あけましておめでとうございます。(激遅)
しょうがないじゃないか。繁忙期なんだもの。ホント労働はクソ。
もっと適性のある職に就きてぇなぁ俺もなぁ。
さて、新年一発目ですが餅を撒くではなく火種を撒きまくる回です。どうぞ。
教室に戻った私に、視線、視線、視線が向けられる。
惑い。怯え。
昔に比べれば、それはとても小さいけど……確かに私を見るみんなの目に宿っている。
(……ちょっと、はしゃぎ過ぎちゃいましたかね)
でも、だって、灯志くんと勝負するの、とても楽しいのです。
大好きな人と、いっしょに同じ事をする――それだけでもう十分に楽しいのです。
灯志くんは他の人と自分とに優劣を付けるのが、嫌いというか苦手な人ですけど、“上か下
か”と“勝ちか負けか”を別けて捉えてる。なので、単純な娯楽としてならどんな勝負にも付き
合ってくれます。
そして、勝った時はちょっと得意げになったり、負けた時は仏頂面になったりと観てて飽き
ないのです。特に大負けした時の灯志くんは、分かり易く「がーん」てなったり「しょぼん」
ってしたり、カァイイのです。本人に言うと不貞腐れますけど。
灯志くんの“個性”を使えるようになって、いっしょに訓練をするようになってからは、ます
ます楽しくなりました。何せ同意の上で、灯志くんを切り刻めますからね!
だからいっつも熱が入っちゃって、本気で刺しに行っちゃいますけど…………むしろそのく
らいじゃないと、良い勝負にならないんですよねー……。
身体と個性が同じになっても、流石に経験値が違い過ぎます……。
ちょっと逸れましたけど、だから今日も、灯志くんと(授業だけど)遊べるって思ったら、もう
楽しみで楽しみで……。
……なのに、水差すんだもん。
頭に来ちゃうのもしょうがないじゃないですか。
灯志くんも灯志くんで真面目が過ぎますし。あんなに必死になって…………、私が本気で峰
田くんを落っことすと思ったんでしょうか。
まぁ。そこが灯志くんらしいと言えば“それはそう”なんですけど。
でも、やっぱりむしゃくしゃするのです。
信用されてないって感じるのも、私よりも他の誰かを優先するのも。
何より、そこで自分のことを大事にしないのも。
だからもう勝負の後は、そのイライラと灯志くんに勝って上がったテンションの相乗で、灯
志くんにチウチウすることしか頭に無かったんです。
授業が終わるまでは貧血でクラクラしてたし、終わった後は灯志くんがゴメンって言いに来
て我慢できなくなって、ソッコー着替えたので……。
こんな風に注目されるのって、いつ以来でしょう。
隠すことを覚えてからは、全然無かったと思います。
まあ、この反応は、仕方がないのかなって。そうですよね、みんなヒーローになる為に此処
にいるんだもん。悪い子のことは警戒して当然ですよね。
チクチクして、ムズムズする。
(死ぬほど、じゃないし、いっそ痛くも無いですけど――でも)
やっぱり、嫌だなぁ、この感じ。
(上手にいってる……と、思ってたんだけどなぁ)
そんな気持ちが出ないように、素知らぬ顔を作って席に向かう。
灯志くんはまだ戻ってない。もう、居て欲しい時にいないんですかr
「おかえり~、渡我!どこ行ってたん?」
!
