評価バーが黄色い!すごい!ありがとうございます!!
え、だったらもっと頑張れ?
12月だし、師走だし、遅れても許されるよね?ダメ?そんなー(´・ω・`)
まぁ、何とか頑張ります。頑張りましょう。
では、オリ主VSトガちゃんROUND2……
ですが、長くなったので二人の直接対決は次回に持ち越し。
今回は「彼」との勝負です。
「――まあ、と言っても……今回のMVPは飯田少年なんだけどね!」
演習一戦目が終わり、その講評タイム。開口一番のオールマイトの発表に、当の飯田くんは
口をあんぐり、驚いている。
「ケロ……勝った方の緑谷ちゃんかお茶子ちゃんじゃ無いの?」
「
もったいつけて挙手を募ったオールマイトに、答えたのは八百万さん。
曰く、飯田くんが最も状況設定を
更に、爆豪くんには私怨丸出しの独断行動と大規模な破壊を招く攻撃、緑谷くんには同様の
内容+重傷を前提とした作戦の立案と実行、麗日さんには中盤の気の緩みと仮想核兵器の扱い
の粗雑さ……と、それぞれに問題点を指摘し、飯田くんが麗日さんに核兵器を奪われたのは、
他3名ができていなかったことを彼がきちんとこなしていたからこそだ、と締めくくった。
渡我さんとの会話と昨日の“個性”の使い方から鑑みても、彼女は情報の分析に長けているよ
うだ。緑谷くんといい、知恵の回る人が多いな。彼らの前では『輪唱』はあまり使わない方が
いいかもしれない。
さて、そこまで高評してもらえると思ってなかったのか、飯田くんは感極まった表情でプル
プルと震え、逆にオールマイトはそこまで総括されると思ってなかったのか、トレードマーク
の笑顔が引き攣っている。
「(ガッツリ言われてしまった……。)ま、まぁ……飯田少年も?多少硬過ぎる節はあったり
するわけだが……まあっ、概ね正解だよ!くぅ……ッ!」
「常に
胸を張って堂々と言い切った八百万さんに、周囲は感心したように注目している。渡我さん
だけ、「真面目さんですねぇ」なんて笑ってるけど。
それにしても、爆豪くんが随分と静かだ。さっきまでの狂猛な振舞いは、全く鳴りを潜めて
いる。緑谷くんに負けたことが、そんなにもショックだったのだろうか。
「ですので、歌満地さん」
「――ん?」
「貴方は先ほど、『試合も勝負も緑谷さんの勝ちだ』と仰いましたが……ヒーローチームの勝
利は、これが訓練であるという甘えから生じた、反則勝ちのようなもの。きちんと実戦と同様
に状況に臨んでいれば、あのような運びとはなりませんわ。少々、軽い御気持ちで観ているの
ではありませんか?」
Oops、まさか俺にも矛先が向くとは。でも、そう言われると頷く他は無い。
「……うん、そうだね。『接触した時点で勝ち確は状況設定と矛盾しているのでは?』とか、
『つまりは触れただけで無力化される核兵器だとでも?』とか、『そもそも核兵器と言っても
機能や用途で対処方法に差異が出ますよね?』とか、『舞台設定に対してダミーが無駄に大き
い』とか……他にも色々とあるけどあまりに想定に抜けが多過ぎるし、その点について補足も
無かったから、単純に訓練としてよりも勝負事として観ていたと思う。確かにうがった、傲慢
な捉え方だった。ごめん、飯田くん、麗日さん、爆豪くん。八百万さんも、指摘してくれてあ
りがとう」
「・・・・・え、えぇ。こちらこそ、少し高姿勢だったやもしれませんわ」
……あれ、何故だろう。
八百万さん……だけじゃないな、何で皆、そんな微妙な表情を?
「……なぁ、歌満地少年」
「はい?」
少し戸惑っていたら、オールマイトが切なそうな声色で話しかけてきた。
「君、ひょっとしてさ……、私のこと、嫌い……?」
「滅相も無いです」
■
会場がひどく損壊してしまったため、続きは別のビルへと移動して執り行われた。
それと、オールマイトから「こちらが提示した以外の設定は、各自で自由にしてくれていい
よ!」と言われた。柔軟な思考、突発的事態への対応力を高めるといった意図があったのか、
とちょっと反省。飯田くんがまた
その後の演習は特に問題もなく順調に進み、いよいよ俺たちの番となった。
「では改めて。よろしく、峰田くん、八百万さん」
「ええ、こちらこそ」
今戦の組み合わせは、俺・峰田くん・八百万さんのチームと、渡我さん・轟くん・障子くん
のチーム――渡我さん側が敵役なのが、ちょっとやりづらい。
「んでよぉー、どうすんだよ?作戦は」
そう尋ねながらも、峰田くんの視線は
「……その前にだ、峰田くん。君、そろそろ首が痛くなってるんじゃあないかい」
「え?何?首ィー? ……いや、別に?全然だけど?」
首を痛めたポーズとカッコつけた演技でそう返す峰田くん。だが視線はブレてない。
「そうか、遠回しに言っても無駄か。 君を盾にして突入するぞ?物理的に」
「ダダダダメに決まってんだろ!?なんちゅーっ恐ろしいこと思いつくんだオメーッ! こん
なに愛嬌あるマスコット的容姿のオイラを盾にするとか、良心ってもんが無いのかよ!!」
「何故かな……普段は冗談でも言わないんだが、君に対しては“別にいいかな”って気がしてく
るんだ。なるほど、これが遠慮のない関係――ユウジョウ!」
「絶対ェ違うわッ!」
「そうか。じゃあ、盾にされたくないならもう止めておこう?ね?」
そう言うと、峰田くんはぎゅっと顔のパーツを中心へと引き攣った表情になり、錆びた歯車
