[パッチワーク・オブ・ドリーム]ハリボテエレジー育成シナリオ   作:ターレットファイター

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[神戸新聞杯にて・段ボールの破れる音]

 

《クラシックロードへの最終便、神戸新聞杯。菊花賞への優先出走権を賭けてクラシック級ウマ娘一八人が集いました》

 レジンキャストと話してから二週間後。わたしは阪神レース場のコースに立っていた。

 神戸新聞杯、阪神レース場芝二二〇〇メートル。発走地点はスタンド前の直線のどん詰まりなので、ゲートの裏からも、スタンド席の観客たちの発するさざなみのようなざわめきがかすかに聞こえてくる。

 ウマ耳カチューシャを触る。大きく一回、深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

 ――勝負は第三コーナーに入ってから。それまでは、どんなに前に行きたくても抑える。

 それが、春の経験から学んだことだった。コーナーでスピードを上げた場合――強烈な加速を制御しきれず、わたしは曲がりきれずにコーナーのどこかで転倒してしまう。

 それが、後天的にウマ娘としての能力が発現したせいなのか、はたまた「ハリボテエレジー」というウマ娘の個性なのかはわからない。

 確かなのは、わたしの加速力は、コーナーで発揮するにはあまりに危険すぎること――そして、コーナーから仕掛けることを捨てて、最終直線での末脚勝負になったとしても、最後方から先頭へと突っ込んでいけるほどの武器であることだけだ。模擬レースとは言え、ギンシャリボーイ・チョクセンバンチョー相手に末脚勝負を挑んで、並ぶところまでは行けたのだ。ギンシャリボーイもチョクセンバンチョーもいないここで同じことをすれば、勝てるはずなのだ。

 だから、最終直線までは抑える。最終直線までは、前をゆくウマ娘たちを追いかけようとはせず、自分の出せる力だけで走る。

 ゲート裏での準備運動を終え、ゲートに入る。大きく深呼吸。眼の前の扉に意識を集中させ、なおも聞こえてくるあの声を意識から締め出す。

《⑱番エアフィックスがゲートに収まりまして……クラシックへの最後の切符を手にするウマ娘は誰になるのか――神戸新聞杯、スタートしました!》

 音を立ててゲートが開き、視界がひらける。

 序盤は抑えめに。力みすぎないように、前に行くウマ娘たちを意識に入れないようにしながらゲートを飛び出す。

 ――おかしい。

 体が重い――いつもと同じように走っているはずなのに、速度が上がらない。いつものように体を動かしているはずなのに、全然前にいかない。

 前をゆくウマ娘たちがどんどんと遠ざかっていく。耳元を吹き抜ける風の音が聞こえない。やけにのろのろと流れていく観客席から、ざわざわと不安げなざわめきがやけにはっきりと聞こえてくる。

 第一コーナーの時点で、バ群ははるか前方。ブービーの背中すらも見えない。思わず、足が止まる。

 ――もう、届かない。

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