「三奈ちゃん」
「青い顔して、めっちゃ早着替えだったじゃん。保健室?」
ツカツカと詰め寄って来た三奈ちゃん。ずい、と顔を近づけてくる。
……優しい目です。
「――大丈夫ですよ。ちょっと、お薬を飲みに行って来ただけなので」
「薬ぃ~~?」
「血を増やすお薬です。“変身”してる間に減ったものは、元に戻んないので……」
「それ!」
唐突にそう大きな声で言って、三奈ちゃんは人差し指をビシッと向けてきました。
「すごいね、変身するとかさぁ!もうめっちゃ驚いたよ~!いきなり渡我が歌満地に変わった
んだもん!監視カメラ越しだからちょっとホラーぽかったけど!」
「でもすごい!」と、笑って言う三奈ちゃんの言葉に切島くんが、みんなが次々に乗っかっ
ていきます。
「ああ、すげぇ個性だよな!」
「見た目だけじゃ無くて、個性まで同じになるなんてね~!」
「なぁなぁ、誰にでも変身できんのか?」
「っつーか個性もスゲェけど作戦もヤバかったよな!ハラハラしたわ!」
「俺も!峰田縛るとこカメラで観てなかったら、マジで騙されてたと思うぜ!」
「ま☆エレガントじゃあ無k」
「だよねぇ!あれは引っかかっちゃうよー!」
……さっきまで、さっきまでのチクチクする感じじゃないです。ムズムズするけど、なんで
しょう、ムズムズの種類が違うと言うか、何なんだろう、上手く言えません。
会話を切り返せず、どもっている私のところに、百ちゃんが近付いてきました。
「……あの、渡我さん……」
「百ちゃん?」
「……いえ、お身体の具合はどうか、と……。その、本当に大丈夫ですの?」
「だいじょぶですよぉ。……あっ、もしかして鉄パイプがっつんしたの、気にしてます?」
演習の最後の最後、よろけたところを百ちゃんに思いっきり転ばされちゃったんですよね。
こう、軸足に、ガツーンと。それで振り切られちゃったんですけど、百ちゃんは間に合わな
くて結局トガの勝ちでした。
「それもありますが……」
「え?」
「いえっ、なんでもありませんわっ!」
百ちゃんは何か言いかけて、それを振り払うようにキリッとした顔付きになりました。
「先刻の演習での、貴女の立ち居振る舞いは……正直、思うところはありますけれど。でも、
実に
しましたが……あの……」
「?」
すわお説教かと思いましたけど、違うみたい。段々と声が小さくなっていっちゃいました。
首を傾げていると、渡我たちのやり取りを見てた三奈ちゃんが「ははぁん?」とニヤリ顔。
「もうヤオモモってば!そういうのは深く考えずに言っちゃっていいんだよ~!ほらほら、当
たって砕けるマインド~!」
「く、砕けてはいけないのでは!?それにその、や、ヤオモモ?」
「最初の一歩はそんなもんでいいの!
「……!」
両手を腰に添え、胸を張ってそう言った三奈ちゃんの笑顔は、とても眩しくて。
目を見開いた百ちゃんと同じく、私もちょっと息を飲みました。
だって、本当にその言葉通りなんだって、私は身を以て知っているからです。
そう、教室に差し込む夕焼けの色に、私は『あの日』のことを思い出して――
「渡我さんっ」 百ちゃんの呼びかけに、フワリしかけた意識を引き戻す。 「はい?」
「――次の機会は、私、負けませんわ!」
「――――」
照れているのか、少し頬っぺたを赤らめながら、百ちゃんはそう言いました。
「……フ、フフッ! 百ちゃん、実は負けず嫌いですねぇ?」
「そっ、そのようなことは…………いえ、ええ!そうですとも!意外かも知れませんが、実は
私、負けず嫌いなのですわ!」
「ふふふ。おんなじですねぇ、百ちゃん。トガも、負けっ放しは好きじゃないです」
だって、負けたら悔しいんです。だから、百ちゃんの気持ち、悔しいって気持ち、分かりま
す。……分かってなくちゃ、いけなかったのになぁ。
百ちゃんとだって、私は勝負をしてたのに。
気が付くと、スッ……と、自然に、私は手を差し出していました。
自分で自分にちょっと驚いちゃいましたけど、構いません。むしろこれがいいです。灯志く
んなら、きっとこうすると思うから。
「改めまして――トガです、渡我被身子!よろしくねぇ、百ちゃん!」
「――は、はいっ!八百万百と申します!よろしくお願いしますわ、渡我さん!」
⇔
「いいねいいね青春だねぇ!」「何か二人ともずる~い!私も私も!」「くうぅ!渡我、八百
万!お前ら男らしいぜ!」「いやどっちも女子だかんな?あ、俺は
「
挟まらせてくれ!」「「「懲りねぇなお前!??」」」
握手を交わす渡我さんと八百万さん。二人を囲んではしゃぐ面々。
轟くんに釈明しつつ、共に教室に戻ってきた俺は、後方の入り口から渡我さんたちのやり取
りを観て、感慨深いものを抱いていた。
あれは決して上辺のものじゃない。ありのままを
渡我さんは今、心から望んであの手を差し出したんだ。
本当に、成長した。彼女は着実に、前へと進み続けている。
そうさ渡我さん。人と人とをつなげるのは、傷みだけでは決して無いんだ。
「…………」
「……ん?何だい、轟くん。俺の顔に何かついてる?」
「いや、なんでもねぇ。(……今のコイツの顔、どっかで見たな。どこだったっけか……)」
あ、渡我さんがこっちに気付いた。目を丸くして……、顔がちょっと赤くなった?