が回るような段階的な動きで、やっとこ顔を八百万さんから背けた。
そんな峰田くんに、八百万さんは呆れたように溜息をついて、忠告。
「峰田さん。大抵の場合、女性はその手の視線には鋭いものですわ。歌満地さんの仰る通り、
以後、自重なさるのが宜しいかと」
「うぐぎぎぎ」
「――さて、時間を取ってごめん。まずお互いの能力を簡単に把握しようか。 俺は自分の血
を操れて、これで武器を作ったり、身体機能を強化できる。どの程度かは昨日見せた通りだ。
けど使い過ぎると貧血になって、最悪死ぬ」
「しっ……んんっ、私は自身の脂質を消費して、あらゆるものを創造できます。但し知識に無
い物、詳細に把握していない物は創れません。それと、大きい物を作るのは時間がかかります
わ」
「…………」
「峰田くんは、頭のその丸いものが取れる、でよかったよな?粘着性があって、君自身に対し
ては反発する、だと思うんだけど……峰田くん?」
「……そーだよ、ああそうだよッ!悪かったなーァ、しょっぺぇ地味個性でよーッ!」
急にどうした峰田くん。地味個性?僕らと自分を比較してのことか。
「そんなことは無いよ、峰田くん。とても良い個性じゃないか。
うってつけだと思うよ」
「そうですわね。どの程度接着力と耐久性があるのかにも依りますけれど、事故・災害時の人
命救助や現場修繕などにも役立てられますわ。大変応用力のある個性かと」
「えっ……そ、そうかぁ?いやまぁ、確かに?いっぺん引っ付くと何やっても剥がせねぇし?
体調のいい日は丸一日くっつかせられるしぃ?」
「ますますすごいじゃないか」
便利だなぁ。素直に感心できる。
そんな具合に頷いてみせると、峰田くんは打って変わって自慢げに胸を張った。
「じゃ、次に相手方の個性について。分かる範囲でだけど――」
⇔
「――とまぁ、今判ってる情報はこれくらいですねぇ」
「う、うむ……。昨日の今日だというのに、よくそこまで分かるな」
「……歌満地の情報だけ、やけに多かったが……」
「私ができることは灯志くん
私の言葉に二人――同じチームになった……えーっと、障子くん?と、轟くん?は怪訝な顔
をしてます。
「そう言えば……、昨日相澤先生が言っていたな。渡我の記録は、歌満地と同程度かそれ以下
になる……と」
「奴とお前は、同じような個性、ってことか?」
「フフッ、そう思ってくれていいですよ! そういう事なので、灯志くんの相手は、私にしか
できませんね。 なので、私がやります。一対一です」
正確に言えば、私がそうしたいだけなのですけど。
それは言わないのです。その方がスムーズ、学びました。
「……まるで、俺らじゃ奴に敵わねぇ、って言ってるように聞こえるが」
むっ、轟くん噛みついてきました。負けん気が強い人なんでしょうか?
「お前の情報通りなら、奴は寒さには弱いはずだろ。体温が下がると血管は縮む。そうなると
血圧が上がって、血管や心臓への負担が大きくなる……つまり体力の消耗が激しくなる。血圧
も操作できるらしいが、下手に下げれば、それこそ低体温で動きが鈍くなるだけだ。体力テス
トの時の、あの槍も……アレは脅威だが、こんな狭い屋内じゃ使えねぇしな。他にも色々作れ
るらしいが、血を使うんなら同じだ。消耗が早まる以上、下手に作れねぇだろ」
「なるほど。確かに、昨日のテストで観た限りでは、歌満地の身体能力は凄まじいが……轟の
『氷結』ならば、ということか。しかし、そこまで素早く場を冷やすことができるのか?」
「問題ねぇ。それだけの出力は十分にある。だから作戦としちゃあ、奴らがある程度進んだと
ころで、このビルごと凍らせる。それで捕らえ切れなくても、焦って勝負に出ざるを得なくな
るはずだ……。そこを待ち伏せる」
「――あっっまいですね」
「何?」 おっとと。お口に出ちゃいました。轟くんの目が、細くなってます。
「説明したげましょう。 まず、このコスチューム。灯志くんとお揃いのこれはですね、なん
と北極圏もギリイケちゃうって触れ込みなのです。つまり寒さ対策はバッチリです!」
人差し指をピンと立て、その場でクルっと回って見せます。
裾がひらっとしてクールでしょう?
「……何でそんなに得意げなんだお前」
「次に、灯志くんは何を隠そう、“素手が一番得意”なのです!」
「では、武器術を封じたとしても歌満地の戦闘力は落ちない、と?」
「そうです!」
「いや、それでも手数は減らせるだろ」
「最後、これが一番肝心ですが」
3つめ、薬指を立てて、私は真剣な声で言う。
「灯志くんの強みは、個性でも技術でもありません。 心です」
「……は?」
「だから灯志くんは強いのです!」
「…………精神論か?根性があってしぶとい、とかって話か?」
轟くんは胡散臭いものを見るような目つきで私を睨む。
「いいえ。分かるように言いますとぉ、灯志くんはですねぇ~……」
『――5分経った!それじゃあ少年少女よ!演習、始めだ!』
「ありゃま」
灯志くんのことをもっと教えてあげようとしたら、訓練始まっちゃいました。
「……何でもいいが、他に良い案が無ぇなら俺のプランで行くぞ。 障子、索敵は任せる」
「分かった」
ムッ。私が気を取られた間に、二人して部屋の出口に向かっちゃいました。
「まだお話終わってませんけどぉ?」
「もういい。十分だ」
――は?
