[パッチワーク・オブ・ドリーム]ハリボテエレジー育成シナリオ   作:ターレットファイター

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[ジャパンワールドカップにて・たどり着く]その1

 

 東京レース場・芝一六〇〇メートル

 GⅠ・ジャパンワールドカップ

 

《どこまでも晴れ渡った秋晴れの空、秋の三大国際招待競走最終戦、ジャパンワールドカップ。出走ウマ娘は九人中六人がGⅠバ、空前絶後の豪華な出走メンバーとなりました。

 誘導ウマ娘に先導されて、出走ウマ娘の本バ場入場です。

 日本の誇る米の無敗街道はどこまで続くのか、無敗の三冠ウマ娘も今日は挑戦者、デビュー以来初めて一番人気を譲る形となりました、①番、ギンシャリボーイ。

 凱旋門賞制覇がひときわ目を引きますが彼女の初重賞はマイル戦、凱旋門賞ウマ娘がジャパンカップではなくこちらへの挑戦です。世界のスーパーモデルが誰よりも美しくマイルを駆け抜けられるか。②番、スーパーフェロモン。

 無敗の三冠ウマ娘が何だ、凱旋門賞ウマ娘がなんだ、マイルは俺の庭だと堂々の一番人気。日本の短距離・マイル王者が得意距離で三冠馬と世界の優駿を迎え撃ちます、③番チョクセンバンチョー。

 アイエエ! ニンジャ! ニンジャナンデ!? 手裏剣一閃、北の国からやってきたニンジャの手裏剣狙撃が強敵を撃ち抜くか、④番ニンジャスナイパー。

 かわいいきぐるみの勝負服、そして出走ウマ娘のなかで最年少ですがその実力は本物です、オセアニア最強ウマ娘、⑤番シーワールド。

 チャンピオンステークスでのデッドヒートも記憶に新しい、ウマ娘の起源との伝説のある神話生物を象ったギリシャ神話の機神がトロイアから遥か遠く離れた府中のコースに降り立ちました、⑥番トロヤンホース。

 未確認生物の名前にふさわしい詳細不明の戦績、今世紀最大の驚異がターフの上に姿を現します、⑦番UMA(ウーマ)、ブータン所属。

 競走中止で涙を飲んだ二年前の阪神レース場、低迷の日々を抜け出して再びのGⅠ挑戦。かつて届かなかったゴールへ二年越しにたどり着けるのか。⑧番ハリボテエレジー。

 スキージャンプ・ペアで活躍したウマ娘がレースの世界に転身、総開発費二十億円の勝負服に身を包んで日本競バに挑戦です。⑨番メカハリボテ。

 以上、出走ウマ娘九人の本バ場入場でした。ジャパンワールドカップ発走までしばらくお待ち下さい》

 

 ゲートに入ると同時に、遠くから風に乗ってファンファーレの音がかすかに聞こえてきた。

 関東GⅠファンファーレ。

 一度だけ深呼吸をする。後からのゲート入りになる偶数番で、しかも大外枠だからゲートに入ったら発走まではもうさほどの時間もない。ウマ耳カチューシャに触れて気持ちを落ち着かせると、気が散らないよう身体を沈めて前傾姿勢を取って、じっとゲートの前に伸びるターフだけを見つめる。

 ゲートが開く。地面が揺れた。一斉に駆け出したウマ娘の足音だ。ギンシャリボーイが、チョクセンバンチョーが前に行き、ウマ娘たちの背が遠ざかる。

 反射的に、ペースを上げて追いかけたくなる。

 軽く息を吸い、そして吐く。身体がわずかに膨らみ、そしてしぼむ。

 いまはまだ、追いかけるだけでいい。

 スタート地点からコーナーまでの距離が長い府中芝一六〇〇メートルのコース、コーナーに差し掛かるまでに隊列が形成される。

 UMA(ウーマ)とトロイヤンホースの巨体が邪魔になって見えないが、おそらく先頭はギンシャリボーイ。ハイペース、縦長の隊列。先頭まで一〇馬身以上、すぐ前にいるUMA(ウーマ)まででも三馬身は開いている。