そしてこちらに近寄っ、いや、走ってきて――
「その顔やめてくださいってか何時からいたんですかーーッッ!!」
「グッホォーーゥ!!?」
す、スピアタックル……だと……!? グオオ、は、腹が…………。
俺の身体は廊下に押し出され、渡我さんを受け止めたまま倒れ、後頭部を強打した。
「うわぁっ!!なに!?何事!?」
「うひゃあ!え、何!?何しとんのん、二人とも!?」
そんなハプニングに、丁度戻って来た緑谷くんと麗日さんたちが鉢合わせて驚いている。
あ、ヤバい、意識が――
「だ、だいじょぶ、大丈夫……。問題、な、い――ガクリ」
「うっ、歌満地くーーーん!!?」
■
『ェ間もなくー、3番線に列車がァ参りまぁス。お乗りの方は黄色い点字ブロックまでェ――』
駅のホーム。電車の到着を報せるアナウンスが響く中、近寄りがたいオーラを放つ少年が一
人、険しい顔で佇んでいた。
彼――爆豪勝己の、常日頃の尊大さは鳴りを潜めているが、今は代わりにぎらつくほどの闘
志を、その瞳に静かに
彼は今日、生まれて初めて――自分が“折れた”ことをハッキリと自覚した。
――ポニテの奴の言ったことに納得しちまった。
――氷の奴には、敵わねぇかもと思っちまった。
――貧血野郎は……アイツは、
――既に何歩も、俺より先を行ってやがる……。
何よりも爆豪にとって痛烈であったのは、誰あろう緑谷に敗北したという事実。
無個性で、何にも出来なくて、そのくせ叶いもしない夢を見続けている。
爆豪にとって緑谷は、そのような人物――自分とは何もかも違うヤツ。格下、路傍の石のご
とき存在……だった、はずだった。
そうやって見下していた相手に、自分は負けた。完全敗北だった、あろうことか。
自分の幼馴染は、何時の間にか強くなっていた。動きを読まれ、策に嵌められ、力でさえ上
を行かれた。無個性だったはずなのに、強過ぎるほどの“個性”を手にしていた。
最後に立っていたのは自分なのに、“立っているんだ”という感覚が無かった。
演習が終わった後、午後の授業はまるで身が入らなかった。内容も殆ど覚えていない。気が
つけば帰路に着いていた。
今思えば、“まるで尻尾巻いて逃げる犬の様”だったと、爆豪はらしくもなく自嘲する。続い
て、そんな自分を追いかけて来たのだろう緑谷の言ったことを思い返した。
『――
何を馬鹿な、と思った。そんなこと、あるわけが無いと。
『今は未だ、上手く扱えてないんだけど……でも、いつか必ず使いこなして、それで――君を
超えていくよ!』
何より、自身に勝っておきながら、今までのように“後ろにいる”気でいるのが理解できな
かった。
言い放った後で“しまった”という顔をした緑谷の慌てように、爆豪の胸中に、怒りの感情
が間欠泉のような勢いで噴き出してきた。
『俺は……!! いいか!? 俺はここで、
そのまま勢いに任せて、腹の中をブチ撒けた。何度も悪態をつきながら、悔しさを言葉に出
して、認めた。傷を焼いて塞ぐように。苦い薬を飲み干すように。
――何が、俺にはもう負けない、だ……!
――こっちの台詞だってんだ、クソナードが!!