「奴がかなり“ヤる”ってのはよく分かった。だが向こうには八百万もいる。ああいう頭の回る
奴は、時間を与えず、速攻で潰すべきだ」
部屋の扉を開けつつ、左の肩越しにこっちを見て、その顔と同じ凍った声で言う。
「渡我、お前は核守りつつ待機だ。万一、俺らが突破されても、ここに辿り着くまでに消耗さ
せる。そんで、万全の状態のお前が待ち構えて倒す――何か異論はあるか?」
「…………」
「友達自慢すんのは結構だが、んなもん聴く暇も、その気もこっちには無ぇ。この程度のこと
ダラダラやってる訳にはいかねぇんだ俺は」
それだけ言って、轟くんは出て行った。
障子くんも――目がちょっと申し訳なさげだったけど――付いて行った。
うん。
頭に来ました。
なぁんかイライラしてたみたいですけどぉ……それは私の方ですよ、轟くん。
作戦は、まぁ、理に適ってますよ?でも私は貴方より灯志くんのこと分かってるんですよ?
その私が任せてって言ったんですよ?作戦だって、灯志くんですよ?どこまで通用するか、怪
しいものですよ。だいたいなんですかそのコス、ターミネーターですか。凍ったT-1000
ですか、Tは
というか、ぶっちゃけアレですよね?
「下」に見てますよね?灯志くんのこと。
「……ふ、ふふ。オッケーですよぉ。オッケー過ぎる程にオッケーです。いいですよ。乗った
げますよぉ、轟くん」
でも、勝って、最後に笑うのは貴方じゃ無いです。
「嗤うのは……トガです」
そう、今の私はヴィランなのだから。
あくまでそういう演技であっても、悪者なのだから。
やりたいようにやったって、邪魔されないでしょ?
「と、いう訳でぇ…………オールマイトせんせぇ?トガ、ご相談がありまぁす♡」
『と、渡我少女?その、なんだか声が怖いぞ?』
「気のせいですよぉ?それでですねぇ――」
『……うーむ。ま、まあ、アリっちゃアリだが……』
「じゃあいいですよねぇ!? ね!?」
『く、くれぐれもやり過ぎないようにね!?と言うか本当に殺気立ってない!?』
「気のせいです。イイデスネ?」
『アッハイ』
■
「…………どうだ、障子」
演習開始2分後、ビル4階。3階へと続く階段の手前。
轟の問いに、傍らに立つ障子は、その腕の先に生やした耳を澄ませつつ答える。
「一階に足音が二つ、迷い無く上への階段を目指している。どちらも同程度の体重のようだ
な、反響音が似ている。……固さを感じる音だ」
その先端に自身の肉体の器官を複製することができるというもので、更に複製された器官は
本来のものより性能が良くなっている。現在、障子は「耳」を複製し、その聴力を以てヒー
ローチームの動きを探知しているのだ。
「体重が同程度ってことは、向かってきてんのは八百万と歌満地か。……足音は二つ、間違
いねぇんだな?」
「ああ。……今、2階への階段を昇っている」
――なら、あの小っこい奴はどうしたんだ?
轟は暫し黙考する。
――渡我からの情報だと、あの小せえ奴の個性は“何にでも引っ付く球体”、だったな。
――どちらかに、文字通り「くっ付いてる」のか?
――あの小ささなら、然程重くもなさそうだ、余裕で運べるだろ。
――いや、あるいは……二手に分かれたか?
「……関係ねぇか」
「? 轟……?」
障子の呼びかけには応えず、轟は、その右手から冷気を立ち昇らせた。
彼は障子の前に歩み出ると、その
「どっちにしたって、まとめて凍らせるだけだ」
放射状に、凍り付かせていく。接する壁も、天井も、4階の一部と3階から下は、何もか
もが氷に閉ざされた。
その範囲に反し、要した時間は僅か数十秒にも満たない。背を伝う
力に対してか、それとも、空間に満ちる冷気に因るものか。
障子は、己の目の前で立ち上がった轟に、自分と同じ歳の少年に、驚嘆と畏怖を覚えた。
「ハァ……――障子、確認を頼む」
「っ、あぁ、分かった」
轟に促され、障子は再び、その皮膜のある3対の腕を大きく広げる。
「…………、ムッ、氷を踏む音がするぞ!数は、――何?」
唐突に、障子は触腕の先に複製した口を噤んでしまった。
「……?どうした?」
「――歌だ」
何を言ってる?
障子の言葉の意味を推し量ろうとして、全くできず、轟は眉間にしわを寄せる。
だが、彼の
ギター、ベース、ドラム、キーボード。
拍子を刻む、幾種類もの電子音。重なり合い、一つとなって流れてくる。
「歌が、聴こえる? ――ッ!」
轟は険しい顔つきとなって階下を睨む。そして、更に苦々しい表情へと変化した。
――渡我から聞きはしたけどよ……。
――ナメられてる、って思っちまうな、これは。
――……何より。
――
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「――ええいっ、ふざけおって!何が歌の力だ、あの小僧共! ん、どうした焦凍。ついに
“左”の使い方を教わる気になったか!?待て焦凍!無視をするな!」
「――子供の分際で、全く忌々しい……。生死を懸けた戦場で歌うなど……! む、焦凍!
