ところで前回、緒川さんの字を間違えていた。処されたい。
「…………ハァ。 いつもいつも、貴方は厄介事ばかり持ち込むわね」
「皆々様にはいつもご迷惑ご心労お掛けして誠に申し訳ありません」
「そうやって開き直るのが一番
二課クリパ兼忘年会終了後。俺は翼さんと並んで、とある病院の廊下を歩いている。
「……歌満地。貴方の友人という、あの少女だが」
「はい?」
「貴方と共にヒーローになると
「ヒーローになるんじゃなくて、ヒーロー免許を取るんですよ。まあ実態は同じですけど、
心構えの問題というか」
「とても、ヒーローとして活動できる性根では無いと思うわ」
ズバッと言うよね。流石はその筋では有名な、日本政府のSAKIMORIである。
「正直に言えば……、俺と出会ってなかったら、十中八九、敵になってたかと」
「だから矯正しようというの?自分の血肉を分けてまで、なんて……」
「いやいや、肉は分けてないから。カニバリストじゃないですから彼女は。ちょっと血を飲
むのが好きなだけですから、いわゆる
「へ、ヘマ……何? いえ、どちらにせよ異常な嗜好があるということじゃないっ!」
「だとしても、それが彼女の全部じゃないですから」
そう、それが彼女の全てでは無い。同時に、それも含めて彼女なのだが、別に、だから悪
いってことは無い。翼さんは真面目が過ぎる人だから、受け入れ難いだろうけど。
「いい子だったでしょ?渡我さん」
「…………ま、まあ、私と奏の
ね。……表の仕事をこなす中で、想いが行き過ぎる手合いもいることは、知ってはいたし、
もう慣れたものだと思っていたのだけれど……。はっきり言って、あれは異常よ」
「あー……。いや、まあ、うん。……あんなキラッキラした目でサインねだりに行くとは、
俺も思ってませんでしたけど」
「そちらでは無い!その後だ!」
以下、その時の一幕。
『え、えっ?えっ? か……風鳴翼、さん?ツヴァイウィングナンデ?』
『……? お疲れさまです。櫻井女史、歌満地』
『あら、翼ちゃん。お疲れ様~。今夜は新春ソロライブの打ち合わせじゃなかった?』
『それなら既に、恙無く完了しました。 ……それで、そちらの女子は?』
『紹介しますよ。こちら渡我被身子さん。俺の友人で、2時間前のアラートの――』
『あのぉっ!!』
『ん?』
『好きですっ!!ファンですっ!!サインくださいっ!!』
『そ、そう……。ありがとう。サインね?そのくらいは御安い御用d……』
『あとできればチウチウさせてくださいっっ!!!』
『…………………………………………えっ?』
『えっ?・・・・・あ』
「サインよりも物凄いものをねだられたのだけど?そちらは予想できていたとでも??」
「いいえ。そっちも予想外でしたよ」
あの後、トナカイの鼻のように真っ赤になった渡我さんは慌てて弁解し出し、翼さんは
訳が分からないと言うように顔のパーツが点になっていた。レアな二人を見れて俺として
は面白かったが。
「やるかやらないかだったらやる人ですけど、やったら嫌われるなら、我慢することはで
きるので。……多分、自制忘れるくらい翼さんのこと好きなんですよ、渡我さん」
「好意の裏返し……、いえ、裏も表もないということね? 今日までの経緯は、報告書で
読ませてもらったけど……。……やはり私には理解しがたい」
「俺としては俺以外に頼んだのは目を瞠りましたけどね。最初も最初は問答無用で来まし
たから、そっから考えれば格段に進歩してるんで、割と喜ばしいです。後はキチンと段階
を踏んで、もっと配慮ってものを進んで身に着けてくれれば……」