――クソムカつくけどよォ……!
今の爆豪には、現実に打ちのめされたが故の虚脱感はもはや無い。むしろ全身の隅々まで、
なにくそ根性に満ちている。
「次は勝つ。氷の奴もそのうち潰す。ポニテにはもう文句を付けさせねぇ。ンで貧血野郎は絶
対ブッ殺す……“
「俺はもう、二度と負けねぇ……誰にもだッッ」
瞳に闘志の炎を灯しながら、爆豪は決断的口調で言い切り、電車に乗り込んだ。車内には割
と多くの乗客がいたが、爆豪が降りるまで、その周りには人二人分のスペースが空き続けた。
■
「……何かあったのか、お前たち?」
「いやぁ、その、まぁちょっと。 ……あの、渡我さん。そろそろ機嫌直してくんないかな」
「……つーん、です」
「いや、つーん、じゃなくて」
「つんつくつーん、です」
渡我に対して歌満地が取り付く島もない、といった二人の様子に、珍しいなと弦十郎は腕を
組んで注視する。
ちょっとした
の二人――主に渡我がそういう状態を長く保てないという理由なので――故に、どちらかが一
方的に相手を拒み続けることは滅多に無い。
――こういう場合、男親として何と言うべきなのか。
――うぅむ、“真心を込めて謝罪すべし”……と言う他に思いつかんな。
「放っときなさい弦十郎くん。そのうち勝手に元鞘に戻るわよ」
「む……」
息子同然の少年の弱り顔に、気の利いた助言の一つでも、と思案する弦十郎。しかし、その
内心を読んだ了子にざっくりと止められる。
「さてさて~? そこのバカップル共は置いといて、先日のメディカルチェックの結果発表と
いきましょうか~!」
「へ、えーっ!?ふ、二人ってそういうアレなんですかぁ!?ほぇ~……!」
「……響ちゃ~ん?乙女心が疼いちゃうのは分かるけど、今はコッチに関心持って頂戴?マ・
ジ・で♡」
「ヒョエッ……。す、すみません……」
昨晩、第3のシンフォギア奏者(暫定)となった少女、立花響。
彼女の右隣の壁面に投影されたウィンドウに、複雑怪奇なデータの数々によって示されてい
るのは、他ならぬ自身の身体検査の結果。
その報告会が、行われようとしていた。
この場に集ったのは、当事者である響、二課司令である弦十郎、検査を執り行った了子と、
翼、歌満地、友里、藤堯の7名。そして渡我を入れて8名――彼女は歌満地にくっ付いてきた
だけである。拗ねていても、歌満地から距離を取る気が無いのが渡我らしい。
「初体験の負荷は若干残ってはいるものの、身体に異常は
「……ほぼ、ですか……」
「ん、そうね。貴女が訊きたいのは、こんなことじゃないわよね?」
本部に連れられて来る際、またしても手錠を掛けられたために手首をさすりながら、奥歯に
ものが挟まったかのような言い方をする響。
彼女は居住まいを正し、了子と弦十郎に真剣な眼差しを向ける。
「教えてください、あの力のこと……!」
響の本心からの問いに、弦十郎は背後に佇む翼に目配せをする。すると翼は自身の襟元に手
をやり、服の下に隠されていた赤色系の細長い結晶のような形状のペンダントヘッド――シン
フォギアのコアユニットを引っ張り出した。
「
「聖、遺物……?」
そこから弦十郎と了子によって、かつて渡我が受けたものと同じ説明が響に為される。
聖遺物とは先史文明の遺産、それを用いて造られたのが、アンチノイズプロテクター『シン
フォギア』であり――昨夜、響が身に纏ったモノなのだと。
「全然わかりません」
「だろうね」
「だろうとも」
苦笑しつつ正直に言う響に、友里と藤堯が同意する。これもまたデジャヴ。
「いきなりは難しすぎたかしらね? だとしたら、聖遺物からシンフォギアを創れる唯一の技
術『櫻井理論』の提唱者がこの私である事だけは、覚えておいてくださいね?」
「……その情報は別に必要でもないんじゃ」
「ですです」
「忘れないように叩き込むわよ物理で」
「「ごめんなさい」」