お前、いい加減に“左”の特訓をだな……待て焦凍ォ!!」
「――推薦1位か。よくやった。だが、まだだ!全国より集まるヒーローの原石たち――彼
らを超越する成績を出し、完全無欠の1位を取れ!特に!首席合格の小僧には絶対に勝て!
あのカラオケ小僧め……!いいな、焦凍!分かったな焦凍ォ!!オイ待て聞いて
いるのか焦凍ォォ!!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
確たる証拠があるわけでは無い。だが、十中八九、あの男が――己の父親が
いでいた“小僧”とは、歌満地灯志なのだろう。轟は、そう確信していた。
「(親父と歌満地には、何らかの接点がある――それ自体はどうでもいい)」
だが、忌々しくも自身の父である男が多少なり執心を見せる相手など、奴が後継者扱いし
ている自分を除けばたった一人。『オールマイト』をおいて、他にはいない。
ならば、そこにどんな理由が、因縁があろうとも――
「(“右”の氷だけで、歌満地に勝てば……少なからず奴を見返してやれる!)」
とは言え、単独で動けば、先刻の爆豪のようになってしまうだろう。
努めて冷静さを保ちつつ、轟は障子に索敵を促す。
「障子、足音は何人分か分かるか。一人か、二人か」
「恐らくは一人だ!すまん、この歌のせいで聴き取りづらい!」
「問題ねぇ、歌ってるんだ、俺の耳でも位置は分かるっ。行くぞ、上がってきてんのは歌満
地だ。なら二人がかりで確保する!3階に降りたら、この階段を氷で塞げば、仮に突破され
たとしても時間は稼げる!」
障子の返事を待たず、轟は階下へと駆け降りた。
全ては、父を否定する為に――。
「自分たちの手で逃げ道を塞ぐか、まるで背水の陣だな。それほどの覚悟か……!」
そんな轟の心境は露とも知らない障子は、轟の後を追いつつ、渡我へと無線で連絡を入れ
る。
「渡我。聞こえるか、俺と轟はこれから――渡我?」
『――――』
しかし、渡我からの返答は、二度三度と呼びかけても無かった。
⇔
一方、ビルの外。
「ひぇぇ、マジかよ……。歌満地の言った通りになりやがった……」
そこでは、氷漬けになったビルを見上げて、峰田が驚愕していた。
そう、彼はまだ内部に突入していない。一人この場に残っていたのだ。
手には、何故か縄とカラビナ。
『峰田さん?聴こえまして?』
「うおっ!? お、おう!聴こえるぜ!」
『内部の凍結の規模からして、1階、2階に核兵器は無いものと思われます。やはり、本命
は上の階ですわね……。外側の様子は、どうなっています?』
「ちょっ、ちょっと待てよ?えぇっと……」
慌ててもう一度ビルを見上げる峰田は、3階より上の外壁を見て、あっ、と声を出す。
「4階!4階から上は氷が薄い……よーに見えるぜ!多分!」
『4階……。では手筈通り、
「うっ……な、なぁ……やっぱ、マジでやんのか……?」
『その為に残って頂いたのですわ。御安心下さい、お渡しした命綱は多くの登山家、ロック
クライマーから支持されている一流メーカーの製品を参考に――』
「いやいやいや、まず命綱が必要な時点でアウトだろおぉおっ!!?」
無理無理無理! と駄々をこねる峰田。
もう察していただけただろう。これから峰田は、彼自身の個性を最大限に活用し――ビル
の外壁をフリークライミング、核まで直にレッツゴー。という作戦なのである。
つるつる、しっとりの凍った壁でも、峰田の“個性”『もぎもぎ』であれば、登ることは可
能。そして、『もぎもぎ』は峰田以外はくっつけてしまうため、即席の連携ではフレンド
リーファイアが起きかねないと判断した歌満地と八百万は、峰田を(一人だけど)別動隊とし
て上階に回り込ませ、“縦軸”で挟み撃つ作戦に出たのだ。
『とはいえ、相手方に読まれることを想定して、ビルが丸ごと凍った場合、その後にのみ実
行する――というのが歌満地さんのお考えでした。まぁ、見事的中したわけですけれど。と
もあれ、悠長にしている時間はあまり無いですわ。峰田さん、お早くお願い致します』
「で、でもよぉ~……、でもよぉ~……」
この土壇場に来て
『お願い致しますわ、峰田さん!私(たち)には貴方が必要です!私(たち)の勝利の鍵は、
貴方なんですのよ!私(たち)のために、どうかがんばってくださいな!』
「おっしゃやったるぜーーーッ!!」
見事な一念発起、心機一転、もとい前言撤回である。
うひょひょと叫びながら、峰田はすごい勢いで自身の頭部からもぎもぎをちぎってはひっ
つけ、ちぎってはひっつけを繰り返し、一気に外壁を登って行った。
⇔
「……は、恥ずかしかったですわ。私があのような、ね、猫撫で声を出すだなんて……」
峰田との無線通信を切って、ビル2階にいる八百万は思わず頬に片手を添えた。渡我の提
案を早速実践したらしく、赤い無地のマントを創って装備している。
「うぅ、“実行寸前になって渋るかも知れないから、その時はこう言って
なんて……。私、ヒーローですのに……」
