[パッチワーク・オブ・ドリーム]ハリボテエレジー育成シナリオ   作:ターレットファイター

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なんだかんだで話の座りが悪いので連投です。



[ハリボテエレジー登場!]その2

 

 

「――結論から言おう。手作トレーナー、君はウマ娘だ」

 そう告げたシンボリルドルフの言葉には、はっきりと困惑の色が出ていた。

「……はい?」

 けれどもそれは、言われたわたしからしても同じことだ。

 そもそも、なんでこんなことになっているのかも飲み込めていないのだ。

 放課後の生徒会室でシンボリルドルフと一対一――ほとんど生徒会室にいないナリタブライアンはともかく、エアグルーヴにまで席を外させてというのはそうとう重要な話だというのはわかるが、そんな話をされることになったのもよくわからないのだ。いや、されるとすれば朝の一件もあってサポート科の施設やら練習コースでの走り込みやらと今日一日かけて受けさせられた検査に関することなのだろうが、それにしたって自分が実はウマ娘だったという結果を聞かされることになるとは予想もしていなかったのだ。

 思わず自分の頭のてっぺんあたりを何度もなでてみるが、当然そこにウマ娘の耳は生えていない。

「……生まれたときから耳は生えてなかったのですが」

「うん。そうだろうね。過去の検査記録でも、君はウマ娘ではないと診断されていた」

 なんとかひねり出した答えに、シンボリルドルフはあっさりと答える。

「トレーナーであるなら当然『本格化』については知っているだろう?」

「ええ。ウマ娘がその能力のピークを迎え、競技者として開花する時期のことですよね?」

「ああ、そのとおりだ。そして、基本的に本格化は十代の半ばで起こる。――けれども、二十代になってから本格化を迎えるウマ娘も稀にいることは知っているね?」

「ええ。それほど事例はありませんが、そういう例があることは。ですが……その場合でも、もともとウマ娘であることが判明していた事例ばかりだったと記憶していますが」

「うん。そのとおりだ。とはいえ、ウマ娘の体についてはまだまだ未解明の部分も多くあることは知っているだろう? 極めて――本当に極めて稀に、成人してからウマ娘だと診断される事例もあるんだ」

「それは……確かにそのとおりですが」

 確かに、そういう事例が極稀にあるというのはトレーナー育成学校のテキストのどこかに書いてあったような気がする。とはいえ、それも極めて稀で、そういった事例に出くわすことはまずないだろうと思っていた。ましてや、自分がその事例になるなどと考えたこともない。

「つまり……診断から漏れていただけで、わたしもウマ娘だった、ということですか」

「うん、そういうことだ。手作トレーナー」

 ようやく事態を飲み込めたわたしの答えに、シンボリルドルフはあっさりと頷く。

 子供の頃、ウマ娘になりたかった……そんな夢を抱いていたことが不意に頭をよぎる。ということは、気づかなかっただけで夢の一部はとっくにかなっていたんだな。自分の中のどこか冷静な部分がそう囁いていた。

 とはいえ、ウマ娘だからといって誰もがレースに出られるわけではない。出身地では誰もかなわないような天才が――並みのウマ娘よりも遥かに素晴らしい才能を持つウマ娘の大半が大した結果を残せずに引退していく、それがレースの世界であることを子供から大人になるまでの間に知ってしまっていた。

 だから、ウマ娘だとわかったところで、それだけのことなのだ。夢が叶うわけではない。

 しかし、話はそれで終わりではなかった。

 シンボリルドルフが次に放った言葉は、検査結果以上の特大の爆弾だった。

「さて、それでこれからのことなのだがね。手作トレーナー――トレセン学園に、編入入学する気はないかな?」

「……はい?」

「つまりだね、君にはトゥインクル・シリーズで活躍できるだけの素質があるということだ」

 シンボリルドルフは手元の書類に軽く目をやりながら言葉を続ける。

「練習コースでのタイムを確認させてもらったよ。……その結果を見る限りでは、君の脚は十分に将来有望だ。レースに出ても十分にやっていけるだろう」

 それはつまり――子供の頃に抱いた夢への道が、また開かれたということだった。

 けれども、そんなことをいきなり言われたとしてもすぐ飲み込めるわけがない。

「考えさせて……ください」

 そう答えるのが精一杯だった。

「そうだろうな。……即決できる話ではないだろうから、今すぐ答えなくてもいい。こちらとしても根回しなど準備がある」

 それを見透かしたように、シンボリルドルフはそう言って柔らかく微笑んだ。

「ありがとうございます」

 即決を求められなかったことに安堵して、生徒会室を辞そうと腰を上げる。

 とりあえず、どうしよう――。

 仮にトゥインクル・シリーズに出るとなるとトレーナーとしての業務にも影響が出るからとりあえずはタキオンに相談、あとは誰か同僚にも意見を聞いてみよう、桐生院さんあたりに聞いてみようか……。そういえばトレーナーとレース選手の兼業は認められるのだろうか。ようやく最初の衝撃から回復した頭が、これから先にすべきことのリストアップを始める。

 しかし、彼女はわたしに、最後まで息をつかせる気はないようだった。

「手作トレーナー」

 ドアに手をかけたわたしに、シンボリルドルフはゴール前の末脚のように、さらなる爆弾を投げ込んできた。

「――できればぜひ、君にはトゥインクル・シリーズへと出走して欲しい」

 どきり、と心臓が跳ねる。確かに、さっき行った会長との併走ではゴール前であと一歩のところまで届いてはいた。だが、それはあくまで彼女がわたしの素質を測るためにある程度手を抜いてくれたからであり、わたしの実力を示すものではないと思っていた。

「君と併走してみて、君の末脚は相当なものだと思い知らされたよ。うっかり、にしてもあそこまで迫られるとは思ってもみなかった。油断大敵、レースなら負けていたかもしれない」

 それが、彼女の意図したものではなかったとは――わたしが担当になる前、タキオンと並走したときのように、彼女も本気を出していたのだとは思ってもいなかった。

「君の素質はアグネスタキオンに負けずとも劣らない――いや、ひょっとしたらそれ以上かもしれない。クラシックレース、あるいはティアラ路線、それにシニア級以上のGⅠ――君の脚は、最上の格付けを持つレースでの勝負ができるほどの素質を持っている。そのことは、私が保証しよう」

 タキオンと同レベルかそれ以上――それは、現役のウマ娘の中でもトップレベルの一角たり得るの脚ということだった。

「そう……ですか。検討してみます」

 だが、気持ちはなかなか追いついてこない。そう答えることが精一杯だった。

「ああ。根回しをして待っているよ」

 そう言いながら、シンボリルドルフの目は期待すべきウマ娘を見つけたときのように爛々と輝いてた。

「では、改めて失礼します」

 今度こそ退室しようとドアノブを回す。その背中に、シンボリルドルフの声がかけられた。つくづく、彼女の仕掛けどころの選択のうまさを思い知らされる。

「ああ、そうだ、手作トレーナー。君が継承した想いの名前も伝えておかないといけないな――」

 





そういえば、書き忘れてましたが主人公の名前は手作さんです。チューリップ帽子がよく似合う手先の器用な長身の女性です

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