「……? どうかしましたか?」
「「「いいえ、なんでも?」」」
「はあ。……でも、私はその聖遺物というものを持ってません。なのに何故……、?」
響の疑問に答えるように、新たな画像が壁面に表示される。
それはレントゲン写真だ。
胸部レントゲンの写真――そこに映った心臓の上付近に、
「これが何なのか、君には分かるはずだ」
「はい、
響のその言葉に、翼と歌満地はそろって顔を
あの日、自分たちに力が足りなかったばかりに――画面に映る響の負った傷痕は、正しく、
護り切れなかったという罪の証か、と、じわり
しかし――直後、その程度の感想は
「心臓付近に複雑に食い込んでいるため、手術でも
この影は――
かつて奏ちゃんが身に纏っていた第三号聖遺物、『ガングニール』の砕けた
破片であることが判明しました」
「――――っ!!?」
「は…………!!?」
「本来、シンフォギアは
ルの破片は、正規の解除手順を踏まなかったが故に響ちゃんの体内に残留・固着し、二年間
の内にその機能が“修復”されたものと思われます」
常とは打って変わった、真摯な態度での了子の報告に、二人は天地が反転したかのような
感覚に襲われた。
翼は顔を抑え、立っていられず傍らにあった仮眠用ベッドに手をついて無理に身体を支え
る。歌満地は脚を震わせ、後ろにつまずくようによろめいて壁に背中をぶつけた。その様を
見て渡我が思わず歌満地の名を呼ぶが、反応は無い。目を大きく見開いた顔は、ともすれば
先刻の演習の時よりも蒼褪めている。
「灯志くん――灯志くんっ!」
渡我に、その小さな両手で頬を挟まれながら、幾度か呼びかけられて歌満地はようやく我
に返った。しかしながら、自身を覗き込む渡我に、大丈夫だと何度も繰り返し応える声は未
だに震えていた。
渡我もまた、ここまで
か分からず、不安げな表情になってあわあわとするばかり。
やがて、ふらりと、幽鬼のような足取りで、翼が部屋を出て行った。
「……っ、翼さん……。 …………くそっ」
「灯志くん? っ、待ってくださ―― 「ごめん、渡我さん」 ……!」
その後を追いかけるように動いた歌満地を、渡我は引き留めようとするが――力無く、し
かし断ずるような圧を含んだ言葉で……彼は彼女を拒んだ。
「頭、冷やしてくる…………ごめん、ホントに……」
肩を落とし、
その背中に、追い
れた操り人形のようにダランと落とされる。
そんな三者の様子を、痛ましげな顔で黙って観ていた弦十郎に、考え込んでいた響がおず
おずと声をかける。
「この力の事、やっぱり誰かに話しちゃいけないことなのでしょうか?」
「……君がシンフォギアの力を持っている事を何者かに知られた場合、君の家族や友人、周
りの人間に危害が及びかねない。命に関わる危険すら、ある」
「命に……関わる……?」
弦十郎の言葉に、響の脳裏に浮かぶのは小日向未来の姿。そして母や祖母に、芦戸
け替えの無い友人たち。
「俺たちが守りたいのは機密などではない。人の命だ。その為にも、その力の事は隠し通し
てもらえないだろうか?」
「貴女に秘められた力は、それほど大きなものであると、
大切な存在を連想することで、ようやく実感が沸いてきたのか、俯いてしまう響。
「……人類では、ノイズに打ち勝てない。人の身でノイズに触れることは、死を意味する。
一方的に炭となって崩れるだけであり、またダメージを与えることも不可能だ。 例外があ
るとすれば、それはシンフォギアを身に纏った戦姫……そして、“あの人”や灯志君のような
通称『アンカー』だけだ」
すっくと椅子から立ち上がり、弦十郎は響に真剣な眼差しで向き直る。
「日本政府、特異災害対策機動部二課として、改めて協力を要請したい。――立花響君。君
の持つその力を、対ノイズ戦の為に、役立ててはくれないだろうか」
「……」
弦十郎からの、一少女には余りに荷の重すぎる依頼に、一寸、