――恨みますわよ、歌満地さん。
口先を尖らせつつ、八百万は自らの足元を見る。
ふくらはぎまで氷に包まれている、その両脚。
その脚と氷の間には、深紅の層があり、それは徐々に塵となって煙のように消えていく。
やがて完全に無くなると、脚と氷の間には、手を差し込める程度の隙間が生まれた。
八百万は氷を砕いてしまわないよう、注意を払いながら、腕から長い柄のハンマーを創造
した。
「ここまでは概ね作戦通り――ですわね」
八百万と轟は、同じ『推薦入学者』。雄英の推薦入試は、障害を
を競う、「よーいドン」で始まるタイムアタック形式であったが故に、二人は入学試験の時
点で、お互いの個性と、その使い方を観ている。
轟の“個性”の習熟度の高さを、八百万から聞いた歌満地は、轟は自身に有利な状況どころ
か、“有利な環境”を作ってしまえると仮定。冷気による体力の消耗、あるいは直接の凍結で
こちらの身動きを取れなくさせ、安全に確保する算段であろうと予測して、2つの対策を提
案した。
一つは先述した、二手に分かれること。
もう一つが、八百万の脚部を覆っていた“血のブーツ”である。
自分たちが直接的に轟に凍らされるとすれば、先ず足が狙われる。そこで、仮に凍らされ
たとしても時間経過で霧散するために、脚部に凍結のダメージを与えず、氷との間にスペー
スも作れる、奏血で形成したブーツを八百万に装備させたのだ。
流石に、ビル全体にまで及ぶ出力であったことは想定外だったものの、結果、八百万はい
つでも拘束を解いて動ける状態になれている。
白い息を吐きながら、八百万は静かに、耳を澄ませてタイミングを待つ。
冷たい風に乗って、歌満地の歌声が聴こえる。
この歌が途切れた時が、接敵した合図だ。
⇔
パキリ、パキリと薄氷を踏みしめる。その音に間断は無く、迷いも無い。
この青白い、
威風堂々、胸を張って――戦士は進み続ける。
――と、それだけなら、何となく絵になりそうな格好よさなのだが。
「Wow Wow Wow♪ Wow Wow Wow Wow♪ Yeah Yeah Yeah♪」
その情景を作っている歌満地当人は、めっちゃ
しかしながら、こんな雑な歌でも『奏血』はきちんとその力を発揮させ、歌満地の両腕に
真っ赤なガントレットが作り出された。その装甲からも演奏が発信されている。
現在地は、ビルの3階。
「Wow Wow Wow……Wow――…………」
廊下の角に差し掛かった瞬間、歌満地は、花が萎んでいくように声を消していった。
――来てるね。
――ここを曲がって、向こう側の角に一人。
歌満地は壁に体を張り付け、顔だけを半分ほど出して様子をうかがう。
――扉の数は左右二つずつ、計四つ、
――もう一人はその何れかの部屋の中か。
――足跡は見えないが、ここまでの通路と比べて僅かに氷が厚い、張り直したな。
よく考えている、と歌満地は密かに舌を巻く。
四つの部屋の何れか、その前を横切る際に奇襲される。あるいは、通過した後、向こうの
角にいるもう一人と挟み撃ちにされる。併せて五つの“危険”があると示して、歌満地を牽
制しているのだ。
また、この通路は一本道であり、各部屋の入口との動線は直角になる。
――短時間でこんな有り様にしたんだから、どっちかは轟くんで確定だろう。
――そして、どっちであっても、進めば進むほど彼の“個性”を回避し辛くなる。
ここを通らない、という選択肢もあるが……それは、戦う前から敵に背を向けるというこ
とーーヒーローらしい行動では無いだろう。また、現在位置から上への階段に向かうなら、
この通路を通るのが最も近いので、他のルートを選べばそれだけ時間がかかる。
――そして、こうして思考と警戒を強要することで、焦燥と躊躇を誘う。
――そうしてもたついていれば、どんどん下がっていく室温で体力も削れる。
――うん、とてもいい作戦だ。
思わず口角が上がる歌満地だったが、一つ息を深く吸ってから、真一文字に結び直す。
「だが、やりようはあるっ!」
角から飛び出し、ヴィランチーム待ち受ける通路へとその身を躍らせた歌満地は、走りな
がら両手に二つずつ、血液の杭を形成する。
彼が見据える先、曲がり角の向こうで待ち構えているのは――轟だ!
――突っ込んできた!
轟は即座に迎撃態勢を取る。その右手から、冷気が漂い始めた。
――確かに昨日の50m走の記録を考えりゃあ、一気にここまで突っ切れるだろうさ。
――もう一人、障子が隠れてんのに気付いてんだとしても、この狭い通路だ。
――動けるスペースを広く持つには、通路の奥にいる方を速攻で倒すべき。
――そう考えてんだろうな。
――だが、俺が気配を隠してないのはわざとだ。
――ヒーローなら、敵がいると分かってんなら立ち向かわないって選択肢は無い。
――お前は誘いこまれたんだよ。
――そして
身構える轟――その前後の通路は、なんと人の身体ほどもある氷柱が乱立している。
歌満地が踏み入った廊下は、袋小路に変えられていたのだ。
――さぁ……、来い……!
