!?
――助けて……くれたんだし、いい人なんだろうけど、よく分かんないぞ!?
緑谷が慣性の法則と、歌満地(渡我)のはっちゃけた言動に振り回されていた、その時。
「・・・・・あっ」
「あ?」
「わぷっ」
「うえぇええ!? 溶けたぁ!?」
ドロリ、と肉体が溶け出し、歌満地(渡我)は渡我オリジナルに戻ってしまった。
驚愕する緑谷。更に溶け落ちていくペースト状の男子だったものの奥から女子が現れたこ
とで、彼は顎が外れんばかりに仰天した。
そして変身が解けたことで、『奏血』も解除される。両者、再びフリーフォールへ。
「ごめんなさぁい!時間切れですうぅ!」
「おおおおぉぉおぅおぉおっおんっおおお女の子おおぉおおおおおおぉぉぉぉ!??!?」
「あはっ、ヤバいですねぇ!どうしましょう!」
「そしてそんなあっけらかんとぉおぉぉおおおぉぉ!!!」
左手はお互いにふさがり合っていて、残っているのは渡我の右手だけ。地面はすぐそこま
で迫ってきている。そして、もう血のワイヤーフックは出せない(らしい)。
万事休す。緑谷がそう思った時、渡我が何か気付き、彼を思い切り引っ張り上げた。
「ぐえっ――ぶへぇっ!?」
急激な浮遊感を感じた刹那、バチィン、と気持ちのいい破裂音が緑谷の頬から鳴り響いた。
彼が助けた女子が、3P仮想ヴィランの残骸に乗って二人の真横に浮いていたのだ。
そして緑谷を、思いっきりビンタしたのだ。
すると、緑谷の身体は重力から解放された。ビンタの勢いで若干横に吹き飛ばされたが、
そのままアスファルトの道路すれすれに浮かび上がっている。一方、渡我はといえば緑谷が
ビンタされたタイミングで彼から手を放し、浮いている3Pロボの残骸にしがみついて落下
の勢いを弱めたのち、アクション映画で観た高層階からダイブしての着地を実践、クッショ
ンになる物は無かったので少々あちこち痛めたが問題なく地面に降り立った。
「んんっ、くうぅっ……解、除……!」
無重力ビンタ女子(仮称)が両手の指――その指先にある肉球のような器官――それぞれ
を重ね合わせると、浮遊していた緑谷の身体と3Pロボの残骸が地面に落とされた。
渡我は自身と緑谷たち二人の様子を確認して、特段生命にかかわる問題は無いようだと安
堵のため息をついた。
「あいたた……ふぅー……助かっちゃいましたぁ。 ありがとうございます、あなたもカァ
イクてステキで――」
「……ぅぷっ」
「ん?」
「ォオボロロロロrrrrrrrrrr」
「わひゃあああぁぁ!!?」
※しばらくお待ちください。※
……なんてテロップは当然ながら表示されない。渡我はあまりの出来事に右往左往しなが
らも、野次馬めいて集まってきた他の受験生たち(主に男子)から、ビンタ女子の尊厳を守
ろうとしたが……、ファブリーズはおろか水とモップさえ無いのでは如何しようも無く、仮
想ヴィランのスクラップで痕跡を覆い隠す程度が関の山であった。
「ご、ごめんなさい!私が飛びついて揺らしちゃったからだよねぇ。ごめんねぇ!」
「……ぅ……ら、らいじょ……う……、こえ、副作よォロロロロrrrr」
「わぁっ!?しっかりしてください!」
そうして、一部の受験者にとっては何とも締まらない形で、今年度の雄英一般入試・実技
試験は終了したのであった。
⇔
怪我の痛みと「不合格になった」という精神的負荷で気を失った緑谷。
ゲロ吐いてグロッキー状態で動けないビンタ女子。その背中をさすりながら心配そうに声
をかける――歌満地ならこうするからそうしている――渡我。
そのまぁまぁに惨状な様子を、他の受験生たちは困惑と疑念、そしてドンマイな気持ちで
観ていた。
「あいつ、何だったんだ……? いきなりギミックに飛び出したりなんかして……」
「増強型の“個性”だろうけど……規格外だな……」
「でも、あんなすげぇ個性あるのに、どうしたらあんなビクビクした生き方できんだよ?」
「演技じゃね?」 「いやリターンあったか?」 「ボロボロじゃん」
「……何にせよ、すげぇやつってことは間違いねぇな」
「いやぁ……でもさぁ、助けられて足引っ張ってちゃ、世話なくねぇ?」
――そこじゃないだろう……!
受験生たちが緑谷の個性と行動、その結果に注視する中、一人違う視点を持つ者がいた。
たびたび緑谷に警告をしていた眼鏡の少年だ。
彼は未だ臥せっているビンタ女子に眼を向ける。
――見ていなかったのか!?奴はあの女子を救わんと飛び出したんだ!!