「私の力で、誰かを助けられるんですよね……?」
「分かりました! 私、やります!」
そうして、二つ返事で、命を懸けた戦場に赴くことを了承した。
キッと眉根を寄せた、決意を見せる表情で。
そんな響に、弦十郎と了子たちが眩しいものを見るように目を細める中――
「……………………」
渡我だけが無感情な顔であった。
横目で響を見る、その瞳には……
⇔
翼が通路に出て、直ぐの頃。
彼女は近くに備え付けられたレストスペースで
た歌満地だったが、翼と同様、混乱と苦悩で高負荷のかかった脳では、かける言葉が見つから
ない。
「……翼さん。その……、…………っ」
「…………何なのだ」
そんな歌満地に、答えたのか、それとも単に独り言と口が動いたのか、翼は問いを零す。
「何なのだ、奴は。何なのだ、これは。あれは、あれは奏のギアだ……奏の力だ。それを何故
「…………」
胸中に渦巻く煩悶を、血を吐くように言葉にする翼。
「――友達なんですよ」
唐突に、歌満地がつぶやいた。その発語の意味が翼には分からず、彼女は顔を上げて歌満地
を見やる。彼はいつの間にか壁に向かって立ち、翼に背を向けていた。
「あの子の友達と、俺、友達になりました。二人は言ってました、あの子のこと。人助けが趣
味で、変わってるけど、とても良い奴だって。自慢げに語って聞かせてくれました」
「……」
「昨日出会ったばかりで、まだお互いによく知りもしないけどっ。芦戸さんも切島くんも、い
い人なんだっ……いい歌を歌える人たちなんですよ……!」
徐々に語気を荒げながらそこまで言い切ると、歌満地は右の拳を大きく振り上げて、眼前の
壁を殴りつけた。
「そんな彼らの友をッ!あの子をッ!俺はッッ!!」
通路に怒りと悲しみの混ざった叫びが響く。
その悲憤の矛先は誰あろう、歌満地自身に他ならない。
「俺がもっと強ければ……もっと上手くやれてれば!! 俺が、奏さんを、ちゃんとっ」
「それ以上言うなッ!」
歌満地が吐き出し始めた後悔を、翼は怒鳴って遮った。
「そのような“
「んなこたぁ分かってんですよッッ!」
翼に一喝され、叱られた子供のように肩を跳ね上がらせた歌満地は、しかし、続く言葉にこ
らえ切れず怒鳴り返していた。
「分かってるんだ……それでも……、思わずにはいられないでしょう……! こんな残酷、俺
には痛過ぎる……!」
「……っ」
「二人に何て言えばいい……言えるわけ無いだろっ……!」
ちくしょうと吐き捨てて、壁に押し当てていた拳で沈む
その震える背中を見て、翼もまた、やり切れない思いに
――貴方のせいじゃない……そう慰めることができたなら、どんなに良いか。
――そう、それこそ、言えるわけが無い。
――私とて、あの日からずっと……己が未熟に
両の拳を、爪が皮膚に食い込むほどに握り締める。
捨てど尽きずに溢れ出す悔恨の念に、翼はただ、ただただ耐え忍ぶしか無かった。
オリ主はいくらボロボロにしてもいい……。原作キャラと違って比較的心が痛まないもの……(ゲス顔ダブルサムズアップ)
勿論私は光の制作者なのでちゃんと明るい展開を書いていきますよ。ええ。
まぁ、今後よりもっと襤褸雑巾みたいになるのは確定させてんですけど。
楽しみにしておいてくださいね(ニチャア)
さて、戦闘訓練回はここまで。次回からはシンフォギアパートと委員長決めの話を挟んだ後、いよいよUSJ編に入っていきます。逃げ場を無くすために予告しますと、オリ主が本気で歌います。敵サイドも早速強化要素出していくつもりなので、乞う御期待。
現時点での原作との相違:
デクくんは右腕を吊る羽目になったのは変わらず。爆豪に対し、「もう負けないぞ」や、「超える」ではなく「超えて“いく”」と、ほんの少しだけ、その先――ヒーローの頂き、つまりオールマイトの後継としての意識が出始めております。