歌満地から鳴り響く旋律の音量から、轟は彼我の距離を測る。
一方、歌満地から数えて……三番めの部屋。
あけ放たれた扉の側で、息を潜めているのは障子だ。
――手筈では、歌満地がこの部屋の前を通り過ぎた時が、仕掛けるタイミング。
――向こうにも、何かしらの策があるようだが……最早それが何か考える時間は無い。
――俺は俺の役割を、全力で遂行するだけだ……!
左右の触腕に拳を複製し、障子もまた身構えた。
轟と障子、二人の戦意が、ぎゅっと凝縮された、その瞬間――
「――歌満地流血奏術」
(( ! ))
「『
振り抜かれた歌満地の手から、4本の血杭が放たれた。
目を凝らしてよく視れば、その後端部からは極細の血の糸が伸びている――歌満地の両の
手首まで。
真っ直ぐに宙を飛んでいくバトンほどの太さのダーツは、4つの部屋の前で一つずつ、ま
るで意志を持っているかのように動き、直角に進路を変えた!
そのまま、それぞれの部屋の中へ飛び込んでいく!
僅かな風切り音と共に目の前に飛来した、猟奇的な
を感じて、ビクリと、鋭く身を強張らせる。そして――
( なっ!? い、いや、焦るな!まだ動くわけには―― )
〈SPLEEEEEEASH!〉
「ぬうっ!?」
すぐに心持ちを立て直そうとした障子。しかし、その眼前で杭が弾け、多量の血液が
と共に飛散したことで、とうとう声を出してしまった。
――左2つめ、入り口から1m弱、俺から見て手前側!
障子の潜む位置を把握した歌満地は、右腕のガントレットから流れている音のボリューム
を勢いよく引き上げた。
「歌満地流血奏術 『
『
歌満地は爆音を奏でる血の拳を、入口横の壁へと叩き込む。その裏に隠れていた障子に、
大小のコンクリート塊ごと突き刺さった。
「ごめんよっ!」
「ぐあっ……!?」
あまりの衝撃に体勢を保てず、障子は、どう、と倒れ込む。
崩れ落ちた壁を越えて室内に踏み込んだ歌満地は、昨日、爆豪にした様に、血のロープで
障子を雁字搦めにした。そこへ、轟が駆けつけてくる。
場の状況を瞬時に把握して――轟の頭の中に、火と熱が巻き起こる。
「――! 歌満地ッ!」
床を踏みつけた轟の右足から冷気が放出され、歌満地に向かって、真っ直ぐに氷の牙が生
えていく。対する歌満地はこれを横っ飛びに回避しつつ、血のロープで捕まえたままの障子
の身体を、満身の力を込めて引っ張り――
轟の左側へと向かって、振り回した。
「フン、ヌッ!」
「何っ!?」
――コイツッ、歌満地!
――なんて真似しやがる……!
一瞬、硬直した轟だったが、何とかバックステップで回避した。
廊下へと戻った轟の目の前を、障子の大柄な体躯が、左から右へと通過して行く。
――すまねぇ、障子。
――だが、これで射線は開いた!
すかさず、歌満地へと、右腕を掬い上げるように振り抜いた。
歌満地はロープを縮めて引き戻し、障子の身体に急速に制動をかけて、氷の山脈の手前で
止める。自身に向かってきた氷結攻撃は、高く掲げた右脚を床へと振り下ろし、踏みつけて
衝撃を起こすことで対抗した。
「震脚だと……!?」
――そんな芸当まで……!
――いや、それよりも、奴の反応が速いのもあるが。
轟は、自身の右半身に目を向けた。その一部分に、
――今の氷も、思ったよりか小さくなっちまっていた。
――体温の低下にヒーターの出力が追い付けてねぇ……!
「――一つ、提案してもいいかな?」
唐突に、歌満地が轟へと話しかけた。その声は、わずかに震えている。
轟はハッとなって視線を戻す。気付けば、相手から聴こえる音楽は小さくなっていた。
「なに……?」
「諦めて大人しく投降してくれ。これ以上の抵抗は無意味だ」
こいつは何を言ってるんだ、と、轟はまたしてもカッとなる。
「てめえ……ッ!」
「ああ、気を悪くしたなら謝るよ。でも、今の俺は、ヒーロー、だからね。こういうことを
言う。(……まあ、半分くらいは本音なんだが)」
「ッ、…………成程な。――俺の答えは、ノウ、だ」
にべも無く降伏勧告を突っ撥ねられる歌満地だが、一歩、二歩と牛の歩みで近づきながら
なおも轟に語り掛ける。
「本当にそれでいいのか?このまま立て籠もっていたって、状況は悪くなる一方だぞ?どん
詰まりになったら核で自爆して死なば
「黙れッッ!!」
怒声と共に、ほとんど衝動のままに放たれた爆発的凍結は――生じた氷はその大半を拳撃
によって砕かれたものの――とうとう、歌満地の足をその場に縫い付けた。
「くだらねぇこと……、べらべらと……」
「……Oops」
「今時そんなテンプレ文句、聞く耳持つ馬鹿はいねぇんだよ……!」
冷え切った空間の中に、怒りの灼熱をはらんだ、赤黒く、重たい声が吐き出される。
端正な顔立ちを忿怒の形相に歪め、こちらを睨みつける轟を観て、歌満地は、自身が轟の
“触れてはならない
――なんか、前にもあったな、こういうこと。
かつての己の
対する轟は、硬い表情を崩さぬまま、ゆっくりと右腕を翳した。
――さっきからコイツ、声が震えている。
――渡我の奴は北極がどうのとか言ってたが、こんだけ冷やされりゃあ
――よく見れば顔色も青くなり始めてる……既にだいぶ血を消費してるってことか。
――なら、これ以上は武器を出せねぇ……はずだ。
――かと言って近づこうもんなら、増強系並みのパワーで返り討ちに遭う。
――だから今出せる氷の、射程ギリギリからぶっ放す……!