――残り時間……己の身の安全……合格に必要な要素を天秤に掛け……。
――それでも尚! 一切の躊躇なく!!
それに比べて、自分はどうか。怯え、へたり込んでいた彼の横を――気にはかかったもの
の――何も言わず、黙って通り過ぎてしまった。「君も逃げろ」と、そんな後ろ向きな言葉
さえ、かけることができなかった。
何たる未熟。何たる惰弱。ヒーローを志す者として、何という失態だろう。眼鏡の少年は
思わず自分の下唇を噛んだ。だが、だがだが、しかし、言い訳と分かっていても、彼はこう
思わずにはいられなかった。
――試験という場でなかったら……当然!!僕もそのようにしたさ!!
――…………おや!?
すると、彼の脳裏に閃くものがあった。眼鏡の少年は顎に右手を添え、左手で右ひじを支
える、ステレオタイプなシンキング・ポーズを取ると、倒れ伏す緑谷を、次いでビンタ女子
を介抱する渡我に視線を向けた。
――試験……当然……!?おやおや……!?
思案に暮れる眼鏡の少年。受験者たちの診察と治療に来た雄英高校の看護教諭、“妙齢ヒ
ロイン”リカバリーガールによって回復していく緑谷の姿を見ながら、彼は一つの仮説を導
き出した。
■
「実技総合成績、出ました!」
実技試験終了から幾らかの時が経過した。
ここは雄英高校の会議室。教師陣一堂に会しての一般入試審査が行われていた。
「すごいわね。
「派手な個性で立ち回り、最後まで仮想ヴィランを引き寄せ続けた。タフさで言えばトップ
かもな」
「対照的にこっちはヴィランPたったの3で【7位】……」
「
ないねぇ~!」
「俺も思わず『YEAHHH!!』って言っちゃったぜ!」
「しかし自身の個性で甚大な負傷……まるで“個性”に目覚めたばかりの幼児だ」
画面に映し出される、実技試験上位の受験生たちの得点は――
されていた
片方は仮想ヴィランを倒すことで得られた“
救助したり、支援する行動を取った際に得られた“
そう、雄英側が視ていたのは受験生たちの戦闘力だけではない。人助けこそがヒーローの
本懐である以上、他のために動ける人間こそヒーローに向いている。ヒーローらしい行動を
取っていた者には、ヴィランPとは別に、教師たちの持ち点10点の審査制でポイントが与
えられていたのだ。
「その二人も見どころだが……この【5位】の女子生徒もなかなかじゃないか?」
「あー、
「他人に変身して、その“個性”まで行使できる……性質上、他人頼りなとこはあるが、かな
りの強個性だな」
「ああ。おまけに、個性を使わずともそれなりに立ち回れている。けっこうな訓練をしてる
ぜ、この動きは」
「その動きだがよ、それも【1位】の奴と似てねぇか? ……クケケ、なるほどなぁ。資料
見ろよ、奴が救助した事故の被害者だとさ!例の動画の!」
「この娘、7位の奴を助けるのに飛び出して行って、ミイラ取りがミイラになってたが……
まさか、あれも彼の影響か?」
「……だとしたら面倒、いや、厄介だな」
「その彼女についてだけど、ちょっと小耳に挟んでもらいたいことがあるのさ」
教師たちが5位の受験生――渡我の試験時の活躍に注目していると、周囲の者たちと比し
て一際小さい……というか、明らかに人間サイズではない、小動物的シルエットの持ち主か
ら声が上がった。
「何です?