かっちゃんはほぼ原作通りの展開。ライバル視する相手が増えたこととデクくんがちょっと強気に出てくるので、メンタルダメージは増加しましたがその分反骨心が強くなってます。
八百万は本来体育祭編で経験する無力感を演習で先行体験することに。峰田含め、オリ主と同じ組にすると決めた時点で、こうなるかな、と。そして勝負自体は結果含めまあ接戦だったので、原作でちょいちょい見せてた負けず嫌いなところがフル稼働。結果、トガちゃんとの関係がライバル寄りになりました。
轟くんもまた、オリ主に「負けた」と感じましたが、こちらは八百万と違った受け取り方をした模様。
峰田と障子くん、他のA組の面々は然して変化なし。強いて言えば全員、原作以上にやる気満々で演習に臨んだと思われます。
トガちゃんは、まあ言わずもがななんですが。今回の件で他人との向き合い方……「傷付ける」以外の“つながりの作り方”がスキルアップしました。「手をつなぐ」という要素はヒロアカ的に、何よりシンフォギア的に重要なものなので、描く際は大事にしたいと思ってます。
シンフォギアサイドは、翼さんの対応に割と大きな違いが。実はアニメだと響のことをほぼ覚えて無い、いっそ知らなかった感じの描写だったのですが、本作では奏さんの一応の生存とオリ主の存在によるバタフライエフェクトで、はっきりとでは無いけど二年前の生存者として覚えてはいた、という具合に。奏さんが生きているので了子の「置き土産」発言はカットでしたが、インパクトの大きさは据え置き。原作同様、SAN値チェックする羽目に。
ちょこっと用語解説:
☆瀬呂範太:
1年A組所属。地味な見た目で、地味に出番があり、地味に活躍する名脇役(だと思ってる)。もしも覚醒とか進化してテープの種類とか増えたら化けそう。某自転車漫画にそっくりさんがいるけど、そっちの方はキャラが濃い。
☆蛙吹梅雨:
一目で蛙そのものと解る上にメチャかわいい神デザインのケロケロガール。アニメオリジナルの主役回まで作られるなど、絶対優遇されてる。ヒロイン力も高いし、何ならバブみすら感じる。実際弟妹二人の面倒を良く見るいいお姉ちゃんである。
☆俺、砂藤!:
実に端的な自己紹介。何故か記憶に残る。さて置き、彼のフルネームは砂籐力道。堀越先生曰く「古き良き」、と言った感じの容姿の巨漢。瀬呂同様、活躍は地味だがお菓子も料理も作れる模範的意外な一面の持ち主。
☆その顔:
EPISODE2②でトガちゃんが言及していたオリ主が時折見せる笑い方。
☆スピアタックル:
某アメフト漫画のそれではなく、実際のアメフトに存在するタックルの方。頭から突っ込む非常に危険なタックル。真似してはいけない。
☆天羽々斬:
♪アッメッノッハバキリッヤッヘ-イェ♪
風鳴翼が纏うシンフォギア、及びその核である聖遺物の銘。日本神話に登場する刀剣、『十拳剣』の一振り。須佐之男命が八岐大蛇と闘った時に使った剣……の欠片である。12年前に、翼の歌によって起動した。
☆ガングニール:
天羽奏と立花響の纏うシンフォギア、及びその核である聖遺物の銘。北欧神話の大神オーディンが振るう、 勝利必中の槍の穂先。『シンフォギア』本編だと奏の装着していた元々のガングニールのシンフォギアは、彼女の戦死時にその遺体諸共失われてしまうのだが、本作では奏は生きている。つまり……?
☆『アンカー』:
本作オリジナル用語。『Anti Noise Quirk-holder』……『対ノイズ個性保持者』の略称。位相差障壁を突破出来たり、ノイズに触れても炭化しないなどの“個性”の持ち主たちのことだが、公に使われている呼称ではない。
「ノイズを倒せる」ではなく、「ノイズに通用する」なのは、大火力“個性”なら継続的波状攻撃で位相差障壁をなんとかできるかもしれないけど、周辺被害がヤバいことになるので、そんなんやろうと思えば通常兵器でも出来らぁ!ということ。