「……私が口を挟む義理は無いが、関係を改めた方が良いのではないか?」
呆れ半分、気遣い半分の視線を向けてくる翼さん。
まあ、渡我さんの両親みたく、理解しようともせずに即否定することをしない辺り、翼さ
んの心根は優しいって、よく分かるよね。
しかしなぁ、渡我さんが翼さんのこと血をねだるほど気に入ったのは、翼さんが彼女の好
み――ボロボロで血の匂いがする人――に割と当て嵌まってるって気付いてた節あるんだよ
なぁ。
テレビに翼さんが映った時、「いい匂いがしそうです」ってちょいちょい言ってたし。翼
さんの秘密――ノイズから人々を守る戦士だってことを知って、すごく“腑に落ちた”って顔
してたし。……突然の邂逅で(彼女にしては珍しく)テンパったのも相まって、ハードルが低
いように錯覚したのかもしれない。
それと、渡我さんは翼さんか奏さんかで言ったら奏さん派だ。理由は、奏さんの方が血の
香りが濃そうだから。実際その勘は当たってるんだけど、これ翼さんには絶対言えない。
うん、よし。話題変えよう。
「あー……、それにしても今更だけど。翼さん、よくクリスマスの夜に時間獲れましたね」
「ええ、緒川さんが頑張ってくれたのよ。……頼んでもいないのに」
「っはは、緒川さんらしいや。良かったじゃないですか、プライベートでパーティーなんて
久しく出てなかったでしょ」
「良くはないっ! 私は常在戦場を旨とすべき防人だ。宴に興じる寸暇など、私にあっては
ならない。この身は常に
「――そんなんじゃ、そのうちポッキリ折れますよ」
「……ッッッ!!」
翼さんがものすごい形相でこちらに振り返ってきた。でも怖いとは思わない。
「
こんな風に、適宜気を抜かせるような真似をしないと本当に気を抜かないのだ、この人。
「……………………。そうね、奏なら、そう言うわね……」
その後、二人、無言のまま。とある病室の前で立ち止まる。
扉の向こう。最新鋭の快復治療ベッドの上に、朱色の髪の女性が横たわっている。
心電図の電子音だけが静かに響く中、僕らは彼女に“メリークリスマス”と告げた。返事も、
プレゼントも、もらえはしないと知りながら。
もう一人の奏者。翼さんの相棒。ツヴァイウィングの片翼。
■
灯志くんのお義母さんと二人、病院の待合室であったかいものを飲んで、まったり。
お義母さんはコーヒーで、私は紅茶です。ミルクティー。
ところで、夜の病院ってドキドキな雰囲気がしてワクワクしませんか?私はします。
「はふぅ…………」
「お疲れみたいね、被身子ちゃん」
「はい。昨日から色々ありましたから」
そう、本当に色々なことがあって、この24時間は驚きの連続でした。
灯志くんの個性の秘密、女子高地下の秘密基地、聖遺物とシンフォギア、大人気ボーカルユ
ニットの正体……、他にもたくさん。
まるで、私の知らない世界に迷い込んでしまったようでした。
「まだ信じられないくらいです。 ……まさか灯志くんがツヴァイウィングとお友達だった
なんて」
「ふふっ、やっぱり気になっちゃうのはそこなのねぇ?」
「だって、まさかまさかですよぉ?とんだライバル出現じゃあないですか。負ける気は全く
しませんけど。しませんけどっ!」
「うふふっ、そうね。“命短し、恋せよ乙女”っ!その意気よ、被身子ちゃん!」
そうですとも。お義母さんが応援してくれているのです。親公認の仲なのです!例え日本
最高峰のアーティストでも、キレーでカアイクて歌って踊れてしかもカッコイイ変身ヒロイ
ンだなんて属性の厚盛りでも!灯志くんの隣は絶対譲りません!