 先頭を走るギンシャリボーイが身体を傾けて第三コーナーに差し掛かる。わたしがコーナーに差し掛かるまで数秒。大きく息を吸い込んで、声をあげる。

「曲がれ、曲がれ、曲がれ――曲がれぇぇぇぇぇぇっ! 『ハリボテエレジー』ッ!」

 

《――大ケヤキを抜けて三、四コーナー中間。先頭③番チョクセンバンチョー、その後ろ①番ギンシャリ、②番スーパーフェロモン、そして最後方にハリボテがいる!》

 大ケヤキの裏側をまわり、第四コーナーへ。はるか前方にチョクセンバンチョー、ギンシャリボーイ、そして海外の優駿たち。わたしの目の前にはなにやらいろんなメーターがせわしなく動く銀色の勝負服を着たメカハリボテ。

 事前のトレーニングでわかったわたしが転びやすいポイントは二箇所。コーナーの曲がり始めと曲がり終わり。つまり、このレースで言えば第三コーナーの入り口と第四コーナーの出口。

 その間は、ポジション取りよりもまず、自分が安定して走れる速度を保つことを重視して走ればいい。

 第四コーナーを回りきった瞬間、目の前が開けた。

 ここからでも地響きのような歓声が聞こえてくる観客席、広々と開けた最終直線、芝に刻まれた前をゆくウマ娘たちの蹄跡。そして、はるか前方で競り合う同期のウマ娘。

 ――二年前、阪神レース場でたどり着けなかった景色。

 大きく息を吸い込む。身体が膨らむ。

 すぐ前をゆくメカハリボテまで半バ身、その先まではおよそ二バ身。先頭で死闘を繰り広げるチョクセンバンチョーとギンシャリボーイまではおよそ一五バ身。

「行けぇ――」

 残り四〇〇メートルのハロン棒が過ぎ去る。

「ハリボテエレジーッ!!」

 大地が弾ける。吹き付ける風の質が変わる。音が消え去る。

 ここまでだって、ウマ娘としてのスピードで――生身の人間ではおよそ出すことのできない速さで駆けてきた。それが、まるでちょっとした駆け足くらいにしか感じられないほどに速さが変わる。

 一瞬で、遠くにいたはずの世界の優駿たちが間近に迫る。

 あれほど距離があったはずの、ギンシャリボーイとチョクセンバンチョーの背中が、手を伸ばせば触れられそうなほど近くまでやって来る。スタミナを限界まで使って左右にふらつきながらも全身全霊で走り続けるチョクセンバンチョー、両足だけでなく両手まで使い、府中のターフに食らいつくように、全身の筋肉をしなやかに躍動させて――彼女だけが使いこなす異端の走法で地を駆けるギンシャリボーイ。

《さあ残り四〇〇を切ってチョクセンバンチョーはヨれている、ギンシャリボーイ大きく身体を倒してスシウォーク! 府中に芝を四足で駆けるギンシャリボーイ、スシウォーク発動で追い上げてきている!

 ――っとど真ん中ハリボテエレジーとメカハリボテが突っ込んできたこれは速い! 並ばない! 並ばずにギンシャリボーイを抜き去ったメカハリボテがわずかに前か二人並んでチョクセンバンチョーも抜き去ってハリボテ先頭! 怒号と悲鳴が響く東京レース場残り二〇〇で先頭はメカハリボテ二番手にハリボテエレジー、ギンシャリボーイスーパーフェロモンも内から追い上げてくるがこれは追いつけない! メカハリボテ先頭ハリボテエレジー二番手おっとこれはメカハリボテ失速か勝負服から火花が散っているこれは勝負服の故障か! ハリボテエレジーがメカハリボテを交わした! 三番手以下との距離は縮まらない!

 すごい脚! すごい脚! 来るかエレジー、エレジー来た!

 エレジー来たゴールインッ! 二着はメカハリボテ、三着は最後持ち直したかチョクセンバンチョー、まさかまさかのギンシャリボーイとスーパーフェロモンは四着争い!

 コースの真ん中豪快に突き抜けたハリボテエレジー、二年越しのGⅠでのゴールイン、やっと目的地にたどり着きました!》

 

 

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