[パッチワーク・オブ・ドリーム]ハリボテエレジー育成シナリオ 作:ターレットファイター
[間章・その脚に満ちた可能性の形]
ハリボテエレジーのトレーニングは、プラン通りに順調に進んでいた。
同期のウマ娘や私との併走、校内で開催される模擬レースへの出走、そういったものを通して、ハリボテエレジーは順調に抑えるレース運びを身に着けていった。
目の前で今展開されている模擬レースは、そのトレーニングの集大成と言えるだろう。
ギンシャリボーイ・チョクセンバンチョー・ハリボテエレジーと三人揃った模擬レース。八人立て、戦績としては数えられない非公式の模擬戦とはいえ、同じ一六〇〇メートルの芝コースで開催されるそのレースは事実上の朝日杯のリベンジマッチと言えた。
そのレース展開は、朝日杯後に行ってきた「抑える」トレーニングの成果が結実したもののように見えた。
もともと、トレーナーとしての経験と知識があったこともプラスに働いているのかもしれない。スタンドから向けた双眼鏡の視界の中で最終コーナーを曲がるハリボテエレジーは、折り合いをつけて冷静に模擬レースを走っていた。
朝日杯と違って第三コーナーに入る前からロングスパートをかけることもなく、最後方で先頭から離されすぎず、バ群にも包まれない位置を確保。今回は先頭に立っているギンシャリボーイを射程圏内に収めたまま最終コーナーの出口へ向かう。
そして、直線を向くと同時に加速。スパートを掛けたギンシャリボーイとチョクセンバンチョーを後方から追い上げていく。
双眼鏡の視界の中で、ハリボテエレジーはじりじりとギンシャリボーイとの差を詰めて追い上げていく。一見するとその姿はこれまでと変わらない。ハリボテエレジーの追い上げに呼応するようにギンシャリボーイも粘り、チョクセンバンチョーも負けじと追いすがる。朝日杯を前にして、クラシック三強候補と呼ばれただけの能力で誰一人として譲らないままに団子になってゴール板にもつれ込む。タキオンの目には最後にわずかに伸びきれなかったハリボテエレジーが三着となったように見えたが、写真判定をしなければなんとも言えないほどの微妙な差だった。非公式の模擬戦では当然、写真判定の設備は使っていないから、全員の判断が一致しない限りおそらくは三人同着という扱いになるだろう。朝日杯一着、二着の有力バを相手にしてほぼクビ差・ハナ差の三着ならトレーニングの成果は上々と言えるだろう。少なくとも、クラシック三冠路線での活躍も期待できるはずだ。
「ふぅン……」
しかし、それを見守るタキオン自身も自覚できないほどわずか――本当にごく僅かに、その口元には不満が浮かんでいた。
最終コーナー、ハリボテエレジーは十分な加速を見せた。レースの展開も上々。
しかし――
その瞳に浮かぶ、魅入られるような狂った色は、だいぶんその濃さを失っていた。