「まあ、翼ちゃんと奏ちゃんにとっては、あの子は
必要もないと思うけどね~?」
「そういう人に限って興味ナイふりして独占欲強いんですよ。客観的に見れば友達以上恋人
未満としか評しようが無いのに“姉”っていう特別だけど恋愛対象にはならないポジションに
赤の他人でありながら無理矢理立つことで男の子が年上を相手に感じるちょっと近寄りがた
いイメージを払拭して“本当の兄弟みたいに気安く甘えることができるけど血は繋がってな
いお姉さん”とかいうドン引きものな厚化粧してマウント取ろうとしてくるんですよクラス
の子がそう言ってました」
「被身子ちゃん、貴女ホントにロクな交友関係築いてないわね」
それ灯志くんのことも「碌でも無い」って言ってませんか、お義母さん。
「でも、確かに。灯志を攻略する上では、あの二人は無視できない相手かもね?」
「あ、やっぱりそうなんですねぇ。今日でツヴァイウィングのファン辞めます」
「あはは、違う違う!そうじゃないのよ? んー……ねぇ、被美子ちゃん。貴女は2年前の
事件についてどの程度知ってるのかしら?」
「……“ライブ会場の惨劇”ですか?……テレビとかSNSとか、そのくらいは」
あの事件のことは、よく憶えている。と言うより、嫌でも耳に入ってきた。大勢の人が亡く
なり、生き残った人も体と心がいっぱいボロボロになった。ここ10年の中で、最も深刻な被
害を出した事件だと、毎日バカみたいに画面の中で騒いでた。
でも何より「酷いなぁ」って思ったのは、生き残った人たちがいじめられたことだ。
あの会場でノイズに殺された人は全体の死者数の3分の1で、あとの3分の2はノイズから
逃げる中で、潰されたり突き飛ばされたりした人たちだって広まったら、みんな手のひらを返
した。誰も彼もが正義を振り翳して、生き残った人たちを追い詰めた。何も悪くない人だって
その中には絶対にいたのに。「他のみんなも言ってるから」っていう理由で。
思い返すだけで、胸がギューッてなって、耳の奥でゴウゴウって音がする。何よりおでこの
辺りがグワッて熱くなって、崩れてもいないのについ前髪に手が伸びちゃう。
「私には、全然カンケーないことだったですけど――でも。すごく、すごくイヤでした」
「…………。そう……」
お義母さん……了子さんは、コーヒーをまた一口飲んでから、紙コップを脇に置きました。
「あの事件は私にとっても、いえ、私たちにとっても深刻な被害を出したわ」
「奏さんのことですか?」
「そうよ。あの時、戦いの中で活動限界を迎えた彼女は、自分の命と引き換えにノイズを倒そ
うとした……。それを灯志は体を張って止めようとしたの」
「……えっ?」
灯志くんが、あの会場にいた……?いえ、ツヴァイウィングの二人とお友達ならライブに行
くのは不思議じゃないことですけど。
「あの日の奏ちゃんは、まともに戦える状態ではなかったの。 元々低い適合率、それを補う
「絶唱?」 私が訊ねると、お義母さんはこう答えた。 「簡単に言うと“捨て身”ね」
「シンフォギア・システムの切り札にして、諸刃の剣。通常時とは比べものにならない出力を
得られる、まさに必殺技よ。けれど、その分奏者にかかる負荷もまた甚大……場合によっては
生命の危機に陥るほどにね?あの時の奏ちゃんじゃあ、間違いなく死んでたわ」
ああー……。それは間違いなく割って入りますねぇ、灯志くん。
「……灯志は奏ちゃんが謳い終わる前に、『奏血』を彼女の肉体とギアに
生じたフォニックゲインの制御を奪ってノイズを殲滅し、更にギアからのバックファイアを自
分に向けることで肩代わり。フォニックゲインを生み出す個性であるが故のエネルギーに対す
る耐久性と、奏ちゃんと同じО型を持つ肉体だったからこそ成功した、奇天烈極まりない横紙
破り……。けれど、何もかもが上手くはいかなかった。何故だか分かる?」
「えっ、ぇっとぉ……………………血を直接…………同じО型……? っ!体外循環!?」
「正解よ。流石、血液に関することとなると詳しいわね」
えぇ……マジですか。マジなんですか。
つまり灯志くんのやったことって“
みたいな感じですか!?
