オーバーロード~異世界転移!!? 嘆きの亡霊は帰りたい 作:嘆きのラジオ
昼の街道、鎧に身を包んだ騎士、野菜を叩き売りするおばちゃん、鬼ごっこをする子供
活気付いた街並みはその国の繁栄ぶりを示すかのように帝国街道は賑わっていた
その中でも一際目立つ三人の女性がいわゆる女子トークで花を咲かせていた(?)
「ルシアちゃんも苦労してるのね」
「えぇ本当にうちのリーダーときたら」
ムスッとし少し可愛らしい表情をしている黒髪の女性、嘆きの亡霊の魔法使いにして「万象自在」の2つ名をもち若くしてランク6、魔術詠唱者ルシア・ロジェは依頼仲間である、ハーフエルフの盗賊、イリーナと人形のような可愛らしい金髪の魔術詠唱者、アルシェに愚痴を聞いて貰っていた
「うんルシアさんがお兄ちゃん好きなのはよくわかった」
「違います!?」
アルシェの感想に先程まで丁寧な言葉(普段と比較して)から一転、すがでたかのようなすっとんきょうな声で批判した
それに同意するかのようにイリーナも首を縦にふる、彼女も愚痴を聞いていたし内容も、酷く納得出来るものではあったのだが
何故か惚気話に聞こえてしまうのだから不思議だ
女性の話しが出てきたさいにはお兄ちゃんと親しそうにする女性に対してリーダーは~と批判していたが明らかに嫉妬しているようだった
兄妹と言ってもどうやら義理のようで、恋慕の情を抱いても不思議ではないだろう
そのあまりにも新鮮な反応にアルシェまでもがクスリと笑ってしまう
「まぁでもルシアの気持ちは分かるわ。なんなら女癖の悪さと言ったらヘッケランも似たようなものだしねぇ」
「本当に、イリーナという美人な彼女がいるのにこの前も他の女性に目移りしてたし」
アルシェも同じ考えなのか溜め息を吐きながら答えた
ルシアは二人の様子に、ヘッケランと呼ばれる男を思い浮かべる
確かにそんな感じがする・・・
「あ、ここじゃん集合場所・・・て、また昼間から酒場なの?!」
「全くあの飲んだくれどもは、せっかく優秀でしかも美少女の魔術詠唱者との初仕事っていうのに」
「気にしない、いつものことだから、それにヘッケランはともかくロバーテイクがいるから問題ない」
「いつものことなんですね~」
~
「こらヘッケラン!また昼間から飲んでるの?」
「げッ!イリーナ?!」
昼ということもありこじんまりと人気のない酒場のなか、二人の人影が端のカウンターの席にみえる
2振りのサーベルのような武器を下げた20代半ばから後半の金髪の男性
熊のような鍛えられた肉体におおらかな優しそうな見た目に銀の装備に身を包んだ神父のような男性
「なにか?げッ!よ?なーに?私がいたら不味い話しでもしてたわけ?」
「そっそんなことはないよな?ロバーテイク」
いきなり、話を振られたロバーテイクと呼ばれる顎髭を蓄えた優しい印象をもつ信仰系魔術詠唱者は溜め息をつきながら彼に同意する
「はぁーえぇ勿論ですとも、今回の依頼について、ですよ」
「ごめんねールシアちゃん、こんな駄目リーダーの情けない姿をみせちゃって」
「ダメリーダーって、そりゃあないぜイリーナ」
「いえ、大丈夫です、気にしていませんから」
情けなさならうちのリーダーのほうが数段上であるので問題ない
なんならプライベートと仕事の切り替えが出来るのあたり、リーダーにも見習ってほしいほどだ
「うん、いつものことだから」
「ウッシ!ルシアもそう言ってる訳だし」
「少しは自重して下さいよヘッケラン」
やり取りは少し遠慮のなさを感じるがいつものことなのか気にすることなく話が進む
その雰囲気からルシアは呆れではなく懐かしさを感じた
自分のパーティーもこんな感じ・・・いや、これよりかなり過激で罵倒が飛び交っていたものだが
「だがなぁ大したもんだぜ、その若さで2つ名もちでしかも4位階魔法まで使えるんだってな」
「確か2つ名は「豪雨」でしたか」
「扱う魔法の規模と水魔法を使うからだったからだっけ?」
「うん、魔法なら蒼の薔薇のイビルアイにも匹敵するほど、と噂されてる」
蒼の薔薇のイビルアイ・・・噂で聞いたことがある、自分と同じ災害級魔術詠唱者であり、英雄の領域に足を踏み入れた凄腕の冒険者であり、その実力は他のアダマンタイトの中でも群を抜いている・・・と
「まじかよ・・・益々うちに欲しくなってきたな、しかもかなりの美人ときたもんだ」
「ヘッケラン?」
「じょッ!冗談だよイリーナ」
ヘッケランの言葉にイリーナは形のよい眉をひそめ、じろりと横目をむける
慌てて言葉を紡ぐヘッケランに二人は呆れたように溜め息をついた
「二人ともそろそろイチャイチャするのを止めるべき、ルシアさんも困ってる」
「そうですよ、夫婦漫才は話し合いが終わったあとにして下さい」
「アルシェまでー」
今までおどけるような仕草をしていたヘッケランもその言葉に同意するかのように情けない顔から真剣な面持ちにかわる
それは歴戦の冒険者のように
「そうだな、そんじゃ、今回の依頼について話していこうと思う」
彼の手から一枚の依頼書が・・・これから起こる最悪の悪魔の依頼書がテーブルに置かれた