――半端な出力じゃあ、また対応される……余力は考えるな……!
歌満地、絶体絶命――そんな状況であるが、しかし、未だに彼の両腕からはアップテンポ
なメロディーが流れているままだ。轟の眉間のしわが、より一層深くなる。
「……耳障りだ」
「こういう感じの曲は、好みじゃないかい?」
「どうでもいい。――その余裕ヅラも、ここまでだ」
「どうでもいい、とはヒドイな……」
「随分と聞き惚れてくれたじゃあないか――
「は……、何……!?」
歌満地の発言を咀嚼しようとした轟、その耳が徐々に大きくなっていく雑音を拾った。
パキッ
パキッ
パキッ
パキッ
パキッ!
パキリッ!
バキンッ!!
氷を蹴散らす音と共に迫ってくる、それは足音だ!
「――ごめん、八百万さんっ!思ったより稼げなかった!」
「ッ!?」
轟は反射的に通路の入口へと振り向いた。彼が通路の入口から走ってくる、
の姿を視界に捉えたことと、走り来た八百万が、その手に握ったマトリョーシカ人形を全力
で投げ放ったことは、ほとんど同じタイミングであった。
⇔
一方、その頃。ビルの5階では――
「…………み……見つけちまったぁ~~~~…………」
見事に外壁を昇り切り、ビル内へと侵入した峰田が、仮想核兵器が置かれている広いフロ
アに辿り着いていた。
(や、やべぇ~~、見つけっちまったよ! え、どうすんだコレ。どうすんのコレ)
こんなにもあっさり発見できるとは思っていなかった峰田は、ちょっとばかり混乱し、ま
た興奮していた。
――歌満地たちが来るまで待ちゃあいいのか?
――いやでも、歌満地も八百万も、さっきから応答無ぇし。
――下の方から何かスゲェ音したし。
もう一度、そっと、扉のすき間から室内を窺う峰田。ふと、あることに気付く。
――あれ…………誰も、いなくねぇか?
部屋の中には人の気配が無いのだ。仮想核兵器のハリボテだけが、でんと居座っている。
その光景に、峰田の心の中で、むくむくと欲望が沸き起こる。
――今なら、オイラ一人でもイケんじゃね?
「……………………いやいや、いやいやいや。それはねーわ、流石に無理だわ。いくら何で
も、あんな無防備な訳はねぇって。あれだろ、オイラの死角になってるとこに隠れてるとか
だろ?それくらい分かるってこう見えて学校の成績は悪くないオイラ様だぜ?」
声を潜めて、だが早口で一気にまくし立てる。他ならぬ自分自身を諫めるように。
ああ、しかし。それでも峰田は室内を覗く。二度、三度と、チラチラと。
彼の脳内に、先ほど、八百万から掛けられた言葉が再生された。
『お願い致しますわ、峰田さん!私には貴方が必要です!』
『私の勝利の鍵は、貴方なんですのよ!』
『私のために、どうかがんばってくださいな!』
『私にできることなら、何でもいたしますから!』 それは言ってない。
「八百万……さっき、“何でも”って言ってたよな?」 言ってないってば。
なんということだろう。あろうことか峰田は、自分自身の記憶を、自分の都合の良いよう
に捏造していた。あるいは、妄想と現実が混ざってしまっているのか。
峰田はとめどなく零れ出すよだれを拭うと、ゆっくりと扉に手をかけた。
――オイラの力だけで、核を確保したとなりゃあ……。
「ヤオヨロッパイの一つや二つ! 何とでもできるはずだぁぁあ!!そうさやってみせろよ
オイラァー!ウッヒョヒョオオォォウゥッ!!」
勢いよくドアを開けて、室内へと砲弾のように飛び出した峰田は、奇声とよだれを振り撒
きながら、核へと突撃していく。
外壁を昇った時と同様、呆れるほどの素早さだ。一応は伏兵を警戒して、後方へともぎも
ぎを投げ捨てながら走っている辺り、意外と抜け目が無いと言うか。
あっという間に、峰田は目標まで目と鼻の先に迫った。
その時。
〈SKREEEEK〉
眼前のハリボテから、磨き抜いた金属を擦り合わせるような、硬質な音が響いた。
すると、その中心を垂直に線が
「――は?」
グバァッ、と、真っ二つに開いた。
肉食の獣が、大きく口を開くように――真っ赤な液体の糸を、いくつも引いて。
「はっあぁ~~~ぃいっ♪みぃぃぃねぇぇぇたぁぁぁくぅ~~~~~ん?」
中から現れたのは――赤黒の、ニンジャ! では無く、歌満地に変身した、渡我!
登場と同時にバイザーが頭部に外れたために、しっかりと視線が合った、その双眸は、狂
気に満ちて妖しく光り、口端は耳元まで裂けているように見える――嗜虐的な、凄絶なる笑
顔が、峰田を睨み見下ろしている!
渡我の顔は今、歌満地の顔だ。しかし、普段は人の良さそうな穏やかな表情でいる歌満地
の顔だからこそ、他人に恐怖を与えるには十分過ぎる変貌となっていた!