「奏さん死んじゃいますよそれ!」
「ところがぎっちょん、生きてるのよね。ま、正しい意味での体外循環だったらアウトだった
わね。フォニックゲインのやり取りだから何とかなったと言うか……それでも、人の手には過
ぎた行いだったことには違いない。結果として、奏ちゃんは命こそ失わずに済んだものの、軽
減し切れなかったダメージと諸々の後遺症で未だに昏睡状態、という訳なのよ」
「…………」
灯志くんが、誰かの為ならむちゃくちゃする人なのは身を以て知ってます。
それでも、こんなはちゃめちゃエピソード聴かされちゃったら、開いた口が塞がりません。
何よりちょっと、……いいなぁ、って、思っちゃいます。
「あの子もあの子で、血流と、防護・治癒・攻撃の三つの用途別エネルギーの同時制御、それ
を成す極限の集中による精神疲労、負担したダメージによる身体各所の破裂損傷により、その
場で心肺が停止。一命こそ取り留めたものの全治4ヶ月と相成ったわ」
「………………。灯志くん……」
思い返すは1年とちょっと前。何より忘れられない思い出の日。
あの日、痛みと哀しみに歪んでいた彼の泣き顔。
「自分のせいだ、って、抱えちゃってるんですね」
「……ええ。あれ以来、翼ちゃんとも仲がこじれちゃったから、余計にね」
「えっ。二人ともさっきまでとっても自然におはなししてましたけど?」
「そりゃあ2年も経てば、お互い元通りに落ち着くわよ。けど、自己嫌悪だけは自分で止めな
い限り、どうしようも無いでしょ? 翼ちゃんは何もできなかった自分を、灯志は完璧にでき
なかった自分を、どうしようもなく許せないでいるの」
――奏ちゃんが起きてくれれば、一挙に解決なんだけどねぇ~~。
お義母さんはそう言って、残りのコーヒーを飲み干しました。
そのお話に、悪い人はいなかったんだと分かります。誰もが自分にできることを頑張った。
それでもハッピーエンドにはならなかった。ただそれだけです。
だけど、当事者にとっては、そんな風に割り切ることなんて出来ないんですよね。周りの人
が、どんなに慰めたって。
――もっと強かったら、って。自分を呪わずにはいられないのです。
「――難しいですよね。自分を好きになるって」
「…………。 そうね。誰かを愛することはとぉっても簡単なのに、自分をとなると途端に難
しくなっちゃうのよねぇ~……」
何とはなしに、手に持つ紙コップの中でゆらゆら揺れるミルクティーを、じっと見る。
私の顔を映さない濁った水面は、蛍光灯の明かりだけで――ぼんやりだけど――キラメイて
見えます。
だから、はしたないけど、ぐいっとあおって飲みこみました。
「っはぁ……。 私、灯志くんにも灯志くんを好きになってもらいたいです」
「! ……ふふふっ。だったら、もぉ~っと攻め攻めでいかなくっちゃね?――貴女には期待
してるわよ?被身子ちゃん♪貴女が得たのは、世界を変えていける力なんだから」
「はいっ!」
■
時間は少し前後して、夜の7時。所も変わって、静岡県・
「わあぁぁぁあああぁぁああぁあ!! うっあぁああぁぁあああぁあぁあ!!」
ここでも一人の少年が、未知なる世界へと飛び込む“力”を、手に入れようとしていた。
「オイオイオイ……!!指定した区域以外まで……!!マジかよ!」
大小さまざまなゴミから成る山の上で、冬の風の中、汗だくの身体を拭うこともせず、雄叫
びを挙げる少年。そんな彼を見て、まるで鳥の骨のような風貌の男は、寒さではなく驚愕に身
を震わせた。
「よりにもよって……、今日この日に仕上げやがった!
オーマイ……、オーマイ……、と、うわ言のように繰り返したホネ男は直後――
「グッネス!!」
と叫び、
叫ぶ気力も尽き、ふらりと倒れる少年を、
年に 「おつかれ!」 と、労いの言葉を贈った。
「オールマイト……、僕、出来ました……!出来ましたよ、オールマイト……!」
「ああ、まったく驚かされた!まさか、
イナーめッッ!!十代って素晴らしい!」
そう言って、男はスマートフォンを取り出して、少年に一つの画像を見せた。
「これは……?」
「8ヶ月前の君さ!――よく頑張ったよ、本当に!」
スマホの画面に映っているのは、へたり込んで泣く、弱弱しい当時の少年の写真。だが、今
此処にいる少年は、顔つきこそ同じながらも、腕も脚も一回り大きくなり、しっかりと筋肉が
体全体に張り巡らされている。
「まだまだこれからって感じではあるが……、確かに“器”は成した!!」
「…………なんか、ズルだな……。僕は……っ」
男の称賛に感極まったか、少年は大粒の涙をこぼし始める。
「貴方にここまでしてもらうなんて、恵まれ過ぎてる…………!」
「……HAHAHA!その泣き虫は直さないとな! さぁ、授与式といこうか!」
「……っ、…………。 ……はいっ……!」
少年は己の顔を両腕で拭い、男に真っ直ぐ向かい合った。
すると男は、自らの天を衝くV字の前髪から一本、髪をプチンと抜き取った。
「これは受け売りだが。 最初から運良く授かったものと、認められ譲渡されたものとでは、
その本質が違う! 肝に銘じておきな、これは君自身が勝ち取った力だ」
男の名は、オールマイト。
日本のナンバーワンヒーローにして、“平和の象徴”と呼ばれる男。
少年の名は、
個性を持たない“無個性”である以外は、平々凡々な中学3年生。
これより両者の間で起こる現象は、超常社会においても異例中の異例。
――“個性”の、譲渡!