「この生徒、渡我被身子くんだけどね。
「はぁ!?連中の?」
「成程……奴の“個性”を再現できるからですか。つまり、
にしての……?」
「そういうことらしいのさ!」
ちなみに例の建設計画とはまた別件なのさ! と、はきはきとしゃべる小動物的校長――
うプレゼント・マイク。
「つまり、特機部二所属のあいつと5位の女子リスナーはセットになるわけか!」
「なるほどな。おい、イレイザー。この二人、俺のクラスで受け持とうか?」
「……………………いや、俺が受け持つ。いざという時、奴らの無理無茶無謀を静止するの
は俺の“個性”の方が向いている」
「お前さん、今ちょっと悩んだな?」
銀髪疵面の大柄な体躯の教師――“吸血ヒーロー”ブラドキングに図星を突かれた無精ひげ
の教師――“抹消ヒーロー”イレイザーヘッドは、ふい、と視線をそらした。
その眼の先、大型のモニターには実技1位の受験生――歌満地灯志の試験中の映像記録が
映し出されていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
渡我と同様、試験開始と共に割り振られた演習場の奥まであっという間に入り込んだ歌満
地は、『奏血』で作った血の武装を振るい、仮想ヴィランを次々と破壊していく。
時に剣で、時に槍で。時にスリケンやナイフを投げ、あるいは血を紐状に伸ばしてひっか
けることで転ばせたり、拘束して別の仮想ヴィランにぶつけたりなど……歌満地の披露した
戦法は多岐に渡った。
そして彼は、ただひたすらに仮想ヴィランを倒すだけでなく、倒しながら奥から試験場の
ゲートの方へと移動していった。仮想ヴィランのAI、その行動論理を察知して、派手に立
ち回りながら自身にひきつけつつ動くことで流れを作り、他の受験者と仮想ヴィランの接敵
機会を把握しやすくしようという判断だ。
そして、苦戦している受験者を視界に認めれば、率先してサポートしていった。
『
『おお!?真っ赤な糸みて―なのが巻き付いてロボを止めやがった!?』
『今のうちに叩け!』
『いいのかよ!?』『よっしゃ!なら遠慮なく貰っとくぜぇ!』『余裕かよチクショー!』
『
『えっ!?な、何……!?』
『あいつ、盾出してロボの攻撃から女子を守ったぞ!』『やるな!』『イケメンシネ!』
『大丈夫?よそ見してると危ないぞ!』
『あっ……う、うん。ありがとう!』
――と、まあ、だいたいこんな具合であった。
この試験がヒーローとしての適性を視るものである以上、単純に総合的な戦闘力だけを審
査するわけが無い――歌満地はそう考え、救助Pの存在を確信して行動していた。
そして0Pロボが出現、歌満地は動けない峰田を救助した後、壁走りと血のワイヤーを駆
使して、大型敵の進行方向上にあるビルの屋上へ到達。そこからさらに跳躍して――
『
深紅の、機械的な形状の
穂先を両足で思い切り蹴りつけた。
『GRAVITY∞BLEEDING』
落下速度×槍の質量×ストンピング加速によって、突撃槍は0Pロボを天から地へと刺し
貫いた。最終的に底部無限軌道まで刺さって停止した槍をそのままに、歌満地は何食わぬ顔
で離脱。直後、0Pロボは爆発四散した。
歌満地灯志――敵ポイント72P、救助ポイント48P……総合得点、120P。
雄英高校一般入試、首席合格である。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「…………」
映像を見ていたイレイザーヘッドは、そっと自分の眉間を揉んだ。同じく改めて映像を検
証していた他の教師たちも、彼と同じく閉口している。
――これでまだ“上”があるって何の冗談だ……、と。
そう、雄英高校のプロヒーローたちは、歌満地の『奏血』が、「ノイズに対して極めて有
効」な個性であること、それ故に、数年前から特異災害対策機動部二課にエージェントとし
て所属していることを知っている。学生はおろか下手すればデビューしたてのプロヒーロー
よりも、よほど修羅場をくぐっていることも。
歌満地は「ヒーロー免許が取れるなら通う高校は何処でもいい」と思っていたが、実際の
ところは、物理的にも人材的にもセキュリティの高い、この雄英高校しか選択肢は無かった
……特機部二という組織の上にいる、国防を担う政治家たちの思惑によって。
対ノイズで無ければ――情報操作的な意味で――全力で行使できない強大な個性、聖遺物
を
歌満地本人の意思とはまた別に、社会の表と裏で、いつでも自衛のために個性を使用でき
る立場を持つことを、歌満地は大人たちから望まれているのだ。
雄英側にも、その意図は伝えられている。だから総合成績が算出されても、誰も1位当人
について言及しようとしなかった。もちろん出来レースなどでは無い。歌満地は決して手を
抜いたりなどしていない。あの場では使えない手札をたくさん持ってただけの話なのだ。
イレイザーヘッドには、だからこそ解せない疑問があった。
「校長……、何故、奴を推薦で取らなかったんですか。奴を除いた場合の、あの試験場の平
均得点は他の会場と比べて2割近く低い。――合理的じゃあありませんよ」