「ヒッッ…」
「つ・か・ま・え・たぁ」
言うが早いか、歌満地(渡我)は自分が入っていた核兵器ダミーのダミー……『奏血』で
作ったそれを血の糸で操り、峰田の左右から、彼を挟むように振り抜いた。
その動きは、まるで、獲物に喰らいつく蛇のようであった。
「ヒイャァアァァァアァ――――――ッ!!?」
峰田は逃げることも叶わず、血の棺桶に閉じ込められ――彼の恐怖に満ちた悲鳴は、階層
中に響き渡る程の鈍い音に掻き消された。
⇔
「み、峰田くーーーんっ!」
「こここっ、怖えーーッッ!!何あれ超怖いんですけどーーッ!?」
「恐怖……!まるで魔獣の、
(ガクガクブルブル)
「うぅ……、ウチ、ああいうの無理なんですけど……」
「ていうか普通気付くだろ!?何で不用意に近づいた!?」
「……いやでも、よく出来てんじゃん。色も殆ど似てるし、パッと見、見分けつかなくね?
血でできてるとか、気付かねーって」
「そういやぁ、血は赤いもんってイメージあるけど、献血とかで採られた血って黒っぽいん
だよな。確か、静脈から採ってるからだっけか」
「そうね。……でも、峰田ちゃんが気付かなかったのは他にも理由があると思うわ」
「えっ、他の理由?」
「いや、ホラさぁ。 アイツずっと、ヤオモモの胸、ガン見してたから……」
「……あ」
「しっかり観てなかったんじゃない?核。ディティールまで」
「「「…………」」」
「(う、う~む……。渡我少女が巧妙だったのか、峰田少年が不用心だったのか……。どっち
もかな……? 判断に困るなぁ……)」
■
ウフフ。これで準備万端です。お仕置きも出来たし、一石二鳥ですね。
さぁ、灯志くん。早く来てください。早く、速く――。
「私を、捕まえに来てください……ッ!」
「シリアスな笑い」ってどうやったら表現できんのかなぁ。
頭脳戦ってどうやったら面白く見えるのかなぁ。
まだまだ精進が足りないですが、どうかこれからも読んでください!
次回は戦闘訓練クライマックス。勝つのはどっちかな?
さて、早くも(回想って形だけど)登場したNo.2ヒーロー、エンデヴァーさん。仮免試験編辺りまではよくよくヘイトを集めるキャラでしたけど、近頃はもう見る影無いですね。因果応報と言ってしまえばそれまでなんだけど、親子そろって不器用が過ぎるよ本当に。ええ、私は大好きですよ。
本作ではナンバーツーなだけあって特機部二のこともシンフォギアのことも把握してるし、協力してノイズと闘ったこともあるようですが、二課や奏者たちとの折り合いは最悪なようで……。今回、対戦相手に轟くんを持ってきたのには、オリ主の弱点を付けるという以外に、そういった理由もあります。タイトルは「俺のクラスメイトがウチのDV親父に目を付けられている件について」。後々3人まで増える模様。
ちょこっと用語解説:
☆ユウジョウ!:
サイバーパンク・ニンジャ小説『ニンジャスレイヤー』に登場する独特な言葉づかいの一種。互いに呼びかけあう事により友情を確認する行為。ヤモト=サンカワイイヨネ。ウィーピピ!
☆ターミネーター:
terminateの名詞形。ここでは1984年アメリカで第一作が公開された映画『ターミネーター』シリーズに登場する殺人サイボーグの総称。T-1000はその内の一体で、液体金属のボディを持ち、自在に容姿を変えて襲ってくる上に爆発四散しても復活してくるという超強敵。
☆障子目蔵:
雄英高校1年A組。寡黙で大柄、(クラス内で一番)異形で強面。だけどヒーローにかける熱意、友を想う心は人一倍の好青年。今話執筆時点では、ある意味A組の中で一番謎の多いキャラ。そのマスクの下は「怖い」らしいが、観れる日も近いか?
☆歌満地の歌:
大人気RPG『グランブルーファンタジー』で、劇中でヒロインのルリアたちが時折歌う唄。マジで歌詞は「Wow」と「Yeah」しかない。ちなみに私はサンちゃんが歌ったバージョンが好きです。
☆『Prove flare fluchtig』:
この技名は「照明弾」と「証明」をかけた「証明弾」というシャレです。「3 FREEZE」みたいな。つまり本来の用途は“遠隔でのノイズの位相差障壁の調律”。オリ主の『奏血』はシンフォギアと比して出力範囲で劣るので、離れた位置のノイズをこちらの世界に引きずり出せません。そのための技です。言うなればソノブイ。
☆震脚:
中国武術で用いられる、足で地面を強く踏み付ける動作。剣道で言う“踏鳴”。特に八極拳で多用されるのだが、李氏八極拳の開祖・李書文は、この震脚を連続使用して歩き、“石畳に足形を残しながら”散歩したという話がある。しかもこの時、既に御老体、生コンクリートを担いだ役人が補修して回る羽目になったという……。怖……。
☆ヒーター:
轟が戦闘服着用時に身に付けているベストは、背中に板状のヒーターを内蔵している。「左」を使うようになってからはラジエーターの機能も搭載する。見た目ただのベストなのに。
☆マフティー構文:
最後の峰田のはっちゃけ台詞の元ネタ。
「やってみせろよ、マフティー!」「何とでもなるはずだ!」「ガンダムだと!?」
♪鳴らない言葉をもう一度描いて♪
以上から成り立つネットミーム。