超パワー?ブースト?いやいやきっと魔法(物理)さ!
と、長年に渡って議論されてきた、オールマイトの個性とは「
それは複数人分の極まりし身体能力の集合体!一人が力を培い、その力を誰かに引き継ぎ、
また培う。そうして救いを求める声と義勇の心により紡がれてきた、力の結晶!
聖火の如く受け継がれてきた、その個性の名は、『
その新しい継承者こそが緑谷出久!そのための8か月に及ぶ鍛錬の日々!
今、此処に!少年はコミックもビックリな現実を、その手に掴み――
「 食 え 」
「・・・・・へぁっ!?」
「別にDNAを取り込めるんなら何でもいいんだけどさ!! さぁ食べたまえ!毛!!」
「思ってたのと違い過ぎる……!!!!」
訂正。手ではなく、口に押し込んだ。
「しかしまぁ何だ、アレだよ少年。
――そいつが私からのクリスマスプレゼントさ!HAHAHAHAHA!!」
「すいません流石にちょっとその言い方は嫌です……」
少年は若干口の中に残った謎の酸っぱさに顔を青くしながら、己が師のアメリカンジョーク
に苦言を呈するのであった。
――この物語は、少年・緑谷出久が、最高のヒーローになるまでの物語でもある。
■
そして、光の届かない、深い闇の中でも、強大な力が胎動を始めていた。
「――どうだい?ドクター。 順調かい?」
『フォッフォッフォ!ああ、もちろんだとも。春になるころには完成じゃよ』
「そうか。それは良いね。しかし、こっちは逆に芳しくないよ」
『うぅむ。洗脳だの改造だので、手っ取り早くできればよかったんじゃがのう。発動に必要な
歌は心象に由来するが故にヘタに弄れん……か、本当に不安定で非効率的じゃわい。先史文明
期の人間は、どうしてこんな面倒なシステムにしたんだろうのう……』
「ハハハ、ロマンがあっていいじゃないか」
『やれやれ。ま、『精神掌握』なんて大層な名の割には制限と欠点だらけの個性じゃったが、
使い道が見つかってよかったわい』
「ああ。……ふふ、今から楽しみだよ。全てが終わった後、自分の願いの矛盾に気付いた彼女
が、どんな音を立てて壊れるか、ね」
吐き気をもよおすような、おぞましさに満ちた会話に興じる巨悪は、自身の根城の別室を映
し出したモニターを見やる。
画面の中では、一人の少女が、石っぽい色合いの、
たケースの前で歌っている。
少年少女、それぞれの物語を、舞台ごと動かす大きな歯車が、今、廻り出そうとしていた。
トガちゃんに変な恋愛知識を教えたクラスの子って誰なんでしょうね?
(別に特に考えては)ないです。
体外循環とか人工透析とかの発言は、小さい頃から血に興味があったなら、血液に関わる知識はめちゃくちゃ持ってるはずなんですよトガちゃん。と思ってのアイデア。
ようやく原作主人公登場。デク君いかれてっけど好きです。親しみがある。
なお、OFAは『シンフォギア』サイドに合わせてちょっと強化します。
そしてラスボス梅干しさんもチラ見せ。例のあの人がヒーロー側にいるので、こちらも少し勢力を増強させています。最後のあれと少女は、適合者の方なら分かりますよね。あれです。
こっからしばらく『ヒロアカ』サイドの話。でも梅干しさんがヤベーの手にしちゃってるので、その内大変なことになります。
ちょこっと用語解説:
☆防人(SAKIMORI):
古代中国、飛鳥時代から平安時代の日本にあった軍事制度のこと。
「問題。万葉集にも詠われた、九州沿岸部の防衛のために設置された……」
「SAKIMORI!」
ここでは風鳴翼の代名詞にして、護国の剣たる者の在り方のこと。自らを防人と称する彼女の武士っぽい話し方や数々の名言はシンフォギア視聴者からは「防人語」と呼ばれ、親しまれている。
☆カニバリスト:
人間を食べる人。『ハンニバル』とか『グリーン・インフェルノ』とか観るなよ。私は一時、肉が食えなくなった。
☆ヘマトフィリア:
血液性愛。読んで字のごとく血液に性的に興奮する嗜好のこと。ちなみに吸血行為への性的嗜好はまた別に名称があって「バンパイアイズム」と言う。まんまやん。
☆天羽奏:
『シンフォギア』1期から登場するシンフォギア奏者。翼さんとコンビを組み、表向きは人気ボーカルユニット「ツヴァイウィング」として活動していた。1期1話Aパートで圧巻のライブ作画で描かれながらその直後戦死する。その後は翼さんの思い出の中にしか登場しない。そして中の人のウカツな発言が、シンフォギアと言う作品を「戦闘シーンで生アフレコで歌いながら戦う演技をする」という業界屈指の過酷な現場へと変えた。兎に角いろいろと伝説的なキャラなのである。
本作では一応生存したが、オリ主の未熟のせいで寝たきりである。オリ主がデフォで曇ってる理由その1。
☆命短し、恋せよ乙女
大正時代の名曲『ゴンドラの唄』の一節。『乙女でいられる時間は短いから今のうちに存分に恋愛をしなさい』ってことだけど、大抵の女性はいくつになっても乙女は乙女と言い張る。指摘してはいけない、グーが飛んでくるぞ。
☆ライブ会場の惨劇
『シンフォギア』本編開始の2年前に起こった事件。ツヴァイウィングのライブ中にノイズが発生、10万人を超える観客・関係者が巻き込まれ、12874人が死亡または行方不明となった。ただしノイズによる死者は全体の1/3程度であり、 残りは逃走中の将棋倒しによる圧死や、 避難路の確保を争った末の暴行による傷害致死。シンフォギアやノイズに関する情報隠蔽も相まって、この事実がセンセーショナルに報道されたことで、たくさんの無思慮な正義と協調圧力が暴走することになった。
本作では正確な死者数はぼかして書いた。だって『ヒロアカ』世界でこの事件が起きた場合、個性のせいで被害規模は跳ね上がるだろうし、めちゃくちゃたくさんヒーロー気取りが暴れると思う。夕方のことなのでオールマイトの活動時間的に間に合わない可能性も大きい。つまりステイン激おこ案件である。
☆絶唱:
本編中でも説明した通り、シンフォギア奏者の必殺技。誤解されがちだが、ポケモン風に言えば「すてみタックル」であり、「だいばくはつ」ではない。但しアームドギアを使って発動しないと威力が分散されるばかりか負荷も大きくなる。体調が悪い時に使うとまず死ぬ。薬頼りの時限式奏者でもまず死ぬ。
☆Linker:
シンフォギアとの適合係数を上昇させる薬剤。効果は永続的なものではない上に、戦闘後は体内洗浄が必須の、ヤバいオクスリ。奏さんはこれの使い過ぎでボロボロだったため、原作2年前時点で生き残っても遠からずぶっ倒れていた可能性が高い。
☆多古場海浜公園:
『ヒロアカ』原作第2話に登場した地名。元ネタは『スターウォーズ』に登場する惑星ダゴバ。
☆オールマイト:
『ヒロアカ』世界の日本ナンバーワンヒーロー。メリケンかぶれのマッチョメン。おまけにアラウンド50、画風が違うと、もう見た目だけで本当に濃すぎるオッサン。教え方が下手なのに教師引き受けたり、事務仕事苦手だったりとINTは高くない。あと頑張りすぎ。
☆緑谷出久:
『ヒロアカ』本編の主人公。心だけナチュラルボーンヒーロー。無個性とバカにされたり親に泣かれたり個性ゲットしても反動でボロ雑巾になったり幼馴染にいじめられたり目の敵にされたりイカレてると言われたり散々な扱いだけど、それはそれとして困っているなら手を伸ばす打岩みたいなメンタルしてる。多分黄金でできた打岩。
本作ではとある理由からオールマイトと出会う前から筋トレはしてた設定。2カ月も縮まったぞ、やったね。
☆ワン・フォー・オール
オールマイト、そして彼から出久へと受け継がれた“個性”。本作ではノイズに対抗できる数少ない個性、と言うことになっている。ただ先んじて言ってしまうと、受け継いだばかりの今のデク君だと炭になります。詳細はまた今度。
2021/10/17誤字報告:
ずっとトガちゃんを渡我被「美」子って書いてました。正しくは「身」でした。
黒クロウさん、御報告ありがとうございます。(五体投地)
さて、ちょっとトガちゃんに切り刻まれてこよう(陳謝)