「うん、僕も最初はそのつもりだったのさ。でもね……」
根津校長はそこでちょっと言葉を濁して、頭痛が痛い、みたいな顔になった。
「彼は、ほら……出席日数がね……」入院の繰り返しで
「……あぁ……」
「かといって無理にねじ込ませるのは、その、流石に外聞が悪かったのさ……」
「…………心中、お察しします」
「……せめてもう少し上が早めに伝えてくれていれば、“スカウト枠”、とか、設けられたん
だけどさー……」
「……奴みたいなのが毎年ポンポン出てこられても困りますがね……」
入学前から問題児……どころか厄ネタ扱いさえされている歌満地なのであった。
しかし、イレイザーヘッドはまだ知らない。この春、ある意味で歌満地以上の爆弾となる
生徒を受け持つことになることを。
その二つの爆弾が、どちらも爆発する運命にあることを。
眼球に疲労を感じて目薬を差す、彼はまだ、知らない。
???「――あ、もしもし三奈ちゃん?試験どうだった!?」
???「そんなすぐには分かんない?それもそっかー、えへへー」
???「ふんふん、手応えはバッチリ?本当!?やったねー!ならもう絶対合格だよ~~!!」
???「そう言えば切島くんは?え、試験会場が違った?……敷地の中に街!?しかもいくつ
も!?ほへぇ~~……。流石雄英ともなると私たち一般人とは常識からして違いますね……」
???「うん……うん。そうだね、きっと二人とも受かってるよ!私も“リディアン”で頑張る
から!三奈ちゃんと切島くんも頑張って!……え、気が早い?あははー、ごめんごめん」
???「……うん!じゃあまた学校でね! おやすみ、三奈ちゃん!」
オリ主盛り過ぎたかな。でも盛っていかないとシンフォギア側についていけないから……。(たやマさん並感)
トガちゃんやデクくんだけでなく、他のヒロアカキャラもどんどん盛っていきたい所存です。
峰田くんは欲望に素直だし、普段がアレなせいで活躍する時がホント光って見えるから気にいってるキャラではあります。ヒロアカのギャグの半分は彼が担ってると思ってる。でもあのクソシリアスかつドラマチックな展開でミネタビーズ挿入してくるのはちょっと……。
前回伏線張っていたチョーカーですが要するにリミッターです。リミッターだからそのうち取れます。リミッターは古今東西解除されるものと相場が決まってるのです。今から楽しみ。
そしてオリ主、及び変身トガちゃんの必殺技のお披露目。そうです、内藤泰弘先生の大人気漫画『血界戦線』ネタです。まあ、オリ主の個性の設定出した時点でそうなるなと思ってた方はいると思います。握手しようぜ。なお、『血界』キャラまで登場させるかどうかは未定です。収集つかなくなるから多分やんない。
ちょこっと用語解説
☆峰田:
『ヒロアカ』の下ネタ担当。フルネームは峰田実(みのる)。本当によく合格したなってくらい性欲ダダ洩れのけだものくん。でも友情には厚いし、恐怖を乗りこえて体を張れる、いわゆる黄金の精神の持ち主でもある。真面目にヒーローやってれば多分モテなくもないはずなのに、どうして我慢できないのか? 「男だからさ!」
☆人の想い:
即ち、「愛」。シンフォギアにおいては根幹部分に関わってくるかなり重要な要素。なので本作でも想いの力というものが状況を大きく左右していくと思います。
☆地面さんに熱烈なキスをして死:
『ジョジョの奇妙な冒険』第5部「黄金の風」より、主人公ジョルノの頼れる仲間、グイード・ミスタの台詞が元ネタ。なお原文は高速走行中の敵を転倒させた際の台詞であり、高所からの落下とは少々違った意味合いである。
☆歌満地流血奏術:
上にも書きましたが『血界戦線』より、主要人物たちの使う戦闘技術「血闘術」のオマージュです。シンフォギアと言えば技名カットイン、血界戦線も技名を叫んでから殴る作品、と、ベストマッチなので。今後もどんどん叫ばせます。
☆シンキング・ポーズ:
物事を考える時に取る姿勢、あるいは仕草。有名なのはロダンの『考える人』のポーズ、日本なら『特捜戦隊デカレンジャー』デカグリーンことセンちゃん、あるいは『あばれはっちゃく』桜間長太郎の逆立ちポーズ。脳に血が回ってよく考えられるってことなんだろうけど……無理があるくない?
☆根津:
『ヒロアカ』のメイン舞台、雄英高校の校長を務める世界的偉人……のネズミなんだか狸なんだか熊なんだかよく分からない謎生物。どう見ても鼠。「人間以上になる“個性”」が発現した動物、という『ヒロアカ』世界でもレア中のレアケースらしい。昔は人間たちに好き勝手弄られたとか。
☆ブラドキング:
『ヒロアカ』世界のプロヒーローにして雄英高校1年B組の担任。個性『操血』を使う“吸血ヒーロー”。その名前はルーマニア辺りから怒られないのか、と。個性がオリ主と被ってるが、年季を別としてもスタミナと瞬発力で勝ってるので、先の先を取るか後の先を取らないとオリ主が敗けます。
☆イレイザーヘッド:
『ヒロアカ』世界のOTONA。1年A組担任。話が進む度にボロッボロになっていく人。正直見ててつらい、そのうちマジで殉職しそう。でも服のセンスが壊滅的なので多分死んでも生き残る。