[パッチワーク・オブ・ドリーム]ハリボテエレジー育成シナリオ   作:ターレットファイター

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[エンディング・可能性の脚]
[エンディング・可能性の脚]


 

 有馬記念からおよそ数カ月後。

 トレセン学園ではファン感謝祭が行われていた。

 ファン感謝祭の出し物はいろいろ。普通の学園祭のような出店や展示、ステージを使ってのパフォーマンスもあれば、トレセン学園ならではの特殊な出し物もある。

 その中で最たるものといえば――練習コースを使って行われる特別レースだ。それぞれに趣向を凝らされた特殊なルールで開催されるレースはファン感謝祭最大の目玉であり、それを目当てに足を運ぶファンも少なくない。

 東練習コース第九競走、ウマ娘箱障害競走(トレセン学園ジャンプグレードⅢ)。

 ――最終直線上に設けられたハテナボックスを一人一個選択し、中から出てきたアイテムを使って走る特殊な障害競走。

 西練習コース第九競走、コスプレステークス(トレセン学園オープン特別)。

 ――出走ウマ娘はコスプレを行い、それに合わせてひねりを加えた名前で出走登録をする仮装レース。どういうわけか、左耳に耳飾りをしたウマ娘が強いというジングスがある。

 同じく西練習コース第十競走、アニマル国際(トレセン学園グレードⅡ)、出走できるのは動物の名前が入っているウマ娘のみ。そして、出走する際には自分の名前に合わせた着ぐるみを着て走るきぐるみ競走。

 そして、わたしとタキオンは東練習コース第十競走のために用意されたトレーナー・ウマ娘控室にいた。

 だが、今日走るのはわたしでも、ましてやタキオンでもない。

「やあ桐生院くん、調子はどうだい?」

 タキオンの問いに、桐生院さんはガッツポーズで応える。

「バッチリです!」

 桐生院さんの機嫌を反映したかのように腰のつけしっぽが楽しげに揺れる。頭の上には髪の色に合わせたウマ耳カチューシャ。胸に踊るファン感謝祭特別競走のゼッケンに書かれた名前は――ハリボテネイチャー。出走レースは東練習コース第十競走。

 東練習コース第十競走――ハリボテ記念(トレセン学園グレードⅢ・ハリボテ種ウマ娘限定競走)

 ――ハリボテ種ウマ娘。

 トゥインクル・シリーズをわたしが駆け抜けて以来、確認例が急増しているという「ウマ耳のないウマ娘」。これまではウマ娘としての潜在能力を見出されずに暮らしてきたウマ娘の俗称だ。

 桐生院さんがウマ娘としての能力を発現したのはあの有馬記念の翌日。

 URAファイナルズやらドリーム・トロフィー・リーグへの移籍やらバタバタしながらもわたしとタキオンがトレーナーを務める形でトレーニングを重ね、今日の特別レースがお披露目となる。

「――さて、そろそろ時間だ」

 タキオンが腰を上げる。天井のスピーカーが本バ場入場時刻になったことを告げた。

 控室を出るとコースの入口はすぐそこだった。

「エレジーさん、タキオンさん」

 コースに入ったところで桐生院さんが足を止めて振り返る。

「――行ってきます」

「行ってらっしゃい」

 今日は、わたしとタキオンが送り出す側だ。

 手を振ると、桐生院さんは――ハリボテネイチャーはコースに駆け出していった。

「……①番ハリボテボーイはギンシャリボーイのトレーナー、③番ハリボテバンチョーはチョクセンバンチョーのトレーナーか」

 コースに併設された掲示板に掲げられた名前を見たタキオンがつぶやく。ハリボテネイチャー(桐生院さん)以外の出走ウマ娘も皆、わたしにとっては顔なじみの同僚――全員、トレセン学園に所属するトレーナーをしている人間だった。

「なあ、エレジーくん……いや、トレーナーくん」

 準備運動を兼ねたジョギングで発走地点に向かっていくハリボテ種のウマ娘たちをじっと見つめていたタキオンがポツリと呟いた。

「どうしたの、タキオン」

「――どうして、トレーナーをしてた人間が多いんだろうな、ハリボテ種には」

 ハリボテ種ウマ娘についてはまだ発見例も少なく、わからない所も多い。

 けれども、今のところ、ハリボテ種として能力が発現するウマ娘には、一つの共通点があった。

 ――大半のハリボテ種ウマ娘は、トレセン学園や、トゥインクル・シリーズに関連する仕事に人間だった。そのなかでも、トレーナーが最も多い。

「うーん……」

 その問いの本当の答えはたぶん、これから科学的にいろいろな調査が行われて、何十年もかけてゆっくり解き明かされていくことになるのだろう。

 けれど、ハリボテ種のウマ娘たちが継いだ想いの名前だけは、知っている。

「――きっと、ウマ娘に憧れてトレーナーになった人が、多かったからなんじゃないかな」

「ふぅン――憧れか」

 タキオンが楽しげに笑った。はじめは低く、そして徐々にその笑いは高笑いと呼べるものへと変わっていく。

「――そうか、憧れか! なるほど――世界は可能性に満ちているな!」

 ファンファーレが空へと吸い込まれてゆく。

 ひとしきり笑い声をあげたあと、タキオンが目尻に浮かんだ涙を拭い、向正面の発走地点に目を向けた。

「ならば、いつか目にしたいものだね――彼女たちの抱いた想いの、可能性の果てを」

 ゲートが開く。ハリボテの脚のウマ娘たちが、コースへと飛び出してゆく。

《――第一回ハリボテ記念、スタートしました!》

 ――その先にある、憧れた背中